将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

傑作将棋小説「覇王の譜」

長足の進歩だ。
今までの二作、「サラの柔らかな香車」と「サラは銀の涙を探しに」は、あまり将棋を知らない人向けに書かれたような将棋小説だった。
それだけにコアな将棋ファンとしては物足りない面があった。
しかし、今回は作中で言う「将棋の国」住人向けに書かれたもので、これだけ将棋ファンの琴線に触れる作品は空前絶後だろう。
対局描写では、百田尚樹の『幻庵』に優るものは現れないと思っていたが、あくまでも対象は囲碁であった。将棋小説としては、この作品こそ正真正銘の傑作であると断言できる。
この本を読むだけで将棋が強くなる。


キャラクターの素晴らしさ

前二作では失礼ながら女性の描写に拙(つたな)さを感じた。
しかし、この作品は違う。
女性である前に一個の勝負師であろうとしているトップ女流棋士・江籠紗香が活写されており、主人公との微妙な恋愛(?)感情も巧みに表現されている。
なかなかの毒舌家だ。

「弱いんいうんはまだええで。強くなる可能性があるからな。でもあの将棋は筋が悪すぎるわ。良くて初段まで。結局、普及・聞き役コースやろな。見栄えも人並みやから若いうちに稼がなあかん。」

「筋悪の極み乙女」「親を質に入れても指せない手」「前世は虫」「そこらへんの道場におるおっさんを適当に選んで連れて来てもこれよりましな手を指す」

このように表の顔は美人女流棋士、裏の顔は性悪ヤンキー女という江籠紗香だが、直江の応援のために、わざわざタイトル戦の対局場を訪れる一面もある。
そこで大盤解説の聞き手の女流棋士が愛想笑いをして媚びを売っている姿に、昔の自分の姿を鏡で見せられているような嫌悪感を覚え、いたたまれなくなる。
おそらく殆どの女流棋士が抱いている気持ちを代弁していて鋭い。


また、主人公の第二の師匠の妻、師村美弥子の描写には、行方夫人を思わせるところがあり、雰囲気が伝わった。
二人ともステロタイプな女性像でないところが良い。

 

他のキャラクターも素晴らしい。
どの人物も平面的でなく、人間としての厚み、多面性が伝わってくる。


友であり、敵役でもある剛力英明の人物像は、読み進めるにつれて、万華鏡のように複雑に印象が変わる。
敗北者であった主人公を変えたのは、信頼していた友に謀られたという思い。
この動機には説得力がある。
おかげでこの作品が安直なサクセスストーリーに嵌らなかった。


主人公を変えたもう一人が、高遠拓未という、いわゆる天才少年。 
「棋士は儲からないんだ。トップで年一億以上稼げるプロスポーツなんてたくさんある。億なんて、トレーダー、実業家、芸能人にとってみたらゴミ屑みたいなものだよ。今時ユーチューバーだってそのくらいは稼いでいる。将棋界の人たちは世間を知らないんだ。」
「そもそも将棋って、世界とか社会とかのために役に立っているの?」
「将棋に未来はないと思うな」
クソ生意気な拓未少年も、そのひねくれた言葉遣いの裏に隠された心情に、次第に愛さずにはいられなくなる。


まとめて登場人物を紹介しよう。


登場人物

直江大(なおえだい)
主人公。二十五歳。C級2組。五段。


剛力英明(ごうりきひであき)
二十五歳。B級1組。王座。


師村柊一郎(しむらしゅういちろう)
三十五歳。A級。王将。
直江大の師匠。二つ名は「孤剣」。


江籠紗香(えごさやか)
二十三歳。女流五冠。


高遠拓未(たかとおたくみ)
十一歳、小学五年生。京都の天才少年。


北神仁(きたがみじん)
三十一歳。四冠王。将棋界の第一人者。


三木邦光(みきくにみつ)
師村柊一郎の亡き師匠。


千々岩秀世(ちぢわひでよ)
五十歳。棋聖。
剛力英明の師匠。棋界保守派の長。


佐高敦(さたかあつし)
東京毎日新聞所属の観戦記者。


中込成彦(なかごめなるひこ)
京橋、バー「ゴメス」のマスター。
元奨励会員。


遠藤真司(えんどうしんじ)
十八歳。C級2組。四段。


モデルは?

対局場は、連盟はもちろん、「中の坊瑞苑」などお馴染みの旅館の名がそのまま使われていて、対局風景もそのまま。「陣屋カレー」も登場、美味さが伝わった。


棋戦は、棋聖・王座など実際通りだが、最後にフィクションとして「蒼天戦」という新タイトル戦が戦われる。


どの人物もモデルが特定されないように巧く書かれているが、朝ドラ『ふたりっ子』の銀爺のモデルになった「最後の真剣師」故大田学さんが尾賀直孝という名で登場する。
千々岩秀世棋聖には、日本将棋連盟元会長の故米長邦雄九段を思わせるところが若干あった。しかし、そんなに色濃くはない。
「光速の寄せ」で知られる谷川浩司九段を基にした記述はある。

かつて「神速の攻め」で鳴らした天才棋士の唯一の弱点は入玉だった。


将棋について

棋士とは?

己の足りなさを自覚しながら、それでも頂を目指すものが持つべき資質はただひとつ。狂気だけ。「指し狂い」なるものが棋士の本質なのである。


コンピュータ将棋について

人間より強いAI同士が作り出す将棋は、トッププロでさえ手の解釈に苦しむ現代のロゼッタストーンだ。いわば人間たちが手にするはずのなかったオーパーツ。魅入られないわけがない。


相掛かり

 飛車先の歩を目一杯伸ばし合った形は、さながら剣道で互いに上段の構えを取った姿のようだ。将棋ではこの形を「相掛かり」と呼ぶ。昔は「相懸かり」と書いたそうだが、互いに自信があって誘導しないと実現しないためそう言われていたのかもしれない。
 角換わりや横歩取りと比べ、定跡が整備されておらず力戦調になることの多かった相掛かりであるが、近年急速に体系化が進んでいる。原動力になっているのは、コンピュータソフトによる解析だ。道なきところに道を作る役割は今やソフトが果たしている。もちろん、その道を歩き通せるかは指し手の腕次第ではあるのだが。
 具体的には十年前と、今の相掛かりでは飛車先の歩を交換するタイミングが違う、現代相掛かりのほうが数手遅いのだ。これは、相手に先に形を決めさせてそれに対応した有利な形を築く-というジャンケンにおける後出し理論が浸透したからである。対振り飛車や矢倉で考え出された原理が、しばらく後に他戦法で形を変えて導入されるという例は多い。遺伝学で水平伝播と呼ばれているような現象がこの世界でも起こっているのだ。

相穴熊

相穴熊の終盤は経験値がものを言う。他の戦型では考えられないような踏み込みや、一見損と思える駒の交換が好手になる局面が頻出するのだ。


 

将棋プロの実態

研究と実戦の距離は?

 最初の三十分と比べると、少考が続くようになってきたが、まだ研究範囲から外れていない。しかし、研究の範囲内とは言え「これにてよし」と結論が出せているわけではなかった。

 仮にと進めた一局面ですら膨大な変化を孕んでおり、最先端のAIをもってしても網羅し尽くしてないのだ。結局、研究が有効なのは相手が明確なミスをした時だけなのである。おそらくそれは変化の枝全体の一パ-セントにも満たないだろう。研究には相手を落とし穴に嵌めるためのものと、自分が落ちないようにするものの二種類がある。AIを導入した時に注入したのは前者だったが、今ではもっぱら後者のためにPCと向かい合っている。棋士が事前研究にかけなければならないコストは年々増えているが、最後の勝負は自分の膂力で決まるということだけは変わらない。


プロの勉強法は?

 直江は部屋の中央に置かれた六寸盤の前に座ると、駒箱から駒を取り出して、一枚一枚ゆっくりと並べていき、数分間の瞑想を行う。しばらくして目を開けると、床に置かれた一冊の本を取って、一ページ一、二秒という速さでめくっていく。簡単な「詰将棋」の問題集だ。
 (中略)直江は僅か十分程で四冊をめくり終え、深く息を吐いた。
 次に手にしたのは「詰将棋パラダイス」という薄い冊子のような月刊誌である。先ほど直江が解いていたのは、プロならば一目で解答が浮かぶ三手から七手の詰将棋だった。「詰パラ」には初級者のために客寄せ用の簡単な問題も掲載されているが、メインとなるのは長手数の難解作や芸術作なのである。百手を超えるものもざらだ。呻りながら一時間かけて格闘する。もちろん、盤上に並べて検討することはしない。全てを脳内で完結させるというのが、このトレーニングの肝なのだ。
 (中略)
 一時間が過ぎ、スマホのアラームが鳴ると、ようやく盤上の駒に手を触れた。昨日の対局を再現し、要所要所で手を止めながら考える。負けた将棋を引きずらず、早く忘れることがプロとしての合理的な在り方だと主張する棋士もいるが、直江にそのような潔さはない。何度も何度も反芻し、傷口に塩を捻じり込み続けることで強くなっきたという自負がある。

・・・これと同様の勉強を森内九段がやっていた、と伝え聞いたことがある。 


勝負の機微

 「直江先生、残り一分です」
記録の声に合わせ、龍を自陣に引き上げた。徹底的に粘りに出る順である。この手には多少悪くとも、あと五十手は長引かせてやるという意思を込めた。
 羽藤は右手で眼鏡を整え、「ひゅう」と息を吐いた。おそらく、想像していなかった手なのだ。攻め合いでわずかに残しているというのが、彼の読みだったのだろう。
 先に羽藤が秒読みになり、続いて直江も一手六十秒の世界に入っていく。
 直江は頑強に受け続け、王から遠い筋のと金を忍び寄せることで、羽藤にプレッシャーをかけた。
 先ほどまでと違い、羽藤には速い手ではなく確実な攻めが求められる。これまでの読み筋を全て放棄しなければならない、というのも直江が完全なる受けを選択したことの利点だ。
 (中略)
 羽藤は見える中で一番厳しい順を選択した。しかし、それは直江の待ち受けるところでもある。この性急さが羽藤の棋士としての限界を示しているようにも思われた。
実際に対局しているが如き心理描写に心拍数が高まる。
速い手を求める発想力と確実な攻めを探る広い視野は、使う脳味噌が違う。
簡単にギアチェンジできるのが超一流。

終局の光景

勝った瞬間、周りの様子と音が飛び込んできた。極度の緊張から解放された時の感覚は、長く潜っていた暗い水面から顔を出し陽光を浴びた時のそれによく似ている。遠藤はというと、正座の膝の上で拳を握りしめたまま、視線を右斜め上にやってしばらく呆然としていた。

どこか既視感がある。


焼肉屋の光景

隣の席にいるのはネクタイを締めたサラリーマンらしき男たちで、テーブルに空いた中ジョッキを並べていた。白髪頭と黒の七三。若いほうはしきりに頷いて相づちを打っていたが、足下を見るとしきりに貧乏揺すりをしている。本心は下半身に出るものらしい。

鋭い観察眼は将棋だけのものではない。

橋本長道・・・いい作家になった。

将棋文学の頂点

(棋譜情報の中で)最も記憶を刺激する情報は消費時間である。棋士にとってのマドレーヌの香りと言って良い。ひとたび触れればどの局面で悩んだのかが昨日のことのように鮮明に浮かび上がる。

いうまでもなく、プルースト『失われし時を求めて』を下敷きにしている。
作者の厚い読書遍歴が窺われる。

選びに選ばれた言葉

「最終盤を戦う棋士にとって、時は金よりも尊い。そしてその金は体感として一瞬のうちに溶けて消える。」
いきなりこんな描写で、選びに選ばれた言葉が読み手の胸に突き刺さる。
「1分将棋に過去は存在しない。たとえ取り返しのつかない悪手を指してしまっても、振り返ってはならない。反省してはならない。今現在盤上で起こっていることをありのまま受け入れ、未来だけを読み続けるべきなのだ。」

「迷う」でなく「躊躇う」、「深く」でなく「遠くまで読む」、「知られた」でなく「鳴らした」、「見抜かれている」でなく「背中まで見透かされている」。
推敲に推敲を重ねた表現が窺える。
長い助走をとったからと言って、高く飛べる世界ではない。

「将棋の作りは粗く、奨励会感覚が抜けきっていない。そうした拙さは初段から三段の間に勝てないことで矯正されるものだが、なまじ終盤力と勝負勘があるため省みられず、そのままプロになってしまったのだろう。」

「早見え早指しの棋士は若いうちは才能があるとみなされ、過大評価される傾向にある。しかし、長期的に見れば、持ち時間に対する考え方を改めない限り、彼が上に突き抜けることはないだろう。いくら時間差をつけることができたとしても、上のトップクラスの棋士相手に逆転勝ちを収め続けるのは至難の業だからだ。」

「対局で負かして、感想戦でも負かす。それで初めて相手に強さを認めさせることができる。」

「超一流と一流、二流の差は紙一重。負けている将棋をどれだけ拾えるかが棋士の将来を分ける。」

原田泰夫九段の「堂々と勝ち堂々と負ける」 

いかなる闘いにもたじろぐな
偶然の利益は騎士らしく潔く捨てよ
威張らず、誇りを持って勝て
言い訳せず、品位を持って負けよ

堂々と勝ち、堂々と負けよ
勝利より大切なのはこの態度なのだ

汝を打ち破りし者に最初の感激を、汝が打ち破りし者に感動を与えよ

堂々と勝ち、堂々と負けよ
汝の精神を、汝の肉体を、常に清廉に保て
そして、汝自身の、汝のクラブの、汝の国の名誉を汚すことなかれ

ドイツの哲学者カールー・ダイムの詩より

囲碁上達のために

囲碁と将棋

 並列に語られることが多いが、勝敗のつき方に大きな違いがある。囲碁は陣地を奪い合う遊戯なため、負けても奪った陣地の分だけ達成感が残る。しかし、将棋の場合は勝ちと負けしかない。ゼロか百かだ。だから、敗北がとりわけ悔しい。
     綾崎隼著「ぼくらに嘘がひとつだけ」より

「旦那の碁、丁稚の将棋」と言われる所以である。
将棋指しは、碁においても陣地作りより相手の石を殺すことを目的にしがちである。
少なくとも私の碁はそうだった。
最初に手にした棋書の影響が大きかった?

囲碁でもAI革命が

カミソリ坂田の時代に碁を学んだ私だが、現代碁ではその時の常識が180°変わっている。
どんなふうに変わったか、思いつくまま列挙してみる。

1.星には三々

星に対しては、掛かるよりも三々に入る方をAIは好む。
小ゲイマ掛かりに手抜きすると両掛かりが厳しいとされていたが、そうでもないことがわかり、むしろ三々に入る方が効果的と分かった。
その裏には三々定石の進化がある。
これまで価値が低いとされていた星からのシマリが、隅を守って大きな手と認識されるようになった。


従来の小ケイマ掛かりに対しては、これまで評価されなかったコスミツケが有力。

【AI定石_01】星・コスミツケ ~やさしい囲碁レッスン~
三々入る手が残るのが低評価の理由だったが、打ち込みが好手で、上ツケに対してはカケツギを利かして隅を固めることができる。


逆に今まで常識とされていた一見トビ対しては、従来のケイマスベリでなく、上ノゾキが有力。黒がツゲば、そこでケイマにスベるとノゾキとツギの交換が利かしだというのだ。
(下ノゾキの手段が消え、黒を固めて損というのが今までの評価)

【AI定石_14】星・一間・ノゾキ ~やさしい囲碁レッスン~
ちなみに呉清源九段もこのノゾキを打ったことがある。


また、ケイマ受けに対しては、従来のケイマスベリに代えてツケハネが定石となった。

【新・AI定石_14】星の定石:ツケ・二段バネ ~やさしい囲碁レッスン~
白がケイマスベリする定石に対しては、苑田九段が「いずれこの手は定石でなくなります」と予言していたが、卓見だった。
なお、先の一見トビに同様にツケハネするのは、黒石が三線でなく四線にあるので白が少し損。


2.小目には小ゲイマ掛かり

大ゲイマ掛かりなど一間以外の掛かりは手抜きされて響きが薄い。
一間高掛かりは、ツケ引きされて地に甘い。
以上二点から小ゲイマ掛かりを好む。
対して二間ハサミが私が碁を覚えた時代は主流だったが、現代では本因坊秀策のコスミやケイマ、コスミ付けなどが再評価されている。


3.小目の締まりは小ゲイマでなく二間高シマリ

小ゲイマ締まりは、偏っているという評価。
ツケによって凝り形にするのが常套手段。
代わって今まで隅に甘いとされていた二間高シマリの発展性が評価されている。


4.ヒラキの価値が下がった

中国流・ミニ中国流・ベトナム流(臨戦中国流)など、隅から辺にヒラいて模様を張る布石がAIによって否定された。
星にケイマに掛かって辺の星を占めるという、これまで常識だった定石も否定された。
ヒラキによって辺に展開するよりも隅の価値が高いようだ。
そもそもAIは、大模様に対する消し方が巧み。
古碁鑑賞の本があるが、「現代感覚ならこう打つ」という批評のほとんどが間違いだった。
このあたり、江戸時代の感覚の方がむしろ優れていた。 


囲碁は人生に通ず

囲碁においては、目先の地を稼ぐよりも、将来を見据えて厚みを築く方が大きい。
また、石数が多いときはタテヨコに置き、石数が少ないときはナナメに置く。
これは将棋にも通じるし、人生にも通じる。
陳腐な表現だが、囲碁は一見単純に見えて深淵だ。 
素数が入った分数を無限に掛け合わせると円周率のπが出てくるようなものだ。



簡単な囲碁用語

盤が広いため、将棋に比べて囲碁は様々な形を言語化して表現している。
四の十三などというより分かりやすい。

  • 斜めの石に割り込むのを「ハザマ(間)」をつくと言う。
  • 相手の四線の石に対し、三線の石から二線に侵入するのを「スペリ(サルスベリ)」といい、「ケイマスベリ(小ザル)」や「大ゲイマスベリ(大ザル)」などの種類がある。
  • また、四線の石のすぐ下に石を並べるのを「鉄柱」といい、スベリを防いでいる。 

    Aの部分が空いた三角形の形を「アキ三角」と呼び、愚形の代表。
    石数のわりに働きに乏しい。
    理由があって自らアキ三角を作りに行く手を「グズむ」といい、その形を「グズミ」という。

苑田勇一プロの格言

言語化することは上達の早道。
苑田勇一プロは関西棋院所属の九段。

どこへ打つべきか?

  1. 石数が多くて、生きていないところが大きい
  2. 生きている石の近くは小さい→生きていない石の近くは大きい
  3. 自分の石数の多いときは、石をタテヨコに→自分の石数が相手より少ないときには、石をナナメに
  4. 幅と高さがあるところが大きい(三間以下の幅は狭いので、相手に地にさせる。四間以上の幅は広いので、地になればいい。相手が広い幅のときには、打ち込みを狙う。)
  5. 地は囲わず囲わせる
  6. 生きていない石で地を作るのは大きい
  7. 生きている石から地を増やすのは小さい
  8. 三つ目の眼を作らせる→三つ目の眼を作らない
  9. 生きている石がたくさんできると、隅と三線が大きくなる。生きていない石が多いときは、三線より四線が大きくなる。

どう打つべきか?

自分の石がかなり多い→取りかけに行く
自分の石が3つ以上多い→いじめる
自分の石が相手の石とほとんど同じ→競り場では競り負けない
自分の石が3つ以上少ない→サバキ


囲碁用語の意味

「取りかけ」
相手の石を取りに行く(自分の方が危ない)。

「いじめる」
相手の眼形を奪い、利益のある方(外)と利益が小さい方(内)と換わる。
相手の石をいじめるときには、相手のナナメのラインを切っていく。

「攻める」

意外だが、相手の石を取りに行くことは、「攻め」ではない。

利益を得ながら逃がす(追いかける)こと。利益のある方から追いかけること。

「美人は追わず」
攻めの基本のひとつ「モタレ」攻め。
弱い石(美人)はつい攻めたくなるが、直接攻めても利益があがらないときには、追わずに周辺から手をつけていく。

「ツケる」
互いに強くなる→サバキはツケから。弱い石にはツケるな!

「競り合い」
生きてなくて同じくらいの強さの石が接近しているところ、その場所を「競り場」とも呼ぶ。

「カラミ」
攻めの基本のひとつ。相手の弱い石どうしを引きつけて、切ること。

「置碁定石」
悪いワカレになるにもかかわらず「定石」と呼ばれている。
避けること!

AIによって下品な手(?)が評価が上がった

星や小目に先着された相手の石に対しケイマなどに掛かっていく。
三線でなく四線にかかるのをガカリなどと表現、対してコスミやケイマに締まるのが通常だが、積極的にその石を三線から挟むのを「ハサミ」、四線に挟むのを「高バサミ」という。


昔は、早い時期に相手の石にくっつけるのは良くないと教わった。
下品な手だと。
しかし、AIが肩ツキ、ツケ、コスミツケ、カドなどを好むことにより、その常識は過去のものとなった。


相手の石にツケる→強くさせる と否定的だったのが
相手の石にツケる→重くさせる と肯定的に評価されるようになった。


また、くっつけることにより先手を取りやすい。


依田紀基「強くなりたきゃ石に聞け」

前述の「苑田勇一プロの格言」と同じだが、言語化は上達の早道。
普遍性のある碁の真理に触れている。
ちなみにAIはその上の真理を行く。「名人に定石なし」


戦いと大場の考え方

可能性の高い方向を目指そう

幅が広いところが大場。また、幅に加え高さが見込まれるところも大きい。
自分の弱い石を守ったり、相手の弱い石を攻めていくのは、ただ模様を広げるより大きい。

模様に入ってもらうとうれしい

入ってきてもらえることで得を図る。
弱い方から壁に押し付けるような気分でケイマする。

戦うべきところ

戦うべき場所、戦っては不利な場所をよく見極める。

変化することを覚えよう

効率の良さを考えます。
黒と白が同じ目数の陣地を囲うなら手数の少ない方が効率が良く、一手が方々へ影響力があれば「一石二鳥」というように効率が良い。
打った石を大事にする人が多いが、逃げると追われ、いつまでたっても収まらない。
相手の石数が多いときは変化する。
発展性のある方に石をもっていく。

相手の出方で対応を決める

根拠を確認しよう

序盤から中盤にかけて特に注意すべきが「強い石」と「弱い石」。根拠のない石を見つけ、攻めよう。
完全に生きていないと、利き(相手の言うことを利かざるを得ないという拙い状況)が生じる。
根拠を脅かすところに先着することは、主導権を握ることにもつながる。
大場に向かうよりも、まだ生きていない弱い石を見つけて攻めるのが大きい。

攻める方向に気を付けよう

石が強いか弱いかを判断するためには眼があるかどうかがポイントになる。
攻めの方向は、弱い石から動くこと。

大局観を身に着けよう

相手に打たれると、その近くに打ちたくなる人が多い。可能性の大きなところに目を向けよう。
まだ生きていない石の周辺は、戦いが起きる可能性が大きい。弱い石の周辺に目を向けると、可能性が大きなところを見つけやすくなります。

接近戦の考え方

弱い石同士が隣り合っているところが大事な戦いの場所となる。
戦っている時は、まず自分の弱い石を見つけ、その弱い石から動くことが大切。

攻めたい石は追いかけない→美人は追わず(苑田)

大抵のスポーツは攻めている方が優勢ですが、囲碁に関しては、攻めているからといって有利であるとは限らない。下手すると攻めているうちにどんどん損をする可能性がある。

攻める時には、必ず自分が打った手が何らかの得をすることが大切。
弱い石を攻める手は「利き」と考え、タイミングよく使う。

ツケると強くなる

攻めたい石は遠くから

お互いの弱い石が向き合ている場所を「急場」といい、手を抜いてはいけない。
戦いの極意は、
  1. 攻めたい石に直接働きかけず、周囲にある相手の近くに打つ「モタレ攻め」
  2. 弱い石を二つにして「カラミ攻め」
「両ゲイマの急所」に注目

切り違いの考え方

ツケたり切ったりするのは、自分も相手も強くなるので、弱い立場の時には有効な手段。
弱い石にツケると強くしてしまう。
格言「切り違い、一方をノビよ」

強い石の活かし方

強い石をさらに強くするのは凝り形になり、よくない。
強い石は、手をかける(守る)必要がない。

石の形を見極める

アキ三角より嫌う形

形の急所を逃さない・・・かりんのツボetc

働きのある形を目指そう

利きを使わせない

「ポン抜き」と「ケイマのツキ出し」

効率のいい形を覚えよう

形の弱点を見つけよう

盤上の急所を見つけよう

「三目の真ん中」を覚えよう

急所を逃さず主導権を握ろう

形の急所を覚えよう

いい形で攻めよう

まだ生きてない石の注目

形を崩す手筋を身に付けよう

地を稼ぐより大切なもの

戦いの形を身に付けよう

石の方向を感じる

大事な石は刻々と変化する

手順を尽くそう

筋場を知ろう


マネ碁

囲碁の戦術で「マネ碁」というのがある。
白番(後手番)の「マネ碁」と、黒番(先手番)の「マネ碁」の二種類があり、やられた相手は、独り相撲を取っているようで、嫌な感じがするものだ。

白番の「マネ碁」は、相手の手を点対称に模倣する作戦だが、対策は簡単で、「天元」と呼ばれる盤の中央に打てば、マネできない。
しかし、マネ阻止に成功しても簡単ではない。
白番には六目半のコミというアドバンテージがあるので、天元が甘い手となれば形勢は容易でない。

黒番の「マネ碁」は、初手をまず天元に打ち、後は相手の手をそっくり真似る作戦で、黒番は六目半のコミというハンデがあるので、簡単には良くならないが、定先(じょうせん)などのハンデなしの対戦のときには効果的だ。

「天元マネ碁」は、「ヒカルの碁」という有名なマンガでも出現。

塔矢アキラという主人公のライバルが木っ端みじんに倒した。

実際のマネ碁対策は、中央でぶつかるシチョウを演出するという高度なものだ。



【横歩取り】脇流△3三桂

横歩取りは△3三角だけではない

脇謙二流△3三桂

△3三桂とする横歩取りは、電王戦FINAL第3局で「やねうら王」が稲葉八段を破るなど、たまに指されていた。
関西の脇謙二プロが得意としていたため、脇流と呼ばれる。


 





左金は攻め駒

まずは屋敷九段の模範対局をご紹介。


初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三桂 

図からの指し手
▲4八玉 △1四歩 ▲3六飛 △8四飛 ▲3八玉 △4四歩 
▲4八金 △4五歩 ▲9六歩 △4二銀 ▲7七桂 △1三角 
▲5六飛 △6二玉 ▲7五歩 △7二玉 ▲6八銀 △6二金 
▲5九銀 △2三金 ▲5八銀 △2四金 ▲8五歩 △3四飛 
▲8六飛 △8三歩 ▲2七歩 △3五金 (図)

図からの指し手
▲9七角 △4六歩 ▲同 歩 △3六歩 ▲同 歩 △4六金 
▲6八金 △4五桂 ▲4七歩 △3七歩 ▲同 桂 △3六金 
▲4五桂 △4七金 (図)

左金を攻め駒に活用したのが屋敷九段の好着想。
森下九段が玉を右に囲ったのが危険だった。



 中住まい玉には4筋攻めで

筆者が横歩取り△3三桂戦法を試したのが下図。
△4五歩とクライを取る形を得意としている。
しかし、一歩損している後手が△8四歩と打たされたのは痛い。
△8三銀が疑問だった可能性はある。

先手が7六にいた飛車を7七~8七に活用したのは巧い構想。
8筋の歩を手持ちに出来ると、攻めの幅が広がる。


図からの指し手
△2六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲2七歩 △4六飛 ▲4七歩
△4一飛 ▲1六歩 △1三角 ▲8五歩 △同 歩 ▲同 飛
△8四歩 ▲8六飛 △4六歩 ▲同 歩 △同 角 ▲4七歩
△6四角 

図のように角を転換して先手陣を揺さぶる。
次の△3六歩を受けて▲5六歩と突いてくれれば、後手陣が弱体化したので△3六歩の攻めにはこだわらない。
△9四歩と将来の▲9五桂を防ぎ、▲7六飛と次の▲6五銀を狙ってくれば△4六歩▲同歩△同角▲4七歩△2四角と角を玉頭に利かす。


指し方が分かりやすいので、アマチュアに適した作戦だと思う。



▲1六歩からの端攻め

深浦vs脇(竜王戦)や谷川vs羽生(朝日オープン)で先手が見せた端攻めは、一時は横歩△3三桂に対する決定版かと思われた。 

しかし、図から△8八飛成▲同銀△1六角の反撃が厳しい。
次に△5七角成▲同玉△4九角成や△4九角成▲同玉△5七角成という攻めを狙っている。
これに▲3三飛成としたのが深浦(対脇戦)だが、実戦の△5七角成▲同玉△4九角成という手順の他に、△3三同金▲1三香成に△4九角成▲同玉△3八歩も厳しく、後手有利のようだ。 


また、岡崎vs脇のように、△1六角に▲8四飛と自然に逃げるのも有力な一手。
実戦は、△8三歩▲同飛成△8二歩▲8五竜△5七角成▲同玉△4九角成に▲6八玉として先手が勝った。▲6八玉では▲7九飛の受けも有力。△5八金▲6六玉△3八歩に▲4九飛△同金▲1二香成で先手が良い。


△8三歩のところ、△5七角成▲同玉△4九角成と攻めるのも▲7九飛の受けがある。
そのため、△4九角成▲同玉△5七角成と手順を変えて攻める。
▲8一飛成に△3八歩(①△2八歩は▲8三角が▲6一角成△同玉▲7二金△5二玉▲6二飛以下の詰めろで、△7二金打の受けに▲4八銀で先手良し)と攻めるのは、▲同玉△2六歩となるが、△1五香と香車を補充できるとはいえ、金一枚の持駒では心もとないか?


△4七馬と攻める手もある。これには▲5八歩か▲6八金と受けるしかない。

  1. ▲5八歩は、△4五桂▲5九玉△5七桂成に▲6八金△同成桂▲同玉と左翼へ逃げることができるが、△1五香と補充されて難解だ。
  2. ▲6八金は、△1五香に▲3八角(▲7五角△5四香▲5六歩△同馬▲9一竜は、△9二金から千日手)△4六馬▲5八玉△4五桂(△2八歩もある)▲4八銀に△7四歩が一石二鳥の好手。▲8三角成を防ぎながら△8二馬の竜捕獲を狙っている。形勢はやはり難解。

このように▲8四飛も有力だが、谷川九段は単に▲1三香成とし、△3四角と飛車を取らせて▲8二歩と攻める順を採用した。

ここで△1八飛▲3八銀△8二銀▲8四飛△8三歩▲3四飛△1三飛成としたのが、谷川vs羽生(後手勝ち)だが、△1八飛に▲2八飛とされる変化が煩わしい。


単に△8二同銀▲8四飛△8三歩▲3四飛△1八飛▲3八銀△1三飛成(下図)とした谷川vs森内(先手勝ち)の手順の方が紛れがない。
このようにプロ同士の対局で何局か戦われたが、後手の決定版を示したのがアマチュアの横山幸男さん(青森県)だった。 

先手は▲4六角として、△1八竜は▲3六歩で、△2三竜は▲2四飛で先手が指せるのだが、△2二竜と引く手が横山アマの指した好手。
後手は角香交換だが歩の枚数が多く、龍を作っているのが大きい。
陣形が堅く△2八歩の狙いもあって後手が指せるようだ。







▲3六歩からの桂頭攻め

後手が上記のような急戦を警戒して△1四歩を保留した場合、先手は3三桂の桂頭を攻める展開になる。
下図は、△4二銀と 

この局面は後手が指しにくい。
やはり、端攻めを怖がらずに△1四歩とした方が良い。
ただし、途中の局面で△2三金とする手は有力だ。

金上がりの狙いは端の補強と桂頭の守備。
同様の金上がりは、横歩3三角の青野流対策で松尾八段が試みていた。
しかし、▲3六歩を突いていないので▲3六飛と引いて飛車が楽な形。
後手は△6二玉と組む他に、△5二玉~△5一金もありそう。


受けが弱けりゃ将棋は勝てない

受けに自信を持つことの大切さ

若いという字は苦いという字に似ている。
私の将棋は本で覚えた将棋なので、強引な攻めを受け止めるのを苦手にしていた。
そのため、苦い敗戦を幾度となく経験した。

相手はアマ強豪のN森氏(高知県)。
上図の攻めは、本には無理筋と書かれていた変化。
私は喜んで△3五銀と取った。
しかし▲2三歩成△4四角▲3二と△同玉までの変化しか覚えていない。
▲3三歩△同桂▲2二金△4二玉▲2三飛成△5三玉▲3二金と攻められて潰された。
後で調べて、△4二玉では△4一玉▲2三飛成△4二金が最善と知ったが、△4一玉は思いつかない受けだった。


上図は、後手優勢の局面(先後逆表示)と思うが、具体的な指し手が難しい。
△5五角成は▲6二桂成△同金▲5一飛△6一歩▲6二角成△同玉▲5五飛成と素抜かれる筋がある。
実戦で私は攻防の手とばかりに△7三桂と打って桂馬の入手に期待したが、▲6四金と躱されて負け。
正解は△6三金と受ける手だった。▲6二桂成には△同金上と上部を厚くして△6一歩の底歩を見せる。
それならこちらが良かった。


最近でも攻められるのが不安で暴発した将棋があった。 

図の▲3一竜では▲6一竜△同角▲6二銀の変化を気にしていた。
以下△7二玉▲7一銀に△9二飛と受けるしかないが、自信はなかった。
▲3一竜にホッとすると同時に△3三角などと受けるのは利かされになるので、今度こそ▲6一竜を決行されると思った。
そこで△9七歩成と攻め合ったが、▲4二竜とポロっと金をとられたのは痛い。


図で△3三角や△3二飛と受けておけば、玉が左方に逃げて行った時に助けになるので、利かされでも何でもなかった。
ありえない判断ミスをしたのは受けに自身がなかったからだ。
まだまだ若いということか?

受けが強けりゃ負け将棋も逆転

杉本昌隆八段vs渡辺和史六段(順位戦)

初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲1六歩 △1四歩 ▲7八飛 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △4二玉 ▲5八金左 △3二玉
▲4八玉 △6二銀 ▲3八玉 △5二金右 ▲2八玉 △5四歩
▲3八銀 △5三銀 ▲4六歩 △7四歩 ▲6六歩 △4二金上
▲6七銀 △9四歩 ▲5六歩 △6四歩 ▲8八飛 △9五歩
▲4七銀 △3三角 ▲3六歩 △4四歩 ▲2六歩 △4三金右
▲3七桂 △2二玉 ▲4八金寄 △1二香 ▲6五歩 △同 歩
▲5五歩 △6二飛 ▲5四歩 △同 銀 ▲5五歩 △6六歩
▲同 角 △5五銀 ▲同 角 △6七飛成 ▲2五桂 △6四歩
▲3三桂成 △同 桂 ▲8二角 △5四歩 ▲6四角上 △6九龍
▲9一角成 △5五桂 ▲5九歩 △4七桂成 ▲同 金 △6三歩
▲4二角成 △同 金 ▲3七香 △6七角 ▲3八銀 △7九龍
▲5八飛 △4三銀 ▲2七桂 △8九龍 ▲3五歩 △同 歩
▲同 桂 △3四歩 ▲4三桂成 △同 金 ▲5二銀 △4二金
▲5四飛 △3五桂 ▲同 香 △同 歩 ▲3七歩 △3四角成
▲5五馬 △5三香 ▲4四馬 △5二馬 ▲3四桂 △3二玉
▲4二桂成 △同 銀 ▲5一金 △同 馬 ▲5三飛成 △同 銀
▲4三金 △2一玉 ▲5三馬 △8七龍 ▲3二銀 △1一玉
▲3一馬 △2二金 ▲2一銀成 △同 金 ▲同 馬 △同 玉
▲3二金打 △1一玉 ▲2二香 (下図) 

助からないようだが・・・


図からの指し手

△3一飛 ▲同 金 △2二玉 ▲3二飛 △1三玉▲3三金(下図) 

図からの指し手

△7八角 ▲2二飛成 △2四玉 ▲3六桂 △同 歩 ▲同 金(下図)

▲2二飛成△2四玉としたのが躓きのはじまりで△3三馬が生じて忙しくなった。

単に△4五桂と角筋を遮断するか、▲2五桂△2四玉▲4二金とすれば安全勝ちだった。

しかし、一見すると図でも先手勝ちは間違いないと思えたが・・・


図からの指し手

△1三桂 ▲2五歩 △同 桂 ▲2六歩 (下図) 

図からの指し手

2七香 ▲同 銀 △3七桂成 ▲同 金 △同 龍 ▲同 玉
△4五桂 ▲同 歩 △4六銀 ▲同 玉 △5六金
まで144手で後手の勝ち

投了図 

△7三馬と馬を活用する筋があるので先手玉は即詰み。

受けるだけでも勝てない。

渡辺六段の寄せの鋭さも見事だった。



攻めを知らなきゃ受けはできない

木村一基 九段vs都成竜馬 七段(竜王戦)

初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △9四歩 ▲9六歩 △4四歩
▲4八銀 △3二銀 ▲5八金右 △3三角 ▲2五歩 △4三銀
▲6八玉 △2二飛 ▲7八玉 △7二銀 ▲5六歩 △6二玉
▲7七角 △7四歩 ▲6六歩 △7三桂 ▲6七金 △6四歩
▲8八玉 △4五歩 ▲5七銀 △5二金左 ▲7八金 △5四銀
▲3六歩 △7一玉 ▲9八香 △8五桂 ▲5九角 △6五歩
▲3七角 △6六歩 ▲同 銀 △6五歩 ▲7七銀 △8一玉
▲9九玉 △7七桂成 ▲同金寄 △6二金寄 ▲8八銀 △7一金
▲2六角 △1二香 ▲3五歩 △同 歩 ▲3八飛 △4四角
▲3三歩 △4二飛 ▲3五角 △3三角 ▲2四歩 △同 歩
▲3四歩 △1一角 ▲3三桂 △2二飛 ▲8六歩 △2三飛
▲5五歩 △6三銀引 ▲3七桂 △3三桂 ▲同歩成 △同 飛
▲4五桂 △3五飛 ▲同 飛 △6六桂 ▲7九金 △5七角
▲3一飛成 △5五角 ▲6八歩 △5八桂成 ▲5一飛 

ここで当然のように見えた△6一金引きが疑問。
次の先手の攻めを見落としていた。
正解は△8二銀打


図からの指し手
△6一金引
▲5三桂成 △5一金 ▲同 龍 △6一飛 ▲同 龍 △同 金
▲6三成桂 △同 銀 ▲5三飛 △5四銀打 ▲8五桂 △3五角成
▲7三金 △7二金 ▲5一飛成 △7一飛 ▲7二金 △同 玉
▲7三銀 △同 角 ▲同桂成 △同 玉 ▲4六角 △同 馬
▲7一龍 △7二金 ▲同 龍 △同 銀 ▲4六歩 △4四角
▲4二飛
まで115手で先手の勝ち


玉が弱けりゃ将棋は勝てない

 


2023年5月2日に女流棋士山根ことみとの結婚を発表した本田奎六段。

この場を借りてお祝いを申し上げます。

本田奎六段は、独特の感覚の持ち主で、淡白な指し方に見えながら非勢の将棋を逆転する技術を持っている。
下図は、対中村太地八段(王座戦)。 
中村太地八段は、母校早稲田大学の入学式祝辞で「将棋は終盤が大切だが、学生生活は序盤が大切」として「求めなければ与えられない」と自戒を込めて強く訴えた。
さすが将来の将棋連盟会長という内容の祝辞なのでできれば目を通してほしい。 


先手は一方的に飛車を成られて不利な局面から、相手玉を薄くして難しい局面に持ち込んでいる。

ここで金取りを角を手放して受けるのでは勝機がないと見て、▲6八玉~▲7七玉と遁走する。 

中村八段は、7七玉の位置に誘われるように△9三桂と跳ねたが、▲7九銀と締まられると先手玉が遠くなった。

図の最善は、後手の馬に働きかける△6五銀。

▲2三馬と迫られて怖いようだが、△3二銀▲2二馬に△4三玉と上部脱出を測れば後手玉は捕まらない。

次に△4六竜とすればsanctuaryが完成する。


ここでは本田六段の勝負術を讃えるべきだろう。

▲6八玉~▲7七玉の手順では、AIは▲6八金寄~▲7八玉を最善とする。

しかし、それでは△9三桂を誘うことはできなかっただろう。

羽生の受け

対近藤(王将戦)

相掛かりの将棋から先手の羽生の横歩取りに対し、後手の近藤が△4五角▲3五飛△5四角という巧技を見せた。 

△4五角に対しては、強く▲7四飛が成立していたようで、△8二飛に▲4六角△7三歩▲3六歩として▲3七桂を狙う順や、△8二飛に▲2四歩と△7三歩を催促して、そこで▲4六歩と角と刺し違える順などがあった。
したがって△4五角では△5四角とすべきだったかも知れないが、△4五角に▲7四飛とできる棋士は藤井七冠くらいだろう。
死角の歩(加藤治郎九段命名)から8筋を破り、▲7五角と受けたが、△7六歩と飛角交換を催促して△4四角から香を奪い、後手が有利になった。
しかし、羽生の▲8二歩の攻めに選択を誤る。

ここで△5四香と攻めたが、いったん△3一金▲1一飛成としてから△7七香で後手好調だった。

▲4八金と受けられて、香を手放した後手は△8九馬とせまるくらいだが・・・

ここで▲8七金が柔らかい受け。

△9八馬の追撃に強く▲7六金と歩を払った。

△同馬直と取られてタダのようたが、後手陣は角打ちに弱いので▲8一歩成に△6五馬と逃げ、▲8二とと迫った局面は、後手の馬の働きが弱い。 

後手は△3一金▲1一飛成とここで飛車を追って△7六桂と迫るが、▲5九銀と逃げられて効果が今一つ。

先手は▲7二とと銀を奪って▲2二銀と剥がす。

後手は△5七香成▲同金に狙いの△4五桂を放つ。

羽生九段は、▲6六香と馬筋から竜を守ったが、▲6六金と質駒を逃げながら竜を守る手との比較に迷うところだ。

▲6六香に対して△7九馬と攻めたが、これも△5七桂成▲同玉△7九馬との比較が難しい。しかし、△7九馬に▲6九桂が当然ながらぴったりの受けで、△5七桂成に▲同桂と取った手が馬に当たることを考えると先に金を取った方が良かったようだ。

また△5七桂成とされることを考えると▲6六香では▲6六金が優ったようだ。

ここでも▲6九桂がしっかりした受けで、先手有利がはっきりした。



対中原(棋聖戦) 

初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲3六飛 △2二銀
▲8七歩 △8五飛 ▲2六飛 △4一玉 ▲5八玉 △6二銀
▲3八金 △5一金 ▲4八銀 △7四歩 ▲1六歩 △7三桂
▲1五歩 △9四歩 ▲9六歩 △5四歩 ▲3三角成 △同 桂
▲7七桂 △8四飛 ▲2三歩 △同 銀 ▲2四歩 △3四銀
▲2三角

後手の羽生が、今や懐かしい横歩取り8五飛戦法を選択。
これに中原が図のような強烈な攻めをみせた。 

△2五歩と受けるのは仕方ないが、これには▲3四角成と▲4六飛の二通りの攻めがあり、どちらも際どい。

▲3四角成には△2六歩▲2三歩成△同金▲同馬△3二歩▲2二銀△5二玉▲3二馬△4五桂といった手順が想定されるが、形勢は互角。

実戦で中原は、△2六歩と飛車を取られながら歩が前進するのを嫌ってか、▲4六飛を選んだ。 


図からの指し手

△2五歩 ▲4六飛 △2三銀 ▲同歩成 △同 金 ▲4三飛成

羽生は、△4二金と受けて耐えているという判断。

中原の攻めは、竜と銀一枚なので心細い。

そこで▲3二銀△5一玉▲4二竜△同玉▲4三金△5一玉▲2三銀成△6一玉▲3三成銀と厚くする。しかし小駒の攻めなのでスピードが遅い。

このチャンスに△2六歩が、先手陣攻略の第一歩。

次の△2七歩成▲同金△4六歩が早い攻め。

受けるだけでも将棋は勝てない。


図からの指し手

△4二金 ▲3二銀 △5一玉 ▲4二龍 △同 玉 ▲4三金

△5一玉 ▲2三銀成 △6一玉 ▲3三成銀 △2六歩 ▲6五桂打

△2七歩成 ▲同 金 △4六歩 ▲4二成銀 △7二玉 ▲5二成銀

△7一銀 ▲7三桂成 △同 玉 ▲8五桂打 △8三玉 ▲7三金

△9二玉 ▲6一成銀 △3八角 ▲7一成銀 △4七歩成 ▲6八玉

△5八と ▲同 玉 △4六桂

まで後手勝ち



対服部(王将戦)

下図は、服部が△3七銀と攻めたところだが、△3七銀では△7四歩と馬道を通して受けておくべきだった。

▲8六飛が、馬に当てながら玉の退路を作った一石二鳥の好手。
△2五馬にさらに▲2七香と追って相手玉の退路を狭める。
△3五馬に▲3九金と手を戻したのが、先の△3七銀に悪手の烙印を押した巧手。
3七の銀が邪魔して1九の馬が使えなくなった。



ソウタの読み

対広瀬章人(第35期竜王戦第六局)

図は、実戦では現れなかった攻め合いの変化。
広瀬八段は、実戦の△4一桂よりこの変化を選ぶべきだったかと後悔していた。
しかし、藤井竜王は読み切っていた。


▲5七角が攻防で△4五桂と迫るのは▲3三銀からの詰みがある。
△4六桂と角道を止めながら迫るのは、▲6八金で玉が広くなる。
これに△4一香と受けても▲3三銀成△同玉▲1四銀と攻めて勝ち。



対斎藤慎太郎(JT杯)

下図は先手が▲2四歩△同歩▲1五香とした変化。
実戦は単に▲1五同香と取り、△同香▲8六歩△1八香成▲2七飛△4九角▲2六飛△2五香(以下▲3三桂成△同銀▲2五飛には△2四銀)と飛車を攻めて藤井竜王が完勝した。


この棋譜を並べて、藤井竜王に△2五香の妙手があったにせよ、斎藤八段らしくない拙戦に不思議に思ったが、実は、斎藤八段の読みの本線は図の変化だった。 

△3三桂に対し薄くなった1~2筋を狙うのは当然の発想だ。
しかし、藤井竜王に「用意の一手」があった。


手拍子で取ってしまいそうだが、△1二歩と低く受けるのが藤井の用意していた受けの好手。
これで攻めが続かない。
斎藤八段は途中でこの手に気づいて修正したが、時すでに遅かった。 
予定変更のせいで、実力不相応な拙戦となった。
斎藤八段にとっては残念な一局。


負けにくい永瀬将棋

永瀬拓矢 対 髙見叡王(第4期叡王戦第一局)

現在のタイトルホルダーの中で「守り」のイメージが強いのは永瀬叡王か?
下図は、彼が髙見叡王に挑戦した七番勝負の第一局。
髙見叡王のパンチが入った局面だ。 

図の△6五桂は鋭い。

6六の歩がなくなると、△6六桂の筋や△5五角が敵陣に直射するようになるので、この桂は取れない。

この桂を取れないようでは苦戦だが、ここで永瀬七段は勝負手を放つ。


図からの指し手

▲6三桂 △5二玉 ▲7一桂成


▲6三桂は、ソフトが示す最善手。

取ればもちろん▲7二銀があるので△5二玉だが、▲7一桂成と攻めに効いている飛車をどかせようとした。

「攻め間違えれば容赦しません」とプレッシャーをかけた。


▲7一桂成で、まだまだ苦しいが、永瀬はこの将棋を逆転勝ちする。

結果的にこの勝負手が叡王タイトル奪取に繋がった。


なお、▲7一桂成では▲5一銀という妙手があったようだが、人間には指せない。 


地蔵流の受け

青野照市対南芳一(順位戦)

果たして地蔵流の受けは?

△6一飛と逃げても▲4二角成で負け。

飛車の逃げ場所がなく、相手陣は鉄壁なので、気が弱い人なら投了するかも知れない。

受けの力は大切だ。


実際は、△3二銀が味の良い受けで先手勝勢。

飛車を取れば△4三銀と、と金を消せるし、銀を取れば△同飛と、手順に飛車を逃げることができる。

 


受けるべきか?攻めるべきか?

糸谷哲郎 対 近藤誠也(王将戦) 

この将棋に敗れた方が王将リーグ陥落という厳しい戦い。
ここで▲3八馬と受けるべきか?▲5三桂成と攻めるべきか?


実戦では糸谷八段は棋風に従って▲3八馬と受けた。
▲5三桂成に△3九桂成が厳しく見えるので当然の選択のようだが、以下▲4二成桂に△同銀と取る手には▲3七飛の王手成桂取りがあった。△2二玉と逃げても▲5八馬と逃げて耐えている。


この将棋を拾った近藤誠也七段が、三勝三敗でリーグ残留を果たした。

山田道美 対 升田幸三(十段戦)


升田九段が△8六角と迫った手に対し、山田八段は「あなたの攻めは怖くありません」と玉頭を放置して香車を取った。
受けなくても大丈夫と判断するのも受けの力だ。


駒損の後手は攻めるしかなく、△7七銀と打ち込んでくる。
飛車が直射して怖いようだが、ここで先手は手筋の受けを用意していた。


▲7六歩が「大駒は近づけて受けよ」の格言に沿った手。△同飛に▲8八銀と受けられると後手の攻めが一服した。
△7三金は飛車を切る準備。
山田九段に▲8九桂と受けられると、升田九段としても突撃するしかない。 

図から△7七桂成に対し、同銀と先手を取ろうとしたため波乱を呼んだ。
△同飛成が狙っていた手で▲同桂には△7六歩がある。
▲同金と取ったが、△同角成▲同玉△7九角と危ない格好になった。


遡って▲7七同銀では▲7七同桂としておけば、△7四飛に▲7六歩と受け、安泰たった。 

図となって、ここで▲2一飛と攻めたため、トン死。
▲8七銀と受けておけば、後手は投了するしかなかっただろう。



千駄ヶ谷の受け師

現代の受けの名手といえば木村一基九段。
親しい先崎学九段が「血液の中にナットウキナーゼが入っているんじゃないか」「業界では『木村の玉を詰ますのは疲れる』と言われている」と評する粘り強い棋風だ。

第79期棋聖戦第三局

対羽生(棋聖戦第三局)より取材。

受けの力がなければ▲8六同歩と取ってしまいそうだが、攻められても大丈夫と▲5四歩。


ここで▲9三桂と攻め駒を攻めたのが受け師の面目躍如という一手。

以下△9一飛▲8三銀成と進行して後手は切れ模様になった。  


 

ライバル行方との死闘1

何でもない序盤だが、歩を守って▲3七銀とするのは、△8五飛▲8七歩△1三桂などと急戦を狙われる。

▲7六歩が筋。

△7六同飛の横歩取りに対し、すぐに▲8二歩と桂取りに飛びつくのは、△8六飛▲8一歩成△同飛で、歩切れなので角頭の受けに困る。


図からの指し手

▲7六歩 △同 飛 ▲7七金 △7四飛 ▲8二歩 △8四飛

▲8一歩成 △8六歩 ▲7八銀 △3四歩 ▲6六歩 △同 角

 ▲7九桂としっかり受けた。

取った桂馬を使わされ壁になったが、後手は81のと金を払うため△5五角▲3七銀と損な交換をしなくてはいけない、

攻めの効果が手得になって現れ、先手は中央に厚みを築くこができた。

ここで▲8七歩と傷を消したのが大切な一手で、壁形をほぐしていくことが勝利につながる。

 

王手に慌てず▲7八玉と躱す。

△5七角成には▲6七金寄りを用意。

 


ここで▲6七金寄りが実現し、先手陣が好形になった。

 


ライバル行方との死闘2 

図からの指し手

▲同 銀 △同 飛 ▲8八歩 △8七歩 ▲7八金 △8八歩成

▲同 金 △8七銀 ▲7七金上 △8二飛 ▲8六歩 △8八歩

▲5八玉 △8九歩成 ▲4六角 △7三桂 ▲8七金 △9九と

 

ここから▲4五銀△4二桂(△5一香が最善)▲7三角成△同銀▲5三桂と受け師らしからぬ過激な攻め。

この将棋はテレビ放送されたので、記憶のある人も多いだろう。



第一問 対森下卓(銀河戦)

一見、ピンチだが・・・

第二問 対西村一義(C級1組順位戦) 

図から△6一香と▲6七飛の活用を防いだ。

粘り方がうまい。

第三問 対田中寅彦(NHK杯) その1

こんな局面も受け師は怖じない。

第四問 対田中寅彦(NHK杯) その2 


実戦では▲7九玉と間違ったが、▲7八玉なら勝ち。

この手以外はすべて負け、将棋は厳しいゲームだ。


第五問 野月浩貴(新人王戦) 

受けの名手の指し方は、とにかく丁寧だ。

私ならノータイムで竜を切って▲1一飛としそう。


第六問 対真田圭一(勝ち抜き戦) 

巧みな粘り


第七問 対石田和雄(銀河戦)  

相手を焦らす。

 

第八問 対北浜健介(新人王戦) 

手厚く


第九問 対久保利明(王座戦) 

目の覚めるような鋭手。


第十問 対三浦弘行(棋聖戦) 

先手で受けるには?

 

第十一問 対畠山鎮(竜王戦)  

取ると危ない


 第十二問 対富岡英作(NHK杯)

これぞ手筋!


第十三問 対野月浩貴(B級一組順位戦)その1 

根性の金打ち


第十四問 対野月浩貴(B級一組順位戦)その2 

根性の銀打ち


第十五問 対野月浩貴(B級一組順位戦)その3 

相手の狙いは?


第十六問 対中田功(C級1組順位戦)その1

一見ピンチだが

第十七問 対中田功(C級1組順位戦)その2

上の続き
見事な攻め


開始日時:1999/08/24 9:00:00
棋戦:順位戦
戦型:三間飛車
先手:中田功
後手:木村一基
場所:東京「将棋会館」
持ち時間:6時間
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲7八飛 △8五歩
▲7七角 △4二玉 ▲6八銀 △3二玉 ▲4八玉 △3三角
▲3八玉 △2二玉 ▲2八玉 △1二香 ▲5六歩 △1一玉
▲5七銀 △2二銀 ▲3六歩 △6二銀 ▲4六銀 △5四歩
▲3八飛 △4二角 ▲6五歩 △5二金右 ▲1八玉 △5三銀
▲3五歩 △同 歩 ▲同 銀 △3三角 ▲同角成 △同 銀
▲3七桂 △4二銀右 ▲4五桂 △2二銀 ▲6八金 △8六歩
▲6六角 △7一角 ▲3四歩 △8七歩成 ▲2六歩 △5五歩
▲同 角 △3五角 ▲2二角成 △同 玉 ▲3三銀 △同 桂
▲同歩成 △同 銀 ▲同桂成 △同 玉 ▲3五飛 △4二玉
▲4五桂 △4四銀 ▲3三銀 △5一玉 ▲4四銀不成 △同 歩
▲7一角 △7二飛 ▲4四角成 △4三銀 ▲3三馬 △6二玉
▲6四歩 △同 歩 ▲6三歩 △同 玉 ▲6五歩 △同 歩
▲2三馬 △3二歩 ▲3三桂成 △4四銀 ▲6五飛 △6四歩
▲8五飛 △5四角 ▲4五銀 △7六角 ▲3八金 △8五角
▲4四銀 △4九角成 ▲4三成桂 △1五桂 ▲4五馬 △5四銀
▲5三成桂 △同 金 ▲同銀成 △同 玉 ▲4四金 △4二玉
▲5四馬 △3五桂 ▲3六銀 △4五歩 ▲同 馬 △2七銀
▲同 銀 △同桂右成 ▲同 馬 △同桂成 ▲同 玉 △3五銀
▲5三銀 △5一玉 ▲3六歩 △4四銀 ▲同銀成 △2九飛
▲2八銀打 △6六角 ▲6三桂 △6二玉 ▲5七桂 △4四角
▲1八玉 △3八馬 ▲同 銀 △5九飛成 ▲7一角 △同 飛
▲同桂成 △4八金 ▲4九銀打 △同 金 ▲4三飛 △4八金
▲4四飛成 △2九銀
まで140手で後手の勝ち

先崎九段の冴え(藤井vs伊奈)

アベマTVで解説していた先崎九段が、ここで指摘した後手の名手が△7一角。
浮かばない。まさに自陣角の名手。



ソウタの棋(その4)八冠制覇への道

祝!五冠王

ソウタおめでとう!王将奪取、五冠達成。もちろん最年少記録だ。
異論もあるだろうが、現在藤井聡太を除く棋界のツートップは、豊島将之、渡辺明だろう。
豊島将之に4連勝して竜王位を奪取した藤井聡太四冠は、今度は渡辺明に4連勝して王将位を奪取した。
もはや二番手と1馬身以上の差をつけたように見える。
しかし、結果はともかく一局一局は一方的な将棋は少なく、どの将棋も名局と呼ぶのが相応しい内容だった。
将来、渡辺明名人に藤井聡太が挑戦することになった時に、さらなる熱戦を期待したい。
失冠した渡辺明名人にとっては、斎藤慎太郎八段との名人戦七番勝負が正念場となる。


渡辺王将との王将戦

第4局 矢倉

下図は、両者が戦った第92期棋聖戦第三局と全く同じ局面。

渡辺王将が▲8八銀として前例(▲6六銀)を離れた。
その後の指し手は、ほぼソフトの最善手とされるもの。
渡辺王将の深い研究が窺われる。


下図は封じ手局面。
形勢はやや先手持ちというくらいの互角の形勢。

封じ手は△7六歩。
これに対する応手が難しい。
実戦の▲2一歩成は正解だが、▲7六同銀の方が分かりやすかったかもしれない。
△5三角に▲7六銀の正解を選べず、▲8八銀と逃げたため△4四銀を許した。
渡辺名人のブログによると▲7六同銀でなく▲8六銀が優ったとある。
△7七銀に▲7五歩△7八銀成▲同玉△7五角▲2二と△同金で、金を取っても後手の攻めが厳しく先手が思わしくないようだが、ここで▲7五銀がある。
△同飛なら▲8六角で先手勝ち。
また△7七銀に▲同金△同歩成▲同銀と受けに回るのも有力。
▲8六銀の方が▲8八銀より、当たりを避けている。
この選択が勝敗を分けた。

封じ手開封直後、次の▲8八銀では▲8六銀が勝りました。対局中はここが重要な分岐という認識はなかったのですが、藤井竜王は局後の第一声で▲8八銀△4四銀で感じが良くなったと言っていたので、この辺りの判断の差がそのまま結果に出ています。(渡辺明ブログより)


この将棋は△4四銀が想像以上に大きな手だった。
受けては▲2二とに△4三金左と躱せるし、攻めては△3五銀▲同角△3四飛がある。
先手は▲7六同銀と先手を取って△4四銀を指させてはいけなかった。


第3局 相掛かり

後手の縦歩取りからの千日手狙いに対し、藤井聡太の▲8六歩が研究手。
次の▲8七金という形が新しい感覚だ。



第2局 角換わり相早繰り銀

渡辺王将の▲6六歩型に△4四歩と同形にするのもあるが、藤井四冠は仕掛けて悪くないとみている。
▲2五歩の継ぎ歩に△7六歩と押さえ、これに▲6八銀が定跡。
△8六歩▲同歩△同銀には▲2四歩△2二歩から▲8三歩△同飛▲7四角とした実戦があり、また単に▲5六角としても間接的に8九の桂を守っている。


▲6八銀に△6六銀も有力。
▲2四歩△2二歩▲2五飛とした実戦例もある。
△3五歩が手筋だが、▲同飛△2六角の王手飛車に▲3七角が用意の一手。
したがって▲3五同飛には△4四角と打って▲6五飛に△7七歩成となる。


▲2五飛に△4四銀▲6五飛△7七歩成と進んだ実戦例も幾つかあり、互角の形勢。


また、△6六銀に▲7七歩と合わせ、△同歩成▲同銀△同銀成▲同桂と捌く順も有力。


藤井四冠は、△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8四飛と穏やかな順を選択した。


図の△8八歩は自身最長の考慮時間で指された。
他に△3六角▲2六飛△4七角成▲5六銀△3五銀の変化も有力だが、この桂頭短打の歩の方がソウタ好みだ。
▲2三歩成△同歩▲同角成には△3六角でも△8九歩成でも後手が指せる。
ただし、△3三桂は▲同馬があって危ない。


実戦は▲8八同金だが、疑問手で、まだしも▲2三歩成の方が良かったらしい。





第1局 相掛かり先手早繰り銀

将棋の王将戦で藤井聡太が指した一手が大きな反響を呼んだ。
強気に自陣の守備ラインを上げるような手で、相手の攻めを誘発する恐れもある。
「常識外れの一手」とワイドショーは紹介したが、実は類似した局面では将棋AIが時折示す手だ。

「新時代の手という感じで一日目の朝から大長考を余儀なくされた」(渡辺明)
「これがいい手だというなら、私が習ってきたことはすべて間違いだったということになる」(神谷広志)
「古い棋士ほど先入観からなかなか抜け出せないが、藤井さんは普通の手だと思っている」(勝又清和)
「珍しい手です。いくつかの候補には含まれるんですけど、違和感のある形なので準備がないと指せません。引き出しの多さを感じました」(高見泰地)
「AIの手といっても藤井さんだから指しこなせるのであってマネしない方がいい。」(永瀬拓矢)
「相掛かりでは部分的に出てくる手。指してみようと思いました」
「点数(評価値)そのものより、局面をどう見るかが大事だ」

「将棋は本当に奥が深いゲーム。どこが頂上か全く見えない」(藤井聡太)

驚いたことに類型での▲8六歩は実戦例があった。
その後も類型で▲8六歩を指す若手が現れている。
将棋は深いだけでなく広い。



王将リーグ最後の対局 相掛かり6八玉型

   


A級昇級に向けて~鬼の住処(すみか)B級1組 part2

対横山戦(6回戦)相掛かり

対郷田戦(7回戦)角換わり

対松尾戦(8回戦)相掛かり

対近藤誠戦(9回戦)角換わり

対千田戦(11回戦)相掛かり

対阿久津戦(12回戦)横歩取り