将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【石田流】定跡を変えた西田新手

加古川青流戦第二局(西田拓也 四段 vs井出隼平 四段) 


初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲7五歩 △4二玉 ▲6六歩 △6二銀 ▲7八飛 △6四歩
▲4八玉 △6三銀 ▲3八銀 △3二銀 ▲3九玉 △3一玉 ▲2八玉 △8四歩
▲6八銀 △5二金右 ▲6七銀 △1四歩 ▲1六歩 △8五歩 ▲7六飛 △3三角
▲7七角 △2二玉 ▲5六銀 △2四歩 ▲5八金左 △5四歩


図から西田流は▲4五銀。
▲4五銀の代わりに▲6五歩という仕掛けも試されたが、△同歩▲同銀△6二飛の他に△8四飛という受けが発見されて先手が苦しいと認識された。
△8四飛▲7四歩△同歩▲4五銀△6五歩▲3三角成(▲3四銀△7七角成▲同桂△3三歩)△同銀▲3六飛
△7八角▲5六角△同角成▲同歩△2三玉▲5五歩△同歩▲6七角△7五歩!▲3四銀△同銀▲同飛△同飛▲3五銀△3三歩が変化の一例。


また▲9六歩△9四歩▲9八香と手待ちする順も試みられたが、△8四飛とされ、▲4五銀△2三銀▲6五歩△同歩▲7四歩△同歩▲3六飛△3五歩▲同飛△7七角成▲同桂△3三歩で後手が完封。


図からの指し手
▲4五銀  △2三銀  ▲6五歩  △同 歩  ▲7四歩  △同 歩  
▲3三角成 △同 桂  ▲5四銀  △同 銀  ▲7四飛



▲4五銀とすれば図までほぼ必然の手順。
▲4五銀以下の変化で▲3三角成を入れていないと、△6六歩!!▲7一飛成△8三飛▲4一竜△5一歩!!で後手有利。


図の局面から△7三歩(本譜)と△3二銀という二択が難しい。
△3二銀以下の変化は、▲5四飛△4五角▲7四飛△7三歩▲7九飛△7八銀▲4六歩△7九銀成▲4五歩△8九成銀と△4六桂を狙うことになるが、成銀が重いのでプロでは後手が避けている変化だ。手順中、△7八銀に▲5九飛と逃げるのは、△6六歩▲6八歩△6七歩成▲同歩△同銀成▲5六銀△同角▲同歩△6六歩▲6八歩△5七歩!!という巧妙な攻めがあって後手有利。
それで△7三歩▲5四飛△4五角までは久保vs谷川の実戦例があり、▲7一角△7二飛▲5三角成と攻めたものの苦しく久保が敗れた。


▲6四歩に△同銀では△7四銀▲8二飛成△6一飛が有力な変化。
△6四飛の一手が回ればいい勝負だ。


図からの指し手
△7三歩  ▲5四飛
△4五角  ▲6四飛
△6三銀  ▲7一銀・・・この手が西田四段の研究手 
△7二飛  ▲8四飛
△7一飛  ▲6四歩
△同 銀  ▲同 飛
△8九角成 ▲6二銀
△7二飛  ▲6一銀不成
△4五馬  ▲7二銀不成
△同 馬  ▲6一角
△4五馬  ▲5二角成
△同 金  ▲6一飛成
△5一歩  ▲8二飛
△3二銀打 ▲4六歩
△同 馬  ▲4七金
△3五馬  ▲6三歩
△5三角  ▲5四金
△1五歩  ▲5三金
△同 馬  ▲6二歩成 
△同 金  ▲同飛成
△同 馬  ▲同 龍
△5二金  ▲6四角
△2一飛  ▲8二龍
△1六歩  ▲8一龍
△1七歩成 ▲同 香
△同香成  ▲同 玉
△3五桂  ▲2八玉
△1二香  ▲4六金
△1八歩  ▲5六香
△1九歩成 ▲5二香成
△2九と  ▲同 玉
△6三銀  ▲3一角打
△同 飛  ▲同角成
△同 玉  ▲5一龍
△2二玉  ▲4二成香
まで111手で先手の勝ち

【ゴキゲン中飛車】超急戦外しの△6二玉

近藤正和著『ゴキゲン中飛車で行こう』を読んだ。
草創期のアバウトな駒組から、現在の菅井新手△2四歩まで触れた、いわばゴキゲン中飛車の歴史書みたいな本。
押さえておくべき変化をいくつかupしてみる。

図から▲4八銀としたが、△3三角▲同角成△同桂▲2四歩と激しい変化に。
△同歩に▲2三角とするのは△3二金▲3四角成△5五角で後手有利。
そこで▲2四同飛としますが、△3五角▲2三飛成△2二飛▲2四歩と進行した。
飛車交換すると△2八飛と打てるのが後手の主張。


遡って、図で▲6八玉と右銀を据え置く指し方もあるが、△5五歩とされると2筋の交換は△5六歩の反撃があって危険。
▲6八玉△5五歩▲2四歩△同 歩▲同 飛△5六歩▲6六歩△5七歩成▲同 金△5六歩▲6七金△1四歩▲2八飛△1三角▲2四歩△2二飛(△2三歩)というのが変化の一例で、後手が指せる。

【相振り飛車】相三間飛車

定跡の▲7六飛に△3六歩の仕掛け

打ちにくい▲2六桂

初手からの指し手
▲7六歩  △3四歩  ▲7五歩  △3五歩  ▲7八飛  △3二飛
▲5八金左 △5二金左 ▲4八玉  △6二玉  ▲7六飛  △3六歩(途中図)
▲同 歩  △8八角成 ▲同 銀  △5五角  ▲7七角  △1九角成
▲1一角成 △2九馬  ▲2一馬  △1九馬  


途中図

▲7六飛の定跡に△3六歩という変化がアマチュアには気になる。
「菅井ノート(先手編)」では、先手良しとなっているが、これは、菅井プロくらいの受けの力があっての話。

図のように△1九馬とされると、先手も容易でない。
▲2八桂などと馬道を止めようとするのは、△2五桂が厳しい。
「菅井ノート(先手編)」を信じて▲3五香だが・・・


図からの指し手
▲3五香 △3四香 ▲3二馬 △同 銀 ▲3四香 △3七角
▲3八玉 △5五角成 ▲4八金上 △3七桂

桂馬は恐ろしい駒で、一見広そうな先手玉にあっという間に詰めろが・・・
この変化は、△8八馬と駒の補充も利くので、後手が優勢。
ただし、これはヤラセ手順。


図からの指し手
▲3五香 △3四香 ▲同 香 △同 飛 ▲3五香? △4五桂 ▲3八金(▲3八銀は△1四飛) △5四飛(次に△3七香)   


これも先手が歓迎する変化ではない。
どうやら2度目の▲3五香が働いていないのが痛く、この手では▲4六桂の方が本筋か?
後に▲5四桂の筋を狙えるし、角のラインを防いでいる。もちろん△3六飛なら飛車を素抜く。(笑)
しかし、以下△3二銀▲3一馬△1四飛▲3二馬△1七飛成▲5九玉となると、後手の△3二銀の好手により先手馬の働きが悪くなり、これも先手自信なし。

非常に感触が悪いが、反対方向に▲2六桂と打つ手をTrial&errorの末、発見した。
しかし、О先生に全否定され、自信を失っていたが・・・
黒沢怜生著「相振り飛車の重要テーマ14」p.20~に▲2六桂が本手順として解説されていた。
以下、△3二飛なら▲3五香△3三桂▲同香成△同 飛▲2五桂△3二飛▲1三桂成△3三飛▲2二成桂△同 銀▲同 馬△3一香。また△6四飛なら▲3一馬△3七桂▲3八金△2九桂成▲2八銀打△1八馬▲1三馬△2四歩▲2三馬が、想定手順。


今度は逆に「△1四飛を許してはダメというのは分かるけれど、果たして本当にこんな手で先手が良くなるのか?」と迷う。
△2六桂に対しては、一本△4五桂と打つか、△3二飛と逃げるかのどちらかだ。
先手陣の痛み具合をみると、後手にも手段がありそうだ。


1.△4五桂の変化
詰めろなので受けなければいけないが、ほぼ▲3八金か▲3八銀か▲5九玉の三択。
このうち▲5九玉は、△3七馬の王手から△3六飛が気分よく、▲同飛△同馬▲3一馬に
△2七馬と桂取りを見せながら金に照準を当て、後手が指せる。
▲3八銀と▲3八金は、△3二飛▲3四香△3七香となって2の変化に合流する。


2.△3二飛の変化
▲3五香がひとめだが、△同飛▲同歩△4二銀▲3四桂△5一銀が気になるので、▲3四香の方が優る。これには後手も攻め合うしかないが、△4五桂 ▲3八金 △3七香 ▲3二香成 △3八香成 ▲同 銀 △3二銀 ▲同 馬 △3七香 ▲4九銀 △3九香成 ▲3八香 △同成香 ▲同 銀 △3七香 ▲4九銀となると千日手。
▲5九玉の余地を与えないだけ1.の変化が優る。


このように、ここでも△4五桂と利かせるのが急所で、▲3八銀なら△3二飛(△5四飛は、▲3一馬△3七香▲4六銀△3八香成▲同金)が意表の一着。
▲3五香?には△同飛が狙いの一手で▲同歩に△3七香▲5九玉△5四香が変化の一例で後手十分。


▲3八銀構想と△2八角問題

誘いの隙か真の隙か?

相三間飛車から▲3八銀と角打ちを誘う順が今回の研究テーマ。
△2八角を打ってくださいという手だが、大丈夫か?

第50回奨励会三段リーグ1回戦、三宅潤三段vs西田拓也三段戦から取材。


初手からの指し手
▲7六歩 △3二飛 ▲7五歩 △5二金左 ▲7八飛 △3四歩
▲5八金左 △3五歩 ▲4八玉 △6二玉 ▲3八銀 △8八角成
▲同 銀 △2八角 ▲7四歩 △同 歩 ▲5五角 △3六歩
▲1一角成 △3七歩成 ▲同 銀 △1九角成 ▲2一馬。


手順中▲7四歩△同歩の交換は微妙で、この一歩が大きな意味を持つ。

図の局面から後手の西田三段は、単に△2九馬と取ったが、後の▲3六香を防ぎながら拠点を築く意味で、△3六歩と先着する順が有力。
▲4六銀△2九馬の後、それでも▲3五香と打ちたくなるが、△3七歩成の成り捨てがあり、▲同玉△3四歩と玉が露出するようでは、さすがに危険。
以下△3四香▲3六歩(▲同香と取ってくれれば△同飛▲3五歩△1四飛と銀を囮に飛車を好位置に転換するのが後手の狙い。以下▲3一馬△1七飛成▲4八玉△3八歩▲6六桂△3九歩成▲7四桂△7二玉▲3九金△同馬▲同玉△3六香▲3七香△1九竜などが変化の一例だが、後手の飛車成が厳しく、銀を取るくらいでは割が合わない。)△3五香▲同 銀△3三香となると、後手の攻めがわかりやすい。


この△3六歩を与えるのが、先の▲7四歩の突き捨ての罪。


▲5五角の変化

図から単に▲5五角と打つのが正解だが、△1二飛▲7四歩△8二銀と辛抱されても攻めの継続が難しい。以下▲7三歩成△同銀▲同角成△同桂▲7四歩△7二歩▲7三歩成△同歩▲7七桂※△1九角成▲6五桂△7二香▲8二銀△5一玉が変化の一例で後手良し。
※黒沢怜生著「相振り飛車の最重要テーマ14」p.31~
また、三宅潤三段vs西田拓也三段戦と同様に△3六歩も先手にとって怖い変化。
▲1一角成△3七歩成▲同銀△1九角成▲2一馬△2九馬と進んで難しい形勢。以下▲3二馬△同銀▲7四歩△同歩▲6六桂と進んだ女流棋士の実戦があったが、先手の攻めは案外大したことがなく、▲7四桂と跳ねても△7二玉で、飛車が直通して危険なようでも継続手がない。
手抜きで後手に△3三香▲3六歩△4五桂▲4六銀△1五角▲2六香△1八馬などと反撃され、▲3八金には△3六香と香車で攻められて、先手歩切れなので厳しい。
▲3二馬と飛車を取った手では、先に▲3六香△3五歩を利かしてから▲3二馬と取る順が前掲黒沢本に書かれている。しかし、以下△同銀▲3五香△4一銀なら後手を歩切れにして先手が得だが、馬を取らずに△3六歩と踏み込まれ▲3一馬△3七歩成▲同玉と小駒で攻められると先手が勝てない。


このように△2八角問題が難問なので、▲3八銀構想は塩漬け。


△7二銀の変化

なお、△2八角が危険なら、打たずに同様に△7二銀とするのも一つの考え方。矢倉規広 vs. 田村康介(2009-12-01 銀河戦)など実戦例は少ない。
▲8二角△2八角の攻め合う順は、先着している先手に利があると敬遠されている。

古都

京都三大祭りの一つに数えられる祇園祭は、明治時代までは「祇園御霊会(ごりょうえ)」と呼ばれ、平安時代から伝わる、怨霊を鎮める儀式でした。


京都は、三方向に山を抱えています。東山、北山、西山です。
それらの山が、京都盆地に住む人々に、常に東西南北の方向を教えてくれます。
なお、今から1225年ほど前の794年に造られた平安京は、今よりずっと西の方角にありました。
平安京を設計するにあたり、弟である早良親王の怨霊を恐れた桓武天皇は、鬼門の方角に比叡山を戴き、帝(ミカド)がお住まいになられる内裏の北東部には鬼門除けの「欠け」を作るなど細心の注意を払いました。
現在の京都市のセンターストリートである「烏丸通り」は、平安京では東の果てにあった「烏丸小路」という幅4丈(約12メートル)くらいの、当時としては小さな通りだったのです。
そして「烏丸通り」よりずっと西の方に「千本通り」という南北路がありますが、これがかつての平安京のメインストリートである「朱雀大路」に相当します。道幅はなんと28丈(約84メートル)はあったと推定されています。
その「朱雀大路」の南端に設けられていたのが、芥川龍之介の小説で有名な「羅生門」というゲートです。正しくは「羅城門(ラジョウモン・ラセイモン)」と書くようで、昔、中国や朝鮮では都を囲う城壁を「羅城」と呼んでいたことに拠るようです。現在、そこに「羅城門」というバス停があります。
地図で見ると、「朱雀大路」の左半分にあるのが右京で、右半分にあるのが左京となっています。右と左の位置関係が逆転しているので不思議に思いますが、都の最北端中央に置かれている内裏から帝が南の方を見た時の左右によってこのように名付けられているのです。ちょうど、お雛様の「右近の橘、左近の桜」というのが、帝から見た位置をいうのと同じですね。
桓武天皇の子の嵯峨天皇の時代には、平安京を唐の都になぞらえ、左京を「洛陽城」、右京を「長安城」と呼んでいました。
そして平安京の碁盤の目の一番北の辺は「北京極」と呼ばれ、そこに「玄武」という頭が蛇で胴体が亀の生き物を守り神として置きました。対する南の辺を「南京極」と呼び、「朱雀」なる鳥の守り神を置き、さらに東の辺を「東京極」と呼んで「青龍」を、西の辺を「西京極」と呼んで「白虎」を置きました。いわゆる「四神(四聖獣)」ですね。
これらの守り神は、平城上皇の復位及び平城京復都を図った「薬子の変(平城太上天皇の変)」の教訓による備えで、裏には嵯峨天皇が庇護した空海の存在があったかもしれません。
古都における怨霊伝説の元祖というべき菅原道真が亡くなったのが10世紀初頭、そして紫式部が活躍したのは10世紀末から11世紀初めにかけてでしたが、その頃には「長安城」と呼ばれた右京の方は、すっかりさびれました。最大の原因は、保津峡(ほづきょう)を通って嵐山から南へと流れていく桂川の氾濫でした。
そのため右京に住んでいた人々は次々に住まいを棄て、東の左京すなわち「洛陽」のエリアに移りました。西半分の「長安地域」は、「人家はまばらで幽境のごとし」と語られるまでに荒廃し、平安京の中央大通りであった「朱雀大路」は、いつのまにか洛陽の西の辺境という位置づけまでに落ちぶれました。「朱雀大路」のメインゲートとなっていた「羅城門」も、芥川が『羅生門』に描いたような、死人が無残に打ち棄てられ、その死体から物を盗る鬼畜が横行するようなありさまでした。
結果、平安京の東半分にあたる洛陽エリアだけが都の体裁を保ったため、そこを中心にして「洛中」「洛外」の概念が生まれ、洛外は方角によって「洛東」「洛西」「洛北」「洛南」と呼び分けられました。
この段階で、京の都の規模は、桓武天皇の設計のおよそ半分に縮小してしまいました。


さらに全京都を戦火の炎で焼き尽くした応仁の乱(1467~1477)によって、京都は南北に隔てられ、北を「上京」南を「下京」と呼ぶようになりました。
京都の人は、今でも「先の戦争」というと応仁の乱のことを指します。
その後、法華宗徒と延暦寺が争った天文法華の乱(1536年)が起こり、これにより上京の三分の一が焼けてしまいました。焼け出された民衆は、寺が手を出せない内裏に逃げ込み、内裏の人達もそれを受け入れたといいます。


そうした京都が立ち直ったのは、群雄割拠の戦国時代を勝ち抜いてきた織田信長の次の覇者、豊臣秀吉の時代からでした。
秀吉の寄進によって、織田信長が焼き払った比叡山、本願寺はじめ多くの寺社がかつての繁栄を取り戻すようになりました。
人たらしの天才である豊臣秀吉は、こうやって織田信長と敵対していた宗教勢力を味方につけました。
しかし、その後覇者が交代し、徳川幕府の時代になると、新興都市江戸が繁栄する一方で、京都は長い停滞の時代を迎えます。


時は移り、幕末、長州藩士による蛤御門の変(禁門の変)によって京都は大きなダメージを受けました。長州藩よりも一橋慶喜の命により会津藩が行った焼き討ちの方が損害が大きかったといわれます。
第一次長州征伐の後、それまで幕府を中心とする雄藩連合体制を目論んでいた薩摩藩の西郷隆盛は、慶喜の真意が幕府による中央集権体制にあることを知り、長州と同盟して倒幕へと大きく舵を取ります。
鳥羽伏見の戦いに敗れ、徳川慶喜が静岡で謹慎すると、多くの旗本が付き従ったため、江戸は空き家だらけになりました。それに目をつけた大久保利通によって、廃墟となった京都を棄て、江戸から名を変えた東京へ遷都します。お金のない新政府には京都を復興する力はありませんでした。
こうして京都は主を失ってしまいました。


その後の京都の復興には、京都府第三知事・北垣国道による琵琶湖疏水が大きな役割を果たしました。琵琶湖の湖水を西の京都に流し、疏水の水を使って新しい工場を興し、疏水を渡る舟で物資の行き来を盛んにしようとする事業でした。


第二次世界大戦では、京都の被害は比較的軽微でした。アメリカ軍が京都の文化財に配慮したわけではありません。原子爆弾投下の候補地だったので、その効果を正しく計測するための配慮でした。
しかし、陸軍長官のヘンリー・スティムソンが、「京都を原子爆弾で破壊すると日本人の敵愾心を煽り、後の占領統治に支障が生じる」と判断して投下を取り止めました。スティムソンは京都旅行の経験があり、京都がどういう場所か知っていました。


歴史都市京都を破壊したのは、ほかならぬ京都人でした。
終戦前の昭和20年3月に「戦時家屋強制疎開」が行われ、堀川通、御池通、五条通などの町家は全て取り壊されました。なぜか取り壊しを免れたのは、祇園祭の山・鉾を守っている区域でした。何か忖度があったのかもしれません。


かつての京都では、祇園祭の山・鉾よりも高い建物はありませんでした。しかし、戦後の高度成長期には、経済至上主義の流れに従って、次々とダークトーンの二階建ての町家が安っぽい光を放つビルやオフィスに取って代わりました。
現在の山車は、背の高いビル街の中、熱いアスファルトの上を進んで行きます。
祇園祭が何か滑稽な催しに墜ちてしまったような違和感を感じるのは私だけでしょうか。

【詰将棋】手筋と詰め上がり形を分類してみる

捨て駒のロジック

詰将棋では駒を捨てることが多い。
捨て駒によってどのような効果が期待できるのか?
①守備駒が移動する→弱体化・無力化(打歩打開の場合は守備駒の強化)
         →玉の退路封鎖
         →質駒になる(質駒づくり)
②玉が移動する  →玉を危険地帯へおびき寄せる
③邪魔駒消去(発展すると「駒の打ち替え」という高級手筋になる)   

以上の5つが捨て駒の効果。.
手元にある「中田章道短編詰将棋代表作」で実例を見てみよう。

第5番

初手は▲1三銀。

△同玉△1五玉とも簡単に詰むので△同香と取るしかないが、▲2三飛と打って1三の香が質駒になっているため△1五玉とできない。

▲1三銀は「質駒づくり」の捨て駒だった。

以下△3四玉だが、▲2五飛成と「邪魔駒消去」で詰む。


第13番 

これも▲2五銀△同とと質駒にしてから▲2三飛の捨て駒。

△同歩と退路を封鎖してから▲3四竜△同玉▲3五銀とピンメイト(角の威力で玉がピン止めされている。「透かし詰め」)で詰む。


第30番 

「守備駒の無力化」の問題

▲2四香△1二玉の後、▲5二竜が「焦点の捨て駒」。

複数の守備駒にアタックしてどちらかを無力化する手筋。

△同竜に▲2三金△2一玉▲4三馬とこれも「守備駒の無力化」。

取っても合駒しても竜は無力化する。


実戦の捨て駒を見てみよう。

図は、当時話題になった藤井聡太の捨て駒(対松尾歩「竜王戦」)だが、目的は、退路封鎖。 

図は、最近の藤井聡太の妙手(対村田顕弘戦)だが、目的は玉の退路を開けた詰めろ逃れ。

取ると守備駒が無力化するため△5九金から詰む。 

図は、棋聖戦第二局の佐々木大地の妙手。
これも取ると玉の退路が開き▲7八銀と飛車を取って勝ち。

取らずに△1二玉でも▲7八銀。角の働きで自玉の詰みが消えている。

このように実戦では受けの捨て駒も多い。


解けない時のヒント

  • 手順前後に注意
  • 金は止(トド)めに使え・・・角・銀・桂・香などの止めが盲点になる。
  • 玉の逃げ場に捨て駒(退路封鎖)・・・逆モーションの攻めが有効
  • 大駒のリーチを生かせ
  • 不成に好手あり
  • 両王手(開き王手)で決めろ
  • 質駒に目をつけろ
  • 桂は拠点作りに
  • 金銀の枚数を意識する
  • 飛車のサンドイッチ
  • 邪魔駒消去
  • 盲点となる、俗手・ソッポ行き
  • 守備駒を呼びよせ
  • 守備駒を無力化する焦点の捨て駒
  • 移動合い・中合い・捨て合いの受けを見落とすな


感覚的に捉えていた詰将棋の解き方も、言語化することによって理解が深まる。
実際の詰将棋作家は、チェスのプロブレムの概念も取り入れて、様々な概念を言語化している。
曰く「ピンメイト」さらに「セルフピン」
曰く「スイッチバック」さらに「ルントラウフ」
曰く「バッテリー」さらに「ロイヤルバッテリー」などと。


私の理解はまだまだ浅いが、少しでも実戦に役立てたいと思う。


大山康晴の短編詰将棋1. 第39問

2四の退路を封鎖しなければならない。
質駒に目をつけ、香でトドメ 


大山康晴の短編詰将棋1. 第40問 

銀でトドメ
1二のマスへの駒捨て(退路封鎖)は、銀でトドメの頻出手筋。 

大山康晴の短編詰将棋1.  

退路封鎖(玉の逃げ場に捨て駒)という作品は数多いが、この作品は意表を衝いていて面白い。
『質駒に目をつけろ』

大山康晴の短編詰将棋1. 第44問

『質駒に目をつけろ』とはどういうことか?
詰将棋らしく指すなら▲2二飛車成~▲3四桂と、『桂は拠点作りに』を実践したいが、上に逃げられる。
実は、見えないところに質駒があって『大駒のリーチを生かせ』で詰む。
大山詰将棋は、実戦の匂いがあって好きだ。


大山康晴「実戦に役立つ詰将棋」成美堂出版 第20問 

3三の退路を防ぐには初手の捨て駒は絶対。
『金銀の枚数を意識する』とはどういうことか?
図のように最後は頭金の連続で詰む詰将棋では、何枚の金があれば詰むか意識していれば、飛車のタダ捨てに思い至る。
基本中の基本だが、初心者には盲点になるようなので、あえて記した。

【絶 対 見 る べ き】詰将棋が解けるようになる方法【part1】


酒井克彦作23手詰 

捨て合い・中合いが登場する傑作。
伏線となる初手が11手目に結実する。
まさかあの駒が邪魔駒だったとは!


解答
▲3八銀 △1八玉 ▲2九銀 △同 玉 ▲2八金 △3九玉
▲9三角 △4八角 ▲同角成 △2八玉 ▲4九馬 △1九玉
▲2八角 △1八玉 ▲7三角成 △3八歩 ▲2八馬 △同 玉
▲3八馬 △1七玉 ▲1八歩 △同 玉 ▲2八馬

野口益雄作11手詰

詰め手筋は、邪魔駒消去&退路封鎖
詰め上がりは「吊るし桂」


柏川香悦作7手詰

詰め手筋は、邪魔駒消去
詰め上がりは、「離し飛車による合駒効かず」


堀内和雄作9手詰

詰め手筋は、駒の打ち換え
詰め上がりは、「吊るし桂」


実戦から。詰め上がり駒余りあり。
詰め手筋は、送りの手筋
送りの手筋は実戦では必修手筋だが、詰将棋では殆ど見ない。


詰将棋の手筋としては、退路封鎖、邪魔駒消去、打歩回避、合駒問題(限定合や移動合、森田手筋など)、駒の打ち換え(変換)、開き王手(両王手)、ソッポ行きや俗手・ダブリ駒など不利感のある手筋、馬鋸(龍鋸)、飛車や金のエレベーター、送りの手筋、ワンス・モア(手持ちの駒で王手した後、すぐにその駒を捨てる手筋。二上詰将棋に多く見られる。)、知恵の輪などがあるが、基本は意表を突く駒捨てにある。


南倫夫作7手詰

詰め筋は、「二枚飛車のサンドイッチ」

↑参考までに斎藤忠作9手詰。南倫夫作品と同じ「二枚飛車のサンドイッチ」の筋


詰め上がりの形で必修科目は、「一間龍」「銀と金のコンビ」「銀と飛車のサンドイッチ」「合駒効かずの離し角(飛車)」「吊るし桂」など。
一見上部に逃げられそうな広い王様でも「銀二枚と角による羽交い絞め」と「二枚飛車のサンドイッチ」の形を知っていれば、大駒の威力で捕まえられる。


伊藤果作9手詰

合駒問題。
詰め上がりは、「銀と金のコンビ」


七條兼三作7手詰

上部脱出を二枚飛車で防ぐ構造。
詰め上がりは、「銀と飛車のサンドイッチ」


↑参考までに作者不詳の15手詰。
詰め筋は、駒の変換。
詰め上がりは「離し飛車による合駒効かず」