はじめに
角交換は嫌った方が負け
「角交換」が、将棋を変えたキイワードである。
大山康晴15世名人の全盛期は、角交換をしないことが暗黙のルールで、遅くとも5手目までには角道を止め、矢倉かノーマル四間にする時代だった。
大山15世名人だけではない、羽生18世名人が、「矢倉にするためには▲6六歩と▲7七銀とどちらで角道を止めるのが正しいか」を深く考察した「現代矢倉の・・・」という殆ど哲学書といえる大著を著したのは、記憶からそう遠くない。
羽生世代が活躍した後、渡辺明が台頭すると、さらに堅さが正義で、居飛車穴熊が猛威を振るった。
居飛車穴熊対策のために角道を止めない石田流やゴキゲン中飛車が見直された。さらに振り飛車から積極的に角交換を挑むようになり、居飛車の将棋でも△6二金+△8一飛型や中住まいなど角交換に強い陣形が流行。
堅さ重視からバランス重視へと将棋は変わった。
角交換振り飛車の利点
ノーマル振り飛車だと△4四歩と角道を止め、さらに角を活用するため△4五歩と二手必要だが、その歩は▲3七桂などと狙われやすい。
4三歩を据え置きのまま戦えるのが角交換振り飛車の利点である。
4四に歩がないので△4四角や△4四銀とスムーズに活用できる。
角交換振り飛車に対して、▲6六歩と角交換を避けてくれると振り飛車としては楽だ。

図は、既に後手が作戦勝ち。
自戦より
後手の私の「角道オープン四間飛車」に対し、先手は▲6六銀と角交換を防いでから居飛車穴熊に囲った。
その前に角交換するべきだったかもしれないが、下図のような進行となると、後手が得している。

通常の矢倉流中飛車に比べると4筋の歩の位置が4五でなく4三にいる。
2手ほど得した感じだ。
また4五に歩があると、▲3七桂で狙われる。
先手から▲6四角△同歩▲6三銀という攻めがあるが、△1二飛▲5四銀成△3三角として問題ない。
図からの変化手順
▲6四角 △同 歩 ▲6三銀 △1二飛 ▲5四銀成 △3三角
▲4五桂 △1五角 ▲5三桂成 △3七角成 ▲7八飛 △3六馬
▲6四成銀 △3七角(変化図)
変化図

二枚の角と飛車でガッチリ守りを固めて後手が良い。
実戦は△4四角に▲4五桂と跳ねたが、△3三桂▲4六歩△4五桂▲同歩△3三角▲3五歩△同歩▲3八飛△2四角▲2六歩に△8四桂(図)が好打。
桂の交換は後手が得。

先手が角交換を嫌っても、後手には△4四歩を省略できたという利点が残る。
田中寅vs冨田

図は、田中寅彦九段vs冨田誠也四段(順位戦)。
向かい飛車から△2四歩と動いて、早くも指しやすい。
▲2五歩には△3五角がある。次に△2六歩からの飛車先逆襲が厳しい。
▲6五歩の飛車取りにも△2六歩でいい。
次に△7九角成から△2七銀がある。
実戦は▲4六歩と突いた。
最善だが、負担になった。
そういえば、昔、アマチュア強豪の大木和博さん(東京都)が、アマ同士の対局で冨田四段の作戦と同様の将棋を指したのが『週刊将棋』誌(多分)に掲載されていた。
確かその将棋では△2四同飛▲2五歩△2二飛とした後、△4四角と活用した。
角の自由度が高い。
大木さんと言えば、当時「居飛車穴熊の元祖」を自称していた田中寅彦九段に対し、「私の方が元祖」と裁判で争った人だ。
不毛な戦いだ。
本当の元祖は、升田幸三九段なのだ。
田中九段が、自分より先に名人戦の大舞台で居飛車穴熊を指した升田幸三九段に対するリスペクトがあれば、無益な争いは生まなかった。
残念なことだ。
閑話休題。

図の△4四歩は馬筋を止めて盤上この一手。
馬を遊ばせるわけにはいかないので、▲2一馬だが、相手にしてもらえず△3七飛成。
遊び駒の金銀を取られても響かないし、△3一金と当てても逃げてくれず、▲同馬~▲4七金で返って紛れる。
優勢の時は、一直線に攻め合うのが正解。

ここで△5八飛と王手しないのが参考になる。
だまって△5九飛と、守備駒の金を狙うのが厳しい。
▲4二馬と形を作って△5八飛成で投了となった。
第一期新銀河戦では、藤井聡太相手に健闘したものの、成銀を打ちつけ反則負け。
「序盤のエジソン」と呼ばれ、タイトル獲得もあった田中寅彦九段だが、降級点三回により2022年4月15日対田中悠一五段戦を最後に64歳で引退となった。
鬼殺し向かい飛車
アマチュア研究で覆った常識
初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △2二飛
▲3三角成 △同 桂 ▲6五角(図) △4五桂 ▲4八銀 △5五角
▲9八香 △9九角成 ▲7八銀

図の▲6五角は△4五桂の反撃があって成立しないというのが今までの常識。
▲9六歩△9四歩の交換があれば△4五桂▲4八銀△5五角に▲9七香があるので先手良し。ただし、それでも△9九角成▲7八銀の後、△4二飛▲8三角成に△5七桂成から△8八歩があって難しいというのが私の認識だった。
ところが将棋系youtuberほっしーこと星田雅弘さんという元奨励会のアマチュアの方が、この▲6五角を用いて加古川清流戦アマチュア選抜大会で優勝。
昔の常識は当てにならないというという好例。
福間女流五冠と渡部愛女流四段との研究勝負
渡部愛女流四段が産休のため、前倒しで行われた福間香奈女流五冠との白玲戦。
福間香奈女流五冠の配慮により本来関西将棋会館で行われるはずだった対局場も、東京に変更された。

図の△5四歩が福間五冠の研究手。

じっと垂らした▲8四歩が好手。
恐ろしいことにここまでの先手の指し手は、ほぼ水匠先生の示す最善手。△8八歩に対する▲3九銀もそうだ。
渡部愛女流四段に周到な準備が事前にあったことが窺える。
壁形を解消して先手が指せる形勢だ。
桂頭は大丈夫か?
久保vs郷田(第66期王将戦第3局)より取材。
久保にとって40代になって初めてのタイトル挑戦だった。
久保は、△3三角型四間飛車から向かい飛車に振った。

図は久保九段が4二にいた飛車を△2二飛とした手に対し、郷田王将(当時)が▲3六歩と桂頭のキズを主張したところ。

図からの指し手
▲7七角 △7二銀 ▲5七銀 △5四歩 ▲4六銀 △3二金
▲5八金右 △2一飛 ▲3八飛

図からの指し手
△3一飛 ▲2八飛 △2一飛 ▲8八玉 △9四歩 ▲9六歩
△8四歩 ▲7八銀 △8三銀 ▲3五歩 △同 歩 ▲同 銀
先手の桂頭攻めはかなり強力と認識していただけに△3一飛で受かるのには驚いた。
この手によって▲3五歩△同歩▲同飛△2八角▲3四歩に△1九角成と香が取れる。
4二銀と3二金で3筋をサポートしているのだ。
先手は仕掛けを諦め▲2八飛と戻し、後手も△2一飛と追随した。

図からの指し手
△6四角 ▲4六銀 △4四歩 ▲同 角 △4五歩 ▲3七銀
△4三金 ▲7七角 △7四歩 ▲6六歩 △7二金 ▲6七金
△7三角 ▲6五歩 △5三銀 ▲2六飛 △6四歩 ▲同 歩
△同 銀 ▲6五歩 △5三銀
△6四角が利くのも3筋が厚いからだ。
▲4六歩には△3四歩があるので▲4六銀の後退は仕方ない。
そこで△4四歩が手筋で、▲3四歩には△4五歩で銀を取り戻せる。
以下後手は歩損するが、先手の右銀の働きが悪いのでつり合いは取れている。
千葉涼子vs室田伊緒(女流王位戦R2.2.18)

図からの指し手
△5五歩 ▲3四歩 △5六歩 ▲3三歩成 △同 金
図から△5五歩が筋。

△3三同金が驚きの一手。
▲同角成には△3一飛(上図)として歩切れが痛い。
アクロバティックな攻防だ。

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穴熊編
初手▲7八飛戦法から派生
久保vs郷田(第66期王将戦第2局)より取材。
初手▲7八飛が流行していた時代である。

図の局面から角交換して△4五角には▲6五桂~▲5五角~▲7五歩と鬼殺しのように進行する。
また角交換して△8六歩▲同歩△同飛には▲8八飛△8七歩▲8九飛として、△8八角には▲6六角、他の手には▲7八金で先手有利。
図で▲6八飛型であっても同様に進行しただろう。


この▲6五桂が振り飛車の切り札。△同桂▲同歩△同銀に▲6九飛までが一直線。
次の▲5八金の銀取りが受けにくい。
私がこの手筋を初めてみたのは屋敷vs大石(NHK杯)だが、類似局は多い。
渡辺明vs管井竜也(王位戦2017.05.22)

図は、先手の渡辺竜王(当時)が5筋の歩を交換した局面。
次の一手は例の通り△6五桂。
以下▲同桂△同歩▲同銀と進み、△5五桂の含みがあるので△3七角には▲1八飛と△4八角成を防ぐしかない。
そこで△2四歩も考えられるが、▲4六桂△2五歩▲5五歩△同歩▲5四歩△6二銀▲6五歩が変化の一例で難解。先の将棋と同様△4一飛が継続手。次の△5二金に▲4六歩と受けるために▲5七金と備え、後手は△5九角成と迫る。
▲5六銀に△7三桂は▲6五歩の備えだが、好機の△8五歩を含みにしている。
ここからの攻防が面白い。
先手の▲4六歩(下図)は、秘かに▲3五歩△同歩▲4五桂△4四銀▲3四歩といった攻めを狙った手だが、▲4五桂△4四銀▲4六歩と決めてしまう方が優ったか。

後手の方から△3五歩と突く手があった。
△同歩なら▲3一飛を狙っている。飛車の捌きを防ぐなら▲3四桂と使うしかないが、△5二金が玉を固めて味が良い。
そこで△3五歩に▲2四歩と突く、取れば▲3五歩と手を戻して△3一飛▲3四桂△5二金に今度は▲2八飛と活用できる。
勢い△3六歩▲2三歩成△3七歩成と、と金を作りあい、先手は▲3三歩(下図)と垂らした。

▲3三歩に△8一飛が面白い手。△3一歩と受けるのではつまらない。
先手の▲3三歩では▲3四歩の方が良かったか?と金が3三だと△5二金に▲3四角と追撃できる。また△3二歩と防ぐのは▲4五桂△4四銀に▲5三歩という攻めや▲3二と△同金▲3三歩成と交換してから▲7五歩として▲5二角を狙う筋がある。利かしに満足して▲5八金△4九馬▲6八金右と固めるのも歩切れの後手にとって厳しい順だ。
実戦は▲3二歩成△5二金▲3三と寄△2八歩▲4二と寄△6三金▲5二と△2七と、と進行。

ここで▲4三とには△4二銀の手筋がある。
渡辺九段は▲5三と△同金▲4三と△同金▲1六角と両取りをかける。
これがあるので△4三同金では△6三金寄としたいが、菅井八段は▲4四角を嫌った。以下△3二桂▲5三角成△同金▲同と△1八とで難しい攻め合いとなる。これもあったが、菅井八段には狙っていた手があった。

先手には飛車成を受ける手段がない。
▲4三角成と攻め合うが、△3九飛成に▲6一馬がどうだったか?
△1八と▲6二金に△6九飛が詰めろ。
▲7九桂にも△6八馬で二枚飛車が強烈だ。
後手陣は△7一桂と受ければ先手から厳しい攻めはない。
▲6一馬では▲7九金打~▲6八銀と固めて▲5四馬から▲5五桂といった攻めを狙う方が綾があったか?
▲7七桂(△3三桂)型
△2五桂ポン

1961年の対局である。
升田vs芹沢で図の局面になった。
タダの桂に目を丸くした芹沢八段だったが、取ると▲8六歩と飛車先を逆襲されるのは目に見えている。
芹沢博文は△3四銀と玉頭位取りを完成させた。
升田が恐れていたのは、△3六歩と突き捨ててから桂を取られる順。▲8六歩△8二飛▲8五歩に△2四桂である。以下▲8四歩には△3六桂▲1八玉△8七歩▲同飛△6九角。
そんな印象があって▲8五桂は無理筋と思ってきたが、今日では▲8五桂ポンは、成立要件は限られるものの立派に市民権を得ている。
しかも水匠先生に聞くと、この場合は取らない方が正解だったようだ。
故芹沢八段は、中原16世名人の兄弟子。過去に連盟役員として不祥事の噂もあったが、アイ・アイゲームというクイズ番組等芸能界で活躍し、知名度が高かった。
芹沢八段は天才である。本人がそういうのだから間違いなかろう。25歳で八段というのは、なみなみならぬ豊かな棋才を物語っている。惜しむらくは勝負に淡白な点がA級カムバックを阻んでいるようだ。
『升田の向かい飛車』より

- 勝負 (中公文庫 ま 33-1)
中央公論新社
本
角交換四間飛車(KKS)
藤井猛九段の「角交換四間飛車戦法」が升田賞を受賞した。
出現した当初は、向かい飛車にして逆棒銀、あるいは△4四銀から3筋交換と、狙いが単純な戦法だと思っていた。しかし、最近は四間飛車のまま△4四歩を見せて相手の▲4六歩を牽制したり、石田流に変化したりなど幅広い狙いを見せている。
また最近は一手損角換わりの主流が、4手目角交換になってきて、角交換振り飛車との距離がますます縮まった。
<先手番>
自戦より

後手番が私で、三手目▲4八飛を見て飛車先を保留して△6二銀と備えた。
逆棒銀が予想されるので飛車先は突かない方が良い。
先手の方は図から▲2二角成と交換した。
玉を寄られる前に角交換するのが角交換四間飛車の基本。
このタイミングでの角交換は疑問で、△同玉と取られて手順に固めることができた。
この場合、相手が飛車先を突いていないので、角交換せずに角道オープンのまま駒組みするのが普通。

ひたすら穴熊に囲う後手に対し、▲8六歩としたが、先に▲6六銀と活用すべきだった。
図からの変化手順
▲6六銀 △2二銀 ▲8八飛 △6四歩 ▲7七桂 △6三銀
▲5五銀(変化図) △5四歩 ▲4六銀 △3一金 ▲6八金 △7四歩
▲6六歩
変化図

図の▲5五銀が急所で、後手に△5四銀と腰掛けられると動きにくくなる。
実戦は下図のように進行した。

図となっては好機の△6五歩を見て後手が作戦勝ち。
佐藤vs三浦

佐藤康光九段の1筋位取りからのKKS。
図は▲4六歩に対し、三浦九段が△5四銀と飛車先交換を受けたところ。
図からの指し手
▲7五歩 △5二金 ▲7八金 △3三銀 ▲7六銀 △8六歩

図からの指し手
▲同 歩 △同 飛 ▲8七銀 △8二飛 ▲7七桂

図からの指し手
△3一玉 ▲8五歩 △2二玉 ▲7六銀 △4四歩
気になる変化がある。
図からの変化手順
△8六歩 ▲7六銀 △8七角 ▲6七金 △7六角成 ▲同 金
△8七歩成 ▲8五桂 △8六と ▲同 金 △7七銀 ▲8三歩
以下は<後手番>編にて後述する。
佐藤九段の予定は、▲6七金のところ▲8五角だった。以下△同 飛 ▲同 銀 △7八角成 ▲同 飛 △8七歩成▲4八飛 △7七と ▲7一飛が予定。
これでも先手が良い。

図からの指し手
▲2八玉 △4五歩 ▲3八銀 △4二金右 ▲6五歩 △3五角
▲5八金 △6五歩 ▲同 銀 △6七歩 ▲同 飛 △6六歩
▲同 飛 △4四角 ▲6九飛 △6五銀 ▲同 飛 △7六銀
▲6一飛成 △7七銀不成 ▲7九金 △8八銀不成 ▲6九金 △9九銀不成
▲6四歩 △7七角成 ▲6三歩成 △8七馬 ▲5九金寄 △4三馬
▲5一龍 △2四桂 ▲7一角 △9二飛 ▲5三と △同 金
▲同角成 △同 馬 ▲同 龍 △1六香 ▲4九金 △1九香成
▲同 玉 △1六香 ▲2八玉 △1九角 ▲3九玉 △1八香成
▲4八玉 △2八角成 ▲6五角
まで87手で先手の勝ち
実戦の▲2八玉から美濃囲いに組む順の他に、図からは▲6七金~▲8八飛、▲6九飛~▲8九飛、▲6五歩の仕掛け等有力な選択肢が多い。
水匠先生は他に▲5八金という手を上位候補に示し、▲2八玉はマイナス評価なのに驚く。
実戦でも△3五角とされたので▲5八金と上がる事になった。
第一感の▲6七金には後手は穴熊に囲う。
図から▲6七金の変化例
▲6七金 △4二金右 ▲8八飛 △8三歩 ▲8六飛 △2四歩
▲5八金 △1二香 ▲5六歩 △2五歩 ▲4八銀 △1一玉
▲5七銀 △2二金 ▲8九飛 △4五歩 ▲6八金寄 △3五歩
図から▲6五歩の変化例
▲6五歩 △8八歩 ▲6九飛 △6五歩 ▲同 銀 △6二飛
▲6四歩 △6五銀(△8九角▲9六角)
▲同 飛 △4五角 ▲5六角 △5四銀 ▲6九飛 △8九歩成
▲同 飛 △6四飛 ▲6五歩 △6一飛 ▲8四歩
この変化は有力だが、▲6五歩と仕掛けるならもう少し玉を固めたいと、実戦の▲2八玉は自然。
ただ水匠先生は、△1四歩の反撃を気にしている。
取るしかないが、下図のように△1六歩と垂らされると▲同香には△2五角があって▲1三歩成も△同桂と取られて▲同香成△同香と取られると、端の位を逆用され、味が悪すぎる。

▲5八金という発想の意味が分かる。
佐藤九段は、美濃囲いに囲ってから▲6五歩と開戦。
▲6七金~▲8八飛に誘惑されないのが超一流棋士の感覚だ。
<後手番>
①早い角交換型(旧型)

ここから穴熊にする「レグスペ」は、駒が偏っているため手を作るのが難しい。
美濃囲いで戦うのがKKS。
以下△3三銀~△2二飛とする形は、【角交換振り飛車】(その7)向かい飛車からの逆棒銀・レグスペ で扱う。
また、初期においては、飛車先を保留している先手に△2二飛と振り直したプロの実戦もあったが、よほどのことがなければ四間飛車のまま頑張り、好機の飛車の転換を図りたい。

ダイレクト向かい飛車と違って、図のように▲4六歩に△4四歩と反撃できるのが利点。
先手は、タイミングをずらせて▲5八金△8二玉から▲4六歩とする。

図からの指し手
△7二銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲4七銀 △4四歩 ▲5六銀
△3五歩
先のように図の局面から△4四歩とするのは、▲4七銀△4五歩▲同歩△同飛▲3六角で失敗。
そこで今度は左銀の活用を図る。
△4四歩と飛車先の歩交換を見せ、▲5六銀に△3五歩がポイントだ。

図から▲1六歩と備えるのが大切な手だった。
手の意味は後述する。
図からの指し手
▲7七銀 △3二金 ▲7五歩 △3四銀

図からの指し手
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三銀 ▲2八飛 △3三桂
次に△3三桂とされては困るので飛車先の歩交換は仕方ない。

図からの指し手
▲2四歩 △3四銀 ▲2三角 △4三金 ▲3四角成 △同 金
▲2三歩成 △2五桂
図の△3三桂では、大人しく△2四歩と打ってから△3三桂とする順が手堅いが、強く△3三桂で攻めを呼び込む。

図からの指し手
▲2四と △同 金 ▲3三銀 △2七歩 ▲同 飛 △4九角
▲2八飛 △3九角 ▲1八飛 △4一飛
△4九角に▲2六飛は△1五金がある。前に▲1六歩が必要と述べたのはそのためだ。
また、先手に▲6八金直の一手があれば、▲4八飛で先手有利となる。
ここで▲4八飛は、取って△2八飛が厳しい。

図からの指し手
▲2四銀成 △2八歩 ▲2五成銀 △2七角成

△2七角成が好手で、歩成を急いでは▲3八金で面倒なことになる。
今度△2九歩成に▲3八金としても△1九とで良い。
このようにKKSには先手の▲4六歩に対する抑止力があり、ダイレクト向かい飛車より劣るとは一概に言えない。
なお、△8二玉とせずに△4四歩や△5二金左として、▲4六歩ほ牽制し、逆棒銀を狙う手法が有力。
△3五歩位取り

△4四歩から4筋の歩交換を目指す以外に、△3五歩と位を取り、△3四銀から△4五歩を狙うのも有力。
図から▲3六歩が気になるが、△6四角として△4五歩を狙う。
図からの指し手
▲9六歩 △9四歩 ▲7七銀 △3二金

図の△3二金で△3四銀を急ぐと▲2五歩と突かれて困る。
図からの指し手
▲3六歩 △6四角 ▲8六角 △同 角 ▲同 歩 △6四角
▲1八飛 △3六歩 ▲同 銀 △4六角
後手は歩を得たが、代償に時間を失った。
▲4七銀△6四角▲6六銀と角を目標にすれば先手が指せる。
②角交換保留型
飯塚vs藤井(朝日杯:2013年11月25日対局)
初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4二飛 ▲6八玉 △8八角成 ▲同 銀 △6二玉 ▲4八銀 △7二玉 ▲7八玉 △8二玉 ▲2五歩 △7二銀

図が、進化した角交換四間飛車。
図を見ると角交換四間飛車の利点がわかる。
後手は美濃囲いが完成しているが、先手玉はまだ中途半端な構え。違いは角交換していない点で、これまでは早目に後手から角交換して△8八同銀を強要し、飛車先を△2二銀~△3三銀と守ってから美濃囲いに組んでいたが、それには▲4六歩から腰掛け銀に組む対策が有力で手詰まり模様。
進化した角交換四間飛車は、先に美濃囲いに組み▲4六歩には△4四歩から強く戦う心づもり。先手が飛車先を保留する作戦が増えているので、飛車先のcareも急がない。
新型を「角道オープン四間飛車」、旧型を「角交換四間飛車」と区別する事もある。
飛車先交換には、角交換から△2二飛とぶつけるつもりだが、交換しないのなら角交換から△2二飛※と自然に受ける。
その場合、銀の動きを保留した効果で、左銀を中央へ活用できる。
※ただし△2二飛に対して▲7七角△3三角▲同角成△同桂から桂頭を狙われる筋に注意!

今までは、この局面で角交換すると▲同玉から堅められて損とされていたが、玉で取られても十分対抗できると判断したのが、specialist藤井九段。
飯塚七段は玉を固めて攻める棋風なので当然▲同玉。
その後、角のラインを防いで▲6六歩。

ところが、自然なこの手が少し損。▲7七角の狙いが無くなったので△4四銀と出やすくなった。
畠山vs藤井△藤井流3一金型
△2二飛の他には△2二銀▲2四歩△同歩▲同飛△3一金が藤井流。

図の△3一金が藤井九段の工夫で、▲2八飛△3三銀▲2四歩△2二歩という形を屈服でなく、かえって銀が自由に使えると評価。
△3五歩から飛車を浮いて▲2四の歩狙いや、△3二角からの玉頭狙いもある。
今まで手詰まり模様だった角交換四間飛車が、進化したこの手順によって、再び脚光を浴びるか?
図からの指し手
▲2八飛 △3三銀 ▲2四歩 △2二歩 ▲3六歩 △3二金

▲3六歩を急がないと△3五歩~△4五歩~△4四飛から2四の歩を狙われる。
後手は、他に△5二飛と中飛車に振り直す深浦流の作戦もある。
畠山鎮七段は、図で▲7七銀としたため、藤井猛九段に△4五歩~△4四銀の活用を許した。
▲4六歩△4四歩▲3七桂と4筋をkeepしておけば先手も十分戦えた。
行方vs高﨑(第29期竜王戦2組:平成28年1月15日対局)
初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4二飛 ▲6八玉 △8八角成 ▲同 銀 △6二玉
▲7八玉 △7二玉 ▲4八銀 △8二玉 ▲9六歩 △9四歩 ▲2五歩 △2二銀
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △3一金

後手はあえて歩交換を誘った。
先手としては、図から飛車先交換の誘惑に乗らず、後手に△3三銀~△2二飛と受けられても、▲3六歩・4六歩で十分に対抗できる。
△2四歩からの飛車先逆襲には、▲3七桂で対抗できるし、△4四銀から△3五歩▲同歩△同銀の交換には、▲7七角△4四角▲同角△同銀▲7七角と対抗できる。
実際、2014年4月30日に対局があった行方尚史 vs. 渡辺明二冠 (第62期王座戦挑戦者決定トーナメント1回戦)では行方八段は、飛車先交換をしなかった。
今度の対局で行方八段が飛車先交換したのは、前局の反省か。
飛車先交換に△3一金が、藤井猛九段が開発した手法。他に△2三歩と穏やかに受け、△3二飛から石田流を目指す指し方も考えられるが、4→3戦法より少し損。具体的には△2三歩▲2五飛△3二飛▲3六歩と交換を拒否される。
図からの指し手
▲3六歩 △3三銀 ▲2六飛 △2二飛 ▲2三歩 △4二飛 ▲3七桂 △4四歩
▲7七銀 △3二金 ▲5八金右 △2四歩 ▲5六歩 △2三金 ▲5七銀 △7二銀
▲5五歩 △2二金

▲3六歩は行方八段らしい強気な指し手で、▲2八飛(▲2六飛と引くのは、△3三銀▲2四歩△3五角)と引いて△3三銀▲2四歩△2二歩と△2二飛ぶっつけを避ける実戦例がほとんど。
本譜のように△2二飛と交換を挑まれると▲2三歩と避けるしかなく、以下△4二飛▲3七桂△4四歩▲7七銀△3二金▲5八金右△2四歩▲5六歩△2三金と歩損する。
▲2八飛△3三銀▲2四歩△2二歩とした場合、次に△3五歩~△4五歩~△4四飛を防いで▲3六歩とするのが良い。
後手は△3二金くらいだが、
①▲4六歩は、△4四歩なら▲3七桂の予定だが、△4四銀が面白い構想。以下▲4七銀△5五銀▲5八金右△4四歩で互角の形勢。
②▲5六歩は、△7二銀▲7七銀△4四歩▲6六銀△4五歩▲5七銀上と△6四角の筋を警戒しながら駒組みを進めて形勢互角。
その後、▲5六歩と中央の歩を突くのが急所で、▲4六歩から腰掛け銀に組むのは桂頭が不安なので、攻めの形を構築するのが難しい。たとえば▲5六銀には△3五歩▲同歩△3六歩と言った筋が気になる。
石田直裕著「角交換四間飛車破り~必勝ガイド」p.206~に▲4六歩型の自戦解説(対黒沢戦)があり、後手は、△2二飛~△4二銀~△3三金と整形している。なお、講座(p.139~)では▲5六歩~▲5五歩を解説している。
図のように進展すると、後手の形が悪い。
図の局面から▲7五角△5二飛▲5四歩△同歩や▲5四歩△同歩▲5三角△5二飛とすれば馬ができそうだが、▲3一角成△5一飛▲7五馬△6四角と消される。
先に▲4六銀として次に馬つくりや▲3五歩の攻めを狙う手段は有力。
図からの指し手
▲8八玉 △3二金 ▲7八金 △4三金 ▲7五歩 △2二飛 ▲5六銀 △4二銀
▲4六角 △2五歩 ▲同 飛 △同 飛 ▲同 桂 △4五歩 ▲同 銀 △2九飛
▲2二飛 △6九角

本譜は、手得を生かして▲8八玉から玉を固めたが、その反面、後手も△4三金・2二飛・4二銀型と整形して満足。以下△2五歩から仕掛けて後手有利の終盤を迎えた。
32分の考慮の末に指された図の△6九角が、高﨑六段が才能を見せた手で、先手は受けにくい。
▲6八金右△4七角成▲5七角は、△4四歩▲同銀△同金▲4二飛成に△5七馬▲同金△2四角で先手負け。
▲4八金△5九飛成▲5七角は、△3三桂から△6五桂の狙いが厳しい。
行方八段は▲6八金左と指したが、△5八角成▲同金△4九飛成▲6八金△7九金▲7八角に△3三桂と取られそうな桂馬を捌いて後手好調。
図からの指し手
▲6八金左 △5八角成 ▲同 金 △4九飛成
▲6八金 △7九金 ▲7八角 △3三桂
▲同桂成 △同 銀 ▲2一飛成

図からの指し手
△7八金 ▲同 金 △4七龍 ▲6八角
△4五龍 ▲7四歩 △同 歩 ▲7三歩

高﨑六段は△7八金▲同金△4七竜としたが、堅めて損。まだしも△8九金▲同角△4七竜で、▲5七金なら△3八竜(△4八竜▲5八金打)▲7八金△6五桂で後手優勢。
この局面は、角のラインを防ぎながら次に△4四歩の確実な攻めや△8九金~△7六桂の早い攻めを狙って△6四桂と打ちたい。
本譜に戻って、高﨑六段は△4七竜と角銀の裏をついて金を使わせようとしたが、行方八段は▲6八角と銀を取らせて▲7四歩と反撃。先手陣がまとまっているのが強み。
図からの指し手
△同 桂 ▲7五歩 △3八角 ▲7四歩 △同角成 ▲8六桂 △6四馬 ▲7四歩 △6五桂 ▲7三金 △同 馬 ▲同歩成 △同 玉 ▲1一龍 △7七桂成 ▲同 金 △4八龍 ▲7六香 △6二玉 ▲7二香成 △同 玉 ▲8一角 △8二玉 ▲7四桂 △9三玉 ▲8二銀
まで101手で先手の勝ち
図から1分の消費時間で△同桂と取り▲7五歩は△3八角で受かるつもりが、▲7四歩△同角成▲8六桂が厳しかった。△同玉と取って▲6五桂△6二玉▲8二金△5一銀と丁寧に受けるべきだった。
長岡vs藤井(銀河戦)

藤井九段は、対長岡戦で△3二金でなく△3二角と工夫を見せた。
▲7五歩と突いたので△3二金よりこの角の方が働いているという感覚だ。
先手は痺れた。

以下、飛車を転回して振り飛車のペースだ。
居玉大模様作戦
アマ名人戦地区予選二局目で、初戦を落とし後がない一局。
後手の私は、△9四歩と端を打診した後、ダイレクト向かい飛車に組んだ。
相手は9筋の歩の突きあいを生かそうと、居玉のまま8筋を伸ばしてきた。
私は、居玉の今がチャンスと△2四歩▲同歩△同銀と仕掛けたが、下図の局面で悩んだ。

予定は△同桂だったが、例の角打ちにどう対処するか?
△2五銀▲3四角△3二金▲2三歩△2一飛▲2五角△2三飛▲2六歩△2五桂▲同歩が考えられる進行だが、どうか?
自然に香取りに△8八角打ちとすると、▲2四歩△2一飛▲2三歩成(下図)と飛車先を逆襲される。

と金を放置する手があった
図以下△同飛▲同飛成△同金▲7五桂までを想定すると、相手の居玉の方がこちらの玉より堅く思えてきた。
金銀が集結している居玉に対し、囲ったこちらの玉は▲9五歩△同歩▲8四歩などと裏面から攻められると弱い。
「AIがバランス型を評価するのはこういうことか!」と急に自信がなくなった。
しかし、後に検討すると、図で2三のと金を放置して△9九角成とすれば後手が指せると分かった。
いわれてみると、歩切れの先手には思わしい攻めが全くない。
例えば▲2二銀△同金▲3二とには、今入手した香を打つ△2三香が激痛。
自分の弱さに呆れた。
弱気に強気で返される

実戦は弱気になって△3三同銀。
原型は、弘文社刊の升田幸三九段『升田の向飛車』「2.新手で勝つ」(対塚田正夫九段戦)に載っている▲5六歩型向かい飛車の升田新手で、「▲7七同銀は新手である。▲7七同桂と応じても有利という確信はあるが、この7七同銀も成立する手と、前から考えていた。(升田)」とある。
形は違うが、△3三同銀は経験もあった。
以下△2三歩を予想し、▲4二飛の予定だった。
右桂を活用するため直ちに▲3六歩とするのは△5五角があるので、上図のように▲4六歩とするくらいだが、△3五歩と桂の活用を阻んで後手が指せる。
△3五歩では△5四角と飛車頭を狙う手も考えられるが、▲3六歩から右桂を活用するのが急所で、先手作戦勝ちになりやすいと思う。

しかし、相手は強気に▲2二飛成と飛車交換に応じてきた。
意表を衝かれたが、最善の応手だった。
△2二同銀▲8四歩△同歩▲9五歩となって取れば▲9二歩△同香▲6五角と裏面から攻められると、何のために玉を囲ったのか分からない。
▲9二歩では単に▲6五角△2五飛▲9二歩(図)という手順でも、先手が良い。

私は、▲9二歩△同香という展開は、▲6五角以外に▲9一飛もあるので勝てないと判断し、角打ちの防ぎも兼ねて△2五飛と攻めた。
▲9五歩に手抜きで攻め合うという判断は正しかったが、手段を間違えた。
先手にとってみれば、右辺から攻められても左辺が広い。
正着は、△8八角と根本の香を狙う手だった。
▲7七角と合わされると意味がないようだが、△同角成▲同桂(▲同銀は▲9四歩に△9八歩と返される。)△2八歩▲9四歩△2九歩成▲9三歩成△8六桂と左辺から攻める。
しかしそれでも形勢は先手がやや指し良い。
強気の飛車交換が好判断だった。
好事魔多し

しかし、相手も形勢を悲観していたようで、図の局面となっては棋勢好転。
と金を作られたものの先手で▲4六香が入り、先手玉(の寄せ)も見えてきた。
ノータイムで△5六角成としたが、危険。
▲8三角という絶好打があって逆転するところだった。
図の局面から正着は、△4七角成。
次に△6七香成という必殺手がある。
実戦は▲7五桂だったので事なきを得た。
といっても6四の香が動けば▲6四歩が生じるので悩ましい。
安全勝ちを探して再び大長考となった。

安全勝ちを願うと、反っておかしくなるのが将棋というゲーム。
上図の▲6五桂が必死の勝負手で、訳が分からなくなった。
やはり危地に踏み込む勇気が必要だった。
一局目の相手の優勢になってからの隙のない指し回しが印象に残っていて、真似ようとしたのが過ちだった。
勝負に勝ったものの実力不足を痛感した。
黒沢怜生六段の△5四角
『将世2022.6号』に「豪快!角交換四間飛車 最前線」という戦術特集が載った。
講師は、藤井猛九段の角交換四間飛車を継ぐ黒沢怜生六段。
角交換振り飛車のおかげでプロに成れたという誰からも愛される好人物。
何年か前の第43期棋王戦では、黒沢怜生五段(当時)が、この得意戦法を用いて敗者組から勝ち進んだ。
惜しくも挑戦者決定戦で永瀬拓矢に敗れて挑戦はならなかったが、十分に角交換振り飛車の優秀性と面白さを示した。
角交換振り飛車は、角打ちのセンスを問われるが、対佐藤天彦九段戦で見せた△5四角に感心した。
ちなみに角交換振り飛車は、このような筋違い角から打開を図ることが多い。

下の記事と少し形は違うが、図の角打ちが好打。
▲3四角と歩を取った後、▲5六角と引いて3筋の歩を伸ばして桂頭を攻める狙い。
後手が△5四歩と突いていないので、安心して打てる。
黒沢五段(当時)は△4二金と受け▲3四角に対し、5四の空間が空いているのを利用して△5四角と打った。
覚えていて損のない角打ち。
以下▲5六角なら△3六角▲3四歩△2五桂▲2六飛△3五歩で先手の攻めは不発。
実戦は▲3五歩としたので△4五桂▲5六歩△3三金と角を捕まえることができた。
形勢は互角。
黒沢怜生五段(当時)の▲2八角(△8二角)
本田vs黒沢(第三回アベマトーナメント、チーム三浦「ミレニアム」対チーム広瀬「大三元」)より取材。
9筋位取りからダイレクト向かい飛車にするのは流石に危険と判断したのか、角交換四間飛車となる。
そこで△6二銀と囲って△3五歩~△3四銀が飛車先逆襲を狙った構想。
△3四銀に先手は飛車先の歩を交換したが、これが後手の待ち受けるところ。
△2三金▲2八飛に△2五歩~△3三金△2二飛と逆襲された。
6二銀型が▲3一角の筋を防いでいる上、△7一金とエルモ囲いが堅い。
そして△8二角の自陣角が厳しかった。

上図は、井出vs塚田(2020.10.02王座戦)より取材。
先手玉が3八の位置のまま1五の位を取ったため美濃に囲えていない。
しかし、それが功を奏して▲2八角が成立した。
上記の△6四角▲3七角の交換をせず△4四銀~△4三金とした方が、こういった角のラインがあるので得かも知れない。

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黒沢怜生六段の△1二角
敗者組決勝では三浦弘行九段が、「ゴキ中殺し」の序盤作戦を見せた。
初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △4二銀
▲6八玉 △5四歩 ▲3三角成 △同 銀 ▲5三角 △4四角
▲同角成 △同 歩 ▲4三角 △3二角 ▲同角成 △同 金(図)

図となると3三の銀と3二の金が重たい。4四の歩を突いていなければ△4四銀と活用できるのだが△4五歩~△4四銀としても形が良くならない。
この作戦は、ゴキ中使いには効果的。
図からの指し手
▲4八銀 △5二飛 ▲7八玉 △6二玉 ▲5八金右 △7二玉
▲6六歩 △8二玉 ▲8八玉 △7二銀 ▲7七桂 △5一飛
▲6五歩 △3五歩 ▲7八銀 △3四銀 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △2三銀 ▲2八飛 △3三桂 ▲4三角 △同 金
▲2三飛成 △3四角 ▲2二龍 △1二角打(図)
途中の▲4三角は強手。
▲2四歩△3四銀▲2三角と打ち込むのは、△2三同銀▲同歩成△2七歩▲同飛△4五角があって成立しない。
しかし、本譜の進行を反省すると、▲4二角の方が良かったかもしれない。

図の△1二角打は、二枚角で敵陣を睨みながら△2一飛を狙った、気持ちの良い角打ち。
ここで三浦九段は▲6四歩△同歩▲6二歩と攻めたが、▲6四歩△同歩▲6三歩の攻めも有力だった。
△2一飛は危ないので△2一歩と受けるが、▲1一竜として後手は飛車の活用が難しい。
実戦は狙いの△2一飛が実現した。
飛車を敵陣に打つと、二枚角と合わせて強烈な破壊力だ。
図からの指し手
▲6四歩 △同 歩 ▲6二歩 △5二金 ▲5六歩 △4二金引
▲5七銀 △2一飛 ▲同 龍 △同 角 ▲3六歩 △同 歩
▲3一飛 △5一飛 ▲同飛成 △同 金 ▲3一飛 △4一飛
▲同飛成 △同金寄 ▲2四飛 △1二角上 ▲2二飛成 △5五歩
▲1一龍 △5六歩 ▲6八銀 △3九飛
まで74手で黒沢五段の勝ち。
黒沢怜生六段の△6五角
初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △9四歩 ▲2五歩 △9五歩
▲6八玉 △8八角成 ▲同 銀 △2二銀 ▲7八玉 △3三銀
▲4八銀 △2二飛 ▲5八金右 △5二金左 ▲4六歩 △6二玉
▲4七銀 △7二玉 ▲3六歩 △8二玉 ▲3七桂 △7二銀
▲2九飛 △4四歩 ▲7七銀 △6四歩 ▲6八金上 △7四歩
▲8六銀 △6五角 (図)
菅井vs黒沢(王将戦)で黒沢六段は、ダイレクト向かい飛車の作戦を選択した。
角交換振り飛車を指すことも多い菅井八段がどういった作戦を見せるか注目された。

▲8六銀と9五の歩を狙ってきた先手に対し、グズグズできない黒沢六段は、△6五角(図)と局面を打開した。
歩得できても角が負担になるので決断の一手だ。
この筋に角を打つのは頻出する手筋。
【角交換四間飛車】詰むや詰まざるやの大激戦
図からの指し手
▲5六銀 △7六角 ▲4五歩 △4二飛
▲4四歩 △同 銀 ▲7七銀 △5四角 ▲4五歩 △3三銀
▲6六銀 △6三金 ▲2四歩 △同 歩 ▲5五銀左 △7六角
▲4六角

図のように筋違い角と定番角の対抗になると、振り飛車が苦しい。
先手の▲4六角に△6二飛と受けたが、△7三銀もあった。
▲6六歩に△4三歩と打っておけば、それ以上の攻めはなく、△5四歩の銀取りが残っている。
7六の角は、銀と刺し違える覚悟だ。
△6二飛に▲4四歩と突けたため、先手の駒が躍動してきた。
図からの指し手
△6二飛 ▲4四歩 △5四歩 ▲6六銀 △4二飛
▲7七銀 △4四飛 ▲4五桂 △9四角 ▲9六歩 △7五歩
▲4九飛 △5五歩 ▲同 角 △4一飛 ▲9五歩 △8五角
▲8六銀 △7六角 ▲7五銀 △4四銀 ▲6四角 △同 金
▲同 銀 △4八歩 ▲2九飛 △4五銀 ▲7三歩 △同 銀
▲同銀不成 △同 玉 ▲6五銀打 △同 角 ▲同 銀 △3八角
▲7四歩 △6二玉 ▲3二角 △2九角成 ▲4一角成 △5二銀
▲6四銀 △4一銀 ▲6三飛 △5一玉 ▲5三銀成

「助からないようで助かっている」
一見すると先手の攻めが決まったように見える局面。
しかし、▲5三銀成の前に▲7三歩成△同桂を利かせてるべきだった。
△6二銀と受けられ▲4三歩に△3一角として後手玉が寄らない。
将棋の厳しさを思い知らされた。
図からの指し手
△6二銀
▲4三歩 △3一角 ▲4二歩成 △同 銀 ▲同成銀 △同 角
▲2三飛成 △7六桂 ▲7七銀 △6八桂成 ▲同 金 △3九飛
▲6九桂 △7六歩 ▲4三歩 △7七歩成 ▲同桂左 △6四角

しかし、菅井八段もしぶとく攻めをつなぐ。
図からの指し手
▲4二金 △同 角 ▲2一龍 △5二玉 ▲4二歩成 △同 玉
▲6一龍 △5一金 ▲5二金 △同 金 ▲3一角 △4三玉
▲4四歩 △同 玉 ▲2二角成 △5三玉 ▲6五桂打
▲2一竜に合駒した方が明解だったが、上に逃げたくなるのは当然の心理だ。
一手の緩みも許されない菅井八段は、金を犠牲に馬を作って包囲網を築く。
勝ちになったか?

図の局面で、△6四玉と逃げておけば、先手玉に△6九飛成からの詰めろがかかっていた!
しかし、人間が読むのは困難。
△4三玉と逃げたため、先手が勝勢になった。
図からの指し手
△4三玉
▲2一馬 △3二銀 ▲同 馬 △同 玉 ▲5二龍 △2三玉
▲4三龍 △3三金 ▲3二銀 △1四玉

図は、難解な局面だが先手勝ち。
金を取る手、銀を取る手、1六歩と突く手が浮かぶ。
実戦は▲1六歩だが、金を取っても、銀を取って△3二金に▲3四竜としても先手が勝っていた。
▲1六歩 △2五玉 ▲4五龍 △2六玉 ▲4八龍 △1七銀
▲2八歩 △同 馬 ▲同 龍 △同銀不成 ▲4八角 △3七金
▲3九角 △同銀不成 ▲1七銀 △3六玉 ▲7三歩成 △同 桂
▲同桂成 △同 銀 ▲5三飛 △2七玉 ▲3三飛成 △3八玉
▲7三龍 △2五桂 ▲2九金 △同 玉 ▲1八銀 △3八玉
▲4三龍 △4七歩 ▲2九金 △4九玉 ▲3九金 △同 玉
▲2八銀打 △4九玉
まで180手で後手の勝ち
ド素人中飛車の罠

初心者のような、四手目いきなり△5二飛。
序盤早々悩ましい局面になった。
角交換して▲6五角という手段がたちまち浮かぶが、いったい誘いの隙だろうか?
図からの指し手
▲2二角成 △同 銀 ▲6五角 △3二金 ▲8三角成 △7四角
▲同 馬 △同 歩
先手は8三の歩を取って歩を得したが、意外にそれを生かすのは難しい。
後手は△8二飛と居飛車に戻す予定で、歩損でも飛車が直通しているのが大きい。
▲8八飛としたいが、2七の空間が空いているので角を打たれる。
それに▲3六角とすると交換して△5五角があるし、▲8三角と打っても△7二飛や△5四角成▲7四角成△7二飛などと反撃される。
角打ちは見送ってゴキ中を相手にした方が自分の土俵で戦えそうだ。
皆が皆、藤井聡太というわけにはいかないのだから、分相応に指すことも大切な心構えだ。
繰り返すことになるが、甘い誘惑にはくれぐれもご注意を!
やばボーズ流
一手損角換わりとのデュアルモード

最初は、一手損角換わり風。
これに▲4六歩と腰掛銀を目指すと・・・

図からの指し手
▲5八角 △3五歩 ▲同 歩 △4三銀
図から▲5八角は仕方ないが、そこで△4五歩▲同歩△3五歩という筋を予想。
これには▲4五同歩でなく▲4五同桂と取ってどうかと考えていた。
ところが後手の指し手は意表の△3五歩。
何と、自らの弱点でもある桂頭を突いてきたのだ。
訝しがりながら▲3五同歩と取ると、△4三銀。
桂頭を守りながら△5四角成の馬つくりも見せた好手だった。
▲5五銀にも△6四歩と馬の退路を作っておく。
先手の方にだけ生角と桂頭のキズが残り、後手良し。
△3五歩と突き捨ててから△4三銀は、かなり読みにくい筋なので実戦で効果的。
当時知らなかったが、この戦型をやばボーズ流というらしい。
藤本渚五段のシノギ(対黒田堯之)

実戦で後手が受け切るのは難しいように見える。
△8三飛は▲6九飛とされて、飛車の働きの差で後手自信ない。
実戦は△6三金と受けた。
以下▲6五桂 △6四歩 ▲同 角 △6五銀 ▲同 銀 △6二飛▲7四銀 △同 金 ▲5三角成 △6六飛 ▲5五銀 △6一飛▲6四歩 △4五角 ▲7九飛 △5二銀 ▲4六歩(下図)と進行。

ここで後手の藤本渚五段は△8一角と引いたが、△5三銀と馬を取る手も考えられた。以下▲4五歩△6四金は居飛車有利に見える。
実戦は、▲7五歩△6五金となった。

図から▲5四銀△5三銀▲同銀成△7一角!と進行としたが、図で▲6三歩成△同角▲5四銀とすべきだったか・・・・
実戦は、二転三転の後、さすがの終盤力で後手勝ち。

ザ・サバキ
南芳一九段vs田中悠一五段(C級2組順位戦)より取材。
角交換向かい飛車に▲7七角と打ち、△3三角と合わせたため、図の局面となった。

図の▲5六歩の動きにセンサーが反応し、△5二飛と反発。
そこで軽く▲2四歩の突き捨てを入れようとしたが・・・
手抜きで△5六歩が振り飛車らしい捌き。
▲5六同銀△6五銀▲3三角成△同桂▲6五銀△同歩▲2三歩成△2七歩▲1八飛△6九銀▲5七歩△4五桂(図)

▲2四歩では▲5五歩△同銀▲5七歩なら安全。
将棋 棋譜並べ ▲南 芳一九段 vs △田中 悠一五段 第76期順位戦C級2組4回戦 「技巧2」の棋譜解析 No.612
令和の角交換振り飛車対策
冒頭に「角交換」が現代将棋のキイワードと述べた。
下図のような角交換四間飛車に対する簡単な対策は、角道不突。

このように簡単にペースを握れる。
「嬉野流」や「村田システム」は、角交換振り飛車対策としても優秀。
下図は、渡辺和vs都成。
上図と似たような形だ。

これも対策として有力だ。