将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【minor戦法】袖飛車アラカルト

謎の羽生式袖飛車

羽生の名がついた戦法。
しかし、羽生が指したのは一局だけ・・・

豊島将之八段(当時)相手の第89期棋聖戦第三局で羽生棋聖(当時)が採用した。
当時羽生は、後手番で五連敗中、4手目△7二飛の新構想に連敗脱出を託した。
単に△7四歩だと十字飛車の筋があるので、先に△7二飛と改良したものだが、7筋は先手の固いところなので、飛車の働きが弱い。


△7四歩に対して▲7六歩と受ける手も有力。
△7五歩▲同歩△同飛と7筋の歩を交換しても、8筋の歩交換に比べて先手陣への響きが薄い。
できれば右銀で歩交換したいところだが、それでも迫力に乏しい。
「カメレオン戦法」こと英春流袖飛車に似ている。
「カメレオン戦法」は2パターンあり、①ジックリ型には△7二飛から△7五銀の押さえ込み。②急戦タイプには△7五飛で捌き合う。相手の動きに合わせて姿を変えるので「カメレオン」なのだ。
この「カメレオン戦法」に比べて△1四歩を省略して指せるのは魅力かもしれない。

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上図のように△7五歩となると、▲7六歩を阻止して先手の角の活動を封じているが、後手から△7六歩と突くと先手角が働いてしまう。
このまま△7四銀型に組んで8筋に飛車を戻すのが理想だが、先手も棒銀模様で動いてくる。 

上図は、ウォーズの実戦から取材したものだが、このような単純棒銀は怖くない。
△7六歩▲同歩△同飛▲7七歩(角交換されると棒銀が無効)△7四飛として▲2四歩△同歩▲同銀に△4四角とすれば大丈夫。
また、△3三角▲2四歩△2二銀と受ける順もある。▲2三歩成△同銀▲2四歩△1二銀と一時的に凹まされるが、△7四飛~△3五歩として△2三歩と合わせればキズを解消できる。
ちょっと力が入り過ぎという感じの攻めで、後手からすると怖くない。

2筋の守りのため△7四飛と飛車の横利きで角頭をcareする。
△7四飛に▲9六歩△9四歩として▲5六歩~▲5七銀と7五の歩を狙おうとするのは、△7六歩の仕掛けが成立する。

3八銀が飛車の横利きを止めているため危険だ。
歩を取れば、もちろん角交換して△7九角がある。
▲6六銀△7七歩成▲同角△7三桂▲7五歩△8四飛の展開も次の△6四歩から銀を圧迫していけば後手が指せる。

先手がUFO銀にするのは自然だが、△7三桂と跳ねられると▲2五銀には△3三桂があって前に行けない。
▲4五銀とするくらいかと思ったが・・・

先手は、▲2五銀と△3三桂を強要して▲3六銀と戻る。
後手は、角の活用を図って△1三角としたが、狙われることになった。
ここでは△6四歩(下図)が有力だった。

次に△6五歩とクライを張って下図のような理想形を目指す狙い。
▲5七銀~▲6六銀~▲9七角と7五の歩を狙ってくる手に備えた意味もある。

上図のようになると後手の陣形勝ちは明らか。
そこで▲6六歩とクライ取りを阻止することになるが・・・

後手から△4五桂跳ねを含みに△6五歩という仕掛けが成立する。
▲6五同歩△同桂に①▲7九角は、△4五桂▲同銀△6六歩▲5八銀△7七桂成▲同金△7六歩。②▲6六銀は、△6四飛▲6七歩△3五歩▲同銀△4五桂▲4六銀△6六角▲同歩△5七桂右不成。
図の一手前▲6七銀が危険な手で、▲5八金と中央を守るべきだった。

後手としては、ここで△8四飛としたいが、▲7六歩△7四銀に▲4六角という反撃や▲7五歩△同銀▲7四歩△同飛▲7六歩と強く受けられる順があって危険。 

かといって上図のように角を5三に使おうするのは一手遅れていて、▲3五歩△同歩▲4五歩△同歩▲3五角と仕掛けられて後手が拙い。
後手としては△5四歩は危険なので先手にクライ取りを許す展開になる。

「やはり飛車は8筋で使いたい。できれば8一飛と、」そう感じる私は後手を持ちたくないが、上図はやや後手よりのほぼ互角の形勢。


中村修九段の『2手目△7四歩の世界』 

「羽生式」のように歩を突く前に飛車の位置を袖飛車に固定するのは違和感がある。
飛車の移動を保留して、先に△7四歩と突く方が手広い。
いきなり2手目に△7四歩とする作戦をプロで最初に試したのが中村修九段。
 その昔、将棋世界に連載講座を書いていたときに、2手目の可能性について考えたことがありました。
 当時、後に升田幸三賞となる2手目△3二飛も考えていましたが、角交換後の▲6五角の両取りが気になり無理と結論を出したように思います。その中で、2手目△7四歩が指されていない中では一番有力そうに感じました。

 私自身。2手目△7四歩は3局ほどしか指していません。結局のところ、まとめ方が分かりませんでした。

 最近になって関西の澤田真吾四段が数局続けて指し、一部で注目されることになりました。

 現在では、初手より▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲7八金△7四歩▲2五歩△7二飛と進みます。

 一手損角換わりの進化系ともいえる手順だと思います。これからどのように広がっていくか楽しみなところです。


  中村修九段『2手目△7四歩の世界』将棋世界平成22年4月号付録

米長邦雄vs中村修(棋王戦)より取材。
図は、先後反転表示。

△7五同歩と取るのは相手の研究範囲と見たのか米長九段は、▲3四飛と横歩を取った。

これに対しては、△8八角成▲同銀△3三金▲3六飛△2二飛▲2八歩△4二銀▲7五歩△7二金のような変化も考えられる。

後手の狙いは、1筋と絡めて△5四角の筋だ。


実戦は△7六歩。

自然な手だが、次の米長の一手にどうするか。

狙いの歩のタタキ。


これに中村も△同桂▲7四歩△6五桂と最強の応手だが、飛車を逃げると▲2四歩と垂らされるのが嫌なところだ。

△6五桂以下▲9五角△4一玉▲7三歩成が厳しく、後手が潰れているようだが・・・

この角打ちでギリギリ耐えている。

しかし、実戦の▲7四飛では▲3五飛!がAI師匠の発見した好手。

△5七桂不成には▲7二ととして△9五角に▲同飛と取ることができる。

後手も△4九桂成と剥がすが、駒得が大きそうだ。


△6四歩と桂取りを防ぐと▲3四飛が好手。

次の▲6四飛を受ける術(すべ)がない。


米長流は有力だ。

図は、先後を正位置に戻している。

アマチュア大会では、米長流はめったにやってこない。

相手は△7五同歩と取って、図のような両取りを狙ってくることが多い。

勢い上図のように進むが、△2三銀が好手で受かっている。

第七期叡王戦第2局のような例外を除けば、この筋はうまくいかないことが多い。

 


対振り飛車

中村九段は、南九段相手に△7四歩を試みたが、▲7八飛とされて困った。

それ以後この戦法は指していない。


万能戦法・袖飛車

【対振り飛車】急戦(その1)で述べたように、三間飛車以外の振り飛車には袖飛車は有効。

ここからエルモ囲いに組むのが現代風。


スピード違反の超急戦

しかし、私の知り合いに、振り飛車に対しても居飛車に対しても△7四歩~△7二飛と指すという袖飛車の使い手がいる。
特に対振りに自信を持っていて、三間飛車に対しても図のような速攻を仕掛け、経験値の差と研究量で圧倒する。 

▲7五同歩△同銀▲7六歩△7七歩で▲7七同角には△7六銀、▲7七同飛(桂)には△6六銀と攻められてうるさい。
図から▲6八金ならスピード違反を止められるが、△4二銀~△3一金とエルモられる。
なお、図の局面の最善手は、▲7九金らしい。


先崎九段や高橋九段など、プロでも飛車先不突袖飛車の使い手がいた。
もっとも先崎流は、急戦を仕掛けず、熊るのだが。


進化版は7筋放置

初手からの指し手
▲7六歩 △7四歩 ▲7八飛 △6二銀 ▲7五歩 △同 歩
▲同 飛

7筋を受けずに先手に7筋を交換させるのが進化版。
先手としては、後手が△7四歩と突いてくれているので得した感じ。

しかし、組んでいくに従って、何かおかしいと感じ始める。


図からの指し手
△4二玉 ▲4八玉 △3二玉 ▲3八玉 △4二銀 ▲2八玉

△5四歩 ▲3八銀 △7三銀 

図の△7三銀では△5三銀左と鳥刺し風にするのも石田流を咎めて有力。

△7三銀は、後にエルモる含みがある。


図の局面で▲7八飛と当たりを避けると、△8四歩~△8五歩が間に合ってくる。

▲7七角と飛車先を受けようとするのは、△7六歩と角頭を攻められる。

そんな展開は、7筋の歩交換がマイナスになる。


図からの指し手

▲7六飛 △6四銀 ▲6六歩 △7五歩 ▲7八飛 △7二飛(図)

 

次に△7六歩が見えているが、受けが間に合っていない。

先手が石田流に組もうとしたのが拙かった。


7筋の歩交換を許して手得した後手の作戦勝ち。