将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【居飛車高美濃戦法】

木村秀利アマの得意戦法

最近、雁木に代わる後手番の作戦として良く見かけるようになった。
どこが発祥地かわからないが、アマチュア強豪の木村秀利さんの得意戦法。
木村さんは「かなきち将棋道場」というチャンネルを持つyoutuberで、ネット対局をupしただけのつまらないyoutubeが多い中、木村さんの講座は参考になる。
大阪 阪急淡路駅西口徒歩4分のところにリアル「かなきち将棋道場」をオープンした。


稲葉vs渡辺(A級順位戦)

実はこの戦法、渡辺明二冠が秘かに後手番の秘密兵器として活用している。
下図はA級順位戦の対稲葉戦。

先手の▲2七飛に対して居玉のままいきなり△7五歩。
かねてから渡辺二冠は、先手の左美濃に対してこの仕掛けが成立すると睨んでいたのだろう。
これが機敏な仕掛けでペースを握った。


名人挑戦中の渡辺二冠が第三局でこの作戦をぶつけた。
豊島名人は、左美濃でなく7八玉型。
棒銀でなく腰掛け銀模様に組んだ。
棒銀に比べて右桂が使えるのが利点だ。
しかし、後述するが、その後この作戦に対して▲3七銀としている。

雁木に似ているが、金の守りが厚いので▲3五歩急戦に△同歩▲4六銀△3四金▲3八飛△2五金と対応できる。そこで▲4六歩からの攻めを狙ったが、4筋は後手も厚い。
かといって図の局面から▲3七銀△5三銀▲2六銀と角頭を攻めるのは、先の稲葉戦のようになる。


実戦は▲3七桂に△5三銀としたので▲4五歩と仕掛けることができたが、△4二玉~△3一玉と玉を囲っておくか、対稲葉戦のように△7四歩~△7三桂としておけば仕掛けが難しく、これからの将棋だった。

居飛車高美濃囲いVS居飛車すべて徹底研究


豊島vs渡辺(第78期名人戦第3局)

図の▲4五歩が機敏な仕掛け。
取れば▲2四歩△同歩▲4五桂△7七角成▲同銀△4四銀▲2四飛△2三歩▲2五飛として後手陣は傷が多く収拾がつかない。
後手の△5三銀では△7四歩~△7三桂と前記のように指すべきだったか?
しかし、そうなると先手の腰掛け銀右四間飛車が炸裂しそうだ。
渡辺九段は、この将棋以後「居飛車高美濃戦法」を封印している。

羽生vs澤田(第82期B級1組順位戦)

初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩 ▲4八銀 △9四歩
▲9六歩 △8四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲3六歩 △3二銀
▲7七角 △8五歩 ▲3七銀 △5二金右 ▲6八玉 △6二銀
▲5八金右 △7四歩 ▲7八銀 △7三桂 ▲7九玉 △5四歩
▲4六歩 △4三金 ▲2四歩 △同 歩 ▲3五歩 △7五歩

羽生九段の▲3七銀~▲3五歩は雁木相手に有効な仕掛け。
澤田七段は、雁木模様から高美濃に変化してこれを迎え撃った。
上記の渡辺流の仕掛けで主導権争いが激化。
既に先手の得は消えているようだ。
雁木を見せた後手の序盤が巧妙だった。


図からの指し手
▲同 歩 △6五桂 ▲6六角 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛
▲8八歩 △9五歩 ▲8七銀 △8一飛 ▲9五歩 △3五歩
▲6八金上 △9六歩 ▲4五歩 △9七歩成 ▲同 香 △9八歩
▲同 銀 △7六歩 ▲2二歩 △3六歩 ▲同 銀 △4五歩
▲3五銀 △6六角 ▲同 歩 △5五角 ▲2六飛 △1九角成
▲6五歩 △5五馬 ▲8七角 △6六香 ▲6七桂 △同香成
▲同金右 △8六桂 ▲5六歩 △2二馬 ▲4四歩 △9八桂成
▲同 角 △3四金 ▲2三歩 △3三馬 ▲3四銀 △4四馬
▲6六桂 △2六馬 ▲3三歩 △3九飛 ▲6九香 △9九銀
▲8七角 △3三銀 ▲4三銀成 △3四銀 ▲4四歩 △4三銀
▲同歩成 △8六歩
まで92手で後手の勝ち




豊島vs大橋(第70期王座戦挑戦者決定戦)

大橋貴洸六段が、王座戦のタイトル挑戦を決める大舞台でこの高美濃戦法を採用した。
相手の豊島九段は、上記のように経験済み。


初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩 ▲4八銀 △8四歩
▲2五歩 △3三角 ▲3六歩 △8五歩 ▲7七角 △3二銀
▲6八玉 △5二金右 ▲5八金右 △6二銀 ▲3七銀 △4三金

先の反省もあってか、今度は、図のように▲3七銀と活用した。


図からの指し手
▲8八銀 △7四歩 ▲7八玉 △5四金


高美濃に組んで玉を入城させるものと思い込んでいたため、自ら囲いを崩す△5四金には驚いた。
しかし、豊島九段の陣形が強力なので囲っていけば不利になると見たもの。
例えば△7三桂 ▲5六歩 △4二玉には▲3五歩の仕掛けが厳しい。


参考図

△3五同歩には▲6八角と引き、次に▲4六銀△3六歩 ▲2六飛と攻める。
豊島が左美濃にしなかったのは、引き角からのこの攻めを見据えていたからだった。


しかし、反面角頭が弱いので、大橋六段はその角を狙って居玉のまま△5四金と攻勢をかけた。
▲6六歩と角頭を守り、△7五歩▲同歩△6四金と棒金で攻める。
先手も角頭を狙って▲3五歩△同歩▲3四歩△2二角▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2五飛と負けていない。 

図から△7六歩▲9五角△7四飛と飛車の頭を叩かれるのを防いだ。
これに▲6八金と角の退路をなくし、△9四歩に▲8四角と派手な応酬。

以下△4五歩▲同飛△8四飛▲7五飛△7三銀と進行すると、先手がまとめにくい。
しかし、先の△9四歩の催促では△5二金の方が一手の価値が高かったか?