将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【コンピュータ将棋】電竜戦

DL勢の躍進~第二回電竜戦

今までコンピュータソフト同士の対局はどこか異世界の出来事のように思っていたが、youtube実況で電竜戦を見て、考えが変わった。
人間同士の将棋を日本野球(NPB)に譬えると、ソフト同士の将棋は、メジャー野球(MPB)だ。
棋神同士の戦いは、面白い。


第二回電竜戦で連覇を果たしたのが「GCT電竜」。
図の局面で「007(ゼロゼロセブン)」相手にどう指したか?
人間なら▲5七銀や▲4六歩、▲3七銀といった候補手が浮かぶ。
対戦相手の「007」も▲5七銀を予想していた。
ところが「GCT電竜」の指し手は▲7九金。
人間にはとても指せない手だが、指されてみるとナットク。
後手角のにらみが強烈で、▲8八玉と入城するのは危険。
エルモ囲い風の金寄りによって△8六歩からの攻めに備えている。
地味ながら名手のグラブ捌きを見せられた感じだ。


「GCT電竜」は、「アルファゼロ」と同じDL(ディープラーニング=深層学習)系のソフト。
将棋の局面を画像として処理するためCPUでなくGPUを使う。
CPUよりGPUの方が単純計算に強い。


これまで最強といわれていたのは、千葉県の杉村達也弁護士が開発した「水匠」というCPUを使うソフト。
「水匠」は、機械学習したNNUE(ヌエと読む。Efficiently updatable neural netwoの略)という評価関数を使って探索した膨大な局面から最善手を選ぶ。
しかし、「アルファゼロ」の成功により、いずれDL系が追い抜くだろうとは言われていた。


藤井聡太四冠は、以前は「水匠」で研究していたが、DL系のdlshogiに変えた。
これに危機感を覚えたのが渡辺明名人。
コンピュータを買い変え、新しくDL系ソフトを導入した模様。
余談だが、GPUを開発したNVIDIA株はうなぎ登り。
低迷するintel株とは好対照だ。


王将戦挑戦に名乗りを上げたのは、難敵藤井四冠。
名人が初めて挑戦を受けた棋聖戦では矢倉の力戦形で敗れ、初戴冠を許した。
今回も矢倉が主戦場になるか?
あるいは流行の相掛かりになるか?
用意周到で知られる渡辺名人。
いずれ名人戦で戦うであろう相手だけに、ここで勢いを止めたい。
ファンであるヤクルトスワローズが日本一に。
テンション爆上がりの今、新たな武器を得た名人に注目だ 。







第2回電竜戦よりBURNING BRIDGE驚異の寄せ!


対「ふかうら王」(先手番)相掛かり

「ふかうら王」は、深浦九段とは何の関係もなく、「深い(deep learning)」と「やねうら王」というソフト名を合わせたもの。
今回の電竜戦では公平を期すために、先手番と後手番の二局セットで行われた。
ここで紹介するのは、「GCT電竜」vs 「ふかうら王」、それぞれ定跡を装備しているため、序盤の精度は高い。
下図は、プロ棋戦で何度も出現した局面だ。


【1図は16手目△3四歩まで】

図の局面から▲2四歩△同歩▲同飛△7三桂▲7七角△同角成▲同桂と進行したのが、永瀬王座vs渡辺王将(第70期王将戦七番勝負 第2局)
また、△9四歩と▲4七銀の交換なしに▲2四歩△同歩▲同飛△7三桂▲7七角(下図)△同角成▲同桂と進行した形が、永瀬王座 vs木村九段(第69期王座戦五番勝負第3局)だ。

ところが、「GCT電竜」は1図から▲7七角。
△7七同角成に▲同金と桂でなく金で取った。
△7三桂に▲5六銀と△6五桂を防いだものの、後手が歩を持てば、△8六歩▲同歩△8五歩という継ぎ歩攻めがある。
7七金の形が悪い。
いくら飛車先交換を防いでいるとはいえ、人間には指しにくい形だ。


対千田翔太戦(将棋日本シリーズ)で、藤井聡太もこの▲7七角を指している。
しかし、後手が角交換せず△3三角としたため▲6八銀と角交換に備えることができた。
以下△4二銀に▲5六銀と角頭を脅かし、△7七角成▲同銀△3三銀と手得。
ここで△7七角成とするなら、すぐ△7七角成としたかった。
角交換しないなら、さらに△7三桂と突っ張りたかった。


さて、「GCT電竜」vs「ふかうら王」の終盤戦。


【3図は61手目▲6八玉まで】

3図の局面で「GCT電竜」の読み筋は、△5一玉▲3三角成△6二玉に▲7八桂(受けの決め手)。
「ふかうら王」は、△3七角成と攻め、▲3三角成△4二金▲4五桂に△3六馬▲4七銀打△同馬▲4二馬△同玉▲4七銀に△6二角(4図)と受けて形勢互角という判断。
▲5八金と受けるくらいと予想していたが、次に強烈な一手があった。


【4図は72手目▲6二角まで】

図の局面から▲6一角。
取れば▲3三桂成で詰む。
「ふかうら王」にとって痛い見落としだった。





DL勢代表は、「二番絞り」 

第1回マイナビニュース杯電竜戦ハードウェア統一戦【準決勝】 1回戦☗BURNING BRIDGES-☖二番絞り(ビール工房HFT支店)は、角換わりになった。

後手の早繰り銀模様に対して▲4五桂跳ねから速攻を仕掛けたBURNING BRIDGES。

この辺りは手入力された定跡らしく、プロの実戦例もある。

二番絞りは4五桂跳ねを咎めに行く。


図からの指し手

△6四角 ▲3七銀 △3五歩 ▲同 歩

△同 銀 ▲3六歩 △2四銀


こうやって△4四歩からの桂取りを見せて先手に▲6六角△3三歩▲2五歩△1三銀▲3五歩△2二銀▲3四歩△同歩▲2四歩△同歩▲同飛と無理な動きを誘う。

これに△4四歩▲同角△2三歩▲2七飛△5二金とあくまで△4三金~△4四歩を狙う。

ここで▲6六歩がどうだったか?

△4三歩に▲2二角成△同金▲2四歩△同歩▲同飛に△5五角▲2五飛△1三桂と進行。


玉の安全度 

図では角銀交換と駒損ながら4五の桂は生還、反対に1三の桂が負担になっている。

ここから二番絞りの大局観が光った。

△6一玉と戦場から王を遠ざけ、▲4八金に△2三金と桂金交換を強要する。 

△6一玉は違和感があるが、この場合の最適解。

図から入手した桂を4四に打つ。

二番絞りは、桂とか角とか使い難い駒を巧く使う。

▲4七金打の受けに△3六歩▲2八銀と大きな利かしを入れ、△5五歩▲同歩△1五歩と手を戻す。
▲4五歩の桂取りには△5六角の豪打を用意している。
▲5八玉とその筋を備えた手に△8八歩▲同銀△2四角▲7七銀△8八歩▲同銀と手番を握った。 

図から△2三角が好手。
二枚の角がチェスのビショップのように盤上を制した。