将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【矢倉】△7三銀型急戦

後手の理想


先手は▲2五飛と後手の棒銀を牽制して矢倉に組もうとしたが、△4四角~△3三桂で飛車を追って先攻できる。


銀交換できると成功だ。
そして△4四角+3三桂型を生かした攻めがある。


さらに飛車を転回して後手がワザあり。
この後、△3一玉~△5一金と玉を固めてから気持ちよく攻めて快勝した。



上野裕寿のクレバーな対応

開始日時:2023/07/21 10:00:00
終了日時:2023/07/21 16:39:00
棋戦:新人王戦
消費時間:107▲178△179
戦型:矢倉
先手:上野裕寿 三段
後手:増田康宏 七段
場所:東京・将棋会館
持ち時間:3時間
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △6二銀
▲2六歩 △7四歩 ▲2五歩 △3二金 ▲7八金 △7三銀
▲4八銀 △6四銀 ▲5六歩 △4一玉 ▲5七銀 △4二銀
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 ▲2八飛 △5四歩
▲6九玉 △8五歩

図からの指し手
▲7九角 △7五歩 ▲同 歩 △同 銀
▲6六銀右 △6四銀 ▲4六角 △7二飛 ▲2四歩 △同 歩
▲2五歩 △7六歩 ▲6八銀 △4四角 ▲2四歩 △2二歩
▲3六歩 △7四飛 ▲5九金 △7三桂 ▲3七桂 △6二金
▲9六歩 △5一銀 ▲9五歩 △1四歩 ▲1六歩 △5二玉
▲4五桂 △3三桂 ▲同桂成 △同 金 ▲2五飛 △3二金
▲7五歩 △8四飛 ▲8八桂 △6五銀 ▲同 銀 △同 桂
▲同 飛 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △7七桂
▲同 桂 △同歩成 ▲8六歩 △8八と ▲7七金 △5三桂
▲2五飛 △4五銀 ▲9一角成 △3六銀 ▲2一飛 △2五銀
▲4一銀 △4二玉 ▲3二銀成 △同 玉 ▲5一飛成 △7七角成
▲6二龍 △4二桂 ▲5八玉 △4五桂 ▲4六馬 △3八飛
▲4八香 △5七銀 ▲同 馬 △同桂成 ▲同 玉 △3五角
▲4六銀 △6二角 ▲7七銀 △3九飛成 ▲3三銀
まで107手で先手の勝ち



先手棒銀型

旧来のような金矢倉の陣形を組むことに拘ると失敗する。
相手の早繰り銀に負けないようにこちらも棒銀を繰り出すと、スピードでは先手が優る。


初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △6二銀 ▲2六歩 △7四歩 
▲2五歩 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8五歩 ▲7八金 △7三銀 
▲3八銀 

図からの指し手
△4一玉 ▲2八飛 △2三歩 ▲2七銀 △4四角 ▲2六銀 △2二銀 ▲2五銀 
△3三桂 ▲3四銀 △7五歩 

▲7五同歩と取る手には△8四飛が△7七角成や△3五角を狙って味が良く見えるので、第一感取りにくい。。
しかし、羽生九段は、中村太地相手のエキシビジョン対局で堂々と取った。
以下▲6六歩△3五角▲3三銀成△同銀▲5八金と進むと先手陣は手厚い。
先手としては、銀桂交換だが、守りの桂と攻めの銀の交換。後手を歩切れにしていると主張がある。
▲5八金と玉の腹が空いたので飛車をユコに使って△2四飛とぶつけたい気がするし、△8二飛と引いて次に△6四銀や△8四銀とタテに使いたい気もする。
構想力が問われる将棋だ。


中村vs斎藤(第66期王座戦 第3局)では図から▲6六銀。
控室では△8六歩▲同歩△同飛に▲5六歩△8四飛▲5五歩が検討された。以下△8六歩には▲7五銀△8二飛▲8四歩と打って耐える。
実戦は、△8六歩▲同歩△同飛に▲2四歩△同歩▲2三歩△3一銀▲8七歩(▲2四飛)
だが、▲2四歩とこじ開ける手では▲8七歩と打つべきだった。▲8七歩には△8四飛▲3三銀成△同角▲7五銀△8八角成▲同金△8二飛▲7七桂と進む。


「この変化は後手が歩切れならば選びたかったのですが……」と斎藤。銀桂交換で駒損のうえ、後手に歩を持たれているため、先手が苦しいと判断したようだ。しかし手順最後の▲7七桂は次の▲6五桂の攻めを見ており、後手もどう備えるかが難しい局面。中村もあまり自信はないと感想を述べた。



深浦vs豊島(朝日杯)

「これぞ深浦先生の将棋といえる内容。豊島先生の粘りも最高峰の技術で一分将棋の大熱戦でした」

(加藤圭女流初段)

先手の深浦九段は、前述のような展開を嫌って早く▲6六銀としたが、そのため後手に飛車先交換を許した。△8五飛が棒銀対策の好位置だ。
△2四歩で完全に棒銀を封じることができたが、先手は銀を4六に繰り替え、▲5六歩~▲7九角として▲3五歩を狙っている。
たちまちは飛車の横利きがあるので成立しないが、▲7七桂で飛車を追うことができる。


▲7九角に後手は△6二角と当たりを避けたが、強く△7五歩と開戦するのも有力だった。
▲3五歩△同歩▲7七桂△8二飛▲3五銀に△7五歩と反撃。
先手も▲3三歩△同桂▲3四歩と強く攻めたので△3五角▲同角△3四銀▲2四角(図)と進行した。


ここで△2三歩▲4六角となり、いつでも▲6五桂と跳ねれるので桂馬が楽になった。
ここは、△2七歩▲同飛△2六歩▲同飛△2五歩と連打して手番を握って攻めたかった。


後手は△5五歩と角道を遮断したが、それをチャンスと飛車先を交換して△2三銀に▲6四飛と飛車を捨てて▲5三桂不成で攻め繋がった。
先手陣は飛車の打ち込みに強い。
この攻めがあってみると、図の△2三銀では、手抜きで△7七銀と勝負する手が有力だった。

ここで▲3五銀と合駒したが、▲3六玉と銀を温存したかった。

ここでは先手勝勢。
▲6二成桂が正着だった。
後手から△5六竜~△5三竜と角を抜いても▲3二銀成で詰む。
本譜は▲3二銀不成△同飛と飛車を働かせてしまった。

図の▲2六金は危険。玉が狭いが▲2八歩と打つべきだった。
これに△4五角が敗着で△3七となら難しかった。

  1. ▲同桂は△同銀不成で激戦。
  2. ▲3八銀にそこで△4五角だった。


豊島vs羽生(上州将棋祭り)

▲4八銀を保留して飛車の横利きを通し、先手が全力で受けようとしている。
後手は玉形が若干不安定なのが懸念される。
図から△6四歩▲8六歩△7六歩と進行。
▲同銀に△6六銀▲6四角△8四飛となって香車の取り合い。
△6六銀に▲7七歩なら穏やか。

先手銀対抗型

△7三銀型に先手も銀で対抗する形も頻出する。
これに対してアベケンこと阿部健治郎七段が後手番で優れた構想を見せた。
5筋を突かないのが、藤井棋聖が誕生した矢倉戦でもあったように最近よく見られる趣向で、争点を少なくしている。
そして△3三角と飛車先交換を阻止。
しかしこの角はそれだけの狙いではなかった。

後手三手角の構想

図から△5一角~△8四角と角を転換するのを「三手角」と呼ぶ。
しかし△6四銀型との組み合わせは珍しい。
次に△7五歩と先攻して後手が成功だ。



先手横歩取り型

△3三角型:石井健太郎vs稲葉陽

もはや旧来の矢倉戦法とは別物だが、早繰り銀に対して横歩を取るのは、重厚な矢倉の形を生かした手段で、やってみたい手だ。
仮に先手の囲いが他の囲い、例えば雁木なら後手の早繰り銀が炸裂しそう。


これに△3三角とするのが横歩取りでお馴染みの受け。
しかし、△3三角▲3五飛(▲3六飛は△4四角で飛車が窮屈)に△2四歩と、なけなしの一歩を使って先手の飛車を窮屈にするはずが、服部vs長谷部(順位戦)のように難しいようだ。▲6六銀~▲7七桂と▲8五飛ぶっつけを狙うような手段もある。
そのためか、次に述べる△4四角型の実戦の方が多い。
しかし、考えるまでもなく、▲3五飛に△4四角とすれば▲2五飛△2二銀で次に△3三桂が約束されているので、ほぼ△4四角型に合流する。
△3三角の方が選択肢が多いかもしれないが、紛れのなさで△4四角をお勧めする。





△4四角型:羽生竜王が、まさかの逆転負け。

△4四角は▲2四飛と安定させるのが癪だが、手得を生かして有力。
▲2四飛△2二銀として次に2六歩の飛車の捕獲を狙う。
▲2八飛に△6四銀と早繰り銀だが▲3八銀△7五歩▲同歩△同銀に▲6六銀が前述した巧妙な受けの手法で、△8六歩は▲7五銀でダメなので、△7六銀だが、▲7七銀とされると予定の攻めが不発、何やら騙された気分だ。
▲6八銀引きと角交換を挑む手が、先手の切り札になる。



第68期王将戦二次予選で、羽生善治竜王対広瀬章人八段というビッグカードが実現。
ご存知の通り、広瀬八段は竜王戦の挑戦者決定戦を戦っており、この将棋は、もしかすると竜王戦の前哨戦になるかも。
先手の羽生竜王の作戦は矢倉。
すぐに横歩を取るのではなく、▲3八銀~▲1六歩を入れてから横歩を取った。

矢倉と言えば飛車先不突から▲4六銀~▲3七桂だった時代は遠い昔。
これが現代矢倉で、一昔前では考えられなかった陣形。
後手は飛車先交換を防がず、角筋を通したまま戦機を探る。
対する先手も低い陣形から▲1六歩と△2八歩の筋をcareしてから横歩を取り、後手の早繰り銀に飛車先を受けていた左銀を前進し、バランスを保った。


なお横歩を取らず▲2八飛と引いて△2三歩に▲2七銀と棒銀にするのも有力。
嵌め手なら▲2七銀と△2八歩を誘って▲3八銀△2九歩成▲同飛もある。後手は桂得しても歩切れが痛い。△4二銀▲2四歩に△3一桂とすれば受かることは受かるが・・・


▲2七銀の棒銀に対しては、△4四角が定跡。
以下▲3六銀は△3三桂で詰まらないので▲2六銀と出る。
△3三桂なら▲3六歩と攻めるつもりだ。
これには△2二銀▲2五銀△3三桂▲3四銀△7五歩として▲同歩なら△8四飛と飛車の横利きで銀を攻める。
△3五角を防いで▲6六銀にも明るく△同角から二枚替えをして後手が良い。


遡って△7五歩に▲6六銀がタイトル戦で戦われた順。
この変化も後手良しのようだ。
現在有力とされている手法は、△7五歩▲同歩△同銀に▲6六銀!△7六銀▲7七銀という屈伸戦法。
意外な展開に、後手は初見では選択に戸惑うことになる。
候補手は多いが、△7二飛が最善のようだ。
研究が必要。




羽生竜王は、図の局面から▲6八金と逃げた。
意外な一手に控室では悲鳴が上がる。
金が逃げたため、後手の攻めが速くなった。
代わりに単に▲3五角として、△8六角(▲6八金はこの手を気にした?)には▲4八玉と逃げれば、玉形が良く、次の▲3四桂や▲5四銀が厳しく、先手一手勝ちだった。


羽生竜王の不調が気になる。