将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【三間飛車】トマホーク・かなけんシステム・下町流他

三間飛車新時代


振り飛車に対するAIの評価が低い。
飛車を戻しなさいと候補手に挙げるくらい評価が低い。
居飛車穴熊に苦しめられた上にこの評価、まさに振り飛車受難の時代だ。
だが、プロでは振り飛車党の新四段も誕生している。
2017年当時で言えば、杉本和陽四段と山本博志四段。
この二人は共に三間飛車党。
これからの振り飛車は三間飛車かもしれない。
三間飛車といっても「コーヤン流」の▲5七銀型でなく、石田流+▲5六銀型。
金澤健一氏などのアマによる「かなけんシステム」「トマホーク」、小倉久史七段などのプロによる「下町流」がその系列。関西の西川和宏六段もそうだ。
いずれも居飛車穴熊対策として編み出された戦法。
それ以外の居飛車穴熊対策としては、佐藤和俊六段の「三間飛車藤井システム」がある。



藤井聡太が三段時代に山本博志三段の三間飛車に敗れた。
上の棋譜のように居飛車穴熊が△5四歩を突かない場合、「トマホーク」と呼ばれる玉頭銀が強烈だ。
まずは、居飛車穴熊が△5四歩と突いた場合の、アマ間では「かなけんシステム」と呼ばれていた▲5六銀の揺さぶりについて見ていく。
▲5六銀(△5四銀)には①△4四歩(▲6六歩)②△4四銀(▲6六銀)⓷△5五歩(▲5五歩)の三つの応手が考えられる。

△4四歩型は△6四銀が急所

西川和宏六段vs髙見泰地七段

図の△4四歩の他には、△4四銀や△5五歩が考えられ、後述する。
△4四歩は穏やかな対策だが有力。
後手が早目に△5三銀と上がっているのに注目。
△5五歩▲4五銀△8四飛とした場合に△5三の銀がマイナスになる変化が多い。
△4四歩型の場合、この銀が後に活躍する。
なお後手は、居飛車穴熊に組まずに左美濃にするのも柔軟で有力だ。


図からの指し手
▲5八金左△5二金右 ▲5九角△6四銀

角を引いた瞬間△6四銀と出るのが急所の一手で、次に△5五歩と押さえられたのではたまらないので▲6五歩だが、おとなしく△5三銀と引いて△4五歩を狙った。
石田流を目指して▲7五歩としたいが、△4五歩の香取りが厄介だ。
以下、▲7四歩 △同 歩 ▲同 飛 △7三歩 ▲7五飛 △9九角成 ▲7七角 △同 馬 ▲同 桂 △3三桂(△3二銀)が進行の一例。
西川六段は、▲7五歩としたが、先に▲9八香と角筋を避ける手が有力だった。
△4五歩にそこで▲9八香とし、△8六歩に▲同角と変化したが、△9九角成▲7七角△同馬▲同飛となって飛車が捌けなくなった。
まだしも先の香損の変化の方が良かったようだ。
後手が穴熊に組む途中なので陣形が悪く、振り飛車が捌け形だ。


なお、▲6五歩に△5五歩も三間飛車にとって厄介な変化だ。
 

銀を取り合った後、▲6三歩成に△5七歩成が利く。
▲5二とには△同飛がある。
▲4三金と打っても△5八と▲同金△6二飛で互角の形勢だ。


遡って▲5九角の代わりに▲7五歩とした場合も、△6四銀▲5九角△5五歩で後手が面白い。△6四銀がpointだ。


なお、△3二銀と美濃囲いを完成させてから△6四銀もよくある手順で実戦例も多い。
鈴木vs橋本(竜王戦)が一例で振り飛車の捌きが参考になる。


西田拓也vs藤井聡太

西田拓也五段は、現代三間飛車党を代表するひとり。
対藤井戦(abemaトーナメント)で、早指し戦での石田流の優秀性を示した。

藤井七冠の作戦は△4四歩。
囲いは左美濃をchoice。
先手は▲7五歩と石田流を目指す。
▲7六飛の瞬間△6四銀として後手が自信ある展開のようだが・・・

先手としては、▲5八金左と締まっていないのが気がかり。
対して後手の囲いは完成しているので強く戦いたいところ。

図の局面で▲6五桂が最善というから驚きだ。
以下△8七歩成に▲7四歩△同歩▲7三銀という露骨な攻めがある。
▲7三桂成△同歩▲7四歩という攻めは浮かぶが、この筋はちょっとした盲点。
△7三同桂▲同桂成△8四飛▲6三歩となれば先手有利だが、遊び駒に働きかけるので人間としては気が引ける攻めだ。
▲6五桂に△同歩と取って△5七桂を狙われる順も気になる。


図からの指し手
▲同 飛 △同 飛 ▲同 歩 △6六銀 ▲8二飛 △8九飛 
▲6八金 

先手持って勝てる気がしない局面。
実戦は図から△9九飛成だが、△7七銀成▲同金△5七桂も気になる攻め。
しかし、以下▲5八金△4九桂成▲同銀△5七歩▲4八銀打となって、あと一押しがないようだ。


図からの指し手
△9九飛成 ▲4八角 △2四角  

5筋の空間が先手陣を苦しめる。
先の順をcareして▲4八角としたが、今度は△2四角があった。
以下▲6九歩に角切りから△5七金が鋭い。
角を逃げても△5八歩のと金作りが受からない。
そこで▲3九銀の辛抱だが、△4八金に▲同銀は△7六角、▲同金は△1五歩が厳しい。


図からの指し手
▲6九歩 △6八角成 ▲同 歩 △5七金 ▲3九銀 △4八金 
▲同 金 △1五歩 ▲8一飛成 △1六歩 ▲2六桂 △4三金 
▲1四歩 △1五香 ▲4九銀 △5七銀不成 ▲7六角 △4八銀不成 
▲同銀直 △4九角  

突然、チャンスが訪れた。
実は、ここで▲4三角成△同銀▲4一竜で先手玉が詰まず、先手勝ち。
しかし、図の危険な状態からもう一枚角を渡しても詰まないというのは、肌感覚ではありえない。


図からの指し手 
▲1三銀 △同 桂 ▲同歩成 △同 香 ▲1四桂打 △3三玉 
▲4九角 △同 龍 ▲2五金 △3八金 ▲同 銀 △1七銀
まで82手で後手の勝ち


反撃を秘めた▲6六(△4四)銀

藤井聡太四段vs大橋貴洸四段

先の△4四歩型は次の△6四銀の活用を見て有力だったが、△4四銀(▲6六銀)と銀を活用するのも積極的で有力な作戦だ。
藤井四段vs大橋四段では、△3六歩▲同歩△4五銀と図の局面を迎えた。


後手が△5一角とする前に▲5五銀ぶっつけが成立すると面白いが、△6五銀▲4四銀△2二角で▲2四歩に△4二飛(△3四飛)の銀取りが厳しい。
かといって先に▲2四歩と突き捨ててから▲5五銀とぶつけるのは、△4三銀と引かれて▲2四歩が指し過ぎとなる。
また、▲5五銀とぶつけてから▲2四歩は、△同角と逃げられる。


このように▲5五銀が成立しないのでは、▲6六(4四)銀型自体が面白くないようだが、この形は▲2六飛を省略して▲5五歩と平凡に銀取りに突いて中央を狙うのが急所。
△4五銀に▲8六角が好位置で、仮に△3六歩▲同歩△同銀と仕掛けてきたなら▲2四歩△同歩(△同角▲2二歩)▲5四歩△同歩▲2二歩の反撃がある。


したがって三間飛車側としては、どこかで△6四歩の備えが必要だ。

3筋を守った▲2六飛に、図のように△3六歩▲同歩△4五銀と足早な攻め。
次に△3六銀としても▲3三歩の反撃があり、△3六飛は少し乱暴だ。
△3四飛~△3三桂としてから仕掛けを狙うのが良くある順だが、4九の金が浮いているのに目をつけたものか?


しかし、先手の具体的な指し手も難しい。
▲2四歩△同歩▲7五銀は△2二飛で忙しい。
狙いの▲4四角も△3三角とぶつけられて効果なく、先手の飛車の位置が悪い。
普通なら軽い気持ちでする飛車先の突き捨ても、局面によっては指し過ぎになる。


ソウタは非凡な手を見せる。
図から▲3五歩と只捨てしたのだ。
以下△3五同飛に▲6八角と飛車取り。
以下△3六飛▲同飛△同銀▲3一飛△2六飛と進行した。


△3六飛と交換されるてみると上図から▲6八角△3六飛と進んだ勘定だが、▲3五歩△同飛▲6八角の手順は、後手に△3六銀や△5六銀の変化を与えない好手だった。


最後の△2六飛は見えにくい手。
△3三桂と跳ねるのが自然だが、▲3四歩で先手有利だ。


△2六飛に対して▲3九金と受け、△4七銀成にも▲3八歩の辛抱。


▲3九金に代えて▲1七桂と逃げるのは、△2九飛成からの取り合いなら桂を取った時の竜の位置が悪いので得だが、△3三桂と逃げられると▲3四歩△4五桂▲3三歩成に△4七銀成となり、と金はできたものの桂の働きが大差だ。


▲3九金に代えて▲2一飛成△2九飛成▲3九歩△1九竜▲1一竜と桂香を取り合う変化もあった。
▲1三角成とできれば前の▲6八角の顔が立つ。
▲3九金と逆方向に向かうのは形勢が思わしくなく、粘りに行ったものか?


しかし不利になった時の粘りも強者の素質だ。
その後も▲2八飛の自陣飛車で相手の無理攻めを誘い、最後は大差で勝った。


西尾明七段vs黒田堯之五段

上記の通り、△6四歩は必要な一手。
これを見て▲2六飛とするのが藤井vs菅井(王将戦第二局)で見られた手法。
この後、菅井八段は、ダイヤモンド美濃に囲い、△6二角と遠く飛車に狙いをつけたが、藤井王将が△7四歩に対して▲7五歩と仕掛け、居飛車穴熊ペースになった。


黒田五段は、この将棋を踏まえて△3三角と活用した。

次に△4四角の狙いが見えるので、▲1五歩と飛車の活動範囲を広げたが、黒田五段は△4五銀▲同銀△同歩と積極的に仕掛けた。
次に△6六歩があるので▲5九金と寄りにくい。
▲5七角や▲7七銀打には、前述の△4四角や△5四歩~△5五歩という手段がある。
西尾七段は、▲7七角と目障りな角を交換しようとしたが、△同角成▲同金となると、囲いが乱れ、振り飛車ペースになった。







今期の竜王戦で際立った活躍をしたのが梶浦宏孝五段。
振り飛車党の師匠と違って緻密な序盤作戦で知られる居飛車党で、数多くのプロを輩出した「蒲田将棋クラブ」で鍛えられた、誰からも好かれる真面目な好青年だ。

上記のように▲2六飛と備えても結局飛車交換されて居飛車穴熊未完成のまま戦いになると面白くなかった。
そこで梶浦五段は▲2六飛を省いて玉を固めた。
しかし△4五銀とやんちゃな銀が5六の歩を狙ってきた。
▲2六飛と受けるのでは△1五角▲1六飛が耐えられない形だ。
図の局面から梶浦五段は▲5七銀と受けた。
一度上がった銀を引くのでは、利かされで弱気でないかと思われたが、▲4四角が実現して先手有利になった。


▲5七銀に△3四飛と受けておけばこれからの将棋だった。
銀が窮屈なようだが、次に△3三桂と跳ねると△2五銀の余地があるので大丈夫。


強気の△5五歩型

△5五歩が居飛車穴熊の最後の切り札である。
「かなけんシステム」では△5五歩突きに対して▲4五銀△8四飛▲6五歩とするが、△8六歩▲同歩△5六歩と明るく攻めて居飛車優勢。
5筋突きに対するもう一つの作戦は「下町流」で、▲4五銀△8四飛に▲5八飛とするのが作戦の骨子だが、①△3二金▲5六歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△8八歩▲5四歩△5二金▲8八角△8六飛▲7八金△8八飛成▲同金△6七角は激戦。②△4二角が最善で、▲6五歩に△3二金として▲5五角には、△3三角、▲5六歩には△3三桂と使い分けるのが巧妙で振り飛車苦戦。


これを覆したのが杉本和陽四段である。

上図は、三間飛車党の課題局面。
「かなけんシステム」では▲6五歩に好機に△8六歩▲同歩△5六歩と決戦されたり、△3五歩と銀挟みを狙われたりして苦戦していた。(ただし、▲2八玉~▲6五歩~▲6八飛とすると、銀はただでは死なないが。)
ここで杉本流は、▲8八飛である。
この手は、先の△5六歩の筋を緩和しながら、次に▲8六歩という積極策を狙っている。
先の佐々木大地戦のように5三に銀があれば格好の目標だ。
杉本流三間飛車は、三間党にとって心強い味方のようだ。

▲5六銀としないで▲7五歩と石田流を目指すと・・

小倉久史vs渡辺明

▲5六銀を省いて▲7五歩から石田流を目指す順は、昔よく指されていた。
まずは石田流の成功例。

菅井竜也vs永瀬拓矢

▲5六銀を省くのは、居飛車穴熊に十分に組まれて損。
菅井vs永瀬(NHK杯)では、▲7四歩からの飛車先交換を許してひたすら居飛車穴熊を組んだ後に△6二角~△6四銀と反撃されると、△7五銀を避けて▲7六歩と謝った。
三間飛車にとって手損だけ残り、ツラすぎる展開だ。
その後、手得を生かして△4四銀型を構築し、再度の▲7五歩に対しては、△7四歩▲同歩△8六歩と強気な仕掛けで居飛車穴熊ペースだ。
一時はお互い竜を自陣に引き合い、長期戦の様相になったが、永瀬叡王は手順に竜を△3二に持っていき、△3五の香とあわせて二段ロケットをスタンバイ。菅井七段は竜取りに▲6五角と打ったが、△4三金と受け▲5三金の金取りは相手してもらえず、△3七香成からロケット発射されると、あっという間に美濃囲いが崩壊した。
「堅さを可視化したのが居飛車穴熊」という言葉が頷ける。


阿部健治郎vs阪口悟

石田流は、組みあがりまで手数がかかる。
下図のように居飛穴が足早に仕掛けられると、玉形が整わないまま戦いに引きずり込まれる。

仕方なく△4四銀と受け、▲2六飛に△5四歩▲4五歩△同銀▲4六銀に△5三角と△3六歩を含みに活用した。
こうなると石田流も一応満足がいく展開だが、途中▲2四歩(下図)の仕掛けが成立した。

単に▲4六歩と銀取りに行くのは△3六歩▲4五歩△3七歩成▲4六銀△3六とで失敗だが、先に▲2四歩と突き捨てておくと、△3六との瞬間▲2三銀の切り返しがある。
そこで△2四同歩▲4六歩に△2五歩としても▲1六飛でやはり銀が助からない。


してみると居飛車穴熊の仕掛けは成立している。


千田翔太vs杉本和陽(NHK杯)

図から△5四銀とするのは、▲6五歩△3四飛▲6八角△4五歩▲6六銀とされると△3三角にも▲7七桂で銀の活用が難しい。
実戦は△5四歩だが、▲8六角とぶつけられると△5一角と引き下がるしかなかった。

ここで△4二歩がソフトが発見した妙手。
▲同銀成とされると何をやっているかわからないようだが、そこで△4一歩が継続の妙手。
実戦は△5一香。

ここで▲6三歩としたが、▲4二竜△5三銀▲6三歩が正しい手順だった。
△同銀には▲6一金なので△6一馬だが、▲3二竜くらいで先手良し。

少し進行した図の局面でも▲4二竜が良かったが、▲4四馬と誤り、△5三銀と粘られる。
馬を逃げてる状況でないので▲2一竜△4四銀▲6三歩成△7一金▲7二と△同玉(下図)と進行した。

ここで▲6三銀という決め手があった。
△同玉に8二角が継続の妙手で寄り形に。





トマホークのルーツとなる青嶋vs羽生

アマ間では、「かなけんシステム」の対策として△5四歩保留が有効とされていた。
ところが冒頭の山本vs藤井戦に見られるように、△5四歩保留には「トマホーク」が炸裂する。
トマホークのルーツとなる将棋は、藤井システムと同様、四間飛車にある。
例えば「四間飛車名局集」の小林健二vs平藤真吾などがそうである。
下図の将棋も四間飛車だが、トマホーク戦法と同じ狙い。



開始日時:2017/06/28 0:00:00
棋戦:銀河戦
戦型:四間飛車
先手:青嶋未来 五段
後手:羽生善治 三冠


▲7六歩 △8四歩 ▲7八銀 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲6八飛 △4二玉
▲4八玉 △3二玉 ▲6七銀 △8五歩 ▲7七角 △3三角 ▲5六銀 △2二玉
▲1六歩 △3二銀 ▲3八銀 △2四歩 ▲3六歩 △2三銀 ▲3七桂 △5四歩
▲5八金左 △5五歩 ▲6七銀 △3二金 ▲4六歩 △6四歩 ▲3九玉 △6三銀
▲4七金 △5四銀 ▲5六歩 △同 歩 ▲同 銀 △8六歩 ▲同 歩 △7四歩
▲4五銀 △7五歩 ▲5四銀 △7六歩 ▲8八角 △8七歩 ▲7九角 △7七歩成
▲同 桂 △7六歩 ▲4五桂 △7七歩成 ▲3三桂成 △同 桂 ▲5八飛 △8八歩成
▲3五歩 △7九と ▲3四歩 △同 銀 ▲3五歩 △2三銀 ▲3四銀 △6七と
▲5六飛 △3一桂 ▲4一角 △6六と ▲同 飛 △3七歩 ▲同 銀 △7五角
▲6七歩 △2五桂 ▲4八銀 △3三歩 ▲2三銀成 △同 桂 ▲7六飛 △8四角
▲8五歩 △3五桂 ▲8四歩 △4七桂成 ▲同 銀 △3五桂 ▲5六角 △3一玉
▲3二角成 △同 飛 ▲2三桂 △2二玉 ▲4三銀成 △2八角 ▲4八玉 △3七角成
▲5七玉 △4七馬 ▲同 角 △同桂成 ▲同 玉 △6五角 ▲5六歩 △4三角
▲1一桂成 △同 玉 ▲2三桂 △1二玉 ▲3一銀 △2三玉 ▲4一角 △3五桂
▲5七玉 △7六角
まで114手で後手の勝ち


変化:91手
▲3八歩


変化:87手
▲3八銀 △3七銀 ▲同 銀 △同桂成 ▲2三銀


三間飛車藤井システム

三間飛車藤井システムに決定版といえる対策を編み出したのは、やはり渡辺三冠。
下の記事のように当代随一の戦略家だ。
久保王将の三間飛車藤井システム相手に入念な準備を生かして勝ち、タイトルを奪った。
居飛車穴熊を避け、ミレニアムに組み、秀逸なのは△5一の角を止めるような△7三桂。
渡辺三冠の芸の冴えを、ぜひ盤に並べて鑑賞してほしい。


蘇るコーヤン流

大野流三間飛車

大山康晴と升田幸三が兄弟弟子だったことはよく知られているが、一門の代表格は大野源一九段だった。
三間飛車の使い手で、△5三銀型を好んだ。
いわばコーヤン流の源流だ。
久保利明九段が、『大野の振り飛車』を読んで、振り飛車のサバキを身に着けたのはよく知られている。
実は、わが家にも同書があったのだが、惜しくも手放してしまった。

現在は、古書店で15,000円ほどの高値で売られている。

深浦康市vs高崎一生

早い△5三銀がコーヤン流。

△5四銀型を解説してきたが、大野流→真部流→コーヤン流と発展してきた△5三銀型は、振りミレの流行もあって流行している。

これに▲5七銀と対応するのも自然だが、深浦九段は▲6六歩と手厚く構えた。

△6四歩~△6五歩の備えとともに、△6四銀の歩越し銀に歩で対抗する狙いだ。

反面、角道が止まったので石田流に組みやすくなった。

コーヤン流+石田流が高崎一生七段の描いた構想だ。


B級2組順位戦、深浦九段の居飛車穴熊模様に対し、高崎七段は早い△7四歩。
ここから桂を活用して振りミレにするのも流行形。

△7三角が構想の第一段。
放置すれば△3六歩から香車を取れる。
これに▲1七香(正解は▲1八香。△3六歩▲同歩△1九角成ならそこで▲1七香。)としたため、△3三桂から△6二角が構想の第二段。
最後に△6四銀~△7三銀が構想の第三段。
金銀四枚の堅陣を構築した後、下図のように△3六歩と仕掛け、▲同飛には△同飛▲同歩△2五桂で有利。
最初に△7三角として香車を浮かせたのが巧妙。