将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

ソウタの棋(その1)タイトル挑戦までの軌跡

永瀬二冠との挑戦者決定戦~初のタイトル挑戦

挑戦者決定戦の相手は、AbemaTV「炎の七番勝負」で唯一人ソウタに勝った「軍曹」永瀬二冠。
永瀬二冠は、以前からVSで、藤井七段の弱点を知っている。
振り駒で先手を得た永瀬二冠は、自分の得意な矢倉戦法でなく、相手の苦手な相掛かり戦法を選択した。
下図となって、右桂を活用できた先手が半歩リードという感じ。
▲2六飛は、事前準備を匂わせる一手。
前例は▲2五飛。

この25手目の26飛が永瀬二冠の研究の一手。

本来は25飛で95歩に備えるわけで、26飛は一見このサイトのソフトのように95歩と行けそうだが、

95歩には同歩同香同香"35歩"97香成同桂と、角香交換ながら実は先手も指せるようだ。35歩と飛車のラインを開けたのがミソで、次の96飛と回る手や85香をいっぺんに受けるのは難しいという主張。後手は1歩しか持ってないからね。

なので藤井七段は34歩と応じた。

▲2六飛は、後で▲8六飛とぶつけて8七歩を咎めようとしている。
3筋の歩がぶつかっているので飛車交換は必至。
研究すれば、△3五歩までは一直線。


▲8二歩は、▲8三歩との比較が難しい。
通常は▲8三歩が筋だが、△8四飛(△8五飛)から△3六歩と攻められて緩い。
▲8二歩△9三桂▲8一歩成△同銀に▲4五桂とした局面。
4五の桂と9三の桂、8六の角と4四の角を比較すれば、先手の優位は疑いない。
問題は、具体的な指し手だが、次に▲8四飛があるので△4二銀と受け、これに▲3四飛とすれば△3三銀▲同桂成△同金▲4四飛△同金まで一直線。そして▲3一角△6二金に短考で▲7一銀とし、△5四金(△6四桂なら堅いが、桂は攻めに使いたい。)▲6二銀成△同玉▲4二角成まで進むと、事前準備が実を結び先手が指し良い。
△2六桂▲2九銀に△3六飛~△3八銀のような直接手は▲5二銀でたちまち負けになる。
ところが△3六銀と、永瀬二冠も想定してなかった手が飛んできた。

▲4八金打と受けるのが第一感だが4四飛~△4五飛打が煩い。



対稲葉戦~王位戦挑戦に向けての逆転勝ち


図の局面、ソウタは数日前の対羽生戦で類型を経験済み。
その将棋に比べると、後手が8筋の歩を突き捨てているため、先手の手持ちに歩があるのが大きいかと思われた。
しかし、ここから△6七歩が稲葉八段の研究手。▲3四歩に突き捨ての効果で△8七歩が厳しく▲同金となって先手陣が弱体化した。
△6五桂に▲同銀△同銀と銀桂交換で手番を握ったソウタは▲6三歩△7二金▲3三歩成と攻めるが、△同銀▲同桂成△同玉が最善の応接で崩れない。
次の▲3四歩では▲6二歩成△同金▲3四銀△4二玉▲5五角△3三歩▲2三銀という変化も感想戦で検討された。
成り捨てるくらいなら▲6三歩を打たずに▲3三歩成△同銀▲同桂成とした方が良さそうだが、その場合は△同金と取られ、▲6三歩は手抜きで△7六歩で負け。


また▲3四歩では▲3四桂も筋で、△同玉なら▲4二角で面白いが、△3二金▲3五銀△4四銀(△7六歩)▲4二角△同金▲4四銀△同歩▲4二桂成で難解。
さらに過激に▲3四銀も考えられ、△同玉▲6二歩成で後手の指し方も意外に難しい。どこかで▲3九飛もある。
もし▲3四銀に△4二玉なら▲5五角△3三歩▲2三銀で先手が良さそう。
▲3四銀が実戦で指せたら「伝説の一手」になったか。


実戦は、▲3四歩△4二玉に▲3三銀とぶちこんだが、△同桂▲同歩成△同玉▲4五桂に△4四玉と上に逃げるのが好手。▲5六桂△5四玉▲3三桂成に△6三玉で安全になり、▲2二成桂に△7六歩と攻めのターンを得た。

ここで▲2五飛が巧い攻めと思われたが、▲4五角の王手が有力だったようだ。
△5四銀打に▲同角が気づきにくい手で△同銀▲6四銀△5二玉▲7六銀で少し先手が指せる。
実戦は、▲2五飛△5四銀打となって▲4五角と打てなくなった。
△そこで反対側から▲8五角(下図)と王手したのが渾身の勝負手。
△同飛▲同歩と飛車を渡すと▲6五飛から後手玉に詰めろがかかる。
△7三玉なら▲7六銀△同銀▲7五飛で後手玉が危ない。
後手困ったか・・・

ここで稲葉八段は、△8五同飛と取った。危険なようだが最善手。
飛車を渡した後、じっと自陣に△6四桂と埋めたのが、ちょっと気づかない好手順。
▲6四同桂と取らせて自陣の詰めろを消し、△7七歩成▲同桂に△6八銀▲8九玉△7八銀▲同玉△6九角▲6七玉△8七角成と迫った。
△8七角成では△7七銀成と桂馬を取る手も有力だった。
非勢になったソウタは▲6一飛(下図)と凄い手つきで王手した。

この王手に△6二金打としたため▲7二桂成で難しくなった。
△6二歩合なら▲6八玉△7九角▲5八玉△6九馬▲4九玉に△2五馬が△5八金からの詰めろになっていて後手が勝ちだった。


▲7二桂成に△6一金と飛車を取ると▲7三金△6四玉▲7四金△同銀▲5六桂で詰み。
実戦は、△7八角と王手して▲5六桂を消してから△6一金と飛車を取ったが、今度は▲7三成桂!から43手詰めがあった。


△7八角では△7七銀成(△7七馬▲5八玉△6七角もある。)▲5八玉△6七角(△7六馬▲4七玉△5五桂もある。)▲4七玉と玉を安全にしてから△6一金で後手勝ちだった。


この将棋に勝って藤井七段は、三年連続で年度勝率八割越えの成績となった。

「局面、残り時間ともに追い込まれながら鮮やかな逆転劇。稲葉八段を

相手にこの立ち回りは衝撃を受けた」(行方尚史九段)


「バリバリのA級棋士相手に劣勢+残り時間切迫という状況から逆転勝利。藤井聡太伝説のワンシーンに加わるか」(瀬川晶司六段)


「秒読みであの後手玉を詰ませたのが驚愕。しかも初手が拠点と思える成桂を捨てる手で・・・・・・」(上野裕和六段)


第1問(対大橋貴洸 三段リーグ)











(解答)
▲5二と△同金▲7二飛成△同玉▲6四桂△8二玉▲8一金△同玉▲3一竜△5一角▲同竜△同金▲7二角△8二玉▲8三金△同金▲同角成△同玉▲7二角△8二玉▲8三金△7一玉▲8一角成△同玉▲7二桂成


ソウタと同時に三段リーグを抜けた大橋貴洸。
次問も対大橋戦から。


第2問(後手番)

※角の逃げるところには全て駒が利いていますよ!!


第3問

※天才増田は、次の手に驚愕する。ソウタとは以前指した事があり、まだまだ負けるはずがないと思っていた。




第4問

※入玉模様になると手が見えなくなるものだが、詰将棋で鍛えたソウタは違った。


第5問

※次の一手とその継続手は常人には理解できない。


第6問(後手番)

※次の局面からの一連の手順は忘れられない。
不器用な駒をうまく使うものだと感嘆。



第7問(後手番)

※コーヤン流三間飛車の序盤に新たな定跡を書き加えた一手。


第8問(後手番)

※賞を獲った一手

第9問

現在、後手玉は詰まない。




第10問(後手番)

※現在、先手玉は詰まない。



第11問(先手番)

図の△2六角成は、▲3四歩△4二玉と引いた時に馬が働くという読み。
しかし次の一手で思惑が外れた。△2八歩成が正解だったらしい。
一手前の▲4九金も感心した手で、普通は▲5八金と少しでも玉に近づけたいと考えるところだが、△7七歩成▲同桂△7六桂と殺到された時に、飛車の横利きを通した方が受けやすい。


対久保(竜王戦)

図は、5筋から反発した後手に▲5七銀と上がり△5五歩▲7六飛としたところ。
この▲5七銀が隙を作った手で、単に▲7六飛だった。図で△8六歩が成立、(△8七飛に▲7七銀と受けることができない)早くも後手が一本取った。


図からの指し手
△8六歩 ▲同 飛 △同 飛 ▲同 歩 △8七飛 ▲7八金 
△8六飛成 ▲6一飛 △8二龍 ▲6四飛成 △8六歩 ▲8四歩 
△6三金 ▲6六龍 △8四龍 ▲7六龍 △7四歩 ▲6六角 
△6四金 ▲7四歩 △7五歩 ▲8五歩 △7四龍 ▲8六龍 
△7三桂 ▲8八角 △4五歩 ▲同 歩 △7六歩 ▲6六銀 
△5六歩 ▲7五歩 △6三龍 ▲7六龍 △6五歩 ▲7七銀 
△4五銀 ▲4六歩 

後手の巧みな指し回しによって、先手陣は左右に分断された。
しかし、▲4六歩に銀を押し戻されてはいけない。
かといって△5七歩成は▲5八歩で次の矢がない。
△4六銀という当たり前の手は、竜で虎の子の5六の歩を取られる感触が悪く、殆ど読んでない。できれば竜はそのまま眠っていてほしい。
△4七歩か△5三竜かという選択だった。角を働かせる▲7九角に△5七歩成から△5四竜で竜が働いた。
後手の切り札は△8五桂で、▲6八金などには△8五桂と歩を補充して△5六歩と攻めることができる。
そこで久保は▲3九角と当たりを避け、△8五桂に銀を取らず桂を取った、銀を取ると△7七桂成から△5八銀されて危険と判断。▲8五同竜なら△4六銀、そこで▲6八金と中央を補強する手が大きいと見た。
しかし、△5六歩▲5八歩を利かせて△4五龍。あとは△3五歩からのコビン攻めが厳しい。△8五桂には▲4五歩と銀を取る方が良かったらしい。


図からの指し手
△4七歩 ▲7九角 △5七歩成 ▲同 角 △5四龍 ▲3九角 △8五桂 


△4五竜に▲5九桂が粘りのアーティストらしい手だが、玉が息苦しい。▲8一竜が有力だった。
△1五歩の端攻めは第一感だが、△3五歩~△5五角のコビン攻めで良かった。
端攻めの間隙を縫って4筋の屈服を解消し、お荷物の左銀を捌く。守りに打った5九の桂を6七に活用して玉の退路を確保。藤井七段の攻めをうまく凌いだ。


△4九に歩を成って▲同玉と取ったが▲同金でなくてはいけなかった。
次の△5八とと金を取った手が疑問。△2二桂が△5七とからの詰めろで勝ちだった。
そして△7八金▲5九玉に△4七桂と王手金取りに桂馬を手放したため負けになった。 △4七桂では△7九金!が最善だった。



図から藤井七段は、△5三香に勝負を賭けた。持ち金を使うと勝ち目がない。危険だがこれで耐えていると。
久保九段は、▲3二銀△同金▲同銀不成△同玉に▲3三金から手順に▲5三竜と香を取って王手ラッシュをかけるが、▲2五桂△2四玉▲1四金の筋がカナ駒一つ足りず、投了となった。
普通なら詰まなかったで終わるところだが、実は難解な詰み筋があった。
▲3二銀△同金▲同銀不成△同玉に▲6二竜と王手するのが不思議な筋。△4二銀と合駒して詰む気がしない。しかし▲同竜で詰むのだ。(△5二銀も同じ)
△6二同竜は、▲3三銀からバラして▲2五桂に①△2四玉は、▲1四金から金が二枚あるので詰み。②△4二玉は、▲3二飛から金が二枚あるので詰み。③△4三玉は、▲3三金から追い詰め。
△6二同玉は、▲3三銀△5二玉に▲6四桂で金が二枚あるので詰み。


また、△5二銀合として▲同竜△同歩の形なら△5一への退路が開きそうだが▲4三歩△5一玉に▲7一飛がぴったりで金桂が持ち駒にあるので詰み。
5筋が壁になってるのが痛い。


竜を使って寄せる方が、竜を捨てて寄せるより効率が良い感じだけに盲点だった。

「互いに好防を尽くすと、ここまでバランスが崩れないものなのか。最後、藤井玉に詰みが生じたのもドラマチックだが、すべての駒が息をしている投了図がなんとも美しかった」(髙野秀行六段)





魂の七番勝負第三局 行方尚史 八段 vs藤井聡太 四段


若手が対戦相手を指名するシステムの「魂の七番勝負」
聡太が指名したのは行方八段。
行方将棋は、人気がある。
生きるか死ぬかの激しい将棋で、見ている者を楽しませるからだ。

図から▲2四飛!!△同 歩▲2三歩△同 金▲1五桂△3二金▲5五角△4四銀▲2三桂成△同 金▲4四角


詰将棋で鍛えた行方尚史八段と藤井聡太四段の戦闘力は古今屈指のもので、両者とも相手を潰してしまうほどの力がある。
ボクシングに喩えると、ハードパンチを持ったボクサーだ。
しかもポイントを稼いで判定勝ちを目指すようなタイプではない。
互いに相手をKOする目的で、渾身のパンチを繰り出すのだ。

行方八段の飛車切りから激しい戦いになった。
一手一手が恐ろしく難解で、一歩間違えば、一気に形勢が傾く。
図から角を取れば▲5四角の王手飛車がある。
藤井四段は△7四飛と自陣に飛車を打った。
不思議な手だ。一見すると王手角取りだが、▲7七角とすると両方受かる。
しかし行方八段の顔は真っ赤になった。
以下△6六歩から攻めのターンが後手に渡り、当分は凌ぎに回らなければならない。
△7四飛は非凡な一手だった。
「この小僧めが!」


(あくまでも作者の妄想です)
行方八段の奥様にお会いする機会に恵まれましたが、山口県ご出身の非常な才媛で、お似合いの二人でした。末永くお幸せに。