将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

日本人が理解していないキリスト教の怖さ

日本人の宗教観は鷹揚だ。
初詣は神社へ行き、結婚式は教会で行い、葬式は仏教だ。
しかし、それは日本だけの価値観。外国は違う。
宗教、特にキリスト教を知らなければ外国人の考えを理解することは難しい。


日本人が宗教の怖さを理解していないのは、合理主義者、織田信長が打ち破ってくれたおかげだ。
イスラム世界で宗教からの解放を行ったのがイラクのサダム・フセイン。
彼のおかげでイラクの女性は差別されることなく生きることができた。
日本人は、フセインの功績を知らなさすぎる。

昭和天皇の御心

昭和天皇が靖国神社参拝について漏らした強いお言葉を元宮内庁長官・富田朝彦がメモっていた。いわゆる「冨田メモ」だ。


私は或る時に、A級が合祀され

その上 松岡、白取までもが

筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが

松平の子の今の宮司がどう考えたのか

易々と

松平は平和に強い考えがあったと思うのに

親の心子知らずと思っている

だから 私あれ以来参拝していない

それが私の心だ


A級戦犯の中、わざわざ実名で書かれた松岡(松岡洋右)・白取(白鳥敏夫)。
この二人のみキリスト教信者だった。
昭和天皇は、靖国神社にキリスト教徒まで合祀したことに強い不快感を表された。
第二次大戦、アメリカは、日本に無差別爆撃を行い、果ては原爆まで落として一般市民300万人を殺した。
そして米国務省は、「日本は残忍な侵略国家」で、その根源に危険なカルト教(神道)があるとした。
自分は常に正義というのがキリスト教だ。


秀吉は、なぜ朝鮮出兵したのか。

キリスト教の怖さを知って最初に行動したのは豊臣秀吉。
神社仏閣の破壊、日本人奴隷の海外輸出などを理由に挙げ、1587年「伴天連追放令」を発した。
秀吉が明王朝征服のため朝鮮に出兵した原因も、実はキリスト教にあった。
元々明への遠征計画を練っていたのは織田信長である。
インカ・アステカなどの中南米を征服し、ポルトガルを併合し、「太陽の沈まぬ国」と呼ばれた最盛期のスペイン国王フェリペ二世。


余談だが、フィリピンという地名は、探検家マゼランが、皇太子時代のフェリペから名付けたもの。後に「スペイン領から独立させる」とアメリカに騙され、米比戦争で多大な犠牲者を生んだ後、併合される。


フェリペ二世と世界のカトリック化を目指すイエズス会が狙ったのは明王朝だった。
イエズス会と深い繋がりがあった織田信長を通じて日本をキリスト教に改宗させ、明を攻める尖兵にさせようとした。
その計画を示す当時の書簡が残っている。
この明遠征計画については、側近の秀吉も聞かされていたことだろう。
もちろん秀吉は尖兵になるつもりはない。むしろスペインの野望を恐れた。
秀吉の朝鮮出兵はスペインへの牽制だったと考えられる。
ただし、陸戦でなく海戦で直接マニラを叩くべきだった。
このあたりについて書こうとしたら、タイムリーな雑誌が出た。



秀吉の後、天下人となったのは徳川家康。
家康が外交顧問として重用した英国人ウィリアム・アダムス(三浦 按針)の甘言もあってか、多くの日本人はカトリックとプロテスタントについて誤解している。
スペイン・ポルトガルなどのカトリックの国は布教に熱心だが、オランダなどのプロテスタントの国は宗教的に寛容だと・・・
そうでなく、プロテスタントは「予定説」を信じ、神から救われる者は予め定められているので、滅びに至る者にわざわざ布教しないだけだ。
異教徒に容赦ないのは、カトリックもプロテスタントも同じ。
ただ、マックス・ウェーバーが論じたようにプロテスタントの勤勉さが資本主義を生んだことは間違いない。
現在、EUにおいて繁栄しているドイツはプロテスタントの国。反面、お荷物になっているギリシャは東ローマ帝国の流れを汲む正教会、イタリア・スペインは、カトリックの国だ。


アメリカに深く根付いたキリスト教

アメリカの大統領就任式では、聖書に手を当てて宣誓を行う。
そもそもアメリカを建国したピルグリムス・ファーザーズは、英国国教会から逃れたプロテスタントの一派で原理主義的なピューリタン(清教徒)だ。
彼らがアメリカ大陸に到着した1620年の冬は大変厳しく、大勢の死者を出した。親切なインディアンが七面鳥とトウモロコシ栽培の仕方を与え、彼らは生き延びた。これを感謝した祭りが「感謝祭」だが、彼らが感謝したのは肥沃な領土を授けてもらった神に対してであって、異教徒であるインディアンは虐殺されるかカリブで奴隷として売られた。
インディアンから領土を奪うことが神からのマニフェスト・デスティニー(明白な使命)とされ、強欲さを「フロンティアスピリット(開拓者精神)」という美辞に隠し、今日のアメリカの礎となった。
「アメリカ人は、自分の事はさておいて、自らを道徳的高みに置いて他を見下したがる」
(ジョン・フェアバンク:ハーバード大教授)


ちなみにイギリスに残ったピューリタンは、聖書の教えを絶対として王権神授説を否定し、革命を起こして国王を倒す。これがピューリタン革命だ。その後、国民に宗教的厳格さを強いたため反発を買い、指導者クロムウェルは処刑され、王政復古となった。


幕末、そのアメリカからペリーが黒船を率いて浦賀へやってきた。
殆どの人は、黒船は太平洋からやってきたと誤解しているが、実は大西洋から喜望峰超えの航路を通り、沖縄に寄ってからの来航である。※1
当時、アメリカは、カリフォルニアをメキシコから分捕ったばかり。険しいロッキー山脈が陸路を阻み、パナマ運河はまだ開かれておらず、アメリカ東部からゴールドラッシュで沸くカリフォルニアへ行くには地球を一周するこの航路が比較的安全だった。※2
この航路の中継地点として、アメリカは日本の開港が必要であり、ヨーロッパの国でなくアメリカが開国を要求したのには、そうした背景があった。


※1.フィルモア米大統領は、ペリーに日本開国と同時に沖縄占領を命じていた。ハワイ~グァム~沖縄は、当時からアメリカの太平洋戦略の要衝。今日の米軍基地は、100年かけた戦略の総仕上げであり、米軍が沖縄から撤退することはありえない。
1853年4月、ペリー艦隊の軍艦サラトガは、石垣島で米奴隷船から逃げ出した苦力(クーリー:中国人奴隷)300人のうち100人を見つけ出して処刑(石垣島砲撃事件)。5月には琉球王の拒否を押し切って武装兵を率いて上陸し、首里城を強襲した。琉球国王と謁見したペリーは、沖縄を日本や中国への中継地として利用するため友好的に振舞った。
この後、ペリーとの交渉にあたった老中、阿部正弘の手腕と、アメリカ国内で南北戦争が勃発したこともあって、沖縄は占領を免れた。日本が第二次世界大戦で敗北するまで。


※2.太平洋を渡った「咸臨丸」は、サンフランシスコまでしか寄港していない。また「岩倉使節団」は、サンフランシスコからワシントンまでアメリカを陸路で横断したが、全行程1年10ヶ月のうち8ヶ月を費やした。

本当は面白い「旧約聖書」

キリスト教の聖書は「旧約聖書(「約」とは、神との契約の意味)」と「新約聖書」に分かれるが、旧約の方が新約より遥かに面白いというのが正直な感想だ。
人類史上初めての殺人を犯したカインとアベルの物語、天使と戦って祝福を受けたヤコブの梯子(ジェイコブズ・ラダー)の物語、古代都市バビロンに由来するといわれるバベルの塔の物語。いずれも含蓄に富む話だ。
ドイツの文豪トーマス・マンは、旧約聖書から示唆を受け、傑作「ヨゼフとその兄弟たち」を著した。


これらは旧約聖書の中の「創世記」に書かれている物語。
旧約聖書の最初にある「創世記」は神話の章で、次の「出エジプト記」からは、エジプトで奴隷状態にあったユダヤ人が、モーゼに導かれてエジプトを脱出し、約束の地へたどり着き、イスラエル王国を建国、しかし教えを守らなかったため分裂し、滅びて流浪の民となってしまうという歴史と律法の章になる。
「創世記」の内容は次のようなものだ。


天地創造と原初の人類

  1. 天地創造 1章
  2. アダムとエバ、失楽園 2章 - 3章
  3. カインとアベル 4章
  4. ノアの方舟 5章 - 11章
  5. バベルの塔 11章

太祖たちの物語 

  1. アブラハムの生涯 12章 - 25章
  2. ソドムとゴモラの滅亡 18章 - 19章
  3. イサクをささげようとするアブラハム 22章
  4. イサクの生涯 26章 - 27章
  5. イスラエルと呼ばれたヤコブの生涯 27章 - 36章

ヨセフの物語

  1.  夢見るヨセフ 37章 - 38章
  2. エジプトでのヨセフ 38章 - 41章
  3. ヨセフと兄弟たち 42章 - 45章
  4. その後のヨセフ 46章 - 50章

「創世記」にれよれば、方舟で有名なノアにはセム・ハム・ヤベテという三人の子がいた。
セムはアラブ人・ユダヤ人の祖とされ、ハムは黒人の祖、ヤベテは白人の祖とされる。
ノアが酔って裸で恥ずかしいことをしているのをハムに目撃され、それを逆恨みしたノアは、黒人の祖であるハムの一族に祝福を授けず、呪った。
白人が、黒人を奴隷扱いしてもかまわないと考えた根拠のひとつに「聖書」の教えがあった。


不幸な歴史が過激派を産んだ

イスラム教というとテロリストの怖い宗教というイメージがある。
しかし、本当に怖いのはキリスト教。
例えば「十字軍遠征」は、キリスト教側が一方的に仕掛けてきた理不尽な侵略戦争。
いわば日本でいえば「元寇」みたいなもの。イスラム圏はこれに耐え、よく守った。

(エルサレムに入ったフランク兵たちは、いきなり武装蜂起する。)

フランク兵は、彼ら(エルサレムの人々)をソロモンの神殿まで追撃して殺害したり、切りつけたりした。そこでの殺戮は、フランク兵たちの踝まで敵の血に浸かるほどのものであった。

レーモン・ダジール他著「フランク人の事績第一回十字軍年代記」

「聖戦」という名で公認された残虐性は、今日のテロリストの比ではない。


そもそもイスラム教は、ユダヤ教、キリスト教と兄弟関係にあり、根源は同じ一神教。
「旧約聖書」を教典とするのがユダヤ教。
ユダヤ教の戒律の厳格さに異を唱えたイエス・キリストの物語である「新約聖書」を「旧約」とともに教典とするのがキリスト教。
ムハンマド(マホメット)をイエスに続く預言者と位置づけ、ムハンマドの教えである「コーラン」を「旧約」「新約」とあわせて教典とするのがイスラム教。
キリスト教は、人の子であるイエスを神とするために、エホバ(父)とイエス・キリスト(子)と精霊(父と子を繋ぐもの)の三位一体という不自然な理屈で正当化しているが、イスラム教ではムハンマドは神ではない。
イスラム教の方が合理的だ。
ちなみに「女性は髪を短く切って、スカーフで包め」「豚を食べてはいけない」などは元々旧約聖書やユダヤ教典によるものである。
また、アッラーの前では皆平等とされるイスラム教では、富者は貧者にザカート(寄付)といって富を分配する義務がある。1%の人々が99%の富を独占するような格差社会は、イスラム文化とは相容れない。
ちなみにカルロス・ゴーン(レバノン)は、イスラム教徒ではない。長くフランスの支配を受けてきたレバノンではキリスト教徒が多い。


イスラム教が過激化したのは、キリスト教国の専横に対する反発が大きい。
第一次大戦後、英仏は石油利権やスエズ運河の通航権を目当てにオスマン・トルコ帝国を解体、サウジアラビアなどいくつかの傀儡国家を立てて支配した。解体にあたっては、定規で直線を引いて分割した(サイクス・ピコ協定)。これが今のシリアとイラクの間の国境線。現代のISの主張の一つは、英仏が勝手に引いた国境線の否定だ。
不凍港を目指して南下政策をとるソ連は、英米と対抗するためにエジプトのナセル、シリアのアサド、リビアのカダフィ大佐、イラクのサダム・フセインなどの民族独立運動を支援して親ソ政権を樹立した。
イランでは、開明的なモサデク首相が自国のために石油の国営化を図った。これをソ連に繋がる動きと警戒したアメリカCIAとイギリスMI6がクーデターを起こし(アジャックス作戦)、パーレビ国王による傀儡政権を作った。(このあたりは百田尚樹「海賊と呼ばれた男」に詳しい。)
このように中東は長く米ソ代理戦争の舞台となった。
そういった不幸な歴史の結果、「どうしてわれわれはこんな目に合うのだろう。それはイスラム教の教えを厳格に守っていなかったからだ」と過激化した。


ちなみに同じように不幸な歴史を受けてきたのが朝鮮半島だ。
半島国家の宿命から、長く中国の支配を受けてきた朝鮮は、日清戦争のおかげで独立を果たし、明治維新に倣って「甲午改革」を行った。
科挙や両班制、奴隷制度は廃止され、残虐な拷問や縁座制も無くなった。清の使節を国王が出迎え平伏するための「迎恩門」は取り壊され「独立門」が建てられた。
しかし、その後「日韓併合」という不幸な歴史を経て、大戦後も米ソ代理戦争の結果、北朝鮮と韓国に分断された。
イランと北朝鮮、この両国が核武装に向かったのは当然の帰結だ。


これからの中東は、中露の代理戦争となる

日本人は、中東を一括りに考えているが、イランの国名は「アーリアン」に由来し、ヒトラーが人種的優位を唱えたアーリア人の系統だ。ノアの子ヤペテを祖とし、中東に覇を称えたペルシャ人(印欧語族)の国で、ペルシャ語を使う。ヘブライ語を使うイスラエルのユダヤ人(セム語族)はもちろん、トルコ語を使うトルコ人(テュルク諸語族)やアラビア語を使うアラブ人(セム・ハム語族)とも違う、誇り高き民族だ。
ちなみに「アラビアン・ナイト」は、ペルシャの物語。
イランの宗教は、イスラム教では少数派のシーア派。多数派はスンニ派だ。「シーア」は「派閥」という意味で「スンニ」はコーランで定められた生活様式(スンナ)を重んじる派閥という意味。したがって「シーア派」を直訳すると「派派」、「スンニ派」を直訳すると「スンナ派派」となる。ちょっとややこしい。
なお、「湾岸戦争」の舞台となったのはイランとサウジアラビアとの間のペルシャ湾だが、アラブ人は「アラビア湾」と呼ぶ。単に「湾岸」と呼称したのは、「ペルシャ湾」とすればアラブ諸国が怒って戦争協力を拒み、「アラビア湾」とすればイランを刺激するからだ。


今日、欧米はエネルギー政策の変化により、中東への関心は薄れつつある。
ヨーロッパは、(中東に比べれば遥かに政情が安定している)ロシアからの天然ガスの恩恵に浴し、アメリカはシェールオイルの生産が進み、両者ともこれまでほど中東の石油に興味がなくなった。
アメリカファーストを叫ぶトランプ大統領により、中東からの米兵撤退は進むだろう。
トランプの中東への関心は、イスラエルのみ。ユダヤ教徒である娘婿クシュナ―の影響だ。娘は改宗し、孫は皆ユダヤ教徒。
そんなアメリカによる中東の安定は望めない。


2020年2月27日シリアのアサド政権によるトルコ空爆に対し、トランプ大統領は、トルコ支援を表明したものの、シリア上空を実効支配するロシアを慮ってNATOは動かなかった。
トルコのエルドアン大統領が頼ったのはロシア。即座にモスクワでプーチン大統領と会談し、3月16日の停戦にこぎつけた。
クリミアを確保し、南下政策を進めるロシアにとって、中東は重要な戦略拠点だ。
シリアのアサド政権は、「アラブの春」などの欧米の介入への危機感から「敵の敵は味方」とばかりにロシアやイランとの結びつきを深めた。
EU加盟がうまくいかず、シリアからの難民問題でEUと対立するトルコのエルドアン大統領。プーチンとは同じ独裁者同士ということで気が合っているようだ。


その間隙を縫って中東に手を伸ばしている国が中国。
戦乱で荒廃したイラク・シリアなどのインフラ整備に資金を投じ、「一帯一路」の巨大経済圏に組み込もうとしている。


パクスアメリカーナは終わった。
中露が中東で激突する未来に、イランの核武装は必至だ。


尖閣諸島は、蟻の一穴

上記のように、シリアのトルコ侵攻に対し、NATOの集団的自衛権は機能しなかった。
空爆され30数名の死傷者を出したにもかかわらず。
日本にとってこれは決して「対岸の火事」ではない。
この世界は残酷だ。

何かを変えることができるのは 何かを捨てることができるもの

何ひとつリスクなど背負わないままで 何かが叶うなど

暗愚の想定 ただの幻影 今は無謀な勇気も・・・

自由の尖兵 賭けの攻勢

奔る奴隷に勝利を!

「紅蓮の弓矢」より