将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【矢倉】後手左美濃急戦

矢倉を終わらせた(かもしれない)一局

従来の感覚では無理攻めにしか見えないこの仕掛けが、意外に有力と分かり、居飛車党の矢倉離れが加速した。


そもそも▲7九角として▲2四歩△同歩▲同角△2三歩▲4六角と角で歩交換した方が手得なのに、わざわざ飛車で歩交換したのは、居角のまま据え置いて後手の攻めに備えるため。
それでも仕掛けられて、しかも潰れているとなると、森内九段は、これまで培ってきた感覚が甘かったと認めざるをえない。
見た目が手厚そうな矢倉囲いは、実は張子の虎だった。

意表をついたのは、図から△8五歩▲同歩△6五銀という組み合わせ。
森内九段は、単に△6五銀には▲7五銀を、また△8五歩▲同歩△同銀には▲5六銀の受けを用意していた。しかし両方を組み合わせたのが巧妙で、思わしい受けが見つからない。
この攻め方に気付いていたら、図の一手前▲5七銀では▲7六同金△8五歩(△6二飛)の変化を選ぶのだった。


開始日時:2015/10/27 9:00:00
棋戦:叡王戦
先手:森内俊之
後手:阿部光瑠


▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲5六歩 △5二金右
▲4八銀 △6四歩 ▲7八金 △7四歩 ▲5八金 △8五歩 ▲7七銀 △4二玉
▲2六歩 △3二銀 ▲2五歩 △3一玉 ▲6七金右 △6三銀 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △2三歩 ▲2八飛 △7三桂 ▲6九玉 △6五歩 ▲同 歩 △7五歩
▲6六銀 △8六歩 ▲同 歩 △7六歩 ▲5五歩 △7四銀 ▲5七銀上 △8五歩
▲同 歩 △6五銀 ▲4六銀 △8六歩 ▲6五銀 △同 桂 ▲7四銀 △8七銀
▲6六角 △7八銀不成▲同 玉 △7七金 ▲同 桂 △同歩成 ▲同 金 △同桂成
▲同 玉 △5四桂 ▲7五角 △4六桂 ▲6四銀 △5四金 ▲8六玉 △6四金
▲同 角 △6二飛 ▲9一角成 △6九飛成 ▲7五玉 △7二銀 ▲7一金 △8三銀打
▲7二金 △同 銀 ▲7一金 △8三金 ▲7二金 △7四金 ▲同 玉 △6三龍
▲7五玉 △7四銀 ▲8六玉 △7二龍 ▲7八香 △7五金 ▲8七玉 △8五銀
▲9八玉 △7六金 ▲同 香 △同 銀 ▲2四歩 △8二香 ▲8六歩 △5五角
▲2三歩成 △2七歩 ▲2二金 △4二玉 ▲1八飛 △2二角 ▲同 と △8七金
まで104手で後手の勝ち



▲7九角から角で飛車交換する作戦には、下の棋譜のように△5四銀~△4二飛~△4四角がお勧めの駒組み。
△7四歩をついていないので、▲4六角が効果ない。

△4四角が飛車先交換を逆用した好手筋。
次に△6五歩▲同歩△同飛▲6六歩△2七歩▲同飛△2六歩▲2八飛△2五飛という飛車の転回を狙っています。
そこで▲5七銀と6筋を厚くしたが、やはり△6五歩と仕掛けられると取ることができない。▲6九玉に△3三桂と次の△4五桂を狙われ、受けに窮した先手は▲5五歩と暴れたが、傷口を広げた。


開始日時:2017/12/11 10:48:00
終了日時:2017/12/11 11:57:00
棋戦:NHK杯
持ち時間:10分
場所:東京・NHK放送センター
先手:佐藤 康光 NHK杯
後手:斎藤 慎太郎 七段


▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △8四歩 ▲6八銀 △6二銀 ▲5六歩 △8五歩
▲7七銀 △6四歩 ▲7八金 △6三銀 ▲5八金 △3二銀 ▲2六歩 △4二玉
▲2五歩 △3一玉 ▲6七金右 △5四銀 ▲4八銀 △5二金右 ▲7九角 △6二飛
▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △4四角 ▲5七銀 △6五歩 ▲6九玉 △3三桂
▲5五歩 △同 銀 ▲6五歩 △2三歩 ▲5六歩 △6六歩 ▲6八金引 △2四歩
▲5五歩 △6五飛 ▲7九玉 △5五飛 ▲6六銀左 △5七飛成 ▲同 金 △4五桂
▲6七金寄 △3九角 ▲3八飛 △6六角引成▲同 金 △同 角 ▲2三歩 △同 銀
▲6一飛 △9九角成 ▲7七角 △同 馬 ▲同 桂 △3二金打 ▲8一飛成 △5七桂成
▲6六角 △4五角 ▲6一龍 △5一金引 ▲6五龍 △7八角成 ▲同 飛 △5六銀
▲3三銀 △4四香 ▲5七角 △同銀成 ▲3二銀成 △同 金 ▲7五角 △6七金
▲5七角 △同 金 ▲5八歩 △5六銀 ▲5七歩 △6五銀 ▲同 桂 △3九飛
まで88手で後手の勝ち


▲4六角を急ぐ佐藤康光流

△6四歩取らせ型(対深浦戦)

図の局面から△5二金右▲5七銀(▲5八金右)△5四銀と6四の歩を取らせる構想が面白い。
仮に▲6四角とすれば△6二飛▲4六角△4五銀と角を目標にする。
図の▲4八銀に代えて▲7八金(▲5八金右)とすれば、△5二金右▲5八金右(▲7八金)△5四銀に▲6四角と取ることができる。△6二飛▲4六角△4五銀▲7九角△5六銀に▲4六歩と「銀挟み」。
ただし、3九の銀が浮いているので△6二飛▲4六角△6六飛と強襲される変化がある。

図の△5四銀が深浦九段の研究手だが、これに対応した佐藤九段の指し手が素晴らしく、定跡になる将棋。
後手としては、△7四歩を突かずに△6二飛~△5四銀を狙うべきか?
もし、△6二飛に▲2五飛なら△7四銀。




有力な△7四歩不突型(対村山戦)

図の局面から▲6七金としたが、▲7八金と▲6七金を保留するのも後で取り上げる。
▲6七金とした佐藤康光九段の意図は、下記の対飯島戦のように早囲いを狙ったものだが、村山七段の△7四歩不突からの構想が優秀だった。


開始日時:2017/04/08 10:00:00
棋戦:棋聖戦
戦型:矢倉左美濃急戦
場所:東京・将棋会館
先手:佐藤康光 九段
後手:村山慈明 七段


▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩
△6二銀 ▲5六歩 △8五歩 ▲7七銀 △6四歩
▲2六歩 △6三銀 ▲2五歩 △3二銀 ▲7九角
△4二玉 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △3一玉
▲4六角 △2三歩 ▲5八金右 △5二金右 ▲6七金
△6二飛 ▲4八銀 △5四銀 ▲7八金 △6五歩
▲5七角 △6六歩 ▲同 角 △3三桂 ▲5七角
△1四歩 ▲6六歩 △6五歩 ▲同 歩 △同 銀
▲6六歩 △4五桂 ▲6五歩 △5七桂成 ▲同 銀
△6五飛 ▲6六歩 △6二飛 ▲6九玉 △7四歩
▲5五歩 △7三桂 ▲7九玉 △6五歩 ▲4六桂
△8六歩 ▲同 歩 △8七歩 ▲同 金 △4四歩
▲8八玉 △4三金 ▲5六銀打 △6六歩 ▲同銀右
△8五歩 ▲7五歩 △8六歩 ▲同 金 △6五歩
▲5七銀 △6四飛 ▲9八玉 △4五歩 ▲同 銀
△5五角 ▲8八歩 △8五歩 ▲8七金 △7五歩
▲5四歩 △同 歩 ▲3四銀 △同 金 ▲同 桂
△4三銀打 ▲4六銀 △7七角成 ▲同金右 △3四銀
▲3五銀 △同 銀 ▲5三角 △4二角 ▲3五角成
△3四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲2三歩 △同 銀
▲4四馬 △3三銀 ▲同 馬 △同 角 ▲4三金
△7七角成 ▲同 桂 △7九金 ▲9六歩 △8六銀
▲6七角 △2一桂 ▲2五歩 △3二銀 ▲2四歩
△4三銀 ▲5三銀 △2二歩 ▲8六金 △同 歩
▲2三銀 △3三金 ▲6四銀不成△6六角 ▲8二飛
△4二歩 ▲7八歩 △2三歩 ▲同歩成 △同 金
▲同飛成 △8九銀 ▲9七玉 △7八銀不成▲8六飛成
△2二歩 ▲4三龍 △同 歩 ▲5三銀不成△7七角成
▲同 龍 △8五桂打 ▲同 角 △同 桂 ▲8六玉
△7七桂成 ▲4二金 △同 金 ▲同銀成 △同 玉
▲5三銀 △同 玉 ▲4五桂 △6三玉 ▲6四歩
△7三玉 ▲5一角 △6四玉 ▲4二角成 △7三玉
▲7四歩 △同 玉 ▲7五馬 △8三玉 ▲8四銀
△7二玉 ▲7三歩


まで167手で先手の勝ち


△6二金型(対飯塚戦)

開始日時:2017-03-16T01:00:00.000Z
棋戦:竜王戦
戦型:矢倉
先手:佐藤康光 九段
後手:飯島栄治 七段
場所:東京・将棋会館
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲5六歩 △8四歩
▲6八銀 △8五歩 ▲7七銀 △6四歩 ▲2六歩 △3二銀
▲2五歩 △6三銀 ▲7九角 △4二玉 ▲2四歩 △同 歩
▲同 角 △3一玉 ▲4六角 △2三歩 ▲5八金右 △6二金
▲6七金 △7四歩 ▲4八銀 △7三桂 ▲6八玉 △8四飛
▲7八玉 △6五歩 ▲5七銀 △7五歩 ▲同 歩 △5四銀
▲6八金上 △6六歩 ▲同銀右 △8六歩 ▲同 歩 △8五歩
▲7六銀 △8六歩 ▲8八歩 △6三金 ▲3六歩 △6四飛
▲6五歩 △同 銀 ▲同銀直 △同 飛 ▲同 銀 △6六歩
▲7六銀 △6七歩成 ▲同 銀 △6六歩 ▲5八銀 △7六銀
▲2四歩 △同 歩 ▲6一飛 △8七歩成 ▲同 歩 △6七金
▲同 銀 △同歩成 ▲同 金 △同銀成 ▲同 玉 △5二銀
▲9一飛成 △9九角成 ▲7七桂 △6六歩 ▲同 玉 △6五桂
▲8八香 △2五香 ▲6八飛 △2九香成 ▲5五角 △4四歩
▲6五桂 △8九馬 ▲2三歩 △6四桂 ▲同 角 △同 金
▲5四桂 △6五金 ▲同 玉 △7三桂 ▲7四玉 △5六馬
▲6五桂
まで97手で先手の勝ち


変化:30手
△8一飛 ▲7八玉 △6五歩 ▲5七銀 △5四銀 ▲6八金上


イシケン流無責任矢倉


石井五段は、左美濃急戦に対して自信持っている。
図の無責任矢倉は、臨機の囲い。
囲いというより中住まい玉というべきか?
後手としては、図の一手前の△7四歩で、△6五歩▲同歩△3五歩▲同歩(▲2六飛△7四歩▲5八玉△7五歩▲同歩△3六歩▲同飛△7六歩)△6五飛と仕掛けるのも面白い。



イシケン流横歩取り速攻

後手△3二銀~△4四角戦法

 

開始日時:2018/01/29 04:59:41
棋戦:R対局(早指)
先手:yamatoyashiki(1620)
後手:JKishi18gou(3097)
▲7六歩 △4二玉 ▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △7二銀
▲4八銀 △8四歩 ▲7八金 △8五歩 ▲6九玉 △6四歩
▲5八金 △7四歩 ▲6六歩 △3二銀 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △4四角 ▲6七金右 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲8七歩 △8五飛 ▲3六歩 △2五歩 ▲7七桂 △5五飛
▲5六金 △3三角 ▲3四飛 △5四飛 ▲3五飛 △2四飛
▲3七桂 △2六歩 ▲4五桂 △4四角 ▲5九銀 △2七歩成
▲2五歩 △1四飛 ▲6五歩 △3四歩 ▲5三桂成 △同 角
▲5五飛 △2六角 ▲6四歩 △3七角成 ▲6五桂 △6二金
▲5四飛 △4七馬 ▲5八銀 △3六馬 ▲4五歩 △5三歩
▲同桂成 △同 金 ▲同飛成 △同 玉 ▲1一角成 △3七と
▲6八玉 △4八と ▲6七銀 △8五桂
まで70手で後手の勝ち



後手矢倉左美濃中飛車

優秀な宮本(アマ)流

「後手矢倉左美濃中飛車」は、宮本浩二さんという広島のアマ強豪のoriginalな手法を元に「将棋・B級戦法の達人」(マイナビ将棋文庫)に掲載されている戦法。
宮本という人は間違いなく天才。
同時代のライバル菊田裕司(京大)との頂上対決に胸を躍らせた。



「右四間飛車戦法」の対策は、居角+▲6八銀型(さらに▲6七金右)
「後手左美濃急戦」の対策は、▲7九角+▲7七銀型(さらに▲6七金右省略)
その上「後手矢倉左美濃中飛車」も組み合わせてくれば、先手としては、この3戦法に対応する陣形を築くのは容易でない。


初手からの指し手
▲7六歩  △8四歩  ▲6八銀  △3四歩
▲6六歩  △6二銀  ▲5六歩  △5二金右
▲4八銀  △6四歩  ▲7八金  △7四歩
▲5八金


△8五歩は早めに決めるべき

第一図


ここでの△8五歩に▲7七角と受ける手は有力。

後手としては、早めに△8五歩を決める方が紛れがない。


途中、△6三銀としないのが駒組みの急所。
△5三銀~△6三金からの「後手左美濃中飛車」や△6二銀型のままの急戦(後述)を狙っている。


図からの指し手
△8五歩  ▲7七銀  △4二玉  ▲2六歩
△3二銀  ▲2五歩  △3一玉  ▲7九角
△7三桂  ▲2四歩  △同 歩  ▲同 角
△2三歩  ▲4六角  △6三金  ▲3六歩
△5四歩  ▲3七桂  △5三銀  ▲6八玉
△4四銀  ▲7九玉  △5五歩  ▲5七銀
△5二飛  ▲6七金右


米長流急戦矢倉対策から学ぶ

渡辺新名人が誕生した名人戦第6局で後手の豊島名人(当時)の米長流急戦に対して先手の渡辺二冠が敷いた布陣が▲4六角+3七桂型。
これは、私が宮本流に最善ではないかと思っていた陣形。


△5六歩▲同金としたものの△5五歩と打ってしまうと歩切が懸念される。
△4二金と固め△5二飛を狙ったが、▲6八銀と用意され、豊島陣は仕掛けが難しくなった。
比べると宮本流は優秀で、考案者はマジ天才と思う。
△6三には金がいる方が攻撃力が高く、美濃囲いの方が守備力が高い。
名人戦では結局4二の金は手数をかけて△6三金とすることになった。


第二図


前述したように、上図が先手の最善形と思われる。

図の局面から①△5六歩▲同 銀△5五歩②△6五歩③△8二飛などが考えられる。
①は、実は先手にとって一番ありがたい順。


図からの指し手
△5六歩  ▲同 銀  △5五歩  ▲4五銀
△同 銀  ▲同 桂  △5四銀  ▲5三歩


この叩きが痛い。
以下、△6二飛▲2四歩△同 歩▲5二銀△4五歩▲2四角として①△2三歩には、▲4一銀成△同 銀▲5一角成②△3三銀打には、▲2三歩で、いずれも先手の攻めはほどけない。後手の「玉飛接近」の悪形が祟っている。


②△6五歩には、厚みを作らせない▲同歩が急所の一手。
銀桂交換は、▲2六桂があるので恐れない。


図からの指し手
△6五歩  ▲同 歩 △同 桂 ▲6六銀右 △5四金 ▲6八銀 △6四歩 ▲7七桂
△1四歩 ▲6五桂 △同 歩 ▲7七銀引 △6六桂 ▲同 金 △同 歩 ▲2六桂


第三図


以下、△3三金や△3三銀には、▲2五桂打で先手好調。


第二図からは、仕掛けずに③△8二飛と玉飛接近の悪形を解消して、後手も指せる。
もし▲6八金引なら、△5二飛▲6七金直△8二飛と最悪千日手を狙える。
▲6八銀右△5二飛▲5八飛△5六歩▲同 金△5五歩が変化の一例だが、
▲6五金は△同 銀▲同 桂△5四金打で先手自信がない。かといって▲5七金と引くのでは、冴えない展開。


奨励会三段に宮本流の使い手がいた

下図は、早咲誠和アマvs伊藤和夫三段の新人王戦。
先手の早咲さんは、アマ第一人者として、対戦する可能性のある宮本流「後手矢倉左美濃中飛車」の対策を考えたことがあるはず。
下図のように▲6八角型が上記との違いで、
一見すると当たりを避けて得のようだが・・・


第四図


図から▲6五同歩としたが、代わりに▲4五歩としても△5六歩▲4四歩(▲5六同銀は△5五銀)△5七歩成▲同 金△4四角▲4五銀△5五角▲4六歩△6六歩▲同 銀△同 角▲同 金△5七銀といった変化で潰されそう。


また▲4五桂としても、△7五歩▲同 歩△4五銀▲同 歩△5六歩と攻められ、
①▲同 金は、△6四桂で
②▲同 銀は、△7六歩で
③▲4六銀は、△6六歩~△5四桂で壊滅する。
このあたりが先手の誤算か?


まだしも上記のように▲6七金右をぎりぎりまで省略し、角は▲4六に引くべきか・・・


有力な超急戦

第五図


遡って、図の局面から△6五歩という仕掛けがある。


図からの指し手
△6五歩▲同 歩△7五歩▲同 歩 △8四飛 ▲6七金右 △8六歩 ▲同 歩
△6五桂


第六図


意外に先手が困っている。

▲6六銀は△同角で十字飛車が決まる。
▲6六歩と収めようとしても、△7七桂成▲同金寄△6六角なんて乱暴される。
以下▲同金△8六飛▲8七歩△6六飛に▲2二歩はあるが、△3三桂で問題なし。


▲9一角成と開き直っても、△7七桂成▲同 桂(▲同金寄は△7六歩、▲同金上は△8八歩)△6六歩▲6八金引△6七銀▲8五歩△5四飛が変化の一例で、先手がこの攻めを受け切るのは難しい。


▲6六歩をつかない急戦対策

初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △6二銀
▲5六歩 △7四歩 ▲2六歩 △3二銀 ▲4八銀 △8五歩
▲7八金 △4二玉 ▲2五歩 △3一玉 ▲6九玉 △5二金右
▲7九角 △6四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △2三歩
▲4六角 △6三金 ▲3六歩 △7三桂 ▲6八角 △5四歩
▲3七銀 △5三銀 ▲4六銀 △4四銀 ▲3五歩 △5五歩 


第七図

5手目▲7七銀が現代矢倉の定跡。
先手は▲6六歩をつかない方が争点を与えなくて良い。
後手の△8五歩は7七銀型に対しては不急の一手で、代わりに△7三桂を急いだほうが良かった。どうせ飛車は中飛車に振るつもりだから。
先手は一旦▲4六角と牽制したが、相手の△6三金を見て、このまま4六にいても効かない上、当たりがキツイので▲6八角と撤退。柔軟だ。
代わりに4六には銀を配置する。
▲3五歩と仕掛けて好調のようだが、△5五歩(図)が当然のcounter。
▲5五同歩に△3五歩と手を戻されて▲3五銀に△同銀▲同角△5五角なら▲4六銀△4四角▲同角△同歩に▲3三歩△同銀▲2三飛成で先手が指せそう。
しかし△5五角に代えて△4四銀と重く打たれて難しい。
▲6八角と角を追いやってから△4五銀と▲3四銀を防ぎながら△5五角を狙う。

  1. ▲4六歩△5六銀▲3四銀で先手が良さそうだが△5五角と出られると先手陣の重圧も大きい。▲2三銀は△2二歩で相手に掠り傷しか負わせられないのに比べ、△5七歩や△6五桂▲6六銀△同角▲同歩△6七銀など後手は着実に圧し潰せる。
  2. ▲3五角は△5五角▲4六歩△同角▲同角△同銀や、黙って△5三歩と受けられても得かどうか。
  3. ▲3五銀は本筋っぽいが、△6五桂▲6六銀△5六歩の筋が厳しい。

左美濃は▲3四銀と迫られても丁寧に応接すれば凌ぎ切れる。

将棋倶楽部24での矢倉左美濃急戦

後手矢倉左美濃急戦は、将棋倶楽部24でも大流行している。


初手からの指し手
▲7六歩  △8四歩  ▲6八銀  △3四歩
▲6六歩  △6二銀  ▲5六歩  △8五歩
▲7七銀  △3二銀  ▲7八金  △4二玉
▲4八銀  △6四歩  ▲5八金  △3一玉
▲6七金右 △6三銀  ▲2六歩  △5四銀
▲2五歩  △5二金右 ▲7九角

矢倉左美濃に対しては、▲7九角から飛車先を交換して▲4六角とするのが一般的な対策。それに対しては、前述の佐藤康光vs斎藤慎太郎(NHK杯)のように△7四歩省略の右四間飛車が効果的。


☟は、将棋倶楽部24の高段者の棋譜ですが、飛車先交換に斎藤流の△4四角でなく、ストレートに6筋突破を図り、成功している。


図からの指し手①
△6二飛  ▲2四歩  △同 歩  ▲同 角  △2三歩  ▲4六角
△6五歩  ▲同 歩  △同 銀  ▲6六歩  △同 銀  ▲同 金
△同 飛  ▲同 銀  △同 角  ▲5七銀  △9九角成 ▲7七桂
△8九馬  ▲6一飛  △4五香  ▲5五角  △4四銀  ▲6六角
△4七香成 ▲6八金  △6七歩  ▲5八金  △同成香  ▲同 玉
△6八歩成 ▲同 銀  △5六馬  ▲6七銀打 △4七金  ▲6九玉
△6六馬  ▲同 銀  △8六歩  ▲7八玉  △3九角  ▲2六飛
△5八金  ▲7九銀  △6八歩  ▲2四歩  △同 歩  ▲2三歩
△6九歩成 ▲8五桂  △7九と  ▲6七玉  △4八角成 ▲2四飛
△7八銀  ▲5六玉  △5七金
まで80手で後手の勝ち


図からの指し手②
△6二飛  ▲2四歩  △同 歩  ▲同 角  
△2三歩  ▲4六角  △6五歩  ▲同 歩
△8六歩  ▲同 歩  △6五銀  ▲6六歩
△8八歩

▲同 金  △6六銀  ▲同 金  △同 角
▲同 銀  △同 飛  ▲2二銀  △同 玉  
▲5五角打 △3三桂  ▲6六角  △6七金


途中の▲6六同銀に代えて▲6三歩には、△4八角成▲同飛(▲同玉)△6三金という変化が考えられ、後手が指せる。



同じく将棋倶楽部24の棋譜から取材。
居玉のままで▲6七金右を保留したのが先手の工夫。
図から▲2五飛とするのが覚えてほしい一手で、遠く△8五の歩を狙っている。
△6五歩には▲5五歩。
▲6七金右と上がっていないので、△6六歩の取り込みが先手にならない。


図からの指し手
▲2五飛  △6五歩  ▲5五歩  △3三桂
▲2八飛  △4五銀  ▲7九角  △6六歩
▲5七銀  △3五歩  ▲6六銀右 △3六歩
▲同 歩  △5六銀  ▲2四歩  △同 歩
▲同 飛  △4五桂  ▲2三歩  △3三角
▲8四飛  △1五角  ▲6九玉  △6五歩
▲7五銀  △7四歩  ▲同 飛  △3七桂成
▲同 桂  △同角成  ▲3四桂  △2三銀
▲2四歩  △3二銀  ▲7一飛成 △3三歩
▲2三歩成 △同 銀  ▲2二桂成 △同 玉
▲4一龍  △2一歩  ▲3一金  △3四歩
▲2四歩  △4二金  ▲2一金  △3三玉
▲2三歩成 △同 玉  ▲3一龍  △3二金
▲2二金  △同 金  ▲2四銀  △1二玉
▲2三歩  △5七桂  ▲同 角
まで87手で先手の勝ち


but後手にも工夫の余地がある。
△6二飛の代わりに△6五歩もあるし、
そもそも△6四歩を軽く見て△1四歩などとする変化もある。
▲6四角と歩を取る手には、ぼんやりと△4五銀として角をいじめようという目論見。
代わりに△6二飛▲4六角△4五銀と激しくいくのは、▲7九角△5六銀▲4六歩となって△6六角と突撃する手段はあるが、後手危険。
なお、△1四歩を入れておけば、以下▲3六歩△6二飛▲2五飛△6五歩▲5五歩に△4五銀というトリッキイな手が成立する。▲同飛は△3三桂、▲7九角は△5六銀で千日手模様。


矢倉左美濃急戦

石田四段vs先崎九段

最近、矢倉の序盤で▲6六歩型が減っている。
「後手左美濃戦法」が強力だからだ。
「立てば暴力、座れば破壊、歩く姿はテロリズム」という言葉がぴったり。
この戦法に快勝したのが石田直裕四段。


初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀
▲5六歩 △5二金右 ▲4八銀 △3二銀 ▲5八金右 △4二玉
▲2六歩 △6四歩 ▲7八金 △6三銀 ▲2五歩 △3一玉
▲6七金右 △8五歩 ▲7七銀 △7四歩 ▲7九角 △7三桂
▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △2三歩 ▲4六角 △6二飛
▲3六歩 △5四銀 ▲3七桂 △4四歩 ▲7五歩 △4五歩
▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △2三歩 ▲7四歩(図)

後手の先崎九段は、図で△6五桂とすべきだったとの感想。
but 調べた結果、「これでも大変なのか」との言葉が・・・
遡って△6二飛のタイミングが悪く、桂頭を狙われて困った。
△8五歩型が祟っている。
そこで下図から△5四銀!はどうか?
▲6四角には、△6三金から角をいじめる目論見です。

図からの指し手
△5四銀  ▲6四角  △6三金  ▲4六角
△4五銀  ▲5五角  △4四歩  ▲3六歩
△8六歩  ▲同 歩  △5四歩  ▲7三角成 
△同 金  ▲4六歩

銀挟みで銀を入手した後、先手には▲2四歩△同 歩▲2三歩△同 銀▲1五桂△3二銀▲2三歩と拠点を作ってから銀を打ち込む手段がある。
残念ながら△5四銀と6四歩を取らせて角を攻める作戦は無理のようだ。
こんな過激な順を選ばなくても△8三飛型や△6二金+△8一飛型と角のラインをcareしてから攻めれば十分か。(苦笑)


ところが、佐藤vs深浦(A級順位戦)で△5四銀が出現しました。
結果は実らなかったが、深浦九段の意欲的な序盤は、プロの鑑だ。

先の結果を踏まえて、図の局面で(△7三桂に替えて)△5四銀としたのが、2016年6月1日に行われた第75期順位戦B級2組1回戦での斎藤慎太郎プロの工夫。
先手の中田宏樹プロの▲2四歩△同歩▲同角△2三歩▲4六角に△6三金とがっちり組んだ後、△4五銀▲6八角と角を追って△6五歩▲同歩△7五歩▲同歩△6五桂▲6六銀に△6四金が力強い。
一瞬、7三の地点がキズで不安に見えるが、次に△7二飛とすれば全軍躍動の好形。
本譜は先手が▲9五角と誤ったため、ただでさえ指したかった△7二飛が実現し、後手優勢。

図の局面で▲5五角△4四歩▲3六歩という変化も考えられるが、△5四金▲3七角△3六銀▲4六角△8六歩▲同歩△8五歩▲同歩△同桂▲8八銀△4五歩▲5七角△6五歩▲2六飛△6六歩▲同金△8七歩▲同金△6二飛▲6七歩△6五歩と好調な攻めが続く。以下▲5五金△同金▲同歩△6六歩▲同歩△3五金▲2八飛△5五角▲3七歩△4六歩が変化の一例で、後手優勢。

図の局面から▲2四歩~▲2五歩の継ぎ歩が気になるが、△4四角▲2四歩△2六歩と逆襲して後手が指せる。


第76期順位戦A級回戦 佐藤康光九段 vs. 豊島将之八段

序盤、後手の△6二金+△8一飛型が工夫。
といっても角換わりではお馴染みの形。
以下、「将棋は暴力」という指し方で下図に至ります。


図から▲2四歩が有力でした。
以下二人の読みは、手抜きで△5六金▲2三歩成△同銀▲同飛成△6六歩で後手良しと一致していたが、▲3四龍!△4二玉▲2四角の攻めがあって先手優勢だった。
but 平凡に△2四同歩▲4五銀なら後手良し。

図から△6七歩成が決め手。
▲同金なら△8六飛、▲同 銀なら△6五桂。
そこで▲8一銀と飛車を取ったが、△7七と▲同 桂△3九角▲3八飛△6六角成となって後手優勢。

図から▲6七金打ちなら△5五角が絶品。
そこで▲7一飛と反撃したが、△6一歩▲同飛成△6二金打と先手を取って受けたのが巧手で、▲7一竜に△5六馬▲6四歩△6一歩で後手が安全勝ち。


開始日時:2017/05/01 10:21:18
終了日時:2017/05/01 21:28:13
棋戦:竜王戦
先手:金井恒太六段
後手:藤井聡太四段
場所:東京将棋会館
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀
▲5六歩 △8五歩 ▲7七銀 △6四歩 ▲2六歩 △4二玉
▲2五歩 △3二銀 ▲7八金 △6三銀 ▲5八金 △3一玉
▲6七金右 △5四銀 ▲4八銀 △5二金右 ▲6九玉 △7四歩
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2八飛 △7三桂
▲9六歩 △6五歩 ▲5七銀 △6三金 ▲7九玉 △9四歩
▲3六歩 △6四金 ▲3七桂 △7五歩 ▲同 歩 △同 金
▲7六歩 △8六歩 ▲同 歩 △6六歩 ▲同銀右 △同 金
▲同 銀 △8五歩 ▲同 歩 △8六歩 ▲9七角 △8五飛
▲7七桂 △8一飛 ▲8五歩 △6五歩 ▲7五銀 △8五桂
▲同 桂 △9九角成 ▲8六銀 △6六香 ▲7七金寄 △9五歩
▲8八角 △同 馬 ▲同 玉 △9六歩 ▲9八歩 △6四角
▲4六桂 △8五飛 ▲同 銀 △9七歩成 ▲7九玉 △4六角
▲同 歩 △8七桂 ▲同金寄 △同 と ▲同 金 △8六桂
▲8八玉 △7八金 ▲同 飛 △同桂成 ▲同 玉 △3八飛
まで90手で後手の勝ち


変化:39手
▲3五歩 △同 歩 ▲6五歩 △同 桂 ▲6八銀左 △8八角成
▲同 玉 △5七桂成 ▲同 銀 △6三金 ▲2二歩 △同 玉
▲3四桂 △1二玉 ▲2二歩


後手△4四角型

△4四角型の利点は、2筋の歩を手持ちにして反撃を狙えることだ。
先述した佐藤康光vs斎藤慎太郎のように、右四間から飛車の転回を見せることができれば面白い。
反面、先の宮本流左美濃中飛車には組めない。
基本、序盤に角が前線に出ていくのは目標になりやすい。
平凡に△2三歩と受けると横歩を取られて拙い場合や、飛車の転回が狙える場合に用いる「場合の手」と覚えておくべきだ。


開始日時:2018/01/29 04:59:41
棋戦:R対局(早指)
先手:yamatoyashiki(1620)
後手:JKishi18gou(3097)
▲7六歩 △4二玉 ▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △7二銀
▲4八銀 △8四歩 ▲7八金 △8五歩 ▲6九玉 △6四歩
▲5八金 △7四歩 ▲6六歩 △3二銀 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △4四角 ▲6七金右 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲8七歩 △8五飛 ▲3六歩 △2五歩 ▲7七桂 △5五飛
▲5六金 △3三角 ▲3四飛 △5四飛 ▲3五飛 △2四飛
▲3七桂 △2六歩 ▲4五桂 △4四角 ▲5九銀 △2七歩成
▲2五歩 △1四飛 ▲6五歩 △3四歩 ▲5三桂成 △同 角
▲5五飛 △2六角 ▲6四歩 △3七角成 ▲6五桂 △6二金
▲5四飛 △4七馬 ▲5八銀 △3六馬 ▲4五歩 △5三歩
▲同桂成 △同 金 ▲同飛成 △同 玉 ▲1一角成 △3七と
▲6八玉 △4八と ▲6七銀 △8五桂
まで70手で後手の勝ち


終わりに寄せて

一つの局面での指し手の可能性が概ね80通りあり、一局の平均手数が115手として計算すると、将棋の指し手の場合の数は、一局について凡そ10の220乗と考えられます。
全てを計算し尽くせば、先手勝ちあるいは引き分けという結論が出ますが、現在のところチェッカーのような単純なゲームでも必勝法は見つかっておらず、将棋の結論が解明されるのはまだまだ先のことでしょう。


プロの大半は本能的に先手有利と考えていました。
先手番なら良くしようとするし、後手番なら引き分けで良しと考えます。


ところが、先手有利と思われていた「相矢倉」が急戦矢倉や塚田流△4五歩、果ては左美濃急戦という珍戦法に苦戦して、「角換わり」に撤退。


居飛車党の最後の砦とみられた「角換わり」も△6二金+△8一飛型や角換わり拒否の雁木戦法に苦戦しています。


新たに流行した雁木戦法も居飛車党の救世主とまでの勢いはなく、将棋の結論は引き分けでないかと閉塞感が生じています。


いずれかの戦法でbreakthroughが待たれます。
私は、矢倉戦法が復活するのではないかと期待しています。


千田翔太六段「再起の一年に」(「将世2018.5号」p.99 リレー自戦記「プロの思考」)

 昨年、「矢倉は終わりました」という発言が話題を呼んだ。後手の急戦策と先手雁木の出現によって、件の発言以降、先手矢倉を志向するプレイヤーが減少し、矢倉受難の風潮が募りつつある。

 相矢倉は人間によって積み重ねられてきた分野であるがゆえに、コンピュータ将棋の影響が如実に現れる。近年の変化を簡潔に示すと、「▲6六歩に対する後手の6筋攻めにより、先手が飛車先を伸ばすようになった結果、飛車先不突矢倉が廃れた」となる。

 あまりにも多くの変化が潰されたため、矢倉戦法は過去の形であるかのように言われるが、先手矢倉の評価値はプラスで戦法としては終わっていない。むしろ、いまが最も注目すべきタイミングだ。

 矢倉は転換点を迎えている。これから注目すべきポイントは、▲6七金左と、矢倉囲いの囲いの拡張だ。