将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【詰将棋】谷川浩司「月下推敲」第一番

初手は▲3四桂だが、これが上部脱出の抑えとなっている角道を止めて打ちにくい。
しかし、代わりに▲3三金と打っても、△同香なら▲3二金から詰むが、△同金で詰まない。これが第一の罠。
▲3四桂に△3三玉は、▲2二角と打ってしまうと△2四玉と逃げられて捕まらないが、▲4二銀不成△4三玉(△4四玉は、▲3五角)▲6五角と角のリーチで捕まる。




▲3四桂△同香▲3一角△同玉までは一直線だが、次が悩ましい。
銀で金を取って、△同玉なら▲5三金と、三段玉に三枚金あれば金の埋蔵量で詰む。
問題は、△2二玉と逃げられた時に、▲4二銀成と▲4二銀不成とどちらが利いているか?
常識からすれば、3三の地点に利かして不成としたい。
しかし、それでは詰まない。
これが第二の罠。
上部へ逃げ出した時、▲3四角成から詰ますので、押さえるべきは、3三の地点ではなく4三の地点。
さらに上部を塞いだ後、▲3二角成の手段がなければ詰まない。
したがって、▲4二銀成△2二玉の後、▲3二成銀や▲3二金では詰まない。
あらぬ方向から飛んでくるような▲1三金が正解だから詰将棋は面白い。

【横歩取り】端攻めのテクニック

横歩取り戦法、いや「横歩取らせ戦法」と呼ぶべきか。
「内藤流空中戦法」から進化した「中座流」が、試行錯誤の末、再び「内藤流空中戦法」に回帰した。
その間、先手の方にも「青野流」「勇気流」が出現し、果ては横歩を取らずに▲5八玉とする指し方まで現れた。
しかし、古風な中住まい玉の攻略も簡単ではない。
次の三種類の型が指されている。

  1. △7二銀型・・・簡易な囲いでスピード重視
  2. △6二銀型・・・玉の堅さ重視
  3. △2三銀型・・・囲いを後回しにし、2筋の攻撃力重視。

横歩取り(取らせ)で後手の攻める場所は1~9筋の全て。
▲6八玉型に対しては7筋攻め、▲5八玉型に対しては2筋攻めが基本。一歩損の代償として2筋に歩が利くのが大きい。
今回は、▲5八玉型に有効な3.△2三銀型を中心に取り上げる。


△8四飛+2三銀型は1筋が急所 

△2三銀型は、新しい作戦。
以前は、▲2四歩の当たりがきついのであまり指されていなかった。
主な狙いは△2四飛からの2筋逆襲。
単にぶつけるか、角交換後△3三桂~△2五歩と押さえてから△2四飛と回る。
飛車の横利きを通すため、△7四歩はつかない。

△8四飛・5二玉型でまず考えることは、△7四歩をつくかどうか。これによって方針が全く違ってくる。△7四歩が決定的に悪いという変化はなく、それはそれで一局である。実際に△7四歩型はプロの公式戦でもいまだに指されている。しかし、私は△8四飛型を生かすために△7三歩型で指したいと思っている。

 △7三歩型の大きなメリットは、守備力が高いこと。飛車の横利きと△5二玉型の遠さによって先手からの速攻は全て封じているので後手が駒組みに専念できるのだ。横歩取りで先手からの仕掛けが難しい形は画期的である。

 また、従来は△7四歩型と比べて攻撃力に劣ると思われていたが、1筋や9筋を絡めて攻めることによってその不安も解消された。第3節第7図(A図)や第5節での2筋方面での逆襲はかなり迫力がある。
長岡裕也『長岡研究ノート(相居飛車編)』p.213


A図


このように2筋逆襲の際、威力を発揮するのが端攻め。
プロの実戦例から具体例を学びたい。

郷田昌隆vs屋敷伸之


A級順位戦 郷田vs屋敷ほかで現れた局面。図から△2四飛のぶつけが効果的。
△8四飛型は、△8五飛型と違って①△2四飛と交換を挑む順や、②△3三桂~△2五歩~△2四飛と相手の飛車を圧迫する順が見込まれる。その時、1筋の位は△1六歩▲同歩△1八歩や△1六歩▲同歩△1七歩という筋を狙って威力を発揮する。
畠山鎮vs山崎隆之戦では、図から△8八角成▲同銀△3三桂とした。
上記②の狙いだ。
そして▲3五歩に△2五歩と飛車を追って早くも後手が面白い局面。
例えば▲5六飛と玉頭を狙う手には、一旦△2四飛と▲7五角を避け、▲2七歩には△1六歩▲同歩△1八歩▲同香△4五角で、次の△2四歩を狙って優勢。
本譜は▲2八飛ですが、△2四飛▲2七歩の後、今度は△1六歩▲同歩△1七歩という手筋があった。
もし△1六歩▲同歩△1八歩なら▲同飛△2六歩▲同歩△同飛に、おとなしく▲2七歩と受けるのでなく、▲2八飛が強手で難しい。
この場合は△1七歩で後手有利。



開始日時:2014/01/16 10:00:00
棋戦:順位戦
戦型:横歩取り
先手:畠山鎮
後手:山崎隆之
場所:関西将棋会館
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲3六飛 △8四飛
▲2六飛 △2二銀 ▲8七歩 △5二玉 ▲4八銀 △2三銀
▲3八金 △1四歩 ▲5八玉 △1五歩 ▲3六歩 △8八角成
▲同 銀 △3三桂 ▲3五歩 △2五歩 ▲2八飛 △2四飛
▲2七歩 △1六歩 ▲同 歩 △1七歩 ▲同 香 △1九角
▲1八飛 △6四角成 ▲3七銀 △5四馬 ▲2八飛 △7六馬
▲1五歩 △5四馬 ▲8三角 △7四歩 ▲同角成 △1八歩
▲1四歩 △同 香 ▲1五歩 △同 香 ▲同 香 △1九歩成
▲1三香成 △1七歩 ▲同 桂 △1六歩 ▲1八歩 △1七歩成
▲同 歩 △2六歩 ▲同 銀 △3六桂 ▲1五銀 △4四飛
▲2三成香 △同 金 ▲5六馬 △2八桂成 ▲同 金 △1八と
▲3八金 △3六香 ▲4八金 △2八飛 ▲4六香 △4五桂
まで84手で後手の勝ち


変化:40手
△1八歩 ▲同 飛 △2六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲2八飛
△同飛成 ▲同 金 △2七歩 ▲3八金 △5五角 ▲2四歩
△1二銀 ▲4六角 △同 角 ▲同 歩 △2五角 ▲4七角
△2八歩成 ▲同 金 △4七角成 ▲同 銀 △3九飛 ▲7九金
△7二銀 ▲3四歩 △同飛成 ▲3八金 △3六歩 ▲6八玉
△7四歩 ▲7八玉 △2四龍 ▲2六歩 △2八歩 ▲同 金
△2六龍 ▲2七歩 △2四龍 ▲3八金 △7五歩 ▲3四歩
△同 龍 ▲5六角 △3五龍 ▲3四歩 △2五桂 ▲3三歩成
△同 金 ▲3一飛


変化:45手
▲2七歩 △7六飛 ▲7七銀 △1六飛 ▲同 飛 △同 香
▲3四歩 △同 銀 ▲1二飛 △2三銀 ▲1六飛成 △6二玉
▲1四歩 △3七歩 ▲同 銀 △7二銀 ▲1三歩成 △3四銀
▲4八銀 △7一玉 ▲2六龍 △2五歩 ▲7六龍 △3七歩
▲同 銀 △1八歩 ▲同 香 △1九飛 ▲2八金 △4五桂


変化:48手
△7五飛 ▲3七金 △3五飛 ▲8三角 △1七歩 ▲2八飛
△8八歩 ▲同 金 △2五桂 ▲2六金 △3九角 ▲3五金
△2八角成 ▲2五金 △3八馬 ▲2一飛 △5一飛 ▲6一角成
△同 飛 ▲同飛成 △同 玉 ▲4一飛 △5一飛 ▲同飛成
△同 玉 ▲3九金 △同 馬 ▲同 銀 △7九飛


変化:35手
▲5六飛 △1六歩 ▲同 歩


変化:36手
△2四飛 ▲2七歩 △1六歩 ▲同 歩


佐藤慎一vs長岡裕也

図の局面は、▲1六歩・△1四歩型ですが、やはり1筋からの攻めがpoint。
図から△8八角成▲同銀△3三桂とし、▲7五歩に△1五歩の端攻めが炸裂。
狙いは△2四飛の交換。

図からの指し手
▲同 飛 △同 銀 ▲2一飛 △1九飛
▲2四飛成 △1八飛成 ▲2八金

ここで△2二香が正着で、定跡となっている。


開始日時:2013/07/23 10:00:00
棋戦:順位戦
戦型:横歩取り
先手:佐藤慎一
後手:長岡裕也
場所:東京・将棋会館
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲3六飛 △8四飛
▲2六飛 △2二銀 ▲8七歩 △5二玉 ▲5八玉 △6二銀
▲3六歩 △5一金 ▲3八銀 △9四歩 ▲3七銀 △2三銀
▲3八金 △1四歩 ▲1六歩 △9五歩 ▲3五歩 △8八角成
▲同 銀 △3三桂 ▲7五歩 △1五歩 ▲同 歩 △1八歩
▲同 香 △2四飛 ▲同 飛 △同 銀 ▲2一飛 △1九飛
▲2四飛成 △1八飛成 ▲2八金 △1九龍 ▲3四銀 △4五桂
▲4八銀 △1五香 ▲2一龍 △3一歩 ▲4五銀 △1八香成
▲3八金 △2九成香 ▲5九銀 △2三歩 ▲6八玉 △2八成香
▲3七角 △1七角 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 龍 △2三歩
▲2八龍 △同角成 ▲同 角 △同 龍 ▲同 金 △5五角
▲8六飛 △2八角成 ▲4六香 △3八飛 ▲5八銀 △4一玉
▲3四銀 △3七馬 ▲4九角 △4八飛成 ▲4三銀成 △6五桂
▲3三桂 △同 金 ▲同成銀 △4二香 ▲6六歩 △4七馬
▲4二香成 △同 金 ▲8一飛成 △7一香 ▲4二成銀 △同 玉
▲4三歩 △3二玉 ▲6九桂 △5九銀 ▲6七玉 △6四桂
まで108手で後手の勝ち


変化:52手
△2二香 ▲同 龍 △同 金 ▲1八金 △3八飛 ▲4八飛
△3九飛成 ▲4九銀 △2五桂 ▲2八銀 △2九龍 ▲1九金
△同 龍 ▲同 銀 △3七桂成 ▲2八飛 △同成桂 ▲同 銀
△1五香 ▲2六飛 △3二金 ▲3四角 △3三歩 ▲2一飛成
△4二金寄 ▲4四桂 △6一玉



▲6八玉型のメリット


▲6八玉型に対して△2三銀~△2四飛ぶつけなどの「飛車先逆襲型」は効果が薄く、△7四歩~△7五歩と先手玉の近くで仕掛ける方が良いと思う。


△7四歩に①▲3六歩は△7五歩と仕掛けられて危険。②▲5九金は△8八角成▲同銀△4四角とされ、▲3六飛は△3三桂で2八が手薄なので困る。また▲2八飛は△2七歩▲同飛△2六歩▲2八飛△8八角成▲同金△2七銀で不利。そこで③▲1六歩と▲1七桂の余地を作り、△7三桂に▲5九金と固めるのが有力だが、後手も▲1六歩に△7五歩▲同歩△8五飛と動くのが最新の手で、難解な形勢だ。


しかし、「飛車先逆襲型」も1筋と絡めるなど工夫の余地はある。△1五歩型なら成功するかもしれない。


また、「△7四歩型」はriskも伴うため、否定的な意見もある。

【横歩取り】勇気流対策


初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲6八玉


基本図

図で角交換から△2七角が気になるが、▲3八銀△4五角成▲2四飛△2二歩(△2二銀)
▲7五角△7六飛▲5三角成△5六歩▲同歩△同飛▲2六馬といった変化が考えられる。
▲7五角のところ▲7七桂としたのが山崎八段。
また、△3三角の代わりに△9四歩とした局面から、同様に角交換して△2七角としたのが名人戦第一局。
藤井八冠は、△5六歩と薄くなるのを嫌い、△2七角に▲4八金と変化。
以下馬交換となった。

△5二玉~△7四歩の積極策

▲5八玉とする青野流と違い△5二玉▲3六歩に△7四歩が成立する。
▲3七桂に△8八飛成▲同銀△5五角という狙いだ。
▲3七桂は危険だと▲3八銀とすると、△2七歩が飛んでくる。
そんな理由からか最近は青野流の方が良く指されていた。
しかし、その後千葉七段が▲2四歩の工夫を見せ、勇気流もまだまだ指されると思う。




△7六飛の横歩取り

畠山 鎮 七段 vs 菅井 竜也 王位(NHK杯)

勇気流の対策としては△7六飛と取る手が有力。
▲6八玉型なので▲8四飛の転回に△9五角の王手飛車がある。
△7六飛~△8六飛として△7六桂を狙えば、先手の桂馬を使った攻めを牽制している。


基本図からの指し手
△7六飛 ▲3六歩 △8六飛 ▲3七桂 △2二歩



図の△2二歩は、▲2二歩を防いだ手。△8二飛もある。
代わりに△4二玉などとすれば、▲4五桂△8八角成▲同銀△3三歩▲2四飛△2三歩▲5四飛と気持ちよい順がある。


図の局面から▲3八銀としたが、将来の△3七歩が厳しいのでどうか?
銀を上がるなら▲4八銀と次の▲5九金と好形をめざすのもあるかも。
また、▲3八銀を省略して本譜のように▲9六歩△4一玉▲7七桂△4二銀と進行すれば、いきなり▲4五桂として△5五角に▲6五桂と二枚桂で攻める順も成立する。
なお、早く▲4五桂と仕掛けるのは△4二角で大丈夫。
以下▲8七歩△8五飛▲4六歩△3三歩▲2四飛△8六歩▲同歩△同飛▲7六飛が手筋だが、△同飛▲5五角△8六飛が変化の一例で難解。△4二銀を待ってから仕掛けるのが良いか。


実戦は、その後、△4四角と▲4五桂の筋を先受けしたのが巧手で、菅井王位の横歩取りsenseの良さが窺われた。



私の実戦より

実戦で▲3八銀省略形と対戦する機会があった。


初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲6八玉 △4二銀
▲3六歩 △4一玉 ▲3七桂 △7六飛 ▲7七桂 △8六飛 
▲9六歩 


すぐ△7六飛は▲8四飛の変化を与えるので先に△4二銀と横歩を取るタイミングを遅らせている。
▲8四飛の変化については後述する。
青野流なら△4二銀に対して▲3六飛と軌道変更が利くのだが、勇気流の場合はどうか?
△8五飛▲2六飛△2五歩▲2八飛△8六歩▲3三角成△同桂▲8八銀などが気になる変化だ。


▲7七桂に△8六飛とすれば▲9六歩は省けない。


ここで△6二銀は▲4五桂△4四角▲6五桂が調子よいので△4四角を検討。      
▲4五桂なら△3三桂で面白そうだが▲6五桂とされ△6二銀とすれば▲4五桂で先の順に合流する。
また▲4四同飛△同歩▲6五桂といった余分な変化を与える点もつまらない。(△4三金▲2二歩△3三桂▲2一歩成△6四歩で流石に無理筋のようだが・・・)


結論:後手が△7六飛~△8六飛とした場合に、すぐに先手の狙いである二枚の桂跳ねを決行すると反動が大きいので後手は恐れる必要はない。
先手は急がずに▲7六歩打と陣形を再生してから桂跳ねを狙うべきか?
それに対して後手は△4四角が有効で▲4五桂には△3三桂が形。
桂馬を入手すれば△6四桂がやはり厳しい。
以上のように先手に苦労が多い。


△7六飛には▲8四飛

基本図(▲6八玉)からの指し手
△7六飛 ▲8四飛 △8二歩 ▲3三角成 △同 金
▲5八玉 △2六飛 ▲2八歩 △7二金 ▲7七桂 △4二銀
▲3八金 △8三歩 ▲8九飛



畠山vs菅井戦では△7六飛に▲3六歩としたが、前述のように▲8四飛が有力な手段だ。
△8八角成▲同銀(同飛)△9五角には▲7七歩で大丈夫。
△8二歩に▲3三角成が先手の狙い。
△同桂なら▲2四飛で十分。
△2二銀には▲2一角△2三銀▲同飛成△同金▲7二歩△5二金が、沢田 多喜男著『横歩取りは生きている』で紹介された手筋だが、▲3二角成で先手優勢。
そこで△3三同金は仕方ないが、玉が薄い。
現状では右辺が壁だし、△8三歩~△8二銀~△7四歩~△7三銀と矢倉もどきに組んでも先手は7筋に歩が利くので危険。
かといって△3二金と戻すのでは手損だ。


斎藤vs羽生(A級順位戦)では図のように進行した。

図の▲2七歩とすると後々▲2八銀が必要になるが、できれば右銀は▲4八銀と使いたい。
佐々木勇気の好みは、▲2七歩保留で▲7七桂~▲8九飛だが、斎藤慎太郎八段は後に飛車を8六に引けるのを重視した。▲2七歩を決めなければ△8三歩に▲8八飛と中途半端な位置に引くしかない。
一長一短だが、私は▲2七歩を決めない佐々木勇気七段のセンスに感心した。


先手は▲6八銀~▲6六歩~▲6七銀と好形を組めれば勝ちやすい。
詳しくは勇気本を読んでほしい。
永瀬拓矢八段から「勇気氏に本が書けるとは思わなかった。」と揶揄されたが、レイアウトの細部まで工夫があって、センス良く仕上がっている。
オススメの一冊。

斎藤vs羽生は、上図のようにほぼ互角の終盤戦を迎えた。
図から▲2八同金△4六歩▲3八金と進行。
そこで▲9八角成と飛車を取ったが、代わりに△7五歩として▲4四金△7六歩▲5四金△同角とした方が良かったようだ。
当然羽生九段も読んでいたはずだから▲7五飛とか。何か気になる順があったのだろう。





大胆な△2八飛の打ち込み


渡辺二冠に死角なし

稲葉の研究を覆した名手▲3九歩

【横歩取り】△6二玉型

ヒネリ飛車風味の△6二玉


森内俊之 九段vs永瀬拓矢 王座(ABEMAトーナメント)

元々振り飛車党だった永瀬王座にとっては、△6二玉型は違和感は少ないかもしれない。
他に振り飛車・居飛車両方指すオールオールラウンダーの黒田堯之五段も△6二玉型を好む。

端攻め

図からの指し手
△9五歩 ▲同 歩 △9七歩 ▲同 香 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △7六飛 ▲7七金 △3六飛
▲3七銀 △3四飛 ▲4六銀 △9八歩 ▲6六歩 △2四飛
▲2五歩 △8四飛 ▲7八銀 △4四歩 ▲7六金 △3四銀
▲3五歩 △4三銀 ▲8六歩 △4五歩 ▲8五歩 △7四飛
▲7五歩 △4六歩 ▲7四歩 △4七歩成 ▲7三歩成 △同 銀
▲8四歩 △8二歩 ▲2四歩 △2二歩 ▲2七飛 △5五角
▲2三歩成 △同 歩 ▲7四歩 △同 銀 ▲7五歩 △8五銀打
▲6七銀 △7六銀 ▲同 銀 △8六金 ▲7七銀 △7六金
▲同 銀 △8五銀打 ▲6七銀 △7五銀 ▲6五金 △1九角成
▲7五金 △8六銀 ▲6五歩 △7五銀 ▲1一角成 △4六馬
▲5八銀打 △3六金 ▲7九香 △7一香 ▲8三歩成 △2七金
▲8二と △5八と ▲同 金 △8二馬 ▲4四歩 △5二銀
▲2一馬 △8八飛 ▲7八銀 △7七歩 ▲同 玉 △5五馬
▲6八玉 △7七歩 ▲同 桂 △7六歩 ▲5九玉 △7七歩成
▲同 銀 △4七桂
まで122手で後手の勝ち


2筋逆襲

羽生九段vs永瀬叡王(第60期王位戦挑戦者決定リーグ白組プレーオフ) 
序盤、羽生九段が飛車を引かず▲5八玉と青野流を見せたが、永瀬叡王の△8二飛を見て▲3六飛と通常形に戻した。

後に△8四飛と手損するようでは永瀬叡王が失敗したようだが、ソフトの形勢判断は、わずかに永瀬にプラス。横歩取り△6二玉型の優秀性に驚いた。
下図の局面を迎えると、何やらデジャヴが・・・

そう、羽生善治が佐藤天彦名人(当時)に敗れた2018年度名人戦第5局の将棋によく似ているのだ。

名人戦では、図の▲3五歩が悪く、桂頭のキズが残り苦戦した。
調べてみると、名人戦では▲4六角から▲2四歩としたのに対し、今度は▲4六角から▲2三歩と一路上に歩を垂らしている。名人戦でもこれが最善手だったようだ。
そして△4四歩の角いじめに対しては、落ち着いて▲5六歩と対応。
当然のことだが、名人戦の轍は決して踏まない。


図から△2三飛▲2四歩△2一飛▲2六飛と進行。
そこから永瀬叡王は、△4五桂としたが、らしからぬ短気。
△2五歩▲2九飛△3五歩▲同歩△4三銀と桂頭にキズをつければ、▲3四歩△同銀▲3六歩△3五歩▲同歩△4三銀と千日手が予想された。


この将棋に勝利した羽生九段は、通算1434勝となって大山15世名人の記録を抜き、単独トップに。
おめでとうございます。



駒を引かない渡辺将棋

対久保九段戦

図の△7四歩に▲同銀と取ったのが男前の一手。




対郷田九段戦

第90期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦の将棋。
渡辺二冠は、ここでも銀を引かずに▲2六桂とした。
最善手かどうかはともかく、勢いのある手だ。


対稲葉八段戦

打開が難しい角換わり腰掛け銀でも、ひたすら玉を囲った後、明るく仕掛けた。
稲葉八段は△4一飛と受けたが、▲2四歩~▲1五歩~▲7五歩から端香を捨て、▲7四歩と細い攻めを繋げた。
「堅い、攻めてる、切れない」
理想的な勝ち方だ。



対永瀬叡王戦

上記の局面から逆を持ったが、人が変われば指し方も変わる。
一方的に受けに回るのではなく、△6五歩~△8六歩と嫌味を付けた後、△4六歩と手を渡す呼吸が素晴らしい。
豊島三冠と並んで棋界のトップ棋士であることは間違いない。
何せ新しい年になってから二人ともお互い以外の棋士には負けていない。
トッププロ同士の棋聖戦が楽しみだ。