【変則将棋】王手将棋必勝法
王手すれば勝ち
王手将棋とは、先に王手した方が勝ちというゲーム。
短手数で決着するので、(学校の休憩時間等)時間に余裕がない時にぴったりのゲーム。
頭が柔らかくなること請け合いだ。
何とか必勝法を見つけたいとネット検索したが、分からなかった。
湯川博士著『おもしろゲーム将棋』という本に王手将棋の解説もあったようだが入手困難。
将棋世界2004.10月号~2005.5月号に中田功プロの「コーヤン流王手将棋講座」があったらしいが、これも入手困難。
「初手76歩は悪手で26歩がいい」「早石田がいい」といったネット情報を基に考察する。
手探りで研究していたところ、ネット上で松延成雄さんの『王手将棋大全』の一部を発見。
先人の知恵に感謝し、ここでは用語をそのまま使わせていただく。
理論的アプローチ
守備について
- 玉を動かすな
王手がかからないようにするためには、下段の玉、特に居玉がベスト。
角は一手で敵陣に届き、桂は三手で敵陣に届く。
このように角や桂による攻撃は足が速く、(穴熊等)囲う余裕はない。
4九玉や6九玉は、ちょうど桂馬の利き筋に入るため、桂馬の詰めろがかかりやすい。
5九玉の居玉が優る。
- まずは角ゼットに
玉周辺を自駒で埋めて極力王手がかからないようにする。
角は一手で敵陣に届くため、まずは角の攻めに備える。
角打ちで絶対王手がかからない形、いわゆる「角ゼット」にするため、6八(4二)と4八(6二)の空間を塞ぐ。
さらに5八(5二)の空間を塞げば「銀・香・歩ゼット」になる。
※ただし、4八銀、4九金、6八銀、6九金のいわゆる「無敵囲い」は、筋違いの5段目の桂△5五桂(△3五桂、△7五桂)一発で必至になるので良くない。
- 4~6筋の歩は突かない。
youtube動画で、王手将棋に不慣れなアゲアゲさんは、中飛車(疑問の構想)から▲5六歩とした。しかし、元アマ名人・元奨三段の鈴木肇さんに△1四歩と次の△1三角(覗き見の角)を見せられて頭を抱えた。▲4八玉と逃げ、△6六角で投了。
また、4・6筋の歩を突くと桂馬による王手が生じる。
突かなければ「桂ゼット」だ。
高級盛上駒を使って、王手将棋!トップアマが初心に返る(笑) ゲスト:鈴木肇アマ名人 6:50~対局開始
攻撃について
- 中央(玉頭)を攻めよ
敵陣に届くスヒードから判断すると、角が最速で次に桂馬、歩を除けばその次が飛車だ。
玉を金銀4枚で固め、角・桂・飛車で攻めるのが基本。
上図は、王手将棋の実戦からの変化。(詳しくは末尾の実戦編で)
このように角桂を配置できれば、先手の必勝形。
次に▲5三桂成△同金(銀)▲同角成△同金(銀)と5筋に殺到し、空いたマス目に入手した駒を放り込めば勝ち。
後手に受けはなく、有効な攻めもない。
中央(5三の地点)は、駒の利きを集めやすく、敵玉頭なので、そこを角・桂・飛車で攻めるのがpointとなる。
- 角切りで桂馬を入手
通常なら大損の角桂交換だが、王手将棋では狙い目になる。
図からの指し手
△3七同角成 ▲同 銀 △5五桂 ▲6九玉 △4七桂成 ▲7八玉
△3七成桂
桂馬だけで寄ってしまった。
もし先手が「無敵囲い」なら△5五桂の時点で投了だ。
このように桂馬を入手して筋違い(▲5五桂、▲7五桂、▲3五桂)に打つのが、5段目の桂という手筋。
これには玉を逃げるしかないが、さらにもう一枚桂を跳ねて二枚桂で攻めるのが非常に厳しい。
- 角手持ちの桂跳ね(天使の跳躍)は破壊力抜群
初手からの指し手
▲7六歩 △4二金 ▲2六歩 △6二銀 ▲4八銀 △3四歩
▲6八金 △8八角成 ▲同 銀 △3三桂 ▲2五歩 △5二金上
▲2四歩 △4五桂
図の桂跳ねは、天使の跳躍というべき決め手。(あるいは「悪魔の降臨」か?)
次の△5七桂成を何でとっても角打ちが生じる。
▲5八金右と受けるのは△4九角の腹角まで。
▲6六角などと角を打って受けても、△5七桂成▲同角△9五角の端角で、△5六桂を狙って勝ち。
この実戦例のように、初手▲7六歩からの居飛車は危険。
居飛車にするなら初手▲2六歩としたい。
居飛車定跡-初手▲2六歩とその対策
先手に飛車先を突かれた途端、後手が厳しい状況だ。
初手▲2六歩が最善という説も頷ける。
△8四飛と浮き飛車にして飛車先交換を受けたいが、△8四歩▲2五歩△8五歩と相掛かりのように進めると▲7六歩△4二金▲2四歩で先手勝ち。
後手は「1.△3二金」と受けるか「2.△3三角」と受けるかの二択のようだ。
△1四歩~△1三角も考えられるが、次のような手順で角頭が不安だ。
初手からの指し手
▲2六歩 △1四歩 ▲2五歩 △1三角 ▲6八銀 △4二金
▲2四歩
6二に傷があるため△2四同角と取れない。
仕方のない△2四同歩に▲1六歩と角頭を攻めて先手が指しやすい。
第一章 後手△3二金型
1.ヒネリ飛車定跡~先手の戦略
△3二金型に対する先手の戦略は、三つ。
- ▲5六飛からの中央突破。
- ▲2八歩(▲2七歩)のキズ消し。
- ▲6五桂の天使の跳躍。
順に解説したい。
初手からの指し手
▲2六歩 △4二銀 ▲2五歩 △3二金 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △2三歩 ▲2六飛 △6二銀 ▲6八金 △8四歩
▲4八銀 △8五歩 ▲9六歩 △3四歩 ▲5六飛 △5二金
▲9七角
中央突破を狙え
図の▲5六飛が玉頭を狙って飛車の理想の位置。
ただし、△2七角のスキや△2五飛などを狙われるのが弱点だ。
図の局面から次に▲5三角成となると先手勝ち。
これを受けるために△4四角と守るしかないが、そのためには△3四歩が必要。
実は先手の狙いは、△3四歩を突かせて角交換を挑むこと。
しかし、すぐに▲7六歩と角交換を狙うのは△2七角の空き巣狙いの角があって先手負け。
2八の歩は岩より堅し
そこで、▲2八歩と守ってから▲7六歩を狙う。
▲2八歩は、飛車が移動した空間をcareしていて、岩より堅い。
同様に△2六角を防いで▲2七歩打ちが有効になることもある。
しかし、図の局面は後手にも手段があり、後述する。
次に▲5六飛と回らずに▲7六歩と交換を挑む手段を検討する。
天使の跳躍で攻めよ
冒頭の「理論的アプローチ」の章で述べたように角手持ちにしての天使の跳躍▲6五桂は、攻撃のセオリーのひとつ。
逆に後手からの△4五桂は▲5六飛で受かる。
したがって▲2六飛型から角交換すると先手有利になりやすい。
後手は角交換を阻止したいが、上記のように▲9七角を狙われると△3四歩を省けないように思える。
初手からの指し手
▲2六歩 △4二銀 ▲2五歩 △3二金 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △2三歩 ▲2六飛 △6二銀 ▲6八金 △8四歩
▲4八銀 △8五歩 ▲9六歩 △3四歩 ▲7六歩
ひと目△4四角の両取りの筋が見えるが、大丈夫。
図からの指し手
△8八角成 ▲同 銀 △4四角 ▲5六飛 △5二金 ▲7七桂
△3三桂 ▲5八金上 △8六歩
図の局面から▲6五桂(天使の跳躍)として、次の▲6一角や▲4一角の腹角を狙えば先手良し。
△8六歩の代わりに△6四歩と桂跳ねを阻止するのは、▲1五角の端角がぴったり。
そこで後手は△4四角を打たずに、△5二金と先に守って次に△4四角を狙うが・・・
初手からの指し手
▲2六歩 △4二銀 ▲2五歩 △3二金 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △2三歩 ▲2六飛 △6二銀 ▲6八金 △8四歩
▲4八銀 △8五歩 ▲9六歩 △3四歩 ▲7六歩 △8八角成
▲同 銀 △5二金 ▲7七桂 △3三桂 ▲6五桂
やはり▲6五桂(天使の跳躍)が厳しい。
△3二金+△4二銀型は4一の地点が弱点。
おまけに▲5六飛に△5二金が必要なので、6一の地点も弱点となる。
図の局面では、次に▲6一角と▲4一角の必至があり、後手にそれに優る反撃はない。
角交換されると、先手の攻めを振りほどくのは難しいようだ。
しかし、△4四歩と角交換拒否するのは、▲5六飛~▲9七角で中央突破を狙われると厳しい。
後手はどう戦うべきか?
2.ヒネリ飛車定跡~後手の戦略
飛車先の歩は、遅く見えて速い
一歩の手持ち、飛車の働きの差など先手のアドバンテージは大きい。
しかし、それを勝ちに繋げるのは簡単ではない。
問題図1
例えば、図の局面から△8六歩とすれば▲7六歩や▲9七角を牽制できる。
それでも▲7六歩なら△8七歩成▲2二角成△7八とで後手勝ち。
▲8六同歩△7四歩に▲7六歩でも△8六飛▲2二角成△8九飛成で後手勝ち。
▲8六同歩の後、それでも▲9七角とするのは、次に▲8五歩の一手が必要なので、後手は△8五同飛と歩を入手できる。
▲5三角成の瞬間、△5八歩でトン死。
たとえ▲5八金右と備えていても、▲8五歩に△4四角と受けられると8五の歩が負担になる。
問題図2
ここでも△8六歩が最善で、▲同歩△同飛に▲5六飛△5二金▲2二角成と▲7二角を狙っても、先に△8九飛成が詰めろ。
△8六歩に▲2二角成△同金▲8六歩として、△8六同飛なら▲5六飛△5二金▲7二角で勝ちを狙っても、先に△8七角が詰めろ。
△8六歩に▲2二角成△同金▲7七桂△8七歩成▲5六飛△5二金▲6一角△同玉▲6五桂△7一玉▲5三桂成は、△5八歩でトン死。
嬉野流登場!
後手の戦略としては、角交換を拒否し、飛車先の歩を間に合わせたい。
そのために着眼したのが「嬉野流」だ。
後手の狙いは、△2三歩を省略して一歩手持ちにしておくこと。
歩を手持ちにしていれば、先手の狙う中央突破に対して△5八歩と反撃できる。
例えば、図の局面から▲2三歩△3一角▲9六歩△8四歩▲9七角△8五歩▲5四飛△5二金上▲5三角成には△5八歩だ。
そこで▲5三角成の代わりに▲5八金と備えても、△8六歩と突かれて角に弱い先手は▲同角と取ることができない。
いち早く「角ゼット」に組んだ後手に比べ、先手の駒組みが遅れている。
6八金型は危険
▲同 飛 △3二金 ▲6八金 △8四歩 ▲4八銀 △8五歩
▲2六飛
先手は、後々の角交換を狙い、角に紐がつく▲6八金型にしたが、図の局面から△8六歩と突かれて参った。
▲2四歩は間に合わず、△8七歩成 ▲2三歩成 △7八と!が詰めろで後手の一手勝ち。
角交換を挑めない6八銀型
先に、先手の▲9七角からの中央突破を防ぐため△3四歩~△4四角としたが、もう一つの手段がある。
それが図の△8六歩だ。
前記の通り、飛車先の歩は遅く見えて速い。
これに▲9七角としたいが、△8七歩成▲5六飛△5二金▲5三角成に△5八歩で後手勝ち。
▲8六同歩は仕方ないが、角が使い辛い。
遡って銀上がりを省いて▲9六歩~▲9七角を急いでも△8六歩に▲同角と取れない。
飛車先交換を急いで「角ゼット」の形に組めてない弱点が露呈した。
このように嬉野流にすると▲6八金型に組みにくく、先手から角交換を挑めない。
また、△8六歩▲同歩の利かしを入れると、▲9七角としても働かない。
先手は角が負担だ。
嬉野流型の最後に先手が▲2三歩を決めた場合を研究する。
▲2三歩の変化(やはり優秀な嬉野流)
初手からの指し手
▲2六歩 △4二銀 ▲2五歩 △6二銀 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △3二金 ▲2三歩 △3一角 ▲9六歩 △8四歩
▲6八銀 △8五歩 ▲4八銀 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲7八金
双方よく似た形だが、先手の2三の歩が重い感じだ。
△1四歩と次に△1三角~△5六飛を狙う。
やむを得ず▲8七歩と守ったが、先手は歩切れになった。
後手は、手順に△8五飛と好位置に逃げる。
先手は、▲9七角と次の▲5四飛を狙うが、△5五飛と先に5筋を占められる。
図からの指し手
△1四歩 ▲8七歩 △8五飛 ▲9七角 △5五飛 ▲5八金
△1三角 ▲8四飛 △5七角成(△2五飛)
▲8四飛では▲1四飛と歩を入手すれば△5七角成を食わないが、△2五飛の詰めろで後手勝ち。
▲2三歩△3一角と一時的に角を閉塞させてうまくやったようだが、△1四歩~△1三角で返って角を働かす結果になった。
次に後手が▲9七角型を許すとどうなるか研究する。
3.ヒネリ飛車定跡~▲9七角型
基本図1
図の局面から桂馬を活用して中央突破したい。
しかし、右桂を活用しようとする▲3六歩は、△2六角(覗き見の角)▲3七桂△4五桂の反撃がある。
ならば△3三桂とされる前に▲3六歩としても、△8六歩▲同角△2六角▲3七桂△同角成▲同銀△8六飛で後手勝ち。
そこで図から▲7六歩として▲7七桂~▲6五桂(天使の跳躍)と左桂による中央突破を狙う。
▲5三角成があるので後手は香を取れない。
後手は、△8四飛と飛車を活用する。
▲7二角の空き巣狙いの角など、スキが生じるが、浮き飛車にしたのには大きな狙いがあった。
図の△8六歩が好手。
手抜きで▲6五桂の天使の跳躍は、△8五飛で問題なし。
▲8六同角と取るのは、△7七角成▲同角(▲同金は△8六飛▲6八銀△3五桂)△3五桂の5段目の桂の手筋が炸裂する。以下▲6九玉に△4五桂の二枚桂や△8七飛成で受けなし。
▲8六同歩には△6四飛として次の△7七角成▲同金△3五桂(5段目の桂)を狙う。
以下▲6九玉には△6七飛成で詰み、▲4九玉には△4五桂の二枚桂。
その筋を▲6六歩と受けるのは△同角▲8五歩△7七角成で後手勝ち。
▲7八銀と△7七角成に▲同銀を用意したが・・・
△4五桂の天使の跳躍が厳しい。
次に△7七角成~△3五桂の5段目の桂が狙いだが、受ける手段がない。
▲3六歩には△2六角と覗き見の角がある。
このように王手将棋は桂馬が活躍する将棋だ。
その桂を後手が△3三桂と活用できているのは大きく、後手も指せるようだ。
上記の順、特に△8六歩の手筋を嫌って△8四飛に▲7五角(下図)とする。
後手はこの順を嫌って先に△8六歩も考えられる。
これに△8二飛と引くのは▲5四飛(歩頭の飛車)で制空権を握られる。
そこで△7四飛だが、▲7七桂には△同角成があるので先手の構想が難しい。
一旦▲8八銀とするか?
それとも▲9七角△8四飛と千日手か?
先手としては千日手は面白くない。
遡って△3三桂(基本図1)の局面で▲5四飛(歩頭の飛車)は成立しないのか?
驚きの歩頭の飛車(▲5四飛)
再掲基本図1
図の局面から▲5四飛が期待の一手。
△8六歩▲同角△8五飛と反撃する手には、▲2八歩(▲2七歩)が岩より堅い。
△2五飛には▲8四飛がある。
先手が良さそうだが、後手にも切り札がある。
後手の切り札△9三桂(裏桂)
▲5四飛には、△8六歩▲同角△9四歩▲2七歩(▲3六歩の準備)△9三桂と反撃する。
▲9四飛△8一飛▲5四飛(▲9五角は△4一玉で受かる)△8五桂と△7七桂成を狙えば▲5六飛と逃げるしかない。
図の局面から△7七桂成▲同桂(▲同角△同角成▲同桂△3八角)△同角成▲同角△3五桂(△7五桂)以下後手勝ち。
8六の角が質駒なのが痛い。
▲9四飛に代えて▲3六歩と△3五桂の筋を防いでも△7五桂がある。
△7五桂と△3五桂の両方を防ぐには▲3六歩と▲7六歩の二手が必要だが、裏桂のスピードが速い。
鈴木肇「桂を使うのが王手将棋」
このように▲9七角型に対しては、△4四角と守って後手も戦える。
次に▲5四飛(歩頭の飛車)の威力を類似形で紹介して▲9七角型を終わりたい。
王手将棋の神様、中田功による手筋
参考図
図からの指し手
△3三桂 ▲5八金上 △2五桂 ▲9五歩 △3五歩(悪手)
▲5三角成 △同 角 ▲3四飛(覗き見の飛車)
△3二角 ▲2二歩
△2五桂~△3五歩と、次の△3六歩▲同歩△2六角を狙ったのが悪手。
▲5三角成の強襲がいわゆる中田功手筋で、▲2二歩となって受けがない。
王手将棋の面白さがよくわかる手順だ。
第二章 △3三角+4二金型
①ヒネリ飛車・縦歩取り型
初手からの指し手
▲2六歩 △4二金 ▲2五歩 △3四歩 ▲6八銀 △3三角
▲4八銀 △6二銀 ▲2六飛 △4四角 ▲3六飛
後手が先手の飛車先交換を拒否して△3三角と受けるのは、自然な対応。
すぐに飛車先の歩を切らさないのが長所だが、角交換を狙われるのが短所。
それでも▲3三角成に△同桂と桂馬を活用できるのは嬉しい。
先手はヒネリ飛車を狙うが、いきなり▲2六飛は△1五角(失敗図)がある。
△3七角成が王手になるので飛車を逃げることができない。
失敗図
そこで▲4八銀としてから▲2六飛とする。
狙いは▲3六飛の縦歩取り。
基本図2
歩を取らせないなら△3五角か△3五歩だが、△3五角には▲7六歩と角を活用されるのが痛い。△3三桂は▲同角成△同金▲3五飛△4二銀▲5五桂で受けなし。したがって▲7六歩に△4四歩と受けるしかないが、桂馬を渡せない形はキツイ。▲7五歩から▲7四歩のこびん攻めの歩が厳しく、先手大優勢。
▲3六飛に△3五歩も明るい未来が見えない。
▲5六飛△5二金上▲3六歩△3三桂▲3五歩△同角▲3六飛△3四歩▲3七桂などと一歩持って全軍躍動の形を築くことができ、不満がない。
後手としては、基本図2から△3三桂と歩を取らせるのが有力だ。
基本図2からの指し手
△3三桂 ▲3四飛 △8四歩 ▲5八玉 △8五歩 ▲5九金右
先手の陣形は奇異に映るが、△4五桂と跳ねることができないのを見越し、飛車・金を渡しても詰まない、いわゆる「飛車・金ゼット」の形。
飛車を渡しても大丈夫なので、後手が△8六歩と攻めても▲4四飛△同歩▲3四角で勝ち。
後手が困ったようだが・・・
△8四飛で受かっている。
▲4四飛には△同飛が詰めろ。
放置すれば△5四飛▲4九玉△1七角成で勝ち。
再掲基本図2
基本図2からの指し手
△3三桂 ▲3四飛 △8四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛
△2二歩 ▲9六歩
先手は、▲2四歩から2歩手持ちにする。
後手は、歩損の代償に手得を生かしたい。
図からの指し手
△8五歩 ▲9七角 △8四飛 ▲5三角成
先手は▲9七角と角を活用、次に▲2三歩の楽しみがある。
後手は△8四飛と飛車の素抜きを狙ったが、悪手。
▲5三角成(下図)に取る駒がない。
しかし、上の変化は、読者サービスのヤラセ手順。
△8四飛では△5二金上と守るのが正解。
▲2三歩ならそこで△8四飛だ。
次に△7七角成(詰めろ)から飛車の素抜きを狙っている。
そこで▲2八飛と逃げ、△5四飛▲5八金右△4五桂▲7五角△3五角と中央突破を狙って後手優勢。
先手は、▲9六歩に代えて▲2三歩を急ぐべきだった。
△同歩▲同飛成と竜を作らるのは大きいので△3五角と反発、飛車を縦に逃げるのは△4五桂で後手勝ち。
▲3四飛△4四角と後手は千日手含みにクリンチ作戦。
歩を渡すと、後の▲5三角成の時に△5八歩で負けになる。
千日手はやむを得ないか?
千日手が結論では先手が面白くない。
縦歩取りでなく、▲5六飛から中央突破を図る方が有力かもしれない。
そんなある時、アイデアが閃いた。
上図のような飛車ゼットの形はどうだろう?
しかし、後手が飛車先を突く代わりに△3二銀~△4五桂とすれば必至。
残念だが、飛車ゼットの形を築くのは無理筋のようだ。
参考までに飛車ゼットに関する次の一手問題を『王手将棋大全』から借用。
上図から△7六歩は▲7三桂があって危険なようだが、△4一玉▲8一桂成△5一金と飛車ゼットにして勝ち。
飛車を渡しても、成桂が邪魔をして、詰めろで飛車を打てない。
なお、△6九角▲同玉△7八歩▲同金△7七角成でも勝ち。
次に先手が早めに▲7六歩と角交換を挑む指し方を研究する。
②角交換型
初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲6八金 △4二金 ▲2五歩 △3三角
▲4八銀 △6二銀 ▲7六歩 △2二銀 (基本図)
基本図3
△3三角型には▲7六歩と角交換を挑むのが有力。
次に▲2四歩△同歩▲3三角成△同桂▲2三角という空き巣狙いの角を狙っている。
後手の△2二銀は、最後の△2三角を防いだもので▲3三角成に△同銀と取る意図ではない。△3三同銀は▲3一角の空き巣狙いの角がある。
金銀が上ずるのは危険だ。
図の局面から▲3三角成△同桂▲7七桂△4四角▲6五桂△9九角成▲5八金上△4四馬としたのが、『王手将棋大全』の問題第31問。
図から▲8八角と馬を消して先手が指せる。
この変化もあるが、飛車を活用する順も有力。
基本図3からの指し手(飛車先交換型)
▲2四歩 △同 歩 ▲3三角成 △同 桂 ▲2四飛 △2三歩
▲2六飛 △5二金上 ▲7七桂 △7四歩
角交換して飛車先の歩交換するのは、一歩入手できるが、△3三桂と跳ねさせた手損と端角に△2四角と受ける余地を与えるなどのマイナス面がある。
先に述べたように先手の理想は、▲5六飛のヒネリ飛車。
しかし、すぐに▲5六飛とするのは△2七角の空き巣狙いの角がある。
後手から△4四角と打つと手順に▲5六飛(詰めろ)で損。
そこで先に△5二金上と守り、先手は▲7七桂と△4四角を受ける。
そこで△4五桂と△5七桂成を狙う手はどうか?
これには「桂跳ねには端角」の王手将棋格言の通り、▲1五角と打つ。
2五の歩がないため△2四角で受かるが、▲同角△同歩とさせてから▲6六角と受け△2三銀と守るが▲2八歩が岩より堅い。
この辺りは、『王手将棋大全』後手番の苦悩(その1)や問題集第34問解説に詳しい。
△4五桂の前に△1四歩としても、同様に▲2八歩が岩より堅い。
△2七角(空き巣狙いの角)を防ぐことによって攻防に効く▲5六飛を実現できる。
初手からの手順
▲2六歩 △3四歩 ▲6八金 △4二金 ▲2五歩 △3三角
▲4八銀 △6二銀 ▲7六歩 △2二銀 ▲2四歩 △同 歩
▲3三角成 △同 桂 ▲2四飛 △2三歩 ▲2六飛 △5二金上
▲7七桂 △1四歩 ▲2八歩 △4四角 ▲5六飛 △7四歩
▲6五桂 △9九角成 ▲5八金上 (図)
▲6五桂が好手。まさに天使の跳躍。
詰めろで香を取られるが、▲5八金上と守れば後手から次の矢がない。
「王手将棋では香取りは怖くない」と覚えておいてよい。
図の局面では、先手に▲6一角の腹角と▲5三桂成の二つの狙いがあり、受けがない。
岩より堅い▲2八歩の守備力と▲6五桂の天使の跳躍の威力がわかる変化だ。
次に▲7七桂に対して手得を生かして△7四歩(下図)からじっくりと右桂を活用する順を検討する。
<旧稿>・・・参考までに
先手は▲9六歩と、次の▲6五桂を狙い、後手が△4五桂とすれば『王手将棋大全』に書かれた裏定跡の変化だ。
裏定跡では以下▲6六角(▲4六角は△5七桂成▲同角△4四角)に△7五歩で勝ちとなっているが、▲6六角でなく▲1五角△2四角▲同角△同歩▲4六角とすれば次の▲2四角が厳しく先手勝ち。
そこで△4五桂と攻めずに△7三桂と▲6五桂を防いでから△4四角を狙う。
△4四角は▲5六飛と逃げれば、△7七角成から△3五桂の5段目の桂を狙っている。桂の詰めろには玉を逃げるしかないが、△6五桂で受けなし。
駒取りに詰めろで桂を打たれると助からない。
先手は▲5五角と先着して逆に▲7三角成を狙う。
そこで△5四歩と角取りと同時に▲5五桂を防ぐ。
後手にもう一枚角を渡すと△7八角!があるので角を切ることができない。
そこで▲6六角と自重する手には、後手は△4五桂の切り札を出して△5七桂成を狙う。
以下▲2八歩 △5七桂成 ▲同 角 △4四角 ▲5六飛 △7七角成 ▲同金 △5五桂にて後手勝ち。
先手の正解は△5四歩に▲6五桂!
△5五歩に▲7三桂成△同銀▲5四桂で勝ち。
△5四歩(▲5六歩)のようなセオリーに反する手は殆どの場合成立しない。
後手としては、▲5五角と打たれる前に△4四角と先着してから△7三桂とすべきか?
これには次の角切りを防ぐため▲6六歩と突くくらい。
先手は6筋を突かされて損だが、後手に手駒がないので脅威は薄い。
手持ちの角は大きく、後手が飛車先を伸ばして△8六歩▲同歩△同飛と突破しても、▲7二角で先手勝ち。
また、△8四歩~△8五桂と桂交換からの△6七角を狙っても、▲6五桂と跳ね違えて先手勝ち。
難解だが、先手が良さそうだ。
△7四歩には▲5五角の覗き見の角が成立する。
①△9二飛には、▲3三角成△同金▲5五桂~▲6五桂。
②△7三角には、▲3三角成△同金▲8六桂(▲6六桂)の「控えの桂」が厳しい。
この辺りは、『王手将棋大全』第22問に詳しい。
③△6四角には、▲同角△同歩と6筋をこじあけて、桂打ちまでの詰みを見る。
以下▲1五角△2四角▲同角△同歩▲同飛で先手勝ち。
④△7三桂には、角を切って▲5五桂からの二枚桂で必至。
再掲基本図3
図からの指し手(飛車先交換保留型)
▲2六飛 △8四歩 ▲9六歩 △8五歩 ▲3三角成 △同 桂
▲7七桂 △8六歩 ▲5六飛 △5二金上 ▲6一角 △同 玉
▲6五桂 △7一玉 ▲5三桂成
端角▲1五角を効果的にするため、飛車先を交換せずに浮き飛車に構える。
これなら後手は△4五桂の前に△1四歩が必要になる。
後手が平凡に飛車先を突いていったため、角交換して▲7七桂として先手の必勝形。
後手の陣形に対しては、▲6一角の腹角の手筋が急所となる。
これを防ぐ意味で、銀の代わりに△6二飛とする右四間飛車戦法は、後手の有力な変化球。
後で詳しく検討する。
図からの指し手(後手飛車先不突型)
▲2六飛 △5二金上 ▲3三角成 △同 桂 ▲7七桂 △7四歩
▲9六歩 △4四角 ▲5六飛 △7三桂
後手は、飛車先を突くのを後回しにして△7四歩~△7三桂と▲6五桂跳ねを防ぐ。
△4四角を決めておかないと▲5五角がうるさい。
後手番らしく守備的に指しながら、秘かに△7七角成▲同金△3五桂の5段目の桂を狙う。
▲6六歩と止めて、どこかで研究した形に似た局面だ。
最後に先手が本格的に駒組みする作戦を検討する。
再々掲基本図3
図からの指し手
▲7七角 △8四歩 ▲8八銀 △8五歩 ▲3六歩 △7四歩
▲3七桂 △7三桂(下図)
上図の局面から▲7七角△8四歩▲8八銀△8五歩と同型にし、お互い右桂を活用して下図となる。
図から▲5八金上と固めようとすると△8六歩▲同歩△6五桂と仕掛けられ、次に腹角で必至となる。
角交換して▲5五角は、△5四歩に▲4五桂と先に紹介した手順を応用しても、△1五角の端角が突き刺さる。
また、単に▲4五桂と仕掛けるのも△1五角の端角がある。
王手将棋格言「桂跳ねには端角」
▲2四歩△同歩▲4五桂と仕掛けるのが良さそうだが、歩を渡すので、狙いの▲5三桂成の瞬間△5八歩でトン死。
したがって図の局面から▲1六歩と備える。
後手が△9四歩と真似するなら▲4五桂△7七角成▲同桂として次の▲5三桂成が厳しい。
これを△6四角と受けようとしても▲1五角で勝ち。
この筋を防いで△9四歩の代わりに△1四歩と受ける。
先手も▲9六歩△9四歩を交換してから▲4五桂と跳ねる。
以下△7七角成▲同桂△6四角(△5二金上▲6一角)に▲5三桂成△同角▲5五角と進行すると先手の一手勝ち。
もし▲9六歩を省くと、△9七角成(詰めろ)で後手勝ち。
歩を持っていれば、△5八歩があるので▲5三桂成とできない。
しかし、歩を渡すので後手から攻めるのも難しい。
図からの指し手
▲1六歩 △1四歩 ▲9六歩 △8六歩 ▲同 歩 △9四歩
▲4五桂 △7七角成 ▲同 桂 △8六飛 ▲8七歩 △8三飛
▲5八金上 △6四角 ▲5三桂成 △同 角 ▲5五角 △4四角
▲7三角成 △同 飛 ▲5四桂
上の手順のように▲5八金上と手入れしておけば▲5三桂成の筋で先手が良い。
そこで8筋でなく7筋に目をつける。
図のように7六に空間を作っておけば先手の攻めを牽制できる。
▲4五桂には△7七角成▲同桂△6四角としておいて▲5三桂成△同角▲5五角と前と同様に攻めると△7六桂で勝ち。
▲7四歩△同飛としてから▲4五桂と、先手は▲8三角を狙う。
△7七角成▲同桂△6四角には▲8三角で勝ち。
△7七角成▲同桂に△5四飛(詰めろ)▲5八金上△5五角とするが、▲8三角△7二歩としてから▲2九飛と逃げておくと、△6五桂を防いでいるので後手からの攻めが難しい。
△7六桂を狙って△3三桂としても、先に▲7四桂が突き刺さる・・・
ところが△5五角(上図)という手があった。
単純そうな形でも思わぬ手が飛び出すのが王手将棋の面白さ。
先手は、仕掛けず▲5八金上と固めておくべきだった。
③▲7七桂型(先手有利)
基本図3から▲7七桂
後述の「後手右四間飛車定跡」の項で触れるが、▲7七桂で先手必勝。
△3三角型に対しては、先手は互角以上に戦える。
しかし、初手▲2六歩には、嬉野流を含む△3二金型が有力で、先手必勝とまではいかない。
先攻して後手の飛車先の歩を間に合わせないようにしたいが、難しいようだ。
居飛車定跡-初手▲7六歩とその対策
図のようになれば、5七飛成の詰めろを▲5八金右(左)と受けるしかないが、構わず△5七角成とされて投了。
▲7七角より△1三角の方が働いているというのが後手の主張。
図までの指し手
▲7六歩 △4二金 ▲2六歩 △6二銀 ▲4八銀 △1四歩
▲2五歩 △1三角 ▲6八銀 △8四歩 ▲3六歩 △8五歩
▲7七角 △8四飛 ▲3七桂 △5四飛
△1三角に端攻めは間に合わない
参考図
端を取り込んでも△3五角と逃げられると先手陣の立ち遅れが目立ち、後手に有効手が多い。
先手もヒネリ飛車
したがって先手は、後手より先にヒネリ飛車を目指す。
中央の制空権を握る▲5六飛が必争点だ。
図の局面から後手も△8四飛と捻るのは、▲6六角△3四飛▲7五角△3五角▲7七桂(下図)が進行の一例。
△3四飛は、次に△3五飛を狙っているが、▲7五角と5筋からの殺到を見せられると△3五角と受けざるを得ない。
ここで▲3六飛といった手が利けばいいが、△5七角成から飛車を取って後手勝ち。
▲7七桂と活用して次に▲6五桂を狙う。
図から△4四角として▲6五桂には△9九角成が詰めろで、次に△3五飛を狙っている。しかし△4四角に構わず▲6五桂が好手。
△9九角成に▲5八金右(左)と受けられると、次の5三からの殺到が受からず先手勝ち。
反省して、途中の△3四飛を△7四飛と改良。
▲7五角△3五角と進むが、好機に飛車で角を取れるのが△7四飛の利点。
同様に▲7七桂に△4四角(図)とする。
ここで▲6五桂には△9九角成(△7七角成でも勝ち)▲5八金右(左)の後、△7七馬▲同銀△7五飛で後手勝ち。
図の局面では▲6六歩が最善だが、桂を渡せない格好になったので、次の▲6五桂の狙いがぼけてしまった。
先手の最善策
△3五角を阻止しながら▲3七桂の活用を図る。
しかし後手が桂を活用しようと△7四歩とすると▲9五角だし、△9四歩▲3七桂△7四歩には▲5五角△7三桂▲同角成△同銀▲5五桂だ。
もちろん△3四歩は突けない。
こうなると先手の▲7七角の方が後手の△1三角よりも効果的だ。
- 結論
後手に工夫の余地はあるものの先手が良いと思う。
先手が一手多く指しているから当然の結論か?
初手▲7六歩は最善でないのかもしれないが、後手がそれを咎めるのは難しい。
次に三間飛車を研究する。
果たして必勝手順は見つかるか?
三間飛車定跡
早石田が有力という情報もあったので考察する。
初手からの指し手
▲7六歩 △4二金 ▲7八飛 △6二銀 ▲6八金
1.△8四歩の変化
△8四歩には▲7五歩△8五歩▲7四歩で先手の攻めの方が早い。
どこかで△3四歩とされても▲4八金(▲4八銀)と受けておいて大丈夫。
角交換されても手が続かない。
そこで後手も工夫する。
2.秘手△3三桂
下図は、先後逆で、上図から△3四歩▲4八金に△3三桂と跳ねたところ。
飛車先を突いても間に合わないので、後手は、足の速い桂馬を活用する。
角交換してから△3三桂とするのは、△4五桂の時に格言通り▲1五角の端角がある。
単に△3三桂とするのが良く、次に△4五桂の天使の跳躍から△5七桂成を狙う。
図の6八金が銀なら△4五桂に▲5八金と受けることができそうだが、今度は△6九角で必至。
・桂跳ねて腹角(△6九角打ち)は基本手筋のひとつ。
・5五桂~4五桂などと中央に二枚の桂馬を並べる必至形も基本手筋。
・王手将棋は飛車・金に次いで桂馬の価値が高く、角で桂を狙うのが筋。
・歩を突くと角の斜めラインで狙われる。頻出するのが▲7六歩のスキを狙った端角。
・▲9六歩や△1四歩の端角封じの端歩突きは、一手の価値が高い。
△4五桂を防いで▲4六歩と突くのは、「4~6筋の歩は突かない」というセオリーに反した手で「桂馬を渡せない」「角で空間を狙われる」といった短所がある。
△2五桂として、次に角交換から△3七桂成▲同桂△3六角を狙う。▲4七桂と受けても△同角成から△5五桂で必至。
▲6六歩と角交換を防ぐが、△4四角から△1七桂不成と強引に桂香を取りに行き、▲5八金上に△8四歩くらいで、キズの多い先手が苦しい。
△3三桂に▲6六歩と角交換を防ぐのも一案。
これには、中央狙いか、こびん攻めだ。
△1四歩~△1三角の中央狙いには、▲7五歩~▲7四歩と一歩入手すればよい。
図からの指し手
▲6六歩 △1四歩 ▲7五歩 △1三角 ▲7四歩 △4五桂
▲7三歩成 △同 桂 ▲7五飛
△1四歩~△1三角の中央狙いは上手くいかなかった。
次のようにこびん攻めの歩が正解で後手が良い。
図からの指し手
▲6六歩 △3五歩 ▲7五歩 △3六歩 ▲同 歩 △4五桂
次の△5五角が厳しい。△3六歩を手抜きで▲7四歩としても△4五桂 ▲7三歩成 △同 桂 ▲7四歩 △3七歩成で後手の一手勝ちだ。
次に△3三桂に対する最善策を
図からの指し手
▲9六歩 △4五桂 ▲8八角成 △同 銀 ▲1五角 △2四角
▲同 角 △同 歩 ▲6六角(▲4六角△3五角) △5二金上
▲2八銀 △3五歩 ▲7五歩 △7二飛 ▲7六飛 △3六歩
▲9六歩が△9五角の端角を防ぐ急所の一手。
△5七桂成を受けるためには▲6六角か▲4六角だが、その前に▲1五角を利かせて2四歩とさせておく。
▲6六角の銀取りに対し、△5二金上が自慢の受け。
▲2二角成には△5七桂成がある。
▲4六歩と4筋を突くのは悪手で△6五角が厳しい。
▲7五歩と伸ばす手には△5四角がある。角を手放したので▲2二角成と銀を取るが、そこで△8七角成でなく△5七桂成▲同金△2七角成とこちらに成るのが詰めろ。
もし▲9六歩としてなければ、▲6六角に△5七桂成▲同角△9五角(詰めろ)▲7七桂△同角成▲同飛などに△5六桂で必至。
▲9六歩が急所という所以だ。
後手の手持ちの角の威力が大きく、三間飛車も必勝手順は見つからなかった。
次に個人的な思い入れのある戦法を紹介する。
四間飛車定跡
〇◇大学将棋部直伝
私が王手将棋を知ったのは大学将棋部だった。
そこで先輩から教わったのが四間飛車。
愛着がある戦法なので、ここで取り上げる。
飛車が受け一方で損なようだが狙いがある。
▲7五歩~▲7四歩というこびん攻めの歩だ。
図からの指し手
▲7五歩 △8五歩 ▲7四歩 △同 歩 ▲5五角 △7三桂
▲同角成!△同 銀 ▲5五桂(5段目の桂)
以下△4一玉と逃げる一手だが▲6三桂成が詰めろ銀取りで受けなし。
▲7五歩に△3四歩と角道を開けるのはいかにも危険だが、つられて▲7四歩△同歩▲2二角成△同銀▲5五角(下図)とすると強烈なカウンターがある。
図の局面から△9五角という端角の詰めろが厳しい。
▲7七桂には△同角成▲同角△7六桂で受けなし。
▲7七角には△同角成▲同桂△5四角の両成りが受からない。
先手は▲9六歩か▲8八銀と、端角の筋を受ける一手が必要。
いわゆる4→3戦法?
▲7五歩に△5二金上と先の5段目の桂の筋を受けておく。
先手は、▲7四歩△同歩▲7八飛と三間飛車に転身。
いわゆる4→3戦法だ。
これに△3四歩から▲6八金△8八角成▲同銀△5五角▲7七角△同角成▲同桂△5五角と執拗に角を据えられると、先手から手を出しにくい。
後手からは△3三桂として△7七角成▲同銀△5五桂▲6九玉△4五桂まで、という二枚桂の必至の基本手筋を狙われる。
▲4八銀型の工夫
上図は、先手の▲4八銀型が2八にスキを作って損な陣形だ。
これに後手が惑わされた。
▲7八飛の瞬間、△3四歩(詰めろ)▲6八金(上図)△8八角成▲同銀△2八角として次の△1九角成が詰めろなので後手は勝ったと思った・・・・
ところが、▲7四飛(詰めろ)△7三歩▲3四飛と横歩取られて受けなし。
そこで上記の手順のように、角交換して△5五角と据えるが、先手に▲4八銀型を生かした構想がある。
再度の△5五角に▲5八金上が銀ゼットの形。
△3三桂(悪手)に▲6五桂△8八角成▲6一角にて先手勝ち。
また図の△5五角に代えて△2八角でも同様に▲5八金上が成立。
△1九角成に▲6五桂が次の▲6一角と▲7四飛を狙って強烈だ。
先の△3三桂では△7三桂と反対の桂を跳ねて対抗しておけば後手が良かった。
おまけ
王手将棋で陥りやすい錯覚を最後に記す。
図からの指し手
▲7五歩 △5二金上 ▲7四歩 △同 歩 ▲7八飛 △8五歩
▲5五角 △3四歩 ▲8二角成 △7七角成まで
後手右四間飛車定跡
図の陣形が、右四間飛車定跡。
なぜ右四間飛車にするかというと、△6二銀型には重大な欠点があるからだ。
▲7七桂が必勝手順か?
三間飛車定跡で触れたように単純に▲7七桂~▲6五桂の天使の跳躍で、次の▲5三桂成が受けにくいのだ。
▲5三桂成を取ると角打ちの詰み。
かといって△5二金上と桂成を防ぐと▲6一角の腹角で終了。
△6四歩と桂跳ねを阻止するのは、▲8五桂とこちらに跳ねて次に▲7三桂成△同桂▲7四角を狙う。
△7二金は角交換から▲6一角。
△7四歩と受けても角交換から▲7三角打ちだ。
△4四歩には▲2六飛の浮き飛車から▲4六飛を狙う。
△7二飛にも▲2六飛で次に▲5六飛△5二金上▲6一角を狙う。
図では△1四歩と端角を防ぐのが最善のようだ。
これにはいきなり▲6五桂もあるが、▲2六飛(下図)からヒネリ飛車にして攻めに厚みを加えるのが確実な勝ち方。
次に▲3六飛の縦歩取りが強烈なので△4四角と防ぐが、▲5六飛△5二金上▲6五桂が厳しい。△8八角成には▲5三桂成で勝ち。
また、上図のような理想形に組めば必勝。
冒頭で類似形を検討したが、▲3六歩と△3五桂の5段目の桂を防いでいるのが大きく、後手から手を作りにくい。
△2六角と次の△2五桂を狙っても▲3五歩で防げる。
△8六歩▲同角△7七角成▲同角△8七飛成は、▲7二角の空き巣狙いの角でも、腹角の▲4一角△同玉▲3三角成△同銀(△同金)▲4五桂でも先手勝ち。
先手は、図から▲5八金上と備えた後▲6五桂の天使の跳躍から中央突破を狙えば勝てる。
右四間飛車が後手の救世主となるか?
その点、右四間飛車なら6一の地点にスキがないので、△5二金上と補強することができる。
同様に後手四間飛車も守りが堅く優秀だ。
図のように進行し、先手は岩より堅い▲2八歩から▲5六飛の理想形を狙う。
後手はどう指すべきか?
1.△7四歩
飛車の位置の違いで、▲5五角に△8二角と打てるのが自慢。
△7三角なら▲3三角成△同金▲8六桂(▲6六桂)で勝ちになるのは前に述べた通りだ。
しかし、今度は▲5五角でなく、反対側から打つ▲9五角の端角が急所。
8二に飛車がいないので△8四歩と受けることができない。
△8四角は▲同角から▲8三角の空き巣狙いの角。
△7二角▲同角成△同銀▲7一角で必至。
そこで▲9五角には△7三角と受ける一手だが、▲同角成△同桂にしつこく▲9五角と端角を打つ。
桂取りを△6四角と受けても▲7三角成△同角▲8六桂の「控えの桂」の手筋で受けがない。
ただし、▲8六桂で▲6六桂なら△6五角!の受けがあるので注意が必要だ。
一見タダのようだが、▲6五同桂なら△9五角の端角で受けがない。
△6五角に▲9六歩と端角を防ぐと△4七角成(図)を食らって投了だ。
2.△4五桂(天使の跳躍)
復習になるが、▲1五角△2四角▲同角△同歩▲6六角で先手良し。
王手将棋格言「桂跳ねには端角」
3.△8二銀
すぐに△7四歩は負けなので△8二銀と△7四歩を準備する。
先手は、岩より堅い▲2八歩を打ってから▲5六飛~▲3六歩と理想形に組む。
△5五桂や△3五桂の5段目の桂の筋を▲5六飛と▲3六歩で防ぐと、飛車が活用できていない後手の攻めは細い。
覗き見の角△2六角の筋には、▲3七角と受け、角交換から再度の△2六角に▲2七歩と催促。
△3七角成▲同銀と陣形が乱れても後続手はない。
そして角二枚手持ちにした先手からは▲4一角や▲3二角の決め手がある。
後手に有効手がないのに比べ、先手からは▲5五角がある。
狙いは、▲7三角成から▲5五桂の5段目の桂。
5筋を飛車で制圧しているのが大きい。
△4四角の受けには▲同角から再度の▲5五角で先手良し。
△5四角の受けには▲3五歩として△同歩なら▲7三角成△同銀▲3四桂を狙う。
▲8五桂△同桂▲8二角成とするのは△7五桂!(下図)や△7七桂打(つなぎ桂)で負けなので、注意が必要だ。
残念ながら右四間飛車の作戦も後手が苦しいようだ。
実戦例
桂馬を使うのが王手将棋
先手:鈴木 肇 元奨励会三段、元アマ名人
先手:中村 太地プロ
▲7六歩 △4二金 ▲3六歩 △6二銀 ▲4八銀
初手▲7六歩を指しながら「角道を開けるとポジションが取れて好手」と発言。
ところが意外にそうでもない。
例えば、図の局面から△3四歩とされると、6八にキズがある先手が困っている。
▲6八金には角交換から△5五角、▲6六歩には△5五角▲3七桂△同角成▲5五桂(5段目の桂)にて必至。
初手▲7六歩だと後手に角交換のタイミングを計られるのが厳しい。
やはり初手は▲2六歩が優るようだ。
図からの指し手
△5二金上 ▲6八銀
先述したように▲6八銀の無敵囲いは欠陥のある囲い。
8八の地点が弱く角にヒモがついてない。
桂を入手して△5五桂(5段目の桂)とされると受けがない。
対する後手陣はほぼ完成。
▲5五桂(5段目の桂)の詰めろには△6一玉で受かる。
以上の理由から、ここで△3四歩と交換を挑みたかった。
この後、後手は△1三角と使ったが、これが作戦負けに繋がったと思う。
図からの指し手
△1四歩 ▲3七桂 △1三角 ▲4五桂 △2四角 (下図)
▲2六歩 △8四歩 ▲7七桂 △6四歩 ▲1六歩 △4四歩
▲5三桂成 △同金直 ▲6五桂 △5六桂 まで後手勝ち
「桂を使うのが王手将棋」と鈴木アマは▲3七桂~▲4五桂と天使の跳躍。
自角がダイアゴナルを支配していて心強い。
次に▲3八飛~▲3五歩と3筋を攻めていけば自然に勝てる。
中村プロは△2四角と、▲3八飛に△1五角を用意しながら3三の地点を補強したが、この角はいずれ追われる位置なのでいかにも苦肉の策という感じ。
角の働きの差で先手が圧倒的に作戦勝ちだ。
▲1六歩としてから▲3八飛~▲3五歩を狙っても良さそうだし、▲6六角~▲7七桂ともう一つの桂馬を活用しても良さそう。
また、▲7五歩とこびん攻めの歩でも先手が良さそうだ。
ちなみに私の第一感は、▲3五歩。
△同角なら▲3八飛△2四角に▲3三桂成と殺到して勝ち。
実戦で鈴木元アマ名人は、図の局面から▲2六歩△8四歩の後、「桂を使うのが王手将棋」ともう一枚の桂を▲7七桂と跳ねたが、疑問だった。
△6四歩と受けられて継続が難しく、4五の桂を取られて△5六桂を食らい先手が敗れた。
中村太地七段によると、先手の陣形は、角と桂を渡しても詰まない、いわゆる「角・桂ゼット」の形なので、角と桂で攻めるのがpoint。
なので図では▲6六角~▲7五角(下図)か▲9六歩~▲9七角と、5三の地点を角と桂で狙えば先手勝ち。
▲6六角(▲9六歩)に△6四歩と受けると、▲5五角とその歩を取りに行き、△6三銀なら今度こそ▲3三桂成と殺到し、△3三同桂▲同角成△同金(△同角▲3四桂)▲5五桂で先手勝ち。
参考図
5三の地点をいくら金銀で守っても、角桂の二枚を渡して一枚の金気を入手すれば勝ち。
覚えておくべき手筋だ。
【後編】プロ棋士に「王手したら勝ち」のルールなら勝てるのか!?やってみた
久方ぶりに王手将棋を研究したが、やはり面白い。
色々と理解が深まり、学生時代より強くなった気がする。
将棋の棋力に影響がなければよいが。
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