囲碁上達のために
囲碁と将棋
並列に語られることが多いが、勝敗のつき方に大きな違いがある。囲碁は陣地を奪い合う遊戯なため、負けても奪った陣地の分だけ達成感が残る。しかし、将棋の場合は勝ちと負けしかない。ゼロか百かだ。だから、敗北がとりわけ悔しい。綾崎隼著「ぼくらに嘘がひとつだけ」より
「旦那の碁、丁稚の将棋」と言われる所以である。
将棋指しは、碁においても陣地作りより相手の石を殺すことを目的にしがちである。
少なくとも私の碁はそうだった。
最初に手にした棋書の影響が大きかった?
囲碁でもAI革命が
カミソリ坂田の時代に碁を学んだ私だが、現代碁ではその時の常識が180°変わっている。
どんなふうに変わったか、思いつくまま列挙してみる。
1.星には三々
星に対しては、掛かるよりも三々に入る方をAIは好む。
小ゲイマ掛かりに手抜きすると両掛かりが厳しいとされていたが、そうでもないことがわかり、むしろ三々に入る方が効果的と分かった。
その裏には三々定石の進化がある。
これまで価値が低いとされていた星からのシマリが、隅を守って大きな手と認識されるようになった。
従来の小ケイマ掛かりに対しては、これまで評価されなかったコスミツケが有力。
【AI定石_01】星・コスミツケ ~やさしい囲碁レッスン~
三々入る手が残るのが低評価の理由だったが、打ち込みが好手で、上ツケに対してはカケツギを利かして隅を固めることができる。
逆に今まで常識とされていた一見トビ対しては、従来のケイマスベリでなく、上ノゾキが有力。黒がツゲば、そこでケイマにスベるとノゾキとツギの交換が利かしだというのだ。
(下ノゾキの手段が消え、黒を固めて損というのが今までの評価)
【AI定石_14】星・一間・ノゾキ ~やさしい囲碁レッスン~
ちなみに呉清源九段もこのノゾキを打ったことがある。
また、ケイマ受けに対しては、従来のケイマスベリに代えてツケハネが定石となった。
【新・AI定石_14】星の定石:ツケ・二段バネ ~やさしい囲碁レッスン~
白がケイマスベリする定石に対しては、苑田九段が「いずれこの手は定石でなくなります」と予言していたが、卓見だった。
なお、先の一見トビに同様にツケハネするのは、黒石が三線でなく四線にあるので白が少し損。
2.小目には小ゲイマ掛かり
大ゲイマ掛かりなど一間以外の掛かりは手抜きされて響きが薄い。
一間高掛かりは、ツケ引きされて地に甘い。
以上二点から小ゲイマ掛かりを好む。
対して二間ハサミが私が碁を覚えた時代は主流だったが、現代では本因坊秀策のコスミやケイマ、コスミ付けなどが再評価されている。
3.小目の締まりは小ゲイマでなく二間高シマリ
小ゲイマ締まりは、偏っているという評価。
ツケによって凝り形にするのが常套手段。
代わって今まで隅に甘いとされていた二間高シマリの発展性が評価されている。
4.ヒラキの価値が下がった
中国流・ミニ中国流・ベトナム流(臨戦中国流)など、隅から辺にヒラいて模様を張る布石がAIによって否定された。
星にケイマに掛かって辺の星を占めるという、これまで常識だった定石も否定された。
ヒラキによって辺に展開するよりも隅の価値が高いようだ。
そもそもAIは、大模様に対する消し方が巧み。
古碁鑑賞の本があるが、「現代感覚ならこう打つ」という批評のほとんどが間違いだった。
このあたり、江戸時代の感覚の方がむしろ優れていた。
囲碁は人生に通ず
簡単な囲碁用語
- 斜めの石に割り込むのを「ハザマ(間)」をつくと言う。
- 相手の四線の石に対し、三線の石から二線に侵入するのを「スペリ(サルスベリ)」といい、「ケイマスベリ(小ザル)」や「大ゲイマスベリ(大ザル)」などの種類がある。
- また、四線の石のすぐ下に石を並べるのを「鉄柱」といい、スベリを防いでいる。
Aの部分が空いた三角形の形を「アキ三角」と呼び、愚形の代表。
石数のわりに働きに乏しい。
理由があって自らアキ三角を作りに行く手を「グズむ」といい、その形を「グズミ」という。
苑田勇一プロの格言
どこへ打つべきか?
- 石数が多くて、生きていないところが大きい
- 生きている石の近くは小さい→生きていない石の近くは大きい
- 自分の石数の多いときは、石をタテヨコに→自分の石数が相手より少ないときには、石をナナメに
- 幅と高さがあるところが大きい(三間以下の幅は狭いので、相手に地にさせる。四間以上の幅は広いので、地になればいい。相手が広い幅のときには、打ち込みを狙う。)
- 地は囲わず囲わせる
- 生きていない石で地を作るのは大きい
- 生きている石から地を増やすのは小さい
- 三つ目の眼を作らせる→三つ目の眼を作らない
- 生きている石がたくさんできると、隅と三線が大きくなる。生きていない石が多いときは、三線より四線が大きくなる。
どう打つべきか?
自分の石が3つ以上多い→いじめる
自分の石が相手の石とほとんど同じ→競り場では競り負けない
自分の石が3つ以上少ない→サバキ
囲碁用語の意味
「取りかけ」相手の石を取りに行く(自分の方が危ない)。
相手の眼形を奪い、利益のある方(外)と利益が小さい方(内)と換わる。
相手の石をいじめるときには、相手のナナメのラインを切っていく。
意外だが、相手の石を取りに行くことは、「攻め」ではない。
AIによって下品な手(?)が評価が上がった
星や小目に先着された相手の石に対しケイマなどに掛かっていく。
三線でなく四線にかかるのを高ガカリなどと表現、対してコスミやケイマに締まるのが通常だが、積極的にその石を三線から挟むのを「ハサミ」、四線に挟むのを「高バサミ」という。
昔は、早い時期に相手の石にくっつけるのは良くないと教わった。
下品な手だと。
しかし、AIが肩ツキ、ツケ、コスミツケ、カドなどを好むことにより、その常識は過去のものとなった。
相手の石にツケる→強くさせる と否定的だったのが
相手の石にツケる→重くさせる と肯定的に評価されるようになった。
また、くっつけることにより先手を取りやすい。
依田紀基「強くなりたきゃ石に聞け」
前述の「苑田勇一プロの格言」と同じだが、言語化は上達の早道。
普遍性のある碁の真理に触れている。
ちなみにAIはその上の真理を行く。「名人に定石なし」
戦いと大場の考え方
可能性の高い方向を目指そう
模様に入ってもらうとうれしい
戦うべきところ
変化することを覚えよう
相手の出方で対応を決める
根拠を確認しよう
攻める方向に気を付けよう
大局観を身に着けよう
接近戦の考え方
攻めたい石は追いかけない→美人は追わず(苑田)
攻める時には、必ず自分が打った手が何らかの得をすることが大切。
弱い石を攻める手は「利き」と考え、タイミングよく使う。
ツケると強くなる
攻めたい石は遠くから
- 攻めたい石に直接働きかけず、周囲にある相手の近くに打つ「モタレ攻め」
- 弱い石を二つにして「カラミ攻め」
切り違いの考え方
強い石の活かし方
石の形を見極める
アキ三角より嫌う形
形の急所を逃さない・・・かりんのツボetc
働きのある形を目指そう
利きを使わせない
「ポン抜き」と「ケイマのツキ出し」
効率のいい形を覚えよう
形の弱点を見つけよう
盤上の急所を見つけよう
「三目の真ん中」を覚えよう
急所を逃さず主導権を握ろう
形の急所を覚えよう
いい形で攻めよう
まだ生きてない石の注目
形を崩す手筋を身に付けよう
地を稼ぐより大切なもの
戦いの形を身に付けよう
石の方向を感じる
大事な石は刻々と変化する
手順を尽くそう
筋場を知ろう
マネ碁
囲碁の戦術で「マネ碁」というのがある。白番(後手番)の「マネ碁」と、黒番(先手番)の「マネ碁」の二種類があり、やられた相手は、独り相撲を取っているようで、嫌な感じがするものだ。
塔矢アキラという主人公のライバルが木っ端みじんに倒した。
実際のマネ碁対策は、中央でぶつかるシチョウを演出するという高度なものだ。
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