将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【詰将棋】手筋と詰め上がり形を分類してみる

捨て駒のロジック

詰将棋では駒を捨てることが多い。
捨て駒によってどのような効果が期待できるのか?
①守備駒が移動する→弱体化・無力化(打歩打開の場合は守備駒の強化)
         →玉の退路封鎖
         →質駒になる(質駒づくり)
②玉が移動する  →玉を危険地帯へおびき寄せる
③邪魔駒消去(発展すると「駒の打ち替え」という高級手筋になる)   

以上の5つが捨て駒の効果。.
手元にある「中田章道短編詰将棋代表作」で実例を見てみよう。

第5番

初手は▲1三銀。

△同玉△1五玉とも簡単に詰むので△同香と取るしかないが、▲2三飛と打って1三の香が質駒になっているため△1五玉とできない。

▲1三銀は「質駒づくり」の捨て駒だった。

以下△3四玉だが、▲2五飛成と「邪魔駒消去」で詰む。


第13番 

これも▲2五銀△同とと質駒にしてから▲2三飛の捨て駒。

△同歩と退路を封鎖してから▲3四竜△同玉▲3五銀とピンメイト(角の威力で玉がピン止めされている。「透かし詰め」)で詰む。


第30番 

「守備駒の無力化」の問題

▲2四香△1二玉の後、▲5二竜が「焦点の捨て駒」。

複数の守備駒にアタックしてどちらかを無力化する手筋。

△同竜に▲2三金△2一玉▲4三馬とこれも「守備駒の無力化」。

取っても合駒しても竜は無力化する。


実戦の捨て駒を見てみよう。

図は、当時話題になった藤井聡太の捨て駒(対松尾歩「竜王戦」)だが、目的は、退路封鎖。 

図は、最近の藤井聡太の妙手(対村田顕弘戦)だが、目的は玉の退路を開けた詰めろ逃れ。

取ると守備駒が無力化するため△5九金から詰む。 

図は、棋聖戦第二局の佐々木大地の妙手。
これも取ると玉の退路が開き▲7八銀と飛車を取って勝ち。

取らずに△1二玉でも▲7八銀。角の働きで自玉の詰みが消えている。

このように実戦では受けの捨て駒も多い。


解けない時のヒント

  • 手順前後に注意
  • 金は止(トド)めに使え・・・角・銀・桂・香などの止めが盲点になる。
  • 玉の逃げ場に捨て駒(退路封鎖)・・・逆モーションの攻めが有効
  • 大駒のリーチを生かせ
  • 不成に好手あり
  • 両王手(開き王手)で決めろ
  • 質駒に目をつけろ
  • 桂は拠点作りに
  • 金銀の枚数を意識する
  • 飛車のサンドイッチ
  • 邪魔駒消去
  • 盲点となる、俗手・ソッポ行き
  • 守備駒を呼びよせ
  • 守備駒を無力化する焦点の捨て駒
  • 移動合い・中合い・捨て合いの受けを見落とすな


感覚的に捉えていた詰将棋の解き方も、言語化することによって理解が深まる。
実際の詰将棋作家は、チェスのプロブレムの概念も取り入れて、様々な概念を言語化している。
曰く「ピンメイト」さらに「セルフピン」
曰く「スイッチバック」さらに「ルントラウフ」
曰く「バッテリー」さらに「ロイヤルバッテリー」などと。


私の理解はまだまだ浅いが、少しでも実戦に役立てたいと思う。


大山康晴の短編詰将棋1. 第39問

2四の退路を封鎖しなければならない。
質駒に目をつけ、香でトドメ 


大山康晴の短編詰将棋1. 第40問 

銀でトドメ
1二のマスへの駒捨て(退路封鎖)は、銀でトドメの頻出手筋。 

大山康晴の短編詰将棋1.  

退路封鎖(玉の逃げ場に捨て駒)という作品は数多いが、この作品は意表を衝いていて面白い。
『質駒に目をつけろ』

大山康晴の短編詰将棋1. 第44問

『質駒に目をつけろ』とはどういうことか?
詰将棋らしく指すなら▲2二飛車成~▲3四桂と、『桂は拠点作りに』を実践したいが、上に逃げられる。
実は、見えないところに質駒があって『大駒のリーチを生かせ』で詰む。
大山詰将棋は、実戦の匂いがあって好きだ。


大山康晴「実戦に役立つ詰将棋」成美堂出版 第20問 

3三の退路を防ぐには初手の捨て駒は絶対。
『金銀の枚数を意識する』とはどういうことか?
図のように最後は頭金の連続で詰む詰将棋では、何枚の金があれば詰むか意識していれば、飛車のタダ捨てに思い至る。
基本中の基本だが、初心者には盲点になるようなので、あえて記した。

【絶 対 見 る べ き】詰将棋が解けるようになる方法【part1】


酒井克彦作23手詰 

捨て合い・中合いが登場する傑作。
伏線となる初手が11手目に結実する。
まさかあの駒が邪魔駒だったとは!


解答
▲3八銀 △1八玉 ▲2九銀 △同 玉 ▲2八金 △3九玉
▲9三角 △4八角 ▲同角成 △2八玉 ▲4九馬 △1九玉
▲2八角 △1八玉 ▲7三角成 △3八歩 ▲2八馬 △同 玉
▲3八馬 △1七玉 ▲1八歩 △同 玉 ▲2八馬

野口益雄作11手詰

詰め手筋は、邪魔駒消去&退路封鎖
詰め上がりは「吊るし桂」


柏川香悦作7手詰

詰め手筋は、邪魔駒消去
詰め上がりは、「離し飛車による合駒効かず」


堀内和雄作9手詰

詰め手筋は、駒の打ち換え
詰め上がりは、「吊るし桂」


実戦から。詰め上がり駒余りあり。
詰め手筋は、送りの手筋
送りの手筋は実戦では必修手筋だが、詰将棋では殆ど見ない。


詰将棋の手筋としては、退路封鎖、邪魔駒消去、打歩回避、合駒問題(限定合や移動合、森田手筋など)、駒の打ち換え(変換)、開き王手(両王手)、ソッポ行きや俗手・ダブリ駒など不利感のある手筋、馬鋸(龍鋸)、飛車や金のエレベーター、送りの手筋、ワンス・モア(手持ちの駒で王手した後、すぐにその駒を捨てる手筋。二上詰将棋に多く見られる。)、知恵の輪などがあるが、基本は意表を突く駒捨てにある。


南倫夫作7手詰

詰め筋は、「二枚飛車のサンドイッチ」

↑参考までに斎藤忠作9手詰。南倫夫作品と同じ「二枚飛車のサンドイッチ」の筋


詰め上がりの形で必修科目は、「一間龍」「銀と金のコンビ」「銀と飛車のサンドイッチ」「合駒効かずの離し角(飛車)」「吊るし桂」など。
一見上部に逃げられそうな広い王様でも「銀二枚と角による羽交い絞め」と「二枚飛車のサンドイッチ」の形を知っていれば、大駒の威力で捕まえられる。


伊藤果作9手詰

合駒問題。
詰め上がりは、「銀と金のコンビ」


七條兼三作7手詰

上部脱出を二枚飛車で防ぐ構造。
詰め上がりは、「銀と飛車のサンドイッチ」


↑参考までに作者不詳の15手詰。
詰め筋は、駒の変換。
詰め上がりは「離し飛車による合駒効かず」