将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

受けが弱けりゃ将棋は勝てない

受けに自信を持つことの大切さ

若いという字は苦いという字に似ている。
私の将棋は本で覚えた将棋なので、強引な攻めを受け止めるのを苦手にしていた。
そのため、苦い敗戦を幾度となく経験した。

相手はアマ強豪のN森氏(高知県)。
上図の攻めは、本には無理筋と書かれていた変化。
私は喜んで△3五銀と取った。
しかし▲2三歩成△4四角▲3二と△同玉までの変化しか覚えていない。
▲3三歩△同桂▲2二金△4二玉▲2三飛成△5三玉▲3二金と攻められて潰された。
後で調べて、△4二玉では△4一玉▲2三飛成△4二金が最善と知ったが、△4一玉は思いつかない受けだった。


上図は、後手優勢の局面(先後逆表示)と思うが、具体的な指し手が難しい。
△5五角成は▲6二桂成△同金▲5一飛△6一歩▲6二角成△同玉▲5五飛成と素抜かれる筋がある。
実戦で私は攻防の手とばかりに△7三桂と打って桂馬の入手に期待したが、▲6四金と躱されて負け。
正解は△6三金と受ける手だった。▲6二桂成には△同金上と上部を厚くして△6一歩の底歩を見せる。
それならこちらが良かった。


最近でも攻められるのが不安で暴発した将棋があった。 

図の▲3一竜では▲6一竜△同角▲6二銀の変化を気にしていた。
以下△7二玉▲7一銀に△9二飛と受けるしかないが、自信はなかった。
▲3一竜にホッとすると同時に△3三角などと受けるのは利かされになるので、今度こそ▲6一竜を決行されると思った。
そこで△9七歩成と攻め合ったが、▲4二竜とポロっと金をとられたのは痛い。


図で△3三角や△3二飛と受けておけば、玉が左方に逃げて行った時に助けになるので、利かされでも何でもなかった。
ありえない判断ミスをしたのは受けに自身がなかったからだ。
まだまだ若いということか?

受けが強けりゃ負け将棋も逆転

杉本昌隆八段vs渡辺和史六段(順位戦)

初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲1六歩 △1四歩 ▲7八飛 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △4二玉 ▲5八金左 △3二玉
▲4八玉 △6二銀 ▲3八玉 △5二金右 ▲2八玉 △5四歩
▲3八銀 △5三銀 ▲4六歩 △7四歩 ▲6六歩 △4二金上
▲6七銀 △9四歩 ▲5六歩 △6四歩 ▲8八飛 △9五歩
▲4七銀 △3三角 ▲3六歩 △4四歩 ▲2六歩 △4三金右
▲3七桂 △2二玉 ▲4八金寄 △1二香 ▲6五歩 △同 歩
▲5五歩 △6二飛 ▲5四歩 △同 銀 ▲5五歩 △6六歩
▲同 角 △5五銀 ▲同 角 △6七飛成 ▲2五桂 △6四歩
▲3三桂成 △同 桂 ▲8二角 △5四歩 ▲6四角上 △6九龍
▲9一角成 △5五桂 ▲5九歩 △4七桂成 ▲同 金 △6三歩
▲4二角成 △同 金 ▲3七香 △6七角 ▲3八銀 △7九龍
▲5八飛 △4三銀 ▲2七桂 △8九龍 ▲3五歩 △同 歩
▲同 桂 △3四歩 ▲4三桂成 △同 金 ▲5二銀 △4二金
▲5四飛 △3五桂 ▲同 香 △同 歩 ▲3七歩 △3四角成
▲5五馬 △5三香 ▲4四馬 △5二馬 ▲3四桂 △3二玉
▲4二桂成 △同 銀 ▲5一金 △同 馬 ▲5三飛成 △同 銀
▲4三金 △2一玉 ▲5三馬 △8七龍 ▲3二銀 △1一玉
▲3一馬 △2二金 ▲2一銀成 △同 金 ▲同 馬 △同 玉
▲3二金打 △1一玉 ▲2二香 (下図) 

助からないようだが・・・


図からの指し手

△3一飛 ▲同 金 △2二玉 ▲3二飛 △1三玉▲3三金(下図) 

図からの指し手

△7八角 ▲2二飛成 △2四玉 ▲3六桂 △同 歩 ▲同 金(下図)

▲2二飛成△2四玉としたのが躓きのはじまりで△3三馬が生じて忙しくなった。

単に△4五桂と角筋を遮断するか、▲2五桂△2四玉▲4二金とすれば安全勝ちだった。

しかし、一見すると図でも先手勝ちは間違いないと思えたが・・・


図からの指し手

△1三桂 ▲2五歩 △同 桂 ▲2六歩 (下図) 

図からの指し手

2七香 ▲同 銀 △3七桂成 ▲同 金 △同 龍 ▲同 玉
△4五桂 ▲同 歩 △4六銀 ▲同 玉 △5六金
まで144手で後手の勝ち

投了図 

△7三馬と馬を活用する筋があるので先手玉は即詰み。

受けるだけでも勝てない。

渡辺六段の寄せの鋭さも見事だった。



攻めを知らなきゃ受けはできない

木村一基 九段vs都成竜馬 七段(竜王戦)

初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △9四歩 ▲9六歩 △4四歩
▲4八銀 △3二銀 ▲5八金右 △3三角 ▲2五歩 △4三銀
▲6八玉 △2二飛 ▲7八玉 △7二銀 ▲5六歩 △6二玉
▲7七角 △7四歩 ▲6六歩 △7三桂 ▲6七金 △6四歩
▲8八玉 △4五歩 ▲5七銀 △5二金左 ▲7八金 △5四銀
▲3六歩 △7一玉 ▲9八香 △8五桂 ▲5九角 △6五歩
▲3七角 △6六歩 ▲同 銀 △6五歩 ▲7七銀 △8一玉
▲9九玉 △7七桂成 ▲同金寄 △6二金寄 ▲8八銀 △7一金
▲2六角 △1二香 ▲3五歩 △同 歩 ▲3八飛 △4四角
▲3三歩 △4二飛 ▲3五角 △3三角 ▲2四歩 △同 歩
▲3四歩 △1一角 ▲3三桂 △2二飛 ▲8六歩 △2三飛
▲5五歩 △6三銀引 ▲3七桂 △3三桂 ▲同歩成 △同 飛
▲4五桂 △3五飛 ▲同 飛 △6六桂 ▲7九金 △5七角
▲3一飛成 △5五角 ▲6八歩 △5八桂成 ▲5一飛 

ここで当然のように見えた△6一金引きが疑問。
次の先手の攻めを見落としていた。
正解は△8二銀打


図からの指し手
△6一金引
▲5三桂成 △5一金 ▲同 龍 △6一飛 ▲同 龍 △同 金
▲6三成桂 △同 銀 ▲5三飛 △5四銀打 ▲8五桂 △3五角成
▲7三金 △7二金 ▲5一飛成 △7一飛 ▲7二金 △同 玉
▲7三銀 △同 角 ▲同桂成 △同 玉 ▲4六角 △同 馬
▲7一龍 △7二金 ▲同 龍 △同 銀 ▲4六歩 △4四角
▲4二飛
まで115手で先手の勝ち


玉が弱けりゃ将棋は勝てない

 


2023年5月2日に女流棋士山根ことみとの結婚を発表した本田奎六段。

この場を借りてお祝いを申し上げます。

本田奎六段は、独特の感覚の持ち主で、淡白な指し方に見えながら非勢の将棋を逆転する技術を持っている。
下図は、対中村太地八段(王座戦)。 
中村太地八段は、母校早稲田大学の入学式祝辞で「将棋は終盤が大切だが、学生生活は序盤が大切」として「求めなければ与えられない」と自戒を込めて強く訴えた。
さすが将来の将棋連盟会長という内容の祝辞なのでできれば目を通してほしい。 


先手は一方的に飛車を成られて不利な局面から、相手玉を薄くして難しい局面に持ち込んでいる。

ここで金取りを角を手放して受けるのでは勝機がないと見て、▲6八玉~▲7七玉と遁走する。 

中村八段は、7七玉の位置に誘われるように△9三桂と跳ねたが、▲7九銀と締まられると先手玉が遠くなった。

図の最善は、後手の馬に働きかける△6五銀。

▲2三馬と迫られて怖いようだが、△3二銀▲2二馬に△4三玉と上部脱出を測れば後手玉は捕まらない。

次に△4六竜とすればsanctuaryが完成する。


ここでは本田六段の勝負術を讃えるべきだろう。

▲6八玉~▲7七玉の手順では、AIは▲6八金寄~▲7八玉を最善とする。

しかし、それでは△9三桂を誘うことはできなかっただろう。

羽生の受け

対近藤(王将戦)

相掛かりの将棋から先手の羽生の横歩取りに対し、後手の近藤が△4五角▲3五飛△5四角という巧技を見せた。 

△4五角に対しては、強く▲7四飛が成立していたようで、△8二飛に▲4六角△7三歩▲3六歩として▲3七桂を狙う順や、△8二飛に▲2四歩と△7三歩を催促して、そこで▲4六歩と角と刺し違える順などがあった。
したがって△4五角では△5四角とすべきだったかも知れないが、△4五角に▲7四飛とできる棋士は藤井七冠くらいだろう。
死角の歩(加藤治郎九段命名)から8筋を破り、▲7五角と受けたが、△7六歩と飛角交換を催促して△4四角から香を奪い、後手が有利になった。
しかし、羽生の▲8二歩の攻めに選択を誤る。

ここで△5四香と攻めたが、いったん△3一金▲1一飛成としてから△7七香で後手好調だった。

▲4八金と受けられて、香を手放した後手は△8九馬とせまるくらいだが・・・

ここで▲8七金が柔らかい受け。

△9八馬の追撃に強く▲7六金と歩を払った。

△同馬直と取られてタダのようたが、後手陣は角打ちに弱いので▲8一歩成に△6五馬と逃げ、▲8二とと迫った局面は、後手の馬の働きが弱い。 

後手は△3一金▲1一飛成とここで飛車を追って△7六桂と迫るが、▲5九銀と逃げられて効果が今一つ。

先手は▲7二とと銀を奪って▲2二銀と剥がす。

後手は△5七香成▲同金に狙いの△4五桂を放つ。

羽生九段は、▲6六香と馬筋から竜を守ったが、▲6六金と質駒を逃げながら竜を守る手との比較に迷うところだ。

▲6六香に対して△7九馬と攻めたが、これも△5七桂成▲同玉△7九馬との比較が難しい。しかし、△7九馬に▲6九桂が当然ながらぴったりの受けで、△5七桂成に▲同桂と取った手が馬に当たることを考えると先に金を取った方が良かったようだ。

また△5七桂成とされることを考えると▲6六香では▲6六金が優ったようだ。

ここでも▲6九桂がしっかりした受けで、先手有利がはっきりした。



対中原(棋聖戦) 

初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲3六飛 △2二銀
▲8七歩 △8五飛 ▲2六飛 △4一玉 ▲5八玉 △6二銀
▲3八金 △5一金 ▲4八銀 △7四歩 ▲1六歩 △7三桂
▲1五歩 △9四歩 ▲9六歩 △5四歩 ▲3三角成 △同 桂
▲7七桂 △8四飛 ▲2三歩 △同 銀 ▲2四歩 △3四銀
▲2三角

後手の羽生が、今や懐かしい横歩取り8五飛戦法を選択。
これに中原が図のような強烈な攻めをみせた。 

△2五歩と受けるのは仕方ないが、これには▲3四角成と▲4六飛の二通りの攻めがあり、どちらも際どい。

▲3四角成には△2六歩▲2三歩成△同金▲同馬△3二歩▲2二銀△5二玉▲3二馬△4五桂といった手順が想定されるが、形勢は互角。

実戦で中原は、△2六歩と飛車を取られながら歩が前進するのを嫌ってか、▲4六飛を選んだ。 


図からの指し手

△2五歩 ▲4六飛 △2三銀 ▲同歩成 △同 金 ▲4三飛成

羽生は、△4二金と受けて耐えているという判断。

中原の攻めは、竜と銀一枚なので心細い。

そこで▲3二銀△5一玉▲4二竜△同玉▲4三金△5一玉▲2三銀成△6一玉▲3三成銀と厚くする。しかし小駒の攻めなのでスピードが遅い。

このチャンスに△2六歩が、先手陣攻略の第一歩。

次の△2七歩成▲同金△4六歩が早い攻め。

受けるだけでも将棋は勝てない。


図からの指し手

△4二金 ▲3二銀 △5一玉 ▲4二龍 △同 玉 ▲4三金

△5一玉 ▲2三銀成 △6一玉 ▲3三成銀 △2六歩 ▲6五桂打

△2七歩成 ▲同 金 △4六歩 ▲4二成銀 △7二玉 ▲5二成銀

△7一銀 ▲7三桂成 △同 玉 ▲8五桂打 △8三玉 ▲7三金

△9二玉 ▲6一成銀 △3八角 ▲7一成銀 △4七歩成 ▲6八玉

△5八と ▲同 玉 △4六桂

まで後手勝ち



対服部(王将戦)

下図は、服部が△3七銀と攻めたところだが、△3七銀では△7四歩と馬道を通して受けておくべきだった。

▲8六飛が、馬に当てながら玉の退路を作った一石二鳥の好手。
△2五馬にさらに▲2七香と追って相手玉の退路を狭める。
△3五馬に▲3九金と手を戻したのが、先の△3七銀に悪手の烙印を押した巧手。
3七の銀が邪魔して1九の馬が使えなくなった。



ソウタの読み

対広瀬章人(第35期竜王戦第六局)

図は、実戦では現れなかった攻め合いの変化。
広瀬八段は、実戦の△4一桂よりこの変化を選ぶべきだったかと後悔していた。
しかし、藤井竜王は読み切っていた。


▲5七角が攻防で△4五桂と迫るのは▲3三銀からの詰みがある。
△4六桂と角道を止めながら迫るのは、▲6八金で玉が広くなる。
これに△4一香と受けても▲3三銀成△同玉▲1四銀と攻めて勝ち。



対斎藤慎太郎(JT杯)

下図は先手が▲2四歩△同歩▲1五香とした変化。
実戦は単に▲1五同香と取り、△同香▲8六歩△1八香成▲2七飛△4九角▲2六飛△2五香(以下▲3三桂成△同銀▲2五飛には△2四銀)と飛車を攻めて藤井竜王が完勝した。


この棋譜を並べて、藤井竜王に△2五香の妙手があったにせよ、斎藤八段らしくない拙戦に不思議に思ったが、実は、斎藤八段の読みの本線は図の変化だった。 

△3三桂に対し薄くなった1~2筋を狙うのは当然の発想だ。
しかし、藤井竜王に「用意の一手」があった。


手拍子で取ってしまいそうだが、△1二歩と低く受けるのが藤井の用意していた受けの好手。
これで攻めが続かない。
斎藤八段は途中でこの手に気づいて修正したが、時すでに遅かった。 
予定変更のせいで、実力不相応な拙戦となった。
斎藤八段にとっては残念な一局。


負けにくい永瀬将棋

永瀬拓矢 対 髙見叡王(第4期叡王戦第一局)

現在のタイトルホルダーの中で「守り」のイメージが強いのは永瀬叡王か?
下図は、彼が髙見叡王に挑戦した七番勝負の第一局。
髙見叡王のパンチが入った局面だ。 

図の△6五桂は鋭い。

6六の歩がなくなると、△6六桂の筋や△5五角が敵陣に直射するようになるので、この桂は取れない。

この桂を取れないようでは苦戦だが、ここで永瀬七段は勝負手を放つ。


図からの指し手

▲6三桂 △5二玉 ▲7一桂成


▲6三桂は、ソフトが示す最善手。

取ればもちろん▲7二銀があるので△5二玉だが、▲7一桂成と攻めに効いている飛車をどかせようとした。

「攻め間違えれば容赦しません」とプレッシャーをかけた。


▲7一桂成で、まだまだ苦しいが、永瀬はこの将棋を逆転勝ちする。

結果的にこの勝負手が叡王タイトル奪取に繋がった。


なお、▲7一桂成では▲5一銀という妙手があったようだが、人間には指せない。 


地蔵流の受け

青野照市対南芳一(順位戦)

果たして地蔵流の受けは?

△6一飛と逃げても▲4二角成で負け。

飛車の逃げ場所がなく、相手陣は鉄壁なので、気が弱い人なら投了するかも知れない。

受けの力は大切だ。


実際は、△3二銀が味の良い受けで先手勝勢。

飛車を取れば△4三銀と、と金を消せるし、銀を取れば△同飛と、手順に飛車を逃げることができる。

 


受けるべきか?攻めるべきか?

糸谷哲郎 対 近藤誠也(王将戦) 

この将棋に敗れた方が王将リーグ陥落という厳しい戦い。
ここで▲3八馬と受けるべきか?▲5三桂成と攻めるべきか?


実戦では糸谷八段は棋風に従って▲3八馬と受けた。
▲5三桂成に△3九桂成が厳しく見えるので当然の選択のようだが、以下▲4二成桂に△同銀と取る手には▲3七飛の王手成桂取りがあった。△2二玉と逃げても▲5八馬と逃げて耐えている。


この将棋を拾った近藤誠也七段が、三勝三敗でリーグ残留を果たした。

山田道美 対 升田幸三(十段戦)


升田九段が△8六角と迫った手に対し、山田八段は「あなたの攻めは怖くありません」と玉頭を放置して香車を取った。
受けなくても大丈夫と判断するのも受けの力だ。


駒損の後手は攻めるしかなく、△7七銀と打ち込んでくる。
飛車が直射して怖いようだが、ここで先手は手筋の受けを用意していた。


▲7六歩が「大駒は近づけて受けよ」の格言に沿った手。△同飛に▲8八銀と受けられると後手の攻めが一服した。
△7三金は飛車を切る準備。
山田九段に▲8九桂と受けられると、升田九段としても突撃するしかない。 

図から△7七桂成に対し、同銀と先手を取ろうとしたため波乱を呼んだ。
△同飛成が狙っていた手で▲同桂には△7六歩がある。
▲同金と取ったが、△同角成▲同玉△7九角と危ない格好になった。


遡って▲7七同銀では▲7七同桂としておけば、△7四飛に▲7六歩と受け、安泰たった。 

図となって、ここで▲2一飛と攻めたため、トン死。
▲8七銀と受けておけば、後手は投了するしかなかっただろう。



千駄ヶ谷の受け師

現代の受けの名手といえば木村一基九段。
親しい先崎学九段が「血液の中にナットウキナーゼが入っているんじゃないか」「業界では『木村の玉を詰ますのは疲れる』と言われている」と評する粘り強い棋風だ。

第79期棋聖戦第三局

対羽生(棋聖戦第三局)より取材。

受けの力がなければ▲8六同歩と取ってしまいそうだが、攻められても大丈夫と▲5四歩。


ここで▲9三桂と攻め駒を攻めたのが受け師の面目躍如という一手。

以下△9一飛▲8三銀成と進行して後手は切れ模様になった。  


 

ライバル行方との死闘1

何でもない序盤だが、歩を守って▲3七銀とするのは、△8五飛▲8七歩△1三桂などと急戦を狙われる。

▲7六歩が筋。

△7六同飛の横歩取りに対し、すぐに▲8二歩と桂取りに飛びつくのは、△8六飛▲8一歩成△同飛で、歩切れなので角頭の受けに困る。


図からの指し手

▲7六歩 △同 飛 ▲7七金 △7四飛 ▲8二歩 △8四飛

▲8一歩成 △8六歩 ▲7八銀 △3四歩 ▲6六歩 △同 角

 ▲7九桂としっかり受けた。

取った桂馬を使わされ壁になったが、後手は81のと金を払うため△5五角▲3七銀と損な交換をしなくてはいけない、

攻めの効果が手得になって現れ、先手は中央に厚みを築くこができた。

ここで▲8七歩と傷を消したのが大切な一手で、壁形をほぐしていくことが勝利につながる。

 

王手に慌てず▲7八玉と躱す。

△5七角成には▲6七金寄りを用意。

 


ここで▲6七金寄りが実現し、先手陣が好形になった。

 


ライバル行方との死闘2 

図からの指し手

▲同 銀 △同 飛 ▲8八歩 △8七歩 ▲7八金 △8八歩成

▲同 金 △8七銀 ▲7七金上 △8二飛 ▲8六歩 △8八歩

▲5八玉 △8九歩成 ▲4六角 △7三桂 ▲8七金 △9九と

 

ここから▲4五銀△4二桂(△5一香が最善)▲7三角成△同銀▲5三桂と受け師らしからぬ過激な攻め。

この将棋はテレビ放送されたので、記憶のある人も多いだろう。



第一問 対森下卓(銀河戦)

一見、ピンチだが・・・

第二問 対西村一義(C級1組順位戦) 

図から△6一香と▲6七飛の活用を防いだ。

粘り方がうまい。

第三問 対田中寅彦(NHK杯) その1

こんな局面も受け師は怖じない。

第四問 対田中寅彦(NHK杯) その2 


実戦では▲7九玉と間違ったが、▲7八玉なら勝ち。

この手以外はすべて負け、将棋は厳しいゲームだ。


第五問 野月浩貴(新人王戦) 

受けの名手の指し方は、とにかく丁寧だ。

私ならノータイムで竜を切って▲1一飛としそう。


第六問 対真田圭一(勝ち抜き戦) 

巧みな粘り


第七問 対石田和雄(銀河戦)  

相手を焦らす。

 

第八問 対北浜健介(新人王戦) 

手厚く


第九問 対久保利明(王座戦) 

目の覚めるような鋭手。


第十問 対三浦弘行(棋聖戦) 

先手で受けるには?

 

第十一問 対畠山鎮(竜王戦)  

取ると危ない


 第十二問 対富岡英作(NHK杯)

これぞ手筋!


第十三問 対野月浩貴(B級一組順位戦)その1 

根性の金打ち


第十四問 対野月浩貴(B級一組順位戦)その2 

根性の銀打ち


第十五問 対野月浩貴(B級一組順位戦)その3 

相手の狙いは?


第十六問 対中田功(C級1組順位戦)その1

一見ピンチだが

第十七問 対中田功(C級1組順位戦)その2

上の続き
見事な攻め


開始日時:1999/08/24 9:00:00
棋戦:順位戦
戦型:三間飛車
先手:中田功
後手:木村一基
場所:東京「将棋会館」
持ち時間:6時間
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲7八飛 △8五歩
▲7七角 △4二玉 ▲6八銀 △3二玉 ▲4八玉 △3三角
▲3八玉 △2二玉 ▲2八玉 △1二香 ▲5六歩 △1一玉
▲5七銀 △2二銀 ▲3六歩 △6二銀 ▲4六銀 △5四歩
▲3八飛 △4二角 ▲6五歩 △5二金右 ▲1八玉 △5三銀
▲3五歩 △同 歩 ▲同 銀 △3三角 ▲同角成 △同 銀
▲3七桂 △4二銀右 ▲4五桂 △2二銀 ▲6八金 △8六歩
▲6六角 △7一角 ▲3四歩 △8七歩成 ▲2六歩 △5五歩
▲同 角 △3五角 ▲2二角成 △同 玉 ▲3三銀 △同 桂
▲同歩成 △同 銀 ▲同桂成 △同 玉 ▲3五飛 △4二玉
▲4五桂 △4四銀 ▲3三銀 △5一玉 ▲4四銀不成 △同 歩
▲7一角 △7二飛 ▲4四角成 △4三銀 ▲3三馬 △6二玉
▲6四歩 △同 歩 ▲6三歩 △同 玉 ▲6五歩 △同 歩
▲2三馬 △3二歩 ▲3三桂成 △4四銀 ▲6五飛 △6四歩
▲8五飛 △5四角 ▲4五銀 △7六角 ▲3八金 △8五角
▲4四銀 △4九角成 ▲4三成桂 △1五桂 ▲4五馬 △5四銀
▲5三成桂 △同 金 ▲同銀成 △同 玉 ▲4四金 △4二玉
▲5四馬 △3五桂 ▲3六銀 △4五歩 ▲同 馬 △2七銀
▲同 銀 △同桂右成 ▲同 馬 △同桂成 ▲同 玉 △3五銀
▲5三銀 △5一玉 ▲3六歩 △4四銀 ▲同銀成 △2九飛
▲2八銀打 △6六角 ▲6三桂 △6二玉 ▲5七桂 △4四角
▲1八玉 △3八馬 ▲同 銀 △5九飛成 ▲7一角 △同 飛
▲同桂成 △4八金 ▲4九銀打 △同 金 ▲4三飛 △4八金
▲4四飛成 △2九銀
まで140手で後手の勝ち

先崎九段の冴え(藤井vs伊奈)

アベマTVで解説していた先崎九段が、ここで指摘した後手の名手が△7一角。
浮かばない。まさに自陣角の名手。