【ノーマル四間飛車 鈴木システム】(その2△5四銀型)
居飛車穴熊のルーツ
升田の新手だった居飛車穴熊
▲7八金か▲7九金か?
升田に松尾流穴熊という発想があったかどうか分からないが、▲7八金型が時代を先取りした形。
しかし、将来△6九角などで金を狙われる手が気になる。
その後、居飛車穴熊を流行らせた田中寅彦九段は▲7九金型を好み、場合によっては▲7八飛から玉頭攻めを狙った。
ただし、6七の金が浮いているので△4九角の筋を狙われる。
優劣は今後の指し方次第というところだ。
後手の大山康晴15世名人は、早めの△5四銀で▲6六歩と突かせてから△9五歩~△7三桂と端攻めを狙う。
△5四銀型は仕掛けの隙がある
図の局面から▲5九角と引いたが、現代なら▲6五歩の含みで仕掛けを考えたいところだ。
図からの変化手順①
▲2四歩 △同 歩 ▲6五歩 △同 桂 ▲3三角成 △同 桂
▲6八銀 △2五歩 ▲6六角 △4三金 ▲3七桂 △2二飛(図)
▲2五飛 △2四歩 ▲4五飛 △同 銀 ▲同 桂 △4四歩
▲3三桂成 △同 金 ▲7五歩
▲2四歩から仕掛ける。
▲3五歩△同歩と突き捨ててから▲2四歩とすると、▲6六角の時に△4四角▲同角△同飛▲2二角△4三金と、後手の飛車に活躍の余地を与える。
以下▲3七桂△4六歩▲2五桂△2四飛▲1一角成△4七歩成▲3三桂成△2八飛成▲4三成桂△同銀▲5五馬△4六角▲同馬△同と▲5五角△4九飛▲7五歩に△7七桂があって先手危険。
もっとも藤井聡太vs矢倉規広(C級2組順位戦)では▲6六角に代えて先に▲7五歩として△同歩と取ったので▲6六角と打って先手が得した。
▲7五歩に△4六歩▲同歩△同飛▲3七角△4九飛成▲4八飛△同龍▲同角△4九飛▲6六角△4四歩▲3一飛△7五歩としてどうか?
なお、突き捨てを生かして過激に攻めるなら△6五桂に手抜いて▲2四飛もある。
△4六歩▲同歩△3九角▲6八角△6五銀で▲3四歩には△4四飛の返し技があって難解な形勢。
図の局面から▲2五飛と乱暴する。
△2四歩と受けても引かずに▲4五飛。
△同銀▲同桂△4四歩▲3三桂成△同金▲7五歩と穴熊の暴力が炸裂する。
したがって後手は、△6五同桂のところで変化する。
図からの変化手順②
▲2四歩 △同 歩 ▲6五歩 △4六歩 ▲同 銀 △7七角成
▲同金寄 △6五桂 ▲6七金寄 △6九角 ▲4八飛 △4五銀
▲5五角 △4六銀 ▲同 歩 △6三金 ▲7九金 △3六角成
▲6六歩
△6九角と▲7八金型の弱点を衝かれるが、▲6六歩の桂取りを楽しみに▲4八飛と辛抱する。
▲6六歩と後手の攻めを受け止めて、先手良し。
大山康晴の対応力
後手の大山名人は、右辺の折衝で一歩入手し、△6五歩と角筋をこじ開けようとする。
取ると次の端攻めが厳しくひとたまりもない。
初見でこの形に持っていったのは、流石の対応力だ。
この将棋に大山が快勝したため、対振りに居飛車穴熊が有力と認識されるのに10数年を要した。
大山康晴恐るべし。
真部九段の△6二飛作戦
△4一飛~△6一飛と迂回することなく、下図のような6筋反撃を目論んだのが故真部一男九段。
狙いがわかりやすくアマチュア好みの作戦だ。
図からの指し手
▲2六角 △5二金 ▲3七桂 △6五歩 ▲同 歩 △5四銀
▲2四歩 △同 歩 ▲5五歩 △同 角 ▲5六銀 △6六歩
▲6八金 △3三角 ▲4五桂 △同 銀 ▲同 銀 △6五飛
▲5六銀 △2五飛 ▲6四銀?(▲3七角で先手良し)
▲5五歩の手筋で角を近づけ、実戦の▲5六銀でも先手が良さそうだし、▲6六銀~▲5六金と手厚く完封勝ちを狙っても良さそうだ。
△6二飛作戦には、▲2六角~▲3七桂と組んで居飛車穴熊が良い。
HoneyWaffleの△5四銀作戦
前章でも触れた△6四歩不突。
先手は、▲8六角と玉頭戦を匂わせるが△8四歩から銀冠に組まれ、結局▲3七角と転換した。
▲6五同歩と取れば△4六歩▲同歩△6五桂▲6六銀△同角▲同金△5七桂成とされる。
△4六歩に▲同角もあるが、△4五銀▲6四角△5四銀の千日手狙いや△8六歩▲同歩△4六飛▲同歩△6五銀▲6六歩△7六銀といった狙いもある。
実戦は、▲6八飛と受けた。
藤井聡太二冠の▲5六銀退治
四枚の居飛車穴熊を作らせないため銀を繰り出して▲6六歩(△4四歩)を突かせる手法は昔から指されていた。
今日でも三間飛車のトマホークなどはこの手法である。
これに対して穏やかに指すなら△4四歩、頑固に四枚穴熊を目指すなら△4四銀だが、藤井二冠の応手はどちらでもない△2四歩。
▲4五銀なら△2三玉の予定だが、それなら△2二玉を待ってから▲5六銀だったか。
藤井二冠の狙いは玉頭銀の裏をつく、居飛車穴熊から急戦へのシフトチェンジだった。
図を見ると▲5六銀がムダ手になっていることが分かるだろう。
いつもながら柔軟で隙のない序盤だ。
そして終盤。
図から△8二香が決め手。
▲8二同となら攻めが遅れる。
▲9五角は、△6六馬▲6八角△7三銀で攻め駒を一掃される。
同じ意味で△9二桂もあった。
加藤桃子女王vs上田初美女流三段(マイナビ女子オープン)
△7二銀と締まらずに△5四銀と出て、▲6六歩なら相穴熊、▲6六銀に対しては、美濃囲いから急戦というのが広瀬八段推奨の作戦で、宮本五段の得意戦法。
女流戦で、上田初美女流が加藤桃子女王相手にこの作戦を用いた。
加藤女王は、▲6六銀と受ける。
△6四歩▲7八金△7二銀▲9八香と穴熊を目指した手に△7四歩▲9九玉△4五歩が後手の作戦だ。
先手は後手からの飛車先交換を受けなくてはいけない。
▲6八角と受けるのは△6五銀が角のにらみを生かして厳しい。
▲5七銀が定跡だが、△7七角成▲同金に△7三桂とされて、次の両取りが厳しい。
先手は、▲7八金と受けたが、それでも△6五桂とされ、後手は△4六歩が実現した。
結果は、後手の快勝。先手はいいところなく敗れた。
加藤桃子女王vs佐藤和俊六段(NHK杯)
加藤桃子女王の災厄はまだまだ続く。
今度は、男性プロが、同じ作戦を用いてきたのだ。
果たしてrevengeなるか?
ここまでは、前局と同じ、前局は▲7八金と引いて△6五桂から捌かれたので、本局は▲6六歩と修正した。しかし、結果は・・・惨敗。
この作戦の優秀さを証明した。
石田五段vs石井五段(叡王戦)
石田 直裕 五段 対 石井 健太郎 五段(第四期叡王戦段位別予選五段戦)より取材
図の後手陣は、石井健太郎著『四間飛車の逆襲』p.141~で「△6四歩保留型」と紹介された工夫。
△5四銀型に対し先手は、▲3六歩△4五歩の後、機を見て▲2四歩△同歩(▲3五歩△同歩)▲6五歩と仕掛けるのが定跡だが、△6四歩を突いていないので▲6四歩の取り込みがない。
石田直裕五段は、▲7八金と締まって次に▲6八銀と松尾流穴熊を匂わせたので、後手は△6五歩の狙いで対抗するため、仕方なく△6四歩と突くことになった。
石田五段の意思が通った形だ。
▲6八銀に△4五歩と次の△4六歩からの飛車の捌きを見せたが、石田五段は受けなかった。
△4六歩は怖くないと、△4五歩に▲2四歩△同歩▲6五歩の仕掛けが、石田五段の研究手順。
後手は当然△4六歩と突くが・・・
図から▲同歩と取ったのが甘かった。
代えて▲3三角成△同桂▲7五歩と厳しく玉頭を攻めるべきだった。
以下△3九角▲2四飛△7五角成▲7六歩△3九馬▲4六歩△同飛▲2二飛成△4九飛成▲1一龍△9六歩▲同歩△9七歩▲同銀△8五桂▲8八銀△9七歩▲同香△6五銀▲5五角△9五歩が想定手順で先手良し。
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