将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

ソウタの棋(その2)~初タイトル獲得

最年少タイトル獲得(棋聖戦)

屋敷九段の持つ最年少タイトル挑戦の記録を塗り替え、渡辺明棋聖に挑戦。
そして誕生日を3日後に控えた今日。藤井聡太七段が、棋史に新たなページを刻んだ。
初タイトル獲得おめでとうございます。



二冠に(王位戦)

第四局 相掛かり

最年長でタイトル獲得した木村王位に挑戦。
受け師、木村一基相手に四連勝で奪取。
これで二冠となったが、期待されるのは羽生越え。
八冠制覇だ。

図は封じ手の局面。
大方の予想は△2六飛だったが、あまりにも藤井棋聖が考えるので、対局相手の木村九段は「もしかしたら△8七飛成があるのか。」と戦慄した。
飛車銀交換の大きな駒損になるので普通は指せないし、読まない。

ソフトが強くなる以前って、けっこう駒の損得がよく使われる考え方だったと思うんですけど、おそらく最近ではあまり駒の損得という考え方を、自分も含めて、そんなにしないんじゃないかという気がします。(略)駒自体の損得というより、駒の利きとか、そういう部分の価値というのが上に見られているという気がします。(藤井聡太)

第三局 矢倉

第二局 相掛かり

木村の名局かといわれた第二局を逆転。
二冠への夢が膨らむ。

この▲8六角!が絶妙手。
ソウタの読みを上回った。
△9八飛成に▲9九香は△8九竜▲7九金と竜を殺せるが△7六桂の返し技がある。
△9八飛成にじっと▲2九飛が巧い。
△9二竜に▲2八香で2筋突破が約束された。
私事だが▲8六角を見て木村王位の勝利を確信して恒例のテニスに出かけた。
その後、結果を知って驚いた。
それにしても▲2八香に△3三銀▲2三香成△2四香とは!
ずっと時間切迫していた藤井七段より先に木村王位の方が秒読みになるとは!
木村王位にとってこれほど悔しい敗局はない。


第一局 角換わり腰掛け銀

永瀬王座に勝ち、竜王戦挑戦者に!

永瀬王座との挑戦者決定戦に勝利し、豊島竜王への挑戦を決めた。
しかし、まだまだ全冠制覇への序章に過ぎない。

図の△9四歩は、次に△8六歩▲同歩△同飛▲4七銀△8七歩▲9七角△8二飛▲8六歩に△9五歩を狙っている。
だから▲4七銀と受けそうなものだ。
そもそも居玉のまま▲4六歩とするのは、腰掛け銀にして玉を固めようとする持久戦志向。
『【相掛かり】▲3七桂型~消えた腰掛け銀の謎』でふれたように、対広瀬(竜王戦)では銀冠に組んで陣形勝ちから圧倒している。
しかし藤井二冠は、平然と▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2八飛と4六の歩を餌に誘う。
受け将棋の永瀬王座に攻めさせようとする作戦だ。
△8六歩▲同歩△同飛の飛車先交換に対し、藤井二冠は▲7六歩が用意の一手。
永瀬王座は気合でこれを取り、これに▲8二歩△9三桂▲9五歩△同歩▲8一歩成△同銀と応酬。


手順中△9五同歩が疑問で、△8五桂▲8一歩成△同銀▲2五飛△8四歩▲8七金△7四飛なら後手も指せた。

ここから▲2五飛が絶好。
△3四歩▲2二角成△同銀▲7七桂に△7四飛と▲9四歩を防ぐ。
ここで▲8三角と攻め、△8四飛に▲6一角成△同玉▲9五飛として△8九飛成なら▲8八金打を用意する順も考えられたが、藤井二冠は長考の末▲4八玉。
猶も永瀬王座に攻めさせようとする。
△8八歩▲同金△1四角▲6五飛△6九角成▲7八銀△7九馬と、永瀬王座は馬づくりに成功。しかし、すでにソウタの罠にハマっていた。

図からの手順
▲8三角 △6四歩 ▲7四角成 △同 歩 ▲6四飛 △7五角
▲6一飛成 △同 玉 ▲5八金 △8八馬 ▲8三飛 △8二飛
▲同飛成 △同 銀 ▲6三金 △7一銀 ▲8一飛 △7九馬
▲6五桂 △7二金 ▲7三桂成 △同 金 ▲同 金 △5二玉
▲7一飛成 △4二玉 ▲6六銀 △6四角 ▲6三金 △4六角
▲2一龍 △3一金 ▲4五桂 △5一飛 ▲3二金
まで77手で先手の勝ち


相手の棋風によって変えているのか?
対広瀬と全く違う指し方に、勝負師の怖さを感じた。






無傷のタイトル防衛(棋聖戦)




叡王奪取、最年少三冠に

一時は苦手と言われていた豊島竜王相手の叡王戦。
最終局については別に述べることにして、第三局がシリーズの白眉だった。

不安感がある▲8四角打ち。
この角が盤上を制圧する。

逃げ場のない玉から▲3三歩と攻める強さ。
人間を卒業したかのような指し回し。

耳目を集めた▲4一銀

升田幸三賞を受賞した竜王戦対石田戦の「AI越え」の△7七同飛成、同じく「AI越え」の棋聖戦対渡辺戦の△3一銀、王位戦対木村戦の封じ手△8七同飛成、と並んで「ソウタの▲4一銀」と後世に語り継がれるであろう名手。
いずれ「大山(対中原)の△8一玉」、「中原(対米長)の▲5七銀」、「谷川(対羽生)の△5七桂」、「谷川(対羽生)の△7七桂」、「羽生(対加藤一二三)の▲5二銀」、「羽生(対森内)の▲9八角」、「羽生(対久保)の▲7九金」、「羽生(対久保)の△3六歩」、「羽生(対渡辺明)の△6六銀」」などと同様、殿堂入りが間違いない。


舞台は竜王戦。対戦相手は松尾歩八段。
後手の松尾八段は序盤で横歩取りに誘導。
松尾流の△5二玉+5一金型から左金を2三~2四と積極的に活用する。


この作戦は、元々松尾八段が屋敷九段にされた青野流対策。
優秀だったので借用した。
負け将棋を次の対局に生かすというのは大切な心構えだ。


図から▲3八銀△8四飛▲2五飛△2四金▲2九飛△8八角成▲同銀△3三桂と進行。
▲2二角が気になるが、△3五歩と歩で攻められる。
角で香を取りに行くのと歩で桂を取りに行くのでは後者の方が効率がいい。
そこで▲4六角と打ったが、△3五歩▲2五歩△3六歩と踏み込んだのが松尾八段の好判断で終盤のドラマを生んだ。


本局の作戦が認められ、三浦九段が対藤井戦(B級1組順位戦)で図の局面を採用。
そこで再びソウタが苦戦したことでさらなる追随者を生み、羽生vs佐藤天(A級順位戦)などでも出現。
しかし、流行の素地を作った屋敷九段は、対千田戦(B級1組順位戦)で敗れた。


見ていた誰もが驚いた▲4一銀。
しかし、藤井二冠によれば、単に▲8四飛と飛車を取るのでは詰めろが続かず、仕方のない選択だったとのこと。
図の△8八角成では△3六歩と利かしてから△8八角成が有力だったが、人間の目では損得は難しい。
将棋は二人で築き上げるもの。
対戦相手の松尾歩八段の強さを再認識した。