将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【角交換振り飛車】(その1)

令和の角交換振り飛車対策


角交換は嫌った方が負け

「角交換」が、将棋を変えたキイワードである。
大山康晴15世名人の全盛期は、角交換をしないことが暗黙のルールで、遅くとも5手目までには角道を止め、矢倉かノーマル四間にする時代だった。
大山15世名人だけではない、羽生18世名人が、「矢倉にするためには▲6六歩と▲7七銀とどちらで角道を止めるのが正しいか」を深く考察した「現代矢倉の・・・」という殆ど哲学書のような解説書を著したのは、まだ記憶からそう遠くない。
この時代は、堅さが正義で、居飛車穴熊が猛威を振るった。居飛車穴熊対策のために振り飛車から積極的に角交換を挑むようになり、△6二金+8一飛型や中住まいなど角交換に強い陣形を開発、堅さ重視からバランス重視へと将棋は変わった。


角交換振り飛車に対して、▲6六歩と角交換を避けてくれると振り飛車としては楽だ。
△4四歩~△4五歩としなくても角筋が通っているから。

図は、田中寅彦九段vs冨田誠也四段(順位戦)。
向かい飛車から△2四歩と動いて、早くも指しやすい。
▲2五歩には△3五角がある。次に△2六歩からの飛車先逆襲が厳しい。
▲6五歩の飛車取りにも△2六歩でいい。
次に△7九角成から△2七銀がある。


実戦は▲4六歩と突いたが、負担になった。


そういえば、昔、アマチュア強豪の大木和博さん(東京都)が、冨田四段の作戦と同様の将棋を指したのが『週刊将棋』誌(多分)に掲載されていた。


大木さんは、田中寅彦九段が「居飛車穴熊の元祖」を自称していたため、「私の方が元祖」と裁判で争った。
不毛な戦いだった。
しかし、田中九段が、自分より先に居飛車穴熊を指した升田幸三九段をリスペクトしていれば、無用の争いは生まなかったことだろう。 
残念なことだ。

図の△4四歩は馬筋を止めて盤上この一手。
馬を遊ばせるわけにはいかないので、▲2一馬だが、相手にしてもらえず△3七飛成。
遊び駒の金銀を取られても響かないし、△3一金と当てても逃げてくれず、▲同馬~▲4七金で返って紛れる。
優勢の時は、一直線に攻め合うのが正解。

ここで△5八飛と王手しないのが参考になる。
だまって△5九飛と、守備駒の金を狙うのが厳しい。
▲4二馬と形を作って△5八飛成で投了となった。


第一期新銀河戦では、藤井聡太相手に健闘したものの、成銀を打ちつけ反則負け。
「序盤のエジソン」と呼ばれ、タイトル獲得もあった田中寅彦九段だが、降級点三回により2022年4月15日対田中悠一五段戦を最後に64歳で引退となった。


ダイレクト向かい飛車

大山康晴のダイレクト向かい飛車

無敵大山康晴相手に内藤は角交換から▲8八銀とわざわざ一手損して角換わりを誘った。
しかし、大山は構わず△3三銀~△2二飛とダイレクト向かい飛車に。
内藤は、▲6五角△7四角▲同角△同歩とさらに手損して▲7五歩と突っかかる。
ここまでされると流石に大山は△7二飛と振り飛車を断念した。
先後逆だが今でも定跡になっている手順だ。
当時の棋士がいかに大山流振り飛車を苦手にしていたかわかるとともに力戦における大山康晴のスバ抜けた棋才には感服するしかない。


▲6五角の変化

先手の悩み

向かい飛車からの逆襲に備えて▲2五歩を保留しているが、▲2五歩を決めた方が▲6五角の変化で若干得な意味がある。
すなわち▲6五角△7四角▲4三角成の時に△5二金左と受けると▲2四歩△同歩▲2三歩の手筋一閃で先手が良くなるのだ。
したがって後手は△5二金右か△4二金と受けることになり、玉を固めにくい。

他のデメリットとして、▲2五歩を突くと△2六香と打たれる変化が生じる。
9筋を突き合った形で▲7五金に△9六角とする変化だ。
悩ましいが、飛車先保留する方が無難。

後手は、先手に飛車先を突かした方が良いと考えて△9四歩~△9五歩と端の位を取る「端歩位取りダイレクト向かい飛車」も有力である。

飛車先を決めないとすると右銀を上がることになるが、4八か3八かが悩ましい。
ダイレクト向かい飛車から△5四角~△2七金など飛車先逆襲の狙いがあるので▲3八銀が優るように思える。▲3八銀型は、佐藤康流の△5四歩~△5三銀にも対応できる。
反面、▲5八金と上がった時に△3九角の隙ができるのが痛い。
悩ましいが、△5四角には▲3六角を用意して▲4八銀と上がる。

このように先手が▲6五角と打つまでの駒組みに様々な葛藤がある。

基本図 

図の局面から後手は、先手が飛車先を保留したので、飛車先逆襲は難しいと判断して△4二飛と狙いを4筋に移した。
これに▲7四金△同歩▲4六歩が定跡。
▲4六歩では▲7五歩△同歩▲6五角がありそうだが△5四角と受けて▲同角△同歩▲3一角には△4五飛(参考図)で受かる。
見かけない形なので錯覚しそうだ。

なお▲3八銀型ならこの筋(▲7五歩△同歩▲6五角)が成立するのでご注意を。


参考図


△4二飛として角を取らせる変化

定跡図(9筋の歩交換は省略)

図は先手が角を取って▲4六歩としたところ。
取れば▲5五角がある。
▲4六歩は今がタイミングで、△6四歩とされてからだと▲4六歩は突けない。


後手としても先手に▲4六歩から▲4七銀と陣形を手厚くされると手が出せなくなるので
△5五角は必然だ。
以下▲7八玉△4六角▲5八金右に△3五歩などと急戦を狙うのが変化の一例。


△6四歩として角を取らせる変化


図のように、△6四歩型の場合も急戦狙いに角を打つのが良い。
5四でなく6三に角を打ったのは▲3六角に△5四歩を用意したもの。


図から▲3六歩△同角▲3七銀と右銀を活用するのが良い。
△2七金は▲3六銀△2八金▲3七桂で、また△4七角成は▲同金△同飛成▲3六角で大丈夫。
金井vs窪田(朝日杯)では△5四角▲7七銀△8四歩▲4六銀△8五歩と進んだ。
次の狙いは△7五歩▲同歩△8六歩で▲同銀なら△7六金、▲同歩なら△8七金だ。


しかし、▲5五銀とされると△3二角は▲1八角で困る。
実戦では金井六段は▲5五銀を見送ったが、何か気になる順があったか?


どこかで9筋の歩のつき合いがあれば△9五歩▲同歩△9八歩▲同香△9九金という攻めがあって成功する。△6三角の前にそっと△9四歩と突くことをお勧めする。







逆棒銀の周辺


上田初美vs中村真梨花~▲5六角さえ覚えておけば、逆棒銀対策はOK

図のように無防備のまま逆棒銀を食らうとダメとしたものだが、あきらめてはいけない。
▲5六角が覚えておきたい一手で、△2五銀は▲3四角で潰れ、△1二角は▲2三歩で潰れ、なので後手は△3三銀しか受けがない※。
対して上田初美女流プロは▲2二飛成と交換したが、▲2三歩と交換を拒否する方が優った。
以下△4二飛▲3六歩△3二金▲3七桂△4四歩が進行の一例で、互角の形勢。
※藤井猛著「角交換四間飛車を指しこなす本」p.102~

図の△9五歩が「マリカ攻め」で、実戦は▲同歩と取って△9八歩▲同香△7八角成▲同玉に△9九金!が筋悪だが厳しい攻め。
図から▲6八金と角を追うのは、△8七角成▲同玉△7九飛で潰れ。
▲7九金が正解で、△1四角成▲9五歩△2四飛▲同飛△同馬▲5六角△4六馬が変化の一例で、互角の形勢だった。

一直線穴熊~△5四角(▲5六角)さえ覚えておけば、逆棒銀対策はOK

上記の応用です。先手のダイレクト四間飛車に対し、後手は一直線に居飛車穴熊にした。
居飛車穴熊にすると銀の動きで手損になりますが、実戦的な手法。
次の一手はお察しのとおり例の角打ち。
△5四角に▲5六角と対抗するのは、△8七歩と強気に対応して十分。


図のように銀を取ることに成功しても、▲8六銀の遊びがひどく、歩切れも痛い。
仮に図から▲5八金左(▲5九金左も△8八飛で大同小異)△8九飛▲8四飛(まだしも▲8五飛△2四香▲5九金引き△3五桂▲3六銀△2七桂成▲同銀上△同香成▲同銀△7六角)なら△2七角成▲同玉△2四香▲2六銀△1五桂▲3六玉△2六香で投了。△5四角が光っている。
△5四角(▲5六角)の筋を知ってさえいれば、図の逆棒銀は恐れることはない。
↓はfloodgateの棋譜です。サヤちゃん強い。先手は立石流を目指すべきだったか?


平藤眞吾vs片上大輔~▲4六歩・3六銀型には△3二金でOK

図が「ダイレクト向かい飛車」と呼ばれる戦法。
この戦法が成立するためには、▲6五角問題を解決する必要がある。
図の局面と、それから後手が△6二玉と一手指してもやっぱり▲6五角がある。
さらに無事に組めてもその後が難しい。
2筋からの逆棒銀や△4四銀は、ゴキゲン中飛車で類似形が戦われてきたが、好んで指す変化とも思えなかった。この実戦譜を目にするまでは・・・

図の▲3六銀では他に▲3六歩や上記の▲5六角も有力。
図から△2五歩と以前は良く指されていたが、▲5六角で面白くない。
後手には他に有力手段がふたつある。


①3三桂
△3三桂▲5六角△2五歩▲3四角△5二金左▲6六歩△9四歩▲9六歩△5四歩▲8八玉△5三金▲7八金△6四歩▲7五歩△8四歩▲6七角△8三銀▲4七銀△7二金▲3六歩


本当は、▲5六角に△2五銀と攻めたいが、4一の金が浮いている現状では無理。
この変化を狙うなら△5二金(△3二金)と一手入れる必要がある。
△2五歩と打たされた結果、棒銀が捌けにくい形になり、後手不満。


②3二金
この手が最有力か。
▲2五歩に対しては穏やかに△3三銀と引き△4二金~△5二金と固めてから△2七歩を狙う。
引くのは元気が出ないという方には、△3九角の強手がお勧め。

佐藤康光vs日浦市郎~ラインに入った玉はchance


出だしは違うが、ダイレクト向かい飛車と同じ形。
穴熊なので、5八の金が浮いている事など気にせずに攻める。
△8六同歩▲同銀△8七歩▲同飛△6九角▲8八飛△5八角成は、▲同飛と取って△8六飛には王手飛車がある。
もしラインを避けて△4四歩と駒組すれば、△4四角の筋がないので▲6六銀~▲7五歩の要領。

後手端歩位取りダイレクト向かい飛車

 


角交換四間飛車


藤井猛九段の「角交換四間飛車戦法」が升田賞を受賞した。
出現した当初は、向かい飛車にして逆棒銀、あるいは△4四銀から3筋交換と、狙いが単純な戦法だと思っていた。しかし、最近は四間飛車のまま△4四歩を見せて相手の▲4六歩を牽制したり、石田流に変化したりなど幅広い狙いを見せている。
最近は一手損角換わりの主流が、4手目角交換になってきて、角交換振り飛車との距離がますます縮まった。


後手の角交換四間飛車

①早い角交換型(旧型)

初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8八角成 ▲同 銀 △4二銀

図からの指し手
▲2五歩 △3三銀 ▲3八銀 △4二飛 

4手目角交換から△4二銀は、「一手損角換わり戦法」や「角交換振り飛車戦法」△5四歩▲2五歩△5三銀(佐藤新手)など多彩な戦法選択が可能。
先手は、▲2五歩△3三銀と決めて▲3八銀とダイレクト向かい飛車をcare。
▲4六歩~▲4七銀とすれば、銀の位置は4八だろうが3八だろうが関係ない。


深浦vs羽生(将棋日本シリーズ:2012年9月29日)

先の▲4六歩の瞬間に△4四歩と反発できないのが旧型の欠点。(4筋の歩交換に対して▲3六角の筋がある。)
優秀な▲4七銀型を許した。
後手は△7四歩から銀冠を目指したが、居飛車穴熊に組まれ作戦負けに陥った。
羽生JT杯覇者は、3筋のクライを取って桂馬の活用を防いだ後、△5二飛~△3二飛~△3一飛と捌き、▲4五歩の仕掛けに△3五歩~△5六歩と嫌味をつける。
そして息を飲む終盤のclimaxを迎える。

羽生JT杯覇者は、△9六桂と詰めろをかけた。
危険なようだが、後手玉は△3四飛の横利きが心強く詰まない。
△3六飛と走らなかった羽生JT杯覇者の判断が光った。


②角交換保留型

飯塚vs藤井(朝日杯:2013年11月25日対局)


初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4二飛 ▲6八玉 △8八角成 ▲同 銀 △6二玉 ▲4八銀 △7二玉 ▲7八玉 △8二玉 ▲2五歩 △7二銀

図が、進化した角交換四間飛車。図を見ると角交換四間飛車の利点がわかる。後手は美濃囲いが完成しているが、先手玉はまだ中途半端な構え。違いは角交換していない点で、これまでは早目に後手から角交換して△8八同銀を強要し、飛車先を△2二銀~△3三銀と守ってから美濃囲いに組んでいたが、それには▲4六歩から腰掛け銀に組む対策が有力で手詰まり模様。
進化した角交換四間飛車は、先に美濃囲いに組み▲4六歩には△4四歩から強く戦う心づもり。先手が飛車先を保留する作戦が増えているので、飛車先のcareも急がない。
新型を「角道オープン四間飛車」、旧型を「角交換四間飛車」と区別する事もある。


飛車先交換には、角交換から△2二飛とぶつけるつもりだが、交換しないのなら角交換から△2二飛※と自然に受ける。
その場合、銀の動きを保留した効果で、左銀を中央へ活用できる。


※ただし△2二飛に対して▲7七角△3三角▲同角成△同桂から桂頭を狙われる筋に注意!

今までは、この局面で角交換すると▲同玉から堅められて損とされていたが、玉で取られても十分対抗できると判断したのが、specialist藤井九段。
飯塚七段は玉を固めて攻める棋風なので当然▲同玉。
その後、角のラインを防いで▲6六歩。

ところが、自然なこの手が少し損。▲7七角の狙いが無くなったので△4四銀と出やすくなった。


畠山vs藤井△藤井流3一金型
△2二飛の他には△2二銀▲2四歩△同歩▲同飛△3一金が藤井流。

図の△3一金が藤井九段の工夫で、▲2八飛△3三銀▲2四歩△2二歩という形を屈服でなく、かえって銀が自由に使えると評価。
△3五歩から飛車を浮いて▲2四の歩狙いや、△3二角からの玉頭狙いもある。
今まで手詰まり模様だった角交換四間飛車が、進化したこの手順によって、再び脚光を浴びるか?


図からの指し手
▲2八飛 △3三銀 ▲2四歩 △2二歩 ▲3六歩 △3二金

▲3六歩を急がないと△3五歩~△4五歩~△4四飛から2四の歩を狙われる。
後手は、他に△5二飛と中飛車に振り直す深浦流の作戦もある。
畠山鎮七段は、図で▲7七銀としたため、藤井猛九段に△4五歩~△4四銀の活用を許した。
▲4六歩△4四歩▲3七桂と4筋をkeepしておけば先手も十分戦えた。

行方vs高﨑(第29期竜王戦2組:平成28年1月15日対局)
初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4二飛 ▲6八玉 △8八角成 ▲同 銀 △6二玉
▲7八玉 △7二玉 ▲4八銀 △8二玉 ▲9六歩 △9四歩 ▲2五歩 △2二銀
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △3一金

後手はあえて歩交換を誘った。
先手としては、図から飛車先交換の誘惑に乗らず、後手に△3三銀~△2二飛と受けられても、▲3六歩・4六歩で十分に対抗できる。
△2四歩からの飛車先逆襲には、▲3七桂で対抗できるし、△4四銀から△3五歩▲同歩△同銀の交換には、▲7七角△4四角▲同角△同銀▲7七角と対抗できる。
実際、2014年4月30日に対局があった行方尚史 vs. 渡辺明二冠 (第62期王座戦挑戦者決定トーナメント1回戦)では行方八段は、飛車先交換をしなかった。
今度の対局で行方八段が飛車先交換したのは、前局の反省か。
飛車先交換に△3一金が、藤井猛九段が開発した手法。他に△2三歩と穏やかに受け、△3二飛から石田流を目指す指し方も考えられるが、4→3戦法より少し損。具体的には△2三歩▲2五飛△3二飛▲3六歩と交換を拒否される。


図からの指し手
▲3六歩 △3三銀 ▲2六飛 △2二飛 ▲2三歩 △4二飛 ▲3七桂 △4四歩
▲7七銀 △3二金 ▲5八金右 △2四歩 ▲5六歩 △2三金 ▲5七銀 △7二銀
▲5五歩 △2二金

▲3六歩は行方八段らしい強気な指し手で、▲2八飛(▲2六飛と引くのは、△3三銀▲2四歩△3五角)と引いて△3三銀▲2四歩△2二歩と△2二飛ぶっつけを避ける実戦例がほとんど。
本譜のように△2二飛と交換を挑まれると▲2三歩と避けるしかなく、以下△4二飛▲3七桂△4四歩▲7七銀△3二金▲5八金右△2四歩▲5六歩△2三金と歩損する。


▲2八飛△3三銀▲2四歩△2二歩とした場合、次に△3五歩~△4五歩~△4四飛を防いで▲3六歩とするのが良い。
後手は△3二金くらいだが、
①▲4六歩は、△4四歩なら▲3七桂の予定だが、△4四銀が面白い構想。以下▲4七銀△5五銀▲5八金右△4四歩で互角の形勢。
②▲5六歩は、△7二銀▲7七銀△4四歩▲6六銀△4五歩▲5七銀上と△6四角の筋を警戒しながら駒組みを進めて形勢互角。


その後、▲5六歩と中央の歩を突くのが急所で、▲4六歩から腰掛け銀に組むのは桂頭が不安なので、攻めの形を構築するのが難しい。たとえば▲5六銀には△3五歩▲同歩△3六歩と言った筋が気になる。
石田直裕著「角交換四間飛車破り~必勝ガイド」p.206~に▲4六歩型の自戦解説(対黒沢戦)があり、後手は、△2二飛~△4二銀~△3三金と整形している。なお、講座(p.139~)では▲5六歩~▲5五歩を解説している。


図のように進展すると、後手の形が悪い。
図の局面から▲7五角△5二飛▲5四歩△同歩や▲5四歩△同歩▲5三角△5二飛とすれば馬ができそうだが、▲3一角成△5一飛▲7五馬△6四角と消される。
先に▲4六銀として次に馬つくりや▲3五歩の攻めを狙う手段は有力。


図からの指し手
▲8八玉 △3二金 ▲7八金 △4三金 ▲7五歩 △2二飛 ▲5六銀 △4二銀
▲4六角 △2五歩 ▲同 飛 △同 飛 ▲同 桂 △4五歩 ▲同 銀 △2九飛
▲2二飛 △6九角

本譜は、手得を生かして▲8八玉から玉を固めたが、その反面、後手も△4三金・2二飛・4二銀型と整形して満足。以下△2五歩から仕掛けて後手有利の終盤を迎えた。
32分の考慮の末に指された図の△6九角が、高﨑六段が才能を見せた手で、先手は受けにくい。
▲6八金右△4七角成▲5七角は、△4四歩▲同銀△同金▲4二飛成に△5七馬▲同金△2四角で先手負け。
▲4八金△5九飛成▲5七角は、△3三桂から△6五桂の狙いが厳しい。
行方八段は▲6八金左と指したが、△5八角成▲同金△4九飛成▲6八金△7九金▲7八角に△3三桂と取られそうな桂馬を捌いて後手好調。


図からの指し手
▲6八金左 △5八角成 ▲同 金 △4九飛成
▲6八金 △7九金 ▲7八角 △3三桂
▲同桂成 △同 銀 ▲2一飛成



図からの指し手
△7八金 ▲同 金 △4七龍 ▲6八角
△4五龍 ▲7四歩 △同 歩 ▲7三歩

高﨑六段は△7八金▲同金△4七竜としたが、堅めて損。まだしも△8九金▲同角△4七竜で、▲5七金なら△3八竜(△4八竜▲5八金打)▲7八金△6五桂で後手優勢。
この局面は、角のラインを防ぎながら次に△4四歩の確実な攻めや△8九金~△7六桂の早い攻めを狙って△6四桂と打ちたい。


本譜に戻って、高﨑六段は△4七竜と角銀の裏をついて金を使わせようとしたが、行方八段は▲6八角と銀を取らせて▲7四歩と反撃。先手陣がまとまっているのが強み。


図からの指し手
△同 桂 ▲7五歩 △3八角 ▲7四歩 △同角成 ▲8六桂 △6四馬 ▲7四歩 △6五桂 ▲7三金 △同 馬 ▲同歩成 △同 玉 ▲1一龍 △7七桂成 ▲同 金 △4八龍 ▲7六香 △6二玉 ▲7二香成 △同 玉 ▲8一角 △8二玉 ▲7四桂 △9三玉 ▲8二銀
まで101手で先手の勝ち


図から1分の消費時間で△同桂と取り▲7五歩は△3八角で受かるつもりが、▲7四歩△同角成▲8六桂が厳しかった。△同玉と取って▲6五桂△6二玉▲8二金△5一銀と丁寧に受けるべきだった。


<先手の角交換四間飛車>

藤井猛 対 佐藤康光 ~この将棋を見て奨励会を抜けることができました(黒沢五段)


藤井対佐藤康(第64回 NHK杯テレビ将棋トーナメント2回戦第10局 千日手指し直し局)から取材。


この将棋は、黒沢怜生五段が、奨励会三段として最後に記録を採った思い出深い将棋。「将棋世界2017.12号」『レオ先生が教える角交換四間飛車』p.75~に詳しく解説。

orthodoxなダイレクト四間飛車の出だし。
藤井先生は、▲1六歩と端を受けない。
受けると△2四銀~△1五歩の筋が生じる。
▲7五歩としてよくある早石田の変化に収束するかと思えたが・・・

7筋の歩を交換して8筋に飛車が回ってみると、7筋の歩を銀で交換した角交換振り飛車のよくあるpattern。柔軟な発想は、升田賞に相応しい。


「終盤はギリギリでどちらが勝っているのかわかりませんでしたが、最後は藤井先生が桂をうまく使って、後手玉を即詰みに討ち取ったのは、印象深かったです。記録係とはいえ、盤側で角交換四間飛車の将棋を先後で2局見ることができて、気持ちよく奨励会の三段リーグに臨むことができました。」(黒沢怜生五段)


角交換振り飛車には地下鉄飛車