将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【振り飛車ミレニアム】四間から三間に

三間飛車ミレニアム

斎藤vs佐藤康

ついにA級順位戦に振り飛車ミレニアムが現れた。
指したのは佐藤康光会長。
しかも四間飛車でなく三間飛車だ。
三間飛車ミレニアムの長所は、図のように△6四銀型に組めること。
△6四銀と△7三桂の形は、オールドファンには懐かしい矢倉4六銀・3七桂戦法と同じ。
△7二飛とできれば、攻めの形としては強力だが、さすがに玉が危険。
玉を堅く囲い、△7五歩▲同歩△同銀と一歩持って端攻めを狙う。
居飛車穴熊対策の最前線だ。

先手の斎藤慎太郎八段は、図のように▲8六角と牽制する。
次に角切りから▲4三銀も後手にとって気になるところだ。

先手は、コーヤン流の△5五歩▲同歩△4五歩という仕掛けを警戒して3六歩と突かない。
豊島vs青嶋(abemaトーナメント)のように▲3六歩と突いた実戦もあるが、先手が敗れている。


松尾流穴熊に固めて▲6八角とすれば作戦勝ちが見込まれる。
実戦は松尾流を目指した▲6八銀に、後手は△5五歩と反発した。
 

上図は、矢倉規広vs高野智史(C級2組順位戦)の一局面。(参照:2019将棋年鑑p.230)
敢えて松尾流穴熊に組ませ、将来5筋を交換して▲5二歩を狙っている。
三間飛車から中飛車にするのが定跡、△7四飛には▲5五歩△同歩▲同飛△5四歩▲8五飛の十字飛車がある。
このように、振りミレは、後手の△7四歩や△8四飛~△7四飛の狙いを牽制しながら、このままでも▲5五歩△同歩▲同飛△5四歩▲6五飛△6四歩▲9五角と、飛車を5段目で捌く狙いがあり、堅い松尾流穴熊に対抗できる優秀な作戦だ。


図からの指し手
△2四歩(端攻めや▲2五飛に備えた)
▲5五歩 △同 歩 ▲6五歩 △2三銀 ▲5五飛 △5四歩
▲5六飛 △2二銀 ▲2六歩 △7四飛 ▲3五歩 △4二角
▲2七銀 △3三金上 ▲3四歩 △同 銀 ▲3六銀 △8六歩
▲同 歩 △8八歩 ▲3五銀左 △8九歩成 ▲3四銀 △同金直
▲8五銀 △6七銀 ▲4六飛 △7六銀不成 ▲7四銀 △7七銀成
▲3五歩 △4五歩 ▲同 桂 △4四金寄 ▲4一飛 △7四歩
▲8一飛成 △3七歩 ▲4八金寄 △5五角 ▲3四桂 △3一桂
▲4二桂成 △同 金 ▲5三桂成 △4六角 ▲同 歩 △3八銀
▲同金寄 △同歩成 ▲同 金 △5九飛 ▲3九銀 △4九金
▲3七角 △3九金 ▲同 金


野月vs青嶋(棋王戦)では、野月八段が4二銀型から▲5五歩△同歩▲同飛に△4五歩▲同飛△5四金と反発したが、少し無理気味のようだ。
青嶋六段はその後も対出口戦(銀河戦)で三間ミレを採用し、下図の▲6五飛という研究手を披露した。 

△5三金に▲9六歩と次に▲9七桂~▲8五飛を見せ、△7三桂を用意した△7四歩に▲7五歩△4二角▲7四歩△6四金に▲1五歩と鋭い端攻めで勝っている。(参照:「将世2022.8号」p.160~)






天守閣美濃が有効か?

千田vs屋敷(王座戦)

図から後手は、定跡どおり△5二飛と5筋に戦機を求める。

前述のように▲3六飛なら△5五歩▲同歩△同飛が十字飛車。

しかし、先手の▲8六角に△4五歩?と突いてしまったため、十字飛車の筋がなくなり、▲3六飛と活用された。

△4五歩では△5五歩▲同歩△同飛と一歩手持ちにして将来の△5八歩を狙うか、△5五歩▲同歩△4五歩が正解だった。


遅ればせの△5五歩には手抜きで▲3四飛。

△5六歩に▲5四歩と押さえて先手好調。

後手は△4六歩▲同歩△4七歩と垂らすが、先手は▲4四角と角を切って攻める。

ここで先手は▲5三銀と攻めたが、▲4四銀の方が明快だった。

△5四飛▲3三銀成△3四飛▲同成銀と銀得だ。

それでも▲5三銀△5一飛に▲4四銀成△1五角▲5三歩成とすれば先手有利だったが、△5一飛に▲7五歩としたため後手のと金作りが間に合った。


butもちろんプロだからそのあたりは承知の上、

▲7五歩と▲5三歩成だったら▲7五歩の方が筋・・・それがプロの感性。

アナグマやミレニアムの将棋では、「俗手」が「筋の良い手」を上回ることが多々ある。

しかし、図で後手は△7六銀としてチャンスを逃した。

ここでは、△5三飛と一歩を入手しながら攻めを遅らせる手が正解。

・・・といっても人間には指しにくい。

▲5三同成銀△7七歩▲同桂△6九銀▲6八金△7七桂成▲同銀△7八角が飛車取りの先手で▲5四飛△8七角成で激戦だった。


しかし、先手も間違える。

▲3三飛成では▲6三とで良かった。

△5七飛成と金を取られるが、▲7三歩成△同銀▲7二と△同金▲7三成銀△同金▲7四歩で先手が指せた。


後手は△5九飛と打ったが敗着。

△2八飛と金取りに打っておけば難しかった。

屋敷九段は、▲7二角成△同金▲6三と△同金▲同成銀△7二歩に▲6二金(図)を気にしたが・・・

ここで△6一角の受けがあった。

飛車を取ると△7八飛成で負けなので▲7九金打と受けるが、△5七飛成▲6一金△2七角で悪いながらも頑張れた。

ここで▲7九金としたが、緩手。

▲4二飛と王手しておけば明快だった。

後手がチャンスを迎えたが、△7八角と誤り、▲4二飛△5二歩▲同飛成△9三玉▲8二銀△8四玉▲7三銀不成で投了となった。


△7八角では△3四角▲5六歩を利かしてから△7八角とすれば▲4二飛には△5二歩で受かる。

▲6二飛と打つしかないが、△7二金と先手で弾いて本譜とは大きな違いだ。


敗れたものの三間飛車ミレニアムの優秀性を示した一局。


四間飛車ミレニアム

▲9六歩型居飛車穴熊対策

最近の居飛車穴熊は、▲9六歩を受けることが多い。
後手からの端攻めに対して▲9五同歩と取った形が、後の▲9四桂の王手を見ている。
そこでミレニアムが採用されるようになった。
下図を見ると、高美濃に比べて手数は一手しか違わないが、かなり堅く感じる。

後手が通常の高美濃なら、ここで▲2四歩△同歩▲3五歩△同歩▲6五歩という仕掛けがある。


図からの指し手

▲2四歩 △同 歩 ▲3五歩 △同 歩 ▲6五歩 △7七角成(△6五同桂は▲3三角成△同銀▲6八銀で先手良し)

▲同 桂 △4六歩 ▲同 歩 △4九角 ▲6八銀 △7五歩 

▲2四飛 △2三歩 ▲同飛成 △2二歩 ▲3四龍 △7六歩 

▲3一龍 △4一歩 ▲2一龍 △7七歩成 ▲同銀左 △6五桂

▲2四飛よりも後手の玉頭攻めの方が厳しい。
▲2四飛と走るところでは、▲5一角もあるが、以下△2二飛▲4八飛△2七角成(△6七角成▲同銀△5七金は▲6六角がある)▲3四歩と玉頭を緩和する手段も考えられるが、△5二飛▲2四角成 △4七歩 ▲同 飛 △3八馬 ▲5七飛 △4八馬 ▲3三歩成(▲2七飛は△6五歩からの玉頭攻めがある)△5七馬 ▲同 銀 △2八飛 ▲4二と △2四飛成 ▲5二と △同 金 ▲5五歩 △2九龍 ▲5六角 △7九龍 ▲同 銀 △7六歩 といった変化が一例で後手が良い。


▲7八金型なら6七の金が紐付きなので、△4九角の筋に強いが、別の弱点がある。


図からの指し手
▲2四歩 △同 歩 ▲3五歩 △同 歩 ▲6五歩 △7七角成 
▲同 桂 △6五桂 ▲同 桂 △同 歩▲2四飛 △3三角 
▲2一飛成 △2二飛 ▲同 龍 △同 角

▲2一飛には△2八飛がぴったりだ。


居飛車の▲6五歩仕掛けは成立しないのか?

下図は、中村亮介六段vs西田拓也四段(第68期王座戦)。
果たして先手からの仕掛けは成立するか? 

図からの指し手
△4五歩 ▲3五歩 △同 歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲6五歩
△同 桂 ▲3三角成 △同 桂 ▲6六銀 △2五歩 

ここで▲3七角と打った。▲2四角△4三金▲3五角△3四歩▲6八角といった変化も考えられたが、角のラインを生かした玉頭戦に勝負を賭けた。


図からの指し手
▲3七角 △6三銀 ▲7五歩 △同 歩 ▲6八飛 △4六歩
▲同 角 △4五桂 ▲5五角 △5七桂左成 ▲同 銀 △4七飛成


振り飛車は、桂損の代償に飛車を成り込む。
以下▲6六銀 △4九龍 ▲2八飛 △4七角と進み先手が苦しくなった。
▲6六銀では▲4八銀 として次の▲6六歩を狙った方が面白かった。


佐藤天彦の△4五歩仕掛け

超早指し棋戦の第六回アベマトーナメントより取材。
先手の石井健太郎六段のミレニアムに対し、佐藤天彦九段は得意の居飛車穴熊に組む。

隙だらけの先手陣。
佐藤天彦九段は、△8六歩 ▲同 歩 △7五歩 ▲同 歩 △4五歩と仕掛けた。

先手から角交換して▲6四歩。
この手は将来遠く△4一の金を狙って▲9六角という手を作っている。
え、5二に金がいるじゃないかって・・・

▲3五歩と自分の桂頭から攻めると、金はいなくなるんです。
そこで▲3八金と固めたのが第一弾の自陣整備。

△8六飛に▲8七歩とされ、取ると▲9六角。
ここで▲4七金が第二弾の自陣整備。
忙しい中自陣に手を入れる、この呼吸は参考になる。

金底の歩が有名ですが、飛車底の歩も固いんです。

図からの指し手
▲3二金 △3一金 ▲3三桂 △同銀右 ▲同銀成
まで先手勝ち


早指し戦には振り飛車ミレニアム

上記のように早指し戦では威力を発揮する振り飛車ミレニアム。
時間の短いアマ棋戦やネット将棋では特に有効だ。



四間飛車穴熊に対してミレニアム(トーチカ)を用いると、左桂による端攻めが決まって面白いように勝てる。
同様に居飛車穴熊に対して振り飛車側がミレニアムを用いたらどうだろう。
将棋倶楽部24で実戦例を探してみた。

しかしである。
四間飛車ミレニアムは、居飛車穴熊に比べても恐ろしく手数がかかるのである。
先手はまだ▲3八金寄と締まりたいし、▲6五歩も突きたい。▲5六銀も上がり、ついでに▲4八飛も回ってから▲4五歩と攻めたい。
▲2六歩は不急の一手のようだが、△3五歩の桂頭攻めの備えだ。
△7三角とされると4六の歩を守る必要があるが▲4七金とは上がりたくない。
そもそも図の△5一角では△2四角▲4七金と嫌がらせをしてから△5一角と引かれるとツラかった。
端歩に二手かけていることもあって、先手番にもかかわらず手が遅れてしまった。
しかし、村田本にあるように、先手の振り飛車ミレニアム(略して「振りミレ」)の場合、玉側の端歩は、ぜひ位を取っておきたい


実戦は▲5六銀と△7三角に▲4五歩を用意したが、△7二飛と薄くなった角頭を狙われてしまった。
▲6五歩△7五歩▲同歩△同飛に▲4五歩と攻めたが、△7三角と6筋交換を防がれて後続手に困ったように見えた。


しかしそれでも▲1四歩△同歩▲1三歩の端攻めが強烈だった。
後手は△同銀と取ったが、角のラインが玉に直通してしまった。
ここで▲3八金寄のチャンスだった。
△2二銀とハッチを締め直すが、待望の▲4八飛が指せると先手も面白い。

図のように進めば、先手の玉の堅さが、視覚的に表現できている。
(現代将棋では、可視化できない玉の堅さ=寄りづらさが重要。しかし、対抗形の場合、相居飛車の将棋に比べて玉の堅さ=寄りづらさは可視化できる。)
なお、単に▲4八飛と回ったが、先に▲4四歩△同銀を決めておくべきかもしれない。


実戦は▲7八飛と飛車の素抜きを狙った。
△2二銀に▲2五桂としたが、△6五歩とされると次の△6六歩が滅茶苦茶味が良いのでそれまでに手を作らなければいけない。
▲1三歩△同香▲同桂成△同桂▲1四香△1二歩と受けられ▲1九香と二段ロケットを据えたが、△6六歩が痛すぎる。


先手は▲6八飛から△5五歩に▲6六飛と銀を犠牲に飛車を成り込むという非常手段に訴えた。
後手は△4一歩と盤石の底歩。
▲4二歩にも手堅く△同金上と相手し、▲1三香成から▲5四桂に△3二金が、楽観からの敗着。
△7七飛成▲4二桂成△同金▲4三歩△5七歩成と攻め合うのが正しく、▲4二歩成に△7四角の王手がぴったりの詰めろ逃れで勝っていた。
必勝の将棋を逆転された後手は、投げ切れずに△7七飛成まで指したが、▲3二竜が必死になるので、相手の手番だが投了した。


フィッシャールールのアベマ将棋トーナメントもそうだが、持ち時間の短い将棋は、見ている側なら大変面白い。


開始日時:2020/08/11 20:38:21
棋戦:レーティング対局室(早指し)
先手:soupuri(2789)
後手:--tw--(2866)
▲7六歩 △8四歩 ▲1六歩 △8五歩 ▲7七角 △3四歩
▲6六歩 △6二銀 ▲1五歩 △4二玉 ▲7八銀 △3二玉
▲6七銀 △5二金右 ▲6八飛 △5四歩 ▲4八玉 △5三銀
▲3八玉 △3三角 ▲5八金左 △2二玉 ▲4六歩 △4四歩
▲3六歩 △1二香 ▲3七桂 △1一玉 ▲2八銀 △2二銀
▲3九金 △4三金 ▲2六歩 △3一金 ▲2九玉 △7四歩
▲4八金寄 △5一角 ▲5六銀 △7二飛 ▲6五歩 △7五歩
▲同 歩 △同 飛 ▲4五歩 △7三角 ▲6四歩 △同 歩
▲1四歩 △同 歩 ▲1三歩 △同 銀 ▲7八飛 △2二銀
▲2五桂 △6五歩 ▲4四歩 △同 銀 ▲1三歩 △同 香
▲同桂成 △同 桂 ▲1四香 △1二歩 ▲1九香 △6六歩
▲6八飛 △5五歩 ▲6六飛 △5六歩 ▲6一飛成 △4一歩
▲4二歩 △同金上 ▲1三香成 △同 歩 ▲5四桂 △3二金
▲4一龍 △2一銀 ▲1四歩 △同 歩 ▲1三歩 △同 銀
▲1四香 △同 銀 ▲1三歩 △7七飛成
まで88手で先手の反則勝ち


順位戦でも振り飛車ミレニアム

先崎vs宮本(C級一組順位戦)から取材。

実戦は、先手が早くに▲7八金型を決めてしまったが、できれば形を決めたくない。
▲7八飛と飛車を転回してミレニアムの弱点である桂頭攻めを狙いたいからだ。
後手番ミレニアムだが、端歩を突き合っているため、先の実戦と比べると、それなりの陣形になった。
しかし、端を突き越した場合に比べて△8五桂の威力は激減している。
そこで△6五歩▲同歩△同桂が主な狙いになる。
5七の銀を動かせれば△4六歩から4筋を突破できる。


図から▲8六角は、指してみたい手だ。
しかし、その場合は▲7九金型が優る。



角のライン上に飛車がいる。
6四の歩を守るため△6三金は手損だし、△6三銀だと攻撃の形が崩れる。
△6五歩でどうか?
△6五歩▲同歩△同桂▲6六銀△4六歩なら▲5五歩が厳しく先手が有利になる。
△6五歩▲同歩△同銀としたい。
対して①▲6六歩と収めるか、②▲6八飛と反発するかの二択。


①▲6六歩△5四銀▲3八飛△4四角▲7五歩△同歩▲7八飛△6三銀▲7五飛△7四歩▲7八飛(図)

②▲6八飛 △4六歩 ▲同 歩 △4五歩 ▲6六歩 △5四銀 ▲5五歩 △6三銀 ▲4八飛 △4六歩▲同 銀 △9五歩 ▲同 歩 △5五角 ▲4四歩 △同 飛 ▲4五歩 △4六角 ▲同 飛
△5四飛 ▲5六歩 △7五歩


このように▲8六角は有力だが、実戦は▲5九角(図)だった。
▲7八金型だったので△6五歩の順に自信が持てなかったか?
なお△6五歩とされるのが嫌なら▲3六歩△4五歩の交換を省いて▲8六角なら△6五歩には▲同歩△同銀▲5五歩と強く戦って先手が指せる。
▲8六角の筋は、四間飛車ミレニアムの課題となりそうだ。

対して△7二金寄りなら▲2六角が角成を狙って快調だが、当然後手は△6五歩と攻めてくる。
これに▲3七角が形だが、△6六歩▲同銀△4六歩▲同歩(▲同角は△同飛から△3九角)△3五歩と角頭を攻められて、▲2六飛の受けには△1五角がある。
▲5九角の前に▲1六歩の一手が必要だった。


手損で癪だが△6五歩に▲6八角と受ける手が有力だった。
△6五歩を突かせて手順に角筋を通そうと目論んでいる。
△6六歩▲同銀に△4六歩▲同歩を入れるかどうか難しいが△6五銀と攻め、▲同銀なら△6六歩の狙い。
これに金が逃げると煩いので▲同金か▲7四銀という変化になるが、簡明なのは△6五銀に▲5五歩の押さえ込み。
△6六銀▲同金△6四銀には▲5八飛(▲5六銀は△6五歩)と数の受けで対抗し、△7二金寄~△6二飛には▲6七歩と固く受けておけば▲3七桂の活用が間に合いそうだ。
7八金型を生かす指し方をしたい。
△同桂▲6六銀△4六歩に▲5五歩が用意の一手。
△6三銀に▲6五銀で桂得して成功したようだが、△6四歩と冷静に対応され、▲5六銀に△4七歩成とと金を作られる。
先崎九段は気合で▲6四同銀としたが暴発だった。
やはり▲5六銀と辛抱し、△4七歩成に▲4五桂で互角以上の形勢だった。

振りミレ初登場の譜

プロ棋戦で初めて振りミレが登場した澤田vs都成戦は、図の局面で9筋の端歩の突き合いがない形から次のように進行した。


図からの指し手

▲1六歩 △9四歩 ▲5九角 △6五歩 ▲3七角 △4六歩

▲同 歩 △3五歩 ▲2六飛 △7二金寄 ▲3五歩 △6六歩

▲同 銀 △6二飛


大駒の働きが大違いで、振りミレとしては十分な分かれである。

何でもない進行のようだが、▲5九角と▲1五角を見せたのに△6五歩と攻めたのが強い手。

▲1六歩に△1四歩と受けると▲2四歩△同歩(△同角▲3七角△6三金▲5五歩△4三銀▲5九角!で▲6八角~▲5六銀を狙う。)▲3五歩△同歩▲1五歩などの攻めを与える。

もっと早い▲1五角にも△同角▲同歩△6五歩と攻め、▲2四歩に△4六歩▲同銀△6六歩▲同金△3九角▲6八飛に△2四歩の要領で対応。

振りミレは手数がかかるので、決して1筋を受けてはいけない。


△6五歩に▲6八角なら安全だが先崎九段は良さを求めて▲同歩と取った。
△同桂▲6六銀△4六歩に▲5五歩が用意の一手。
△6三銀に▲6五銀で桂得して成功したようだが、△6四歩と冷静に対応され、▲5六銀に△4七歩成とと金を作られる。
先崎九段は気合で▲6四同銀としたが暴発だった。
やはり▲5六銀と辛抱し、△4七歩成に▲4五桂で互角以上の形勢だった。
 

振りミレ2023年版

竹内五段vs中村六段(棋王戦)より取材。

上記の記事にて有力と提起した▲8六角の手法は、すっかり一般的となった。
筆者の感覚は、あながち見当はずれではなかったわけで嬉しい。
図の▲8六角のタイミングでは、上記のように▲7九金△6二金寄り▲8六角とした方が得だが、△6二金寄りには金を寄らずに△4五歩とされ、▲8六角に△6五歩▲同歩△同銀と歩交換される。
図のタイミングなら上で解説したように△6五歩は▲同歩△同銀▲5五歩があって無理なので、△6三金と受けることになる。
そこで先手は、▲7八飛から7筋の歩交換を狙う。
飛車が移動したので△2二飛としたいが、▲7九金△2四歩▲3六歩△2五歩▲3五歩△同歩▲7五歩△同歩▲同飛と捌いて居飛車が指せる。
したがって後手が△4五歩として先手の7筋交換を許すのは仕方ない。
実戦はそこで△8四歩だが、下図の△2二飛も考えられる。 

歩交換を果たしたので飛車を7八に置いておく意味はない。
▲2八飛と受け、△2四歩▲同歩△同飛と飛車交換を挑まれる手には金が浮いているので▲2五歩は仕方ない。
△2二飛に▲7九金と締まって強く戦える態勢ができた。
後手は△4四角(下図)から△2六歩と逆襲を図る。

ここで好手がある。
▲5五歩だ。
△同銀は▲5六歩で銀が死ぬので、△同角だが▲2四歩△2六歩▲同飛△4四角に、今度は▲2三歩成と飛車を取り合って先手がいい。
△4四角では△1四歩として△1三桂を狙った方が良い。


△2二飛では、下図の△9三銀という手もある。 

図からの指し手
▲7九金 △8四銀 ▲3六歩 △9三香 ▲3七桂 △9二飛(図)

次に△8五桂とし、機を見て端攻めを炸裂させる。
先手としては、嫌な形だ。


佐藤康光九段が、第51期王将戦第一局(平成14年1月16・17日)で、羽生善治九段の居飛車穴熊に対し、三間飛車から図に似た雀刺しに組んで三段ロケットから快勝したことがある。
(「羽生vs佐藤全局集」63番)
この将棋で勢いがついた佐藤は、三度目の挑戦で羽生から王将位を奪った。


なお、雀刺しに組むなら、下図のような形の方が、自然で、手数がかからない。
耀龍四間飛車の優秀性の一端が分かる。