将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【角交換振り飛車】(その2)

黒沢怜生五段(当時)の△8二角

本田vs黒沢(第三回アベマトーナメント、チーム三浦「ミレニアム」対チーム広瀬「大三元」)より取材。


9筋位取りからダイレクト向かい飛車にするのは流石に危険と判断したのか、角交換四間飛車となる。
そこで△6二銀と囲って△3五歩~△3四銀が飛車先逆襲を狙った構想。
△3四銀に先手は飛車先の歩を交換したが、これが後手の待ち受けるところ。
△2三金▲2八飛に△2五歩~△3三金△2二飛と逆襲された。
6二銀型が▲3一角の筋を防いでいる上、△7一金とエルモ囲いが堅い。
そして△8二角の自陣角が厳しかった。

黒沢怜生六段の△5四角

『将世2022.6号』に「豪快!角交換四間飛車 最前線」という戦術特集が載った。
講師は、藤井猛九段の角交換四間飛車を継ぐ黒沢怜生六段。
角交換振り飛車のおかげでプロに成れたという誰からも愛される好人物。
何年か前の第43期棋王戦では、黒沢怜生五段(当時)が、この得意戦法を用いて敗者組から勝ち進んだ。
惜しくも挑戦者決定戦で永瀬拓矢に敗れて挑戦はならなかったが、十分に角交換振り飛車の優秀性と面白さを示した。


角交換振り飛車は、角打ちのセンスを問われるが、対佐藤天彦九段戦で見せた△5四角に感心した。 
ちなみに角交換振り飛車は、このような筋違い角から打開を図ることが多い。

下の記事で「角交換振り飛車には▲5六角」と記した。
形は違うが、図の角打ちは好打。
▲3四角と歩を取った後、▲5六角と引いて3筋の歩を伸ばして桂頭を攻める狙い。
後手が△5四歩と突いていないので、安心して打てる。


黒沢五段(当時)は△4二金と受け▲3四角に対し、5四の空間が空いているのを利用して△5四角と打った。
覚えていて損のない角打ち。


以下▲5六角なら△3六角▲3四歩△2五桂▲2六飛△3五歩で先手の攻めは不発。


実戦は▲3五歩としたので△4五桂▲5六歩△3三金と角を捕まえることができた。
形勢は互角。


黒沢怜生六段の△1二角

敗者組決勝では三浦弘行九段が、「ゴキ中殺し」の序盤作戦を見せた。


初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △4二銀
▲6八玉 △5四歩 ▲3三角成 △同 銀 ▲5三角 △4四角
▲同角成 △同 歩 ▲4三角 △3二角 ▲同角成 △同 金(図) 

図となると3三の銀と3二の金が重たい。4四の歩を突いていなければ△4四銀と活用できるのだが△4五歩~△4四銀としても形が良くならない。
この作戦は、ゴキ中使いには効果的。


図からの指し手
▲4八銀 △5二飛 ▲7八玉 △6二玉 ▲5八金右 △7二玉
▲6六歩 △8二玉 ▲8八玉 △7二銀 ▲7七桂 △5一飛
▲6五歩 △3五歩 ▲7八銀 △3四銀 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △2三銀 ▲2八飛 △3三桂 ▲4三角 △同 金
▲2三飛成 △3四角 ▲2二龍 △1二角打(図)


途中の▲4三角は強手。
▲2四歩△3四銀▲2三角と打ち込むのは、△2三同銀▲同歩成△2七歩▲同飛△4五角があって成立しない。
しかし、本譜の進行を反省すると、▲4二角の方が良かったかもしれない。
 

図の△1二角打は、二枚角で敵陣を睨みながら△2一飛を狙った、気持ちの良い角打ち。


ここで三浦九段は▲6四歩△同歩▲6二歩と攻めたが、▲6四歩△同歩▲6三歩の攻めも有力だった。
△2一飛は危ないので△2一歩と受けるが、▲1一竜として後手は飛車の活用が難しい。


実戦は狙いの△2一飛が実現した。
飛車を敵陣に打つと、二枚角と合わせて強烈な破壊力だ。


図からの指し手
▲6四歩 △同 歩 ▲6二歩 △5二金 ▲5六歩 △4二金引 
▲5七銀 △2一飛 ▲同 龍 △同 角 ▲3六歩 △同 歩 
▲3一飛 △5一飛 ▲同飛成 △同 金 ▲3一飛 △4一飛 
▲同飛成 △同金寄 ▲2四飛 △1二角上 ▲2二飛成 △5五歩 
▲1一龍 △5六歩 ▲6八銀 △3九飛
まで74手で黒沢五段の勝ち。


黒沢怜生六段の△6五角

初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △9四歩 ▲2五歩 △9五歩
▲6八玉 △8八角成 ▲同 銀 △2二銀 ▲7八玉 △3三銀
▲4八銀 △2二飛 ▲5八金右 △5二金左 ▲4六歩 △6二玉
▲4七銀 △7二玉 ▲3六歩 △8二玉 ▲3七桂 △7二銀
▲2九飛 △4四歩 ▲7七銀 △6四歩 ▲6八金上 △7四歩
▲8六銀 △6五角 (図)


菅井vs黒沢(王将戦)で黒沢六段は、ダイレクト向かい飛車の作戦を選択した。
角交換振り飛車を指すことも多い菅井八段がどういった作戦を見せるか注目された。

▲8六銀と9五の歩を狙ってきた先手に対し、グズグズできない黒沢六段は、△6五角(図)と局面を打開した。 
歩得できても角が負担になるので決断の一手だ。


図からの指し手
▲5六銀 △7六角 ▲4五歩 △4二飛
▲4四歩 △同 銀 ▲7七銀 △5四角 ▲4五歩 △3三銀
▲6六銀 △6三金 ▲2四歩 △同 歩 ▲5五銀左 △7六角
▲4六角  

図のように筋違い角と定番角の対抗になると、振り飛車が苦しい。
先手の▲4六角に△6二飛と受けたが、△7三銀もあった。
▲6六歩に△4三歩と打っておけば、それ以上の攻めはなく、△5四歩の銀取りが残っている。
7六の角は、銀と刺し違える覚悟だ。


△6二飛に▲4四歩と突けたため、先手の駒が躍動してきた。


図からの指し手
△6二飛 ▲4四歩 △5四歩 ▲6六銀 △4二飛
▲7七銀 △4四飛 ▲4五桂 △9四角 ▲9六歩 △7五歩
▲4九飛 △5五歩 ▲同 角 △4一飛 ▲9五歩 △8五角
▲8六銀 △7六角 ▲7五銀 △4四銀 ▲6四角 △同 金
▲同 銀 △4八歩 ▲2九飛 △4五銀 ▲7三歩 △同 銀
▲同銀不成 △同 玉 ▲6五銀打 △同 角 ▲同 銀 △3八角
▲7四歩 △6二玉 ▲3二角 △2九角成 ▲4一角成 △5二銀
▲6四銀 △4一銀 ▲6三飛 △5一玉 ▲5三銀成 
 

「助からないようで助かっている」
一見すると先手の攻めが決まったように見える局面。
しかし、▲5三銀成の前に▲7三歩成△同桂を利かせてるべきだった。
△6二銀と受けられ▲4三歩に△3一角として後手玉が寄らない。
将棋の厳しさを思い知らされた。


図からの指し手
△6二銀
▲4三歩 △3一角 ▲4二歩成 △同 銀 ▲同成銀 △同 角
▲2三飛成 △7六桂 ▲7七銀 △6八桂成 ▲同 金 △3九飛
▲6九桂 △7六歩 ▲4三歩 △7七歩成 ▲同桂左 △6四角 

しかし、菅井八段もしぶとく攻めをつなぐ。


図からの指し手
▲4二金 △同 角 ▲2一龍 △5二玉 ▲4二歩成 △同 玉
▲6一龍 △5一金 ▲5二金 △同 金 ▲3一角 △4三玉
▲4四歩 △同 玉 ▲2二角成 △5三玉 ▲6五桂打 


▲2一竜に合駒した方が明解だったが、上に逃げたくなるのは当然の心理だ。
一手の緩みも許されない菅井八段は、金を犠牲に馬を作って包囲網を築く。
勝ちになったか? 

図の局面で、△6四玉と逃げておけば、先手玉に△6九飛成からの詰めろがかかっていた!
しかし、人間が読むのは困難。
△4三玉と逃げたため、先手が勝勢になった。


図からの指し手
△4三玉
▲2一馬 △3二銀 ▲同 馬 △同 玉 ▲5二龍 △2三玉
▲4三龍 △3三金 ▲3二銀 △1四玉  

図は、難解な局面だが先手勝ち。
金を取る手、銀を取る手、1六歩と突く手が浮かぶ。


実戦は▲1六歩だが、金を取っても、銀を取って△3二金に▲3四竜としても先手が勝っていた。


▲1六歩 △2五玉 ▲4五龍 △2六玉 ▲4八龍 △1七銀 
▲2八歩 △同 馬 ▲同 龍 △同銀不成 ▲4八角 △3七金 
▲3九角 △同銀不成 ▲1七銀 △3六玉 ▲7三歩成 △同 桂 
▲同桂成 △同 銀 ▲5三飛 △2七玉 ▲3三飛成 △3八玉 
▲7三龍 △2五桂 ▲2九金 △同 玉 ▲1八銀 △3八玉 
▲4三龍 △4七歩 ▲2九金 △4九玉 ▲3九金 △同 玉 
▲2八銀打 △4九玉
まで180手で後手の勝ち

ザ・サバキ

南芳一九段vs田中悠一五段(C級2組順位戦)より取材。
角交換向かい飛車に▲7七角と打ち、△3三角と合わせたため、図の局面となった。

図の▲5六歩と動いたのにセンサーが反応し、△5二飛と反発。
そこで軽く▲2四歩の突き捨てを入れようとしたが・・・
手抜きで△5六歩が振り飛車らしい捌き。
▲5六同銀△6五銀▲3三角成△同桂▲6五銀△同歩▲2三歩成△2七歩▲1八飛△6九銀▲5七歩△4五桂(図)

▲2四歩では▲5五歩△同銀▲5七歩なら安全。



将棋 棋譜並べ ▲南 芳一九段 vs △田中 悠一五段 第76期順位戦C級2組4回戦 「技巧2」の棋譜解析 No.612


角交換振り飛車には▲5六角

図の後手は、菅井流の「うっかり三間飛車」。
「ゴキゲン中飛車にするつもりが、うっかり飛車を3筋まで振ってしまった」みたいなところから名づけられた。
通常の角交換振り飛車と違って、銀を5三に活用できるのが利点だ。
余談だが、ゴキゲン中飛車に対しては丸山システムが有効と言われたことがある。
それは、この▲5六角の筋違い角の構想があるからだ。

図の▲5六角で既に先手の佐々木七段が指しやすい。
後手の羽生九段は桂損を甘受して局面を収めた。
王者の貫禄だ。

羽生九段のここからの手作りが巧い。
佐々木七段は、▲同飛は△1五角が嫌なので▲同桂取ったが、これこそ羽生九段の待ち受けていた罠だった。
△2七銀▲3九飛△2八銀不成▲3八飛に△1五角が「技あり」。
それにしてもこんな狭い局面で巧く手を作るものだ。

しかしそれから佐々木勇気七段が力を発揮する。
二枚角から▲6六桂と使いにくい角と桂という駒で手を作っていく。
△7三銀▲7五歩△同歩▲8五歩に△同歩と取ったが、△5二金として▲8四歩に△8五香を用意した方が良かった。




居玉大模様作戦

私の実戦から

アマ名人戦地区予選二局目で、初戦を落とし後がない一局。
後手の私は、△9四歩と端を打診した後、ダイレクト向かい飛車に組んだ。
相手は9筋の歩の突きあいを生かそうと、居玉のまま8筋を伸ばしてきた。
若者らしい意欲的な作戦だ。
私は、居玉の今がチャンスと△2四歩▲同歩△同銀と仕掛けたが、下図の局面で悩んだ。 

予定は△同桂だったが、例の角打ちにどう対処するか?

△2五銀▲3四角△3二金▲2三歩△2一飛▲2五角△2三飛▲2六歩△2五桂▲同歩が考えられる進行だが、どうか?

自然に香取りに△8八角打ちとすると、▲2四歩△2一飛▲2三歩成(下図)と飛車先を逆襲される。 

と金を放置する手があった

図以下△同飛▲同飛成△同金▲7五桂までを想定すると、相手の居玉の方がこちらの玉より堅く思えてきた。

金銀が集結している居玉に対し、囲ったこちらの玉は▲9五歩△同歩▲8四歩などと裏面から攻められると弱い。

「AIがバランス型を評価するのはこういうことか!」と急に自信がなくなった。


しかし、後に検討すると、図で2三のと金を放置して△9九角成とすれば後手が指せると分かった。

いわれてみると、歩切れの先手には思わしい攻めが全くない。

例えば▲2二銀△同金▲3二とには、今入手した香を打つ△2三香が激痛。

愕然とした。

弱気に強気で返される

実戦は弱気になって△3三同銀。

原型は、弘文社刊の升田幸三九段『升田の向飛車』「2.新手で勝つ」(対塚田正夫九段戦)に載っている▲5六歩型向かい飛車の升田新手で、「▲7七同銀は新手である。▲7七同桂と応じても有利という確信はあるが、この7七同銀も成立する手と、前から考えていた。(升田)」とある。

形は違うが、△3三同銀は経験もあった。


以下△2三歩を予想し、▲4二飛の予定だった。

右桂を活用するため直ちに▲3六歩とするのは△5五角があるので、上図のように▲4六歩とするくらいだが、△3五歩と桂の活用を阻んで後手が指せる。

△3五歩では△5四角と飛車頭を狙う手も考えられるが、▲3六歩から右桂を活用するのが急所で、先手作戦勝ちになりやすいと思う。 

しかし、相手は強気に▲2二飛成と飛車交換に応じてきた。
意表を衝かれたが、最善の応手だった。
△2二同銀▲8四歩△同歩▲9五歩となって取れば▲9二歩△同香▲6五角と裏面から攻められると、何のために玉を囲ったのか分からない。


▲9二歩では単に▲6五角△2五飛▲9二歩(図)という手順でも、先手が良い。 

私は、▲9二歩△同香という展開は、▲6五角以外に▲9一飛もあるので勝てないと判断し、角打ちの防ぎも兼ねて△2五飛と攻めた。


▲9五歩に手抜きで攻め合うという判断は正しかったが、手段を間違えた。
先手にとってみれば、右辺から攻められても左辺が広い。
正着は、△8八角と根本の香を狙う手だった。
▲7七角と合わされると意味がないようだが、△同角成▲同桂(▲同銀は▲9四歩に△9八歩と返される。)△2八歩▲9四歩△2九歩成▲9三歩成△8六桂と左辺から攻める。


しかしそれでも形勢は先手がやや指し良い。
強気の飛車交換が好判断だった。


好事魔多し

しかし、相手も形勢を悲観していたようで、図の局面となっては棋勢好転。
と金を作られたものの先手で▲4六香が入り、先手玉(の寄せ)も見えてきた。
ノータイムで△5六角成としたが、危険。
▲8三角という絶好打があって逆転するところだった。
図の局面から正着は、△4七角成。
次に△6七香成という必殺手がある。


実戦は▲7五桂だったので事なきを得た。
といっても6四の香が動けば▲6四歩が生じるので悩ましい。
安全勝ちを探して再び大長考となった。

安全勝ちを願うと、反っておかしくなるのが将棋というゲーム。
上図の▲6五桂が必死の勝負手で、訳が分からなくなった。


やはり危地に踏み込む勇気が必要だった。
初戦の相手の優勢になってからの隙のない指し回しが印象に残っていて、真似ようとしたのが過ちだった。
勝負に勝ったものの実力不足を痛感した。

▲6五角打ちの誘惑

△3二飛戦法と端歩の関係

山﨑vs菅井(王座戦)でのこと。後手の菅井八段が端歩を受けた手に山﨑八段は意表を衝かれた。
▲3三角成△同銀▲6五角と打ち△5五角には▲9七香と逃げて角の成りが受からないので端歩を受ける手はないと思っていたからだ。
しかし、以下△9九角成▲7八銀△4四馬▲8三角成で先手が歩得するものの△8二飛▲6五馬△6二銀▲4六歩 △7四歩▲4七銀 △5四馬▲同馬△同歩▲7九金△5三銀▲8八金△6二金▲1六歩△7三桂▲5八玉△3二金▲3六歩△5二玉▲7七銀△8一飛▲3七桂△6四銀▲4八玉△4四銀▲7八金△1四歩▲6六歩△3三桂▲5八金△8五桂などと進行すると後手が良い。
先手は形が悪く修復困難なのだ。
そんな事情から山﨑八段は角打ちを断念した。
甘い誘惑に乗ってはいけない。


なお、菅井八段の予定は、▲3三角成に△同桂だったのかもしれない。
▲2四歩△同歩▲同飛には△3一金とする。


ド素人中飛車の罠

初心者のような、四手目いきなり△5二飛。
序盤早々悩ましい局面になった。
角交換して▲6五角という手段がたちまち浮かぶが、いったい誘いの隙だろうか?


図からの指し手
▲2二角成 △同 銀 ▲6五角 △3二金 ▲8三角成 △7四角 
▲同 馬 △同 歩


先手は8三の歩を取って歩を得したが、意外にそれを生かすのは難しい。
後手は△8二飛と居飛車に戻す予定で、歩損でも飛車が直通しているのが大きい。
▲8八飛としたいが、2七の空間が空いているので角を打たれる。
それに▲3六角とすると交換して△5五角があるし、▲8三角と打っても△7二飛や△5四角成▲7四角成△7二飛などと反撃される。
角打ちは見送ってゴキ中を相手にした方が自分の土俵で戦えそうだ。
皆が皆、藤井聡太というわけにはいかないのだから、分相応に指すことも大切な心構えだ。
繰り返すことになるが、甘い誘惑にはくれぐれもご注意を!


アマチュア研究で覆った常識

図の▲6五角は△4五桂の反撃があって成立しないというのが今までの常識。
▲9六歩△9四歩の交換があれば△4五桂▲4八銀△5五角に▲9七香があるので先手良し。ただし、それでも△9九角成▲7八銀の後、△4二飛▲8三角成に△5七桂成から△8八歩があって難しいというのが私の認識だった。
ところが将棋系youtuberほっしーこと星田雅弘さんという元奨励会のアマチュアの方が、この▲6五角を用いて加古川清流戦アマチュア選抜大会で優勝。
昔の常識は当てにならないというという好例。



【第9期加古川青流戦アマチュア選抜大会 決勝戦 棋譜解説】実戦に生かせるソフト研究とは?

いわゆる「レグスぺ」

初手からの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲6八飛 △1四歩 ▲4八玉 △8四歩
▲3八玉 △4二玉 ▲2二角成 △同 銀 ▲8八銀 △5二金右
▲7七銀 △1五歩 ▲2八玉 △3二玉 ▲1八香 △6二銀
▲1九玉 △5一銀 ▲2八銀 △8五歩 ▲5八金左 △4二銀
▲4八金寄 △3三桂 ▲3九金 △2一玉 ▲3八金寄 △3一銀右
▲8八飛 △3二銀(図)      


角交換四間飛車からさらに穴熊にする作戦は、この戦法を得意としていたある学生強豪の渾名から「レグスぺ(レグホンスペシャル)」と呼ばれる。


見るからに堅そうな先手陣に、後手もミレニアムのような囲いで対抗する。
囲いの金銀の枚数では後手の方が多い。
進展性のない先手は図から▲8六歩△同歩▲同飛と交換を挑んだ。


図からの指し手
▲8六歩 △同 歩 ▲同 飛 △同 飛
▲同 銀 △4五角 ▲8二飛 △7九飛 ▲7七銀 △6七角成
▲8一飛成 △8九飛成 ▲同 龍 △同 馬 ▲8一飛 △9九馬
▲8八銀 △8九馬 ▲6四歩 △同 歩 ▲9六角 △5一飛
▲同飛成 △同金引 ▲8一飛 △3一香 ▲9一飛成 △8八馬
まで60手で後手の勝ち



『角交換四間飛車で勝つための24の心得』(安用寺孝功)

著者の安用寺孝功六段は、14歳のアマチュア時代にアマ名人戦の決勝まで行った。
残念ながら優勝は逃したが、同じく中学生で準優勝した塚田泰明九段の再来と騒がれた。
名人を獲得したのは、竹中健一さん。当時、20歳の青年。奨励会を1級で退会したばかりで、羽生・森内と同期入会だった。
幾星霜を経て、現在の竹中さんは、詰将棋選手権解答番付の上位者で、変わらず高い棋力を誇っている。
再度のアマ名人に挑む様子をNHKの「将棋フォーカス」に取材されたこともある。
少し前、竹中元名人とお会いする機会があって、非常に実戦的な名著と、この本を紹介したところ「買って読んでみます」と気持ちよい言葉が返ってきた。
今では、kindle unlimited会員なら無料で読むことができる。
何てお得な。


安用寺本に書かれた様々な心得の中に「銀冠には立石流」とある。
今回のテーマは、立石流だ。

上図は、片上vs黒沢(王将戦)だが、▲3六歩が大悪手。
△5五角▲3七銀△2五桂で将棋が終わった。
森下九段も同じ筋をNHK杯で食らったことがある。
その将棋は、▲3七銀とせずに▲3九銀とし、逆転勝ちした。


下図も立石流特有の嵌め手。

△4六歩▲同歩△4八歩で一丁上がり。