将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

「刑事フォイル」の時代

http://www9.nhk.or.jp/kaigai/foyle/


TVドラマ『刑事フォイル』は第二次世界大戦中のイギリスを舞台に
陰惨な戦時中の世界に真正面から取り組んだ好作だ。
シャーロック・ホームズを産んだ国らしい鋭利な推理も見どころだが、
主人公のフォイルの老成した落ち着きと重量感はホームズとは対照的だ。
印象的だったのは、殺人を犯したアメリカ大富豪を「戦争の援助を受けるため」見逃す話。
プライド高い英国人には抵抗あるストーリーだが
アメリカ従属という現実に真摯に向き合っている姿勢がそこにある。
日本のテレビ局にはこういったドラマは作れない。


第二次世界大戦終了後のイギリスの経済状態はひどいものだった。
戦後処理のブレトンウッズ会議では切り札ケインズを起用したが、
アメリカのハリー・デクスター・ホワイトに敗れた。
1946年、イギリスの借金はGDP比238%!今日の日本の比ではない。
ところがその借金が1970年にはGDP比50%まで改善した。
彼らは決して借金を返そうとはしなかったのに。
緩やかなインフレと経済成長によって改善したのだ。


橋本竜太郎内閣が消費税増税を行った結果、
日本は失われた30年に突入した。
当時官房長官をしていた梶山静六氏は、問題ないという財務官僚のいうことを鵜呑みにしたと終生後悔し、「官僚に騙されるな、官僚は説明のプロだから」と菅前首相に語った。
現在も官僚は、「失われた30年は消費税増税と因果関係がない」と弁護している。
消費税増税がデフレ圧力を産むことは明白だし
デフレが国の借金の負担増になることはさらに明白だ。


先進諸国が借金体質から抜け出せない現状に対するピケティの処方箋は、

  • 上策は、(1%の)富裕層に対する課税を強化する。
  • 中策は、(緩やかな)インフレにして借金を目減りさせる。
  • 下策は、間接税を増税する。

というもの。
岸田首相の説く「分配なくして成長なし」だ。
不況時の緊縮財政は、風邪の患者の衣服を剥ぎ取るようなものだ。


今日の日本は、日経平均が続落し、コロナ敗戦という現実にある。
ところが、突然、財務次官が、財政緊縮を声高に叫び始めた。
新たな「失われた30年」を始めようというのか?
過去の失敗を真摯に見つめなければ将来を打開できない。


アメリカ・イギリス・ソ連、本当の勝者は?

日露戦争の陰の立役者は、諜報活動を行った明石大佐。
彼によってロシアは滅び、誕生したソ連は、それを教訓に諜報活動に力を入れた。
日米開戦の裏には、それを望んだソ連の諜報活動があった。
当時のソ連は、ドイツとの戦争に臨むために日本の脅威を取り除く必要があり、そのために日米開戦を仕組んだのだ。


ソ連の「スノウ作戦」をご存知だろうか?
スターリン政権下のソ連が、ハリー・デクスター・ホワイトに対して行った工作で、スノウはホワイトを指す言葉だ。
ホワイトは、(ルーズベルト大統領の友人)モーゲンソーの懐刀といわれた財務官僚で、ルーズベルト政権下で絶大な影響力を持っていた。


スノウ作戦は効を奏し、ホワイトはソ連のスパイとなった。
ホワイトによって「日本との緊張を取り除き、ドイツを確実に敗北させる問題へのアプローチ」という日本への強硬姿勢を取るメモが作成された。
そのメモがモーゲンソーを通じてハルの手に渡り、あの「ハル・ノート」が書かれ、真珠湾攻撃に繋がった。


結果、長い全面戦争に突入、アメリカにとって戦略的に大失敗。
他方で、チャーチル英首相は、狂喜した。
「ありがたい。大英帝国にとってこれ以上の幸運はない。」
どうしても欲しかったアメリカの参戦が実現したからだ。
しかし、後にイギリスはこのハリー・デクスター・ホワイトによってブレトンウッズで敗北することになった。
いわゆるブレトンウッズ協定だ。


ブレトンウッズで、ホワイトと対峙した英国代表がケインズ。
ケインズは、経済学者としして巷間に知られているが、大蔵省の役人。
彼の最大の関心事は、貨幣。
景気を左右する鍵を握るのは貨幣。
この貨幣に対する英米の大勝負がブレトンウッズ会議だった。


会議の結果、ドルというアメリカの通貨が世界共通通貨として認められた。
もし、ケインズの主張通り、バンコールのような独立した共通通貨を制定していれば、サブプライムローンのようなアメリカの金融政策の誤りによって、リーマンショックのような世界不況がもたらされることはなかった。


また、これを教訓とした中華人民共和国が、独自の基軸通貨を目指して、「一帯一路」をはじめとするウォンによる経済圏や、デジタル通貨による決済システムの構築に取り組んでいる。
何の反省もビジョンも持たないどこかの国より賢明だ。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか 


歴代の総理の中でも抜群の実行力を持ち、仕事師であった菅義偉前首相。
なぜ短命に終わったのか残念でならない。
一体彼に何が欠けていたのか?


自身の実力のみで頂点まで昇りつめた稀有の人物である。
派閥もなく、世襲議員でないため、地方議員から始め、人間関係も含めて一から築くしかなかった。
中華人民共和国との関係など色々噂のあった二階幹事長(当時)をずっと推し続けたのもそのあたりにあったか?


対立関係にあったのは岸田現首相。
官僚OBが多く、公家集団といわれた宏池会に属する岸田首相と、長年、官房長官として官邸主導を率いてきた菅前首相とは水と油の関係だった。
「今、日本に改革をやらないような人を総理にする余裕はないよ。やるべきことはわかったてるんだ。社会保障でもなんでも、やるかやらないかなんだ」
菅が頼みとしていたのは河野太郎だった。


史上最長の任期を務めあげた安倍元首相。
その側近だった今井尚哉らは、官僚内閣制を維持するため岸田首相を望んだ。


議院内閣制と官僚内閣制のせめぎ合い。
今後の日本の舵取りに、菅義偉は必要な人材だと思う。


廃県置藩~地方でできることは地方へ

中央集権的財政運営への懐疑


 梶山官房長官は、日本の財政について、疑問を抱いていた。貧しい時代であれば、限られた資力を一つに集中し、これを計画的に配分することが重要だった。欧米の財務当局では、国際金融部門が主流派であるのに対し、日本の大蔵省では予算を担当する主計局が中枢を握っているのも、基本的にはその発想からきている。
 ところが、世界第二位(当時)の経済大国になった日本が、依然としてすべてのカネを中央に集め、これを地方に配分する中央主導の財政運営を進めた結果はどうであったか。地方は財政がいくら赤字になっても中央からの補助金によってその場をしのげるから、自己責任の原則も、創意工夫の努力もしなくなった。中央は中央で、いくら大蔵省が財政再建を叫んだところで、財政運営を決める最後は、時の政治の決断である。
「やがて景気が回復すれば取り戻せる」
 そういう見境のない財政出動をくり返した結果、約650兆円にも及ぶ累積債務をつくってしまった。国民一人あたり、じつに500万円を超える借金を、子や孫に引きつがねばならないのである。
 だから「小さな政府」をつくり。行政をスリム化するのだ、という議論がしばしばなされてきたが、中央官庁の行革によって得られる節約効果など、せいぜい数千億円程度でしかない。そもそも中央に権限もカネも集中しているから、中央の行政機関はますます自己増殖しようとするのであって、この中央集権体制を改めない限り、本当に実のある行革など不可能なのである。(中略)


 役人個人としてはいかにものの道理をわきまえた人間であろうとも、組織の論理としては「拡大」に動く、本能的に他省庁の縄張りを崩し、カネと権限を奪おうとするから、朝から晩まで処理する仕事の大半は、「もともとある」わけではなくて、「みずからつくる」のである。したがって、一人のキャリアが生み出す無駄な仕事、それに携わる一般職員の数は計り知れない。
 官僚にとって、自省の大臣などほとんどの場合は恐くもなんともない。大臣はせいぜい一年で代わるが、自分たちはずっと霞が関の住民であるわけだから、なにかの拍子に大臣の機嫌を損ねても、ー年ばかり我慢していれば済むというわけだ。業界もそれを知っているから、大臣よりも官僚を重視する。その弊害の一例が、大蔵省の弱体化をもたらした一連の大蔵省接待汚職(ノーパンしゃぶしゃぶ)事件だった。(中略)


 抜本的な行革の面からも、制度としての地域主義が必要となる。われわれが「第三の開国」に際して真の危機感を持つならば、幕末の大政奉還によってはじまった中央集権体制を変えていく勇気をもつべきである。
 21世紀の大政奉還とは、地方に本来帰属するものは地方に返し、地方によって国が繁栄するという意識、すなわち地方の活力によって国を富ますという考え方への発想の転換にほかならない。


大下英治著『内閣官房長官秘録』第五章「知られざる梶山静六の胆力と戦略」より



未来の行政 ―― サンディ・スプリングス

ジョージア州アトランタの隣にある同市は、2005年の12月に誕生した新しい市です。人口は9万人弱の同市は、警察・消防を除くすべての行政サービスを民間企業に委託しています。これは、PPP(Public Private Partnership)と言われる手法で、官と民とが連携して事業を行うものであり、日本の一部の行政でも導入されてはいるものです。しかし、サンディ・スプリングス市にみられるような大胆な運営は他に類をみません。


同市の体制は市長1人、議員7人、市職員7人(2010年3月)。それ以外は、すべて民間で運営されています。受託企業は、競争入札によって決定した全米大手ゼネコンの子会社「CH2M HILL OMI社」(以下、OMI社)で、市の運営にあたる140人の社員は、勤務時間外の業務も厭わず、職務に当たっていると聞きました。そして、低コスト、高い品質で迅速なサービスを市民に提供するという、世界でも画期的な運営スタイルを実現しているのです。OMI社は徹底して「サービスの品質」を重要視しています。


たとえば、同社が受託した業務の中で、住民サービスの一環として、365日、24時間という年中無休のコールセンターがあります。ここでは、市民の苦情、要望に対して迅速な対応が行われているため、市民の満足度向上に寄与しているといいます。サンディ・スプリングス市では改革努力もあって、固定資産税をみると、市が課税する分については周辺都市の約半分の税率であり、税金も安く抑えられています。


以下、サンディ・スプリングス市の改革を牽引した、エヴァ・ガランボス市長との対談です。

競争が効率化を招く ―― サンディ・スプリングス市長インタビュー

「サンディ・スプリングス市は、郡に属していた地区が住民投票の結果、独立して誕生したと聞いています。
民間に行政サービスを委託した同市ですが、これは米国でも極めて特異な形態だと思います。どのようなきっかけで、こうした改革を行われたのでしょうか。」
エヴァ・ガランボス市長(以下、市長)
改革の背景としては、州や連邦政府からの補助金がなく、行政に財政的な余裕がなかったことがあげられます。こうした中、市民に行政サービスを提供していくために、新たなシステムを導入し、行政サービスをアウトソーシング(外部委託)したのです。その際、自由経済の手法を取り入れ、民間から募って公開入札を行いました。
あえば
2005年12月のスタートとお聞きしています。新たな試みであっただけに、苦難の道のりだったと思いますが、いかがですか。
市長
大きな問題はありませんでした。
幸いなことに、競争入札において、大きな企業から非常に良い価格での入札があり、効率的なサービスを提供してくれました。
問題と言えば、市民の代表であるシティ・マネージャー(議会が任命する行政実務の責任者)と、受託した企業との間で、意見の相違があったくらいです。ですが、これも話し合うことで解決しました。
シティ・マネージャーは各部門の人事を扱う権限はありません。権限は、サービスに問題があったときに、会社にクレームを言うことです。これを受けて会社が調整します。この新しい試みが成功するか否かは、受託企業と市民とのお互いの信頼関係、善なる思いにかかっています。


「なぜ民間に市の運営を委託しようとしたのか、その発想の原点を教えて下さい。」
市長
わたしたちのグループは共和党員、及び共和党支持者ですが、長い間、この市をつくろうと努力してきました。
一般企業は自由競争におかれていますが、地方政府は競争がありません。
アメリカを経済成長させてきたのは、競争の原理です。競争の原理がないと、本当の意味での成功はありません。
わたしたちのような新しい市は、新たなシステムですべて自由競争ができます。しかし、既存の市では難しく、例えば、一部の部署を外に委託するなど、部分的にやらないと、既存勢力から大変な抵抗があります。成功のための魔法の方程式は、「競争におく」ということです。自由競争を導入することにより、効率性が上がります。それによって、コストがカットされるのです。


「スタートしてから数年間経ちます。市民は、新市政の満足度をどう受け止めているのでしょうか。」
市長
沢山の声をメールでいただいています。90%以上の人が大変喜んでいます。そして、5%が「満足」との回答です。残り5%が「以前と変わらない」というNOの回答ですが、これは民営化の政策そのものに反対意見を持つ人たちです。


「市長の基本的な考え方に、非常に共感しています。
富裕層からお金を吸い上げてばらまくというの政策は、自由主義国としての競争の原理を失わせると認識しています。」
市長
私たちは共に新しい方向に前進を続けなければなりません。


「OMI社との契約は6年間であり、契約期間が終わってから、また自由に入札して見直しをするとのことです。成果については、これから2年後に評価がなされることになります。成功と判定された場合、この手法は市を超えて、州の単位でも適用できると考えていますか。」
市長
ほとんどの州、市は、本当は、こういう方法をとりたいと思っているのです。ただ一遍にやるには、既存の州では難しいのです。ただ、アトランタ市では、新しい市長になって、すでにこの方法を取り入れはじめています。もちろん、一遍にではありませんが、ある部署でアウトソーシングを始めました。プロセスはゆっくりですが、始まっています。
数年前、アトランタで上水道についてアウトソースを行いました。その時には、市全体の業務を委託したのではなく、部分的な委託をし、ある一部分を企業が、ある一部分を市が行いました。しかし、このやりかたは上手くいきませんでした。
この事例からは、もし企業にアウトソースするならば、受託企業に全体の指揮権を完全に与えるべきです。中途半端なやり方はうまくいきません。
日本の地方自治体では、今すぐに全体でやるのは難しいと思います。部分的に、徐々に始めるべきです。例えば、上下水道を委託するということなどは可能ではないでしょうか。


「政治家として、市長の信念に共感しました。最後に、市長の信条、信念を改めて伺います。」
市長
私の市長としての原理原則、果たすべき役割は、「限られた予算内ですべてのことを成し遂げ、考えられる最善のサービスを市民に提供すること」です。


レンタルだという簡素な市庁舎でお会いしたエヴァ市長は60代の女性でしたが、奥深い眼光が印象的な、とてもエネルギッシュな方でした。当初予定していた時間を超過しても、市政に欠ける情熱と施策を教えて下さり、大きな学びが得られました。
また同市においては、市を運営する企業幹部のジョナサン・マンテー氏(以下、幹部)からもお話を伺いました。
新たな価値の創造を


「日本も財政赤字が問題となっており、実質的に破たんしている自治体も増えています。その状態を何とか改善したいと考え、勉強に来ました。
民間へのアウトソーシングによって、コストを削減し、効率的な行政運営の実現に成功しているサンディスプリング市の手法をモデルとして導入したいと考えています。
市民が9万人弱に対して、市の職員は警察と消防を除けばわずか数名、そして委託されたOMI社の職員数は約140名とのことです。 
非常に少ない人数で満足度の高いサービスを展開しています。どのようにして、スムーズに90%以上もの市民の満足度を得られるようになったのか、お伺いします。」
幹部
サンディ・スプリングス市の手法に関心を持っていただき、ありがたい。わたしたちは、基本的に、伝統的な市のサービスを提供していないのです。革新的なイノベーションを行った行政サービスを提供しています。
わたしたちの手法によって、人件費がかさばらずに、効率的な行政サービスを展開できているのです。民間と市とのパートナーシップという点では、技術革新により効率的でコストがかからないものを探しています。民間が持っている様々なサービス機能を、部分的に市が買い取ることなどによって、市がすべて自前でやるためのトータルなコストを持つ必要がなくなりました。
新たな技術を行政サービスに導入してコストを減らし、その浮いたコストを他のサービスに回すということをしています。
私は、OMI社に入社前の二十数年間、地方行政にかかわる仕事をやってきました。サンディスプリング市では、1000人に1.5人のスタッフですみますが、これは普通の市では考えられないことです。周知のとおり、人件費が最もコストがかかります。一人雇えば、その人のために、年金、健康保険などが必要となります。これが集まると大きな金額になってしまいます。


「市長によれば、効率の良い行政サービスを具体化するための一番のポイントは競争とのことでした。
人事的な教育プログラムについては、どのようなノウハウを持っているのでしょうか。」
幹部
自由競争が非常に重要です。そして、「サービスの品質」が非常に重要です。給料が高くても、サービスの品質が信頼され、わたしたちは雇われているのです。
そして、サービスの品質を保つために、我々の社員は週40時間、ITツールや多機能携帯を駆使してフルに働いています。週末も、サービスを提供するために時間外でも仕事をしているのです。


わたしたちはひとつの新しいカルチャー、価値の創造をしているのです。時間外でも働いているのですが、これは仕事というよりも、使命です。いかにして市民の生活に付加価値を加えるか、使命感を持ってやっています。


「民間に委託するに際してのリスクの面について伺います。民間であるため、ストライキや会社倒産の可能性があります。そのために、安心して任せられないのではないかとの懸念もありますが、会社として安心を提供できるよう、どのようなセーフティネットを工夫しているのでしょうか。」
幹部
これに関しては2点申しあげたいと思います。まず一つは、わたしたち社員一同は、新しいカルチャーを創造しようとしているということです。高い品質のサービスを提供することに集中をすることが、最大のリスク回避の方法なのだということです。
もう一つは、レイオフの問題はありますが、わたしたちが開発したのは、従業員を1年間プールし仕事のスキルを教育して、他でも使えるようにしているということです。
世の中は新しく変わっていくので、必要とされる仕事も変わっていきます。しかし、人々には家族や子供がいて、養わなければなりません。よって、仕事が必要です。1年間の期間を持てば、仕事の技術を学ぶことができて、スムーズに転職をすることができます。この間に、人々に仕事を教えるシステムを作っているのです。
そして、従業員に対して、ベストな環境にスムーズに移れるようにお手伝いをしています。長期的に、ウイン・ウインの状態を作れるようにしています。


「ジョージア州には、サンディスプリングス以外にアウトソーシングのやり方を導入している市がいくつかあると聞いています。OMI社に匹敵する、行政サービスのノウハウを持った会社は存在するのでしょうか。
また、「絶対権力は絶対に腐敗する」との言葉がありますが、寡占状態にあることで、サービスの低下をまねくおそれはないのでしょうか。」
幹部
同じようなサービスを提供する会社は沢山あります。実際に競争はありますが、わが社はトップクラスであると言えます。
わたしたちの強みは、知識産業としてノウハウを持っていることです。また、良い人的資源を持っています。そして、人的資源をプールして使っていけるシステムを持っています。これらは大きなアドバンテージです。


また、良いサービスを提供することによって、新たな価値の創造をしているのです。選ぶ側は、価格だけで選んでいるのでなく、価値、サービスの質で毎回選ぼうとしています。「絶対権力は絶対腐敗する」とならないために、市の方は公平で選んでいると思います。
わたしたちが選ばれ続けるのならば、それは正しいサービスを提供しているということを意味すると思います。


「日本のマーケットに、OMI社に該当するような企業はありません。日本の新しいビジネスマーケットの開拓という意味でも、大変魅力的であり、価値の創造の大きな可能性を秘めていると感じました。
日本に考え方を持ち帰って、日本自体もサンディスプリングス市とOMI社をみならって、国を活性化し、国民を幸せにするよう、頑張っていきたいと思います。」
幹部
わたしたちも、数年前までは地方行政に対してサービスを提供するという経験は全くありませんでした。つまり行政の徹底的な効率化を一から創造したのです。日本の企業であれば同じことが出来ると思います。
もし日本の企業で同様のことをやろうとするところがあれば、わが社もお手伝いさせていただきます。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

行政のあるべき姿

サンディスプリングス市での先進的な取り組みをみてまいりました。他の役員の方からは、「社員が、正しいことを実行するという、倫理観をもって仕事を行なっている」ことが成功のポイントであるとも教えてもらった。


行政運営にかかわる方々の「使命感」「改革、効率化への熱意」、そして「サービスの品質」へのこだわりが、行政サービスへの市民の満足度として反映されていることが窺われた。


公務員だけが行政サービスを提供できるなどという考えが、もはや幻想に過ぎない。結局、高い志と智慧だ。サンディ・スプリングス市では、市長をはじめとする人々の発想、努力によって行政の効率化がもたらされ、黒字決算を重ねながら、市民に、より高い品質のサービスが提供されている。以前とは、まったく異なる世界が開けた。


国・地方通じて財政難が問題となっている日本においても、同市の取り組みから得るものは大変に大きい。


我が国でも、これまで「小さな政府」の実現に向けて、さまざまな改革努力が重ねられてきた。近年の代表例としては、「郵政民営化」がある。しかし、民主党政権が誕生して以来、時計の針を逆戻りさせて、実質的な再国有化に戻そうという動きが出た。我が国は、再び、官の権益を拡大する方向に導かれた。日本の活力を奪いかねない、危険な政治だった。


政治家の役割の一つは、国家・国民を繁栄に導くことであるはず。そのために、サンディ・スプリングス市でみた「小さな政府」の実現、すなわち行政のぜい肉部門をそぎ落としていきながら、あわせて規制緩和による民間の自由を拡大することが必要だと考えてる。そして、行政も民間も、それぞれが企業家精神を発揮することにより、トータルで繁栄し続ける国家、「最強国家」の構築に一歩近づくことを確信している。そのために、今後も大胆な行政改革の必要性を訴えたい。