将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【minor戦法】右玉(その1)

右玉戦法

右玉戦法は、振り飛車と似て非なるもの。
振り飛車は美濃囲いの堅さを頼りに一手勝ちをする戦法だが、右玉は玉の広さを頼りに一手勝ちする戦法。
minor戦法に分類したが、奇襲戦法とは違って侮れない。
特に角換わりでは有力な作戦といっていい。


角換わり右玉

後手番で角換わりになると、左玉から手待ちして右玉になるケースは多い。
この項では、最初から右玉を目指す作戦を中心に考察したい。
ファン待望の羽生善治の新刊『現代調の将棋の研究』では、「右玉という繊細な戦法について」と詳説されている。
現代調の将棋の研究 (最強将棋21)
現代調の将棋の研究 (最強将棋21)
浅川書房


腰掛け銀には桂頭を攻めよ

初手からの指し手
▲2六歩 △8四歩 ▲7六歩 △8五歩 ▲7七角 △3四歩
▲6八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀 ▲4八銀 △3二金
▲4六歩 △7四歩 ▲4七銀 △1四歩 ▲7八金 △7二銀
▲9六歩 △9四歩 ▲3六歩 △6四歩 ▲3七桂 △6三銀
▲1六歩 △3三銀 ▲4八金 △7三桂 ▲5六銀 △5二金
▲6八玉 △8一飛 ▲6六歩 △6二玉 ▲7九玉 △5四歩
▲2五歩 △4四銀 

図の△4四銀では、羽生本のように△7二玉として▲2九飛を待ってから△4四銀とした方が手得だが、損得は微妙。
次に△3五歩の仕掛けを見せて飛車先交換を誘った。


▲4八金型から飛車先交換して▲2九飛と収まれば、よくある角換わりの流行形になるが、当然後手には用意の手段がある。
図の局面から ▲2四歩△同歩▲同飛に△3五歩と動くのが旧型(▲5八金型)からよくある定跡。
▲5八金型の場合は、▲同歩△3六歩▲4五桂に△3七角と打つのだが、▲4八金型もほぼ同じ、△5九角 ▲5八金(▲2六角は△7七角成から△2三銀▲2五飛△1三桂。▲3九角は△3七歩成▲5八金△7七角成▲同桂△5五歩▲6七銀△3六と。) △3七角成が手厚い。
以下▲2三角 △同 金 ▲同飛成 △4六馬 ▲2二龍 △3五馬 ▲4六歩 △3七歩成 ▲7五歩 △同 歩 ▲6八金右 △5五歩 ▲同 銀 △同 銀 ▲7四歩 △同 銀 ▲5四金 △8六歩 ▲同 歩 △7六歩 ▲4三金 △4二歩 ▲5二金 △同 玉 ▲7六銀 △3六角 ▲5三金 △同 馬 ▲同桂成 △同 玉などが変化の一例。


飛車先交換は、一歩を手持ちにできる反面、危険も大きい。

  1. 飛車を狙われる。・・・具体的には、△3三角のラインを狙って△5五銀としたり、2歩手持ちにして△3三桂~△2五歩の蓋歩の狙いなどがある。
  2. 飛車がいなくなった隙に角打ちを狙われる。


裏定跡:入城していれば先手有利

前述の△3七角は、良く知られている羽生が指した好手だが、実は▲8八玉と入城している形では通用しない。
△3六歩の裏を突く攻めがあるのだ。

図の▲2二角が歩切れを衝いた。
後の▲3四飛に△3三歩と打てないのが痛い。


図からの指し手
△3五銀 ▲2五飛 △2四歩 ▲3五飛 △2二金 ▲8二銀
△6一飛 ▲2三歩 △4六馬 ▲3四飛 △2五角 ▲4七金
△3四角 ▲4六金 △3二金 ▲6五歩 △8六歩 ▲3五角
△7二玉 ▲7三銀成 △同 玉 ▲8五桂 △8三玉 ▲5三桂成


後手玉が、7二玉型でも同様で△3五銀▲2五飛△2四歩▲3五飛△2二金▲5三銀という人間には指し難い攻めが有力と分かった。
以下△2六角成がぴったりのようだが▲3四飛と逃げた手が気が利かないようで次の▲5四飛の筋を狙った好位置。
△5三金と銀がタダと思えば▲2四飛の両取りが厳しい。
一見△4四馬で受かるようだが▲5三桂成を取れない。


△5三金では△5三馬が優るが、▲同桂成△同金▲4二角△5二金▲3一飛成と攻めが続く。


入城しているかしてないかが勝敗を左右する。
神は細部に宿る。 


腰掛け銀保留して飛車先交換(▲4八金型) 

▲5六銀は、桂頭が薄くなるので保留したのが上図。
ただし、右玉に対しては、▲4八金より▲5八金の方が良いかもしれない。
今回は敢えて流行の▲4八金型で研究した。
▲5八金型から桂跳ねを保留して腰掛け銀に組む順は、後述する。
▲7九玉と玉を固めたが、反面△5九角などの隙ができた。
7九でなく、▲5八玉と中住まいにして、雁木に組み直して地下鉄飛車を狙う雁木中住まいが現代風で有力なので、地下鉄飛車の項でまとめて詳述する。


さて、ここで飛車先交換は成立するか?


図からの指し手
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △6五歩 ▲同 歩 △同 桂
▲6六銀 △8六歩 ▲同 歩 △5九角 ▲3八金 △2三歩
▲2九飛 △8六角成 ▲6五銀 △8八歩 ▲7七桂 △8九歩成
▲6八玉 △6四歩 ▲8七歩 △同 馬 ▲8二歩 △同 飛

図の局面から先手の危機を救う好手順がある。


図からの指し手
▲7三角 △同 玉 ▲8五桂打 △6二玉 ▲8七金 △8四角
▲5六銀引 △9九と ▲同 飛 △5一玉 ▲4五歩 △5三銀
▲8六歩 △8三飛 ▲2九飛 △6二銀 ▲5八玉 △4二玉
▲4八玉 △8一飛 ▲4六角(形勢互角)


今度後手は、良さを求めて△7二玉▲8八玉の後、△4四銀と飛車先交換を誘ってみる。
先手は、同様に飛車先交換し、△5九角に▲5八金△3七角成と桂を取らせ、▲6五銀△6四歩▲8四桂△6二玉▲5四銀△同銀▲7二角△4一飛▲5四角成とか、▲6四歩△同銀▲6五銀△同銀▲6四桂と7二玉型を咎めに行く順もあるが、折角だから玉を固めてから強く戦いたい。


△6二金 ▲5八金 △4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛
△5五銀 ▲4五桂 △4四歩 ▲5六歩 △6六銀 ▲同 銀
△4五歩 ▲4四角 △3三角 ▲8三銀 △同 飛 ▲3三角成
△同 桂 ▲2一飛成 △3一銀 ▲4一角 △4六歩 ▲3二角成
△同 銀 ▲7一金 △8二玉 ▲8一金 △9三玉 ▲3二龍
△4四角 ▲9一金 △6六角 ▲7七銀 △4四角 ▲4六銀
△8六歩 ▲同 歩 △8七歩 ▲同 金 △6九角 ▲6八金
△7九銀 ▲同 玉 △8七角成 ▲7八銀 △6七桂(後手勝勢)


変化:75手
▲4一龍 △4七歩成 ▲4四龍 △5八と ▲7一角 △8四玉
▲6二角成 △6九銀(後手有利)


変化:55手
▲8二銀 △6一飛 ▲3三角成 △同 桂 ▲7三銀成 △同 玉
▲4四桂 △1三角 ▲2九飛 △4三金 ▲7七桂 △4六歩
▲3八銀 △2六歩 ▲3二桂成 △8三玉 ▲4四歩 △同 金
▲3三成桂 △8四桂 ▲6七金右 △6五歩 ▲同 銀 △6六歩
▲同 金 △6四歩 ▲7四銀 △同 銀 ▲6三歩 △5二金
▲7五桂 △8二玉 ▲2六飛 △4七歩成 ▲同 銀 △6九銀


変化:61手
▲7七桂 △4六歩 ▲同 銀 △1三角 ▲3四飛 △4六角
▲8五桂 △8三玉 ▲4四角 △7二金 ▲3三角成 △同 金
▲同飛成 △8四銀 ▲4三龍 △2二角 ▲4四歩 △8五銀
▲7七桂 △5二銀打 ▲4二龍 △3一角 ▲4三歩成 △4二角
▲同 と △7六銀 ▲5二と △同 銀(形勢互角)


雁木組み換えが最新流行形

右玉に対しては、現代角換わりの▲4八金型より▲5八金型の方が優る。(「将世2023.2号」『右玉なんて怖くない』石田直裕五段)
▲5八金型で腰掛け銀保留されると、△4四銀はうまくいかない。
△7二玉とするのは後に地下鉄飛車を狙われるので後手としては△4四歩からツノ銀雁木に組み替えるくらい。
飛車先交換には△4五歩を狙っている。

最新流行は、先手も雁木に組み替える▲6八銀。


図からの指し手
△8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七金 △8一飛 ▲8六歩 
△3三桂 ▲7七桂 △7二銀 ▲6七銀 △6三金 ▲7八玉 
△8五歩 ▲同 桂 △同 桂 ▲同 歩 △同 飛 ▲8六歩 
△8一飛 ▲9八香 △7三銀 ▲9九飛 △8四銀(図) 

8筋交換には▲8七金と手厚く金冠にする。
しかし、図のように△8四銀と棒銀で8筋攻めを狙って後手も十分に指せる。

▲3七桂保留、四枚矢倉に組んでの飛車先交換

▲3六歩~▲3七桂を急ぐと争点を与えた。
▲5八金型から下図のように四枚矢倉に固め、「堅い・攻めてる・切れない」を目指すのがアマチュア向きの作戦だ。 
固めてから飛車先を交換する。

△1三角が右玉期待の一手だが、▲1四飛が成立する。
△3三桂に▲2四歩とし、△2二角に▲1二角!。
以下△1三歩▲2三歩成△1四歩▲2二と△1二香▲3二と△3九飛と進むが、▲4七角と攻防に打って互角の形勢。
先手陣は堅固なので指し手が分かりやすい。


▲4五歩位取り穴熊には、「最強右玉」

先手が図のように位取りから▲4六角とし、穴熊を目指す作戦は、狙いが分かりやすいのでいかにもアマチュア好み。
プロでも第四回abemaトーナメントで、増田康宏六段が木村一基九相手に用いた。
木村九段が△4二銀~△5三銀と固め、△3三桂~△4四歩と仕掛けたあたりは悪くなかった。
しかし、増田六段の執拗な攻めに応手を誤り敗北。
持ち時間の少ない将棋では玉の堅さは大きい。


後手は銀を据え置いたまま金をくっつけ最強右玉を目指す。
▲2四歩△同歩▲同角△同銀▲同飛の強襲には△4六角の反撃がある。 

4六の角が浮いているため飛車先交換の▲2四歩には△1三角という反撃がある。
それを見越して後手は△4二金~△5二金右と金をくっつけた後、さらに△4二銀(上図)と最強右玉を構築するのが良い。
▲2四歩△1三角▲1五歩には△2四角▲同角△同歩▲同飛に△4六角で後手成功だ。
先手としても図の局面から更に▲8八銀~▲7七桂~▲6八飛とすれば堅固な玉と強力な攻撃形が完成する。
ただし、駒組が偏っているため、右辺に隙ができやすいのが大きな欠点。
▲8八銀△5三銀▲7七桂に△4九角がうるさい攻め。
▲6七銀には△同角成▲同金△5五銀と穴熊を薄くする。


最強右玉が完成すれば、後手が勝ちやすい。


出戻り玉 

地下鉄飛車を目指して▲6七金左(上図)とした瞬間、右玉から△5一玉と戻す「出戻り玉」がタイトル戦でも現れた面白い作戦。
後手としては、先手が▲6七金左と囲いが弱体化したので、手損しても得という考えだが、バランス型が評価される現代では、土居矢倉のような形の先手も悪くないと思う。
実戦も先手が勝っている。 


シン・出戻り玉 

先述のように「腰掛け銀保留」「▲5八金型(旧型)」が右玉対策。

それなら通常の左玉に戻したらどうなるのか?という作戦がシン出戻り玉

一理ある作戦だ。 

数手進むと図のような定跡形。

ここで▲4五桂と仕掛けるか、▲8八玉△5二玉▲6七銀とか▲8八玉△6五歩▲同歩△同桂▲6六銀△6四歩といった手段が課題局面となっている。


地下鉄飛車

初手からの指し手
▲2六歩 △8四歩 ▲7六歩 △3二金 ▲7八金 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △4二銀
▲3八銀 △7二銀 ▲4六歩 △6四歩 ▲4七銀 △6三銀
▲6八玉 △7四歩 ▲5八金 △7三桂 ▲3六歩 △9四歩
▲9六歩 △5二金 ▲1六歩 △1四歩 ▲6六歩 △8一飛
▲3七桂 △6二玉 ▲2五歩 △3三銀 ▲2九飛 △5四歩
▲6七金左 △4四銀 ▲7八玉 △3五歩


△4四銀型右玉に対する先手の指し方は難しい。
▲7八玉の代わりに▲4五歩△3三銀と追っても、次に△4四歩の争点を与えるだけ損。


また、図の一手前の▲7八玉で▲2四歩△同 歩▲同 飛と飛車先交換をするのは、
△6五歩▲同 歩△同 桂▲8八銀△3三角▲2九飛△5五銀と玉頭に迫られる。
手順中の△3三角が大切なところで同じことだと△5五銀とするのは、▲6四歩△同銀上▲6六歩となって△3三角に▲3四飛の手段を与える。


もっと前に▲2九飛と一手かけていなければ、代わりに▲7八玉となっているので、飛車先交換が成立するかもしれない。


先手の地下鉄飛車の狙いに対して△3五歩とちょっかいを出すのは定跡化された順で、アマ強豪の細川大市郎さんの右玉の本にも載っている手段だ。  

図からの指し手①
▲同 歩 △同 銀 ▲4五桂 △3六歩 ▲1七角 △4四角
▲3九飛 △4二金左


この手を省くと▲3五角からの強襲がある。
歩切れを衝いてそれでも▲3五角は考えられるが、無理攻めだろう。


図からの指し手②
▲同 歩 △同 銀 ▲4五桂 △7二玉
▲3九飛 △3四歩 ▲2九飛 △4四歩
▲3六歩 △4五歩 ▲3五歩 △5五桂(図) 

後手が4五桂を取ろうとすると、このような変化が考えられる。
局面自体は、先手も一応指せそうな感じだが、4筋の歩が当たっていて、対応が悩ましい。
例えば▲5六銀には△3六角がある。
▲5六銀打が正解か?


右玉的には満足の展開。


地下鉄飛車には「こいなぎ流」

初手からの指し手


▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △3二金
▲7八金 △8八角成 ▲同 銀 △2二銀 ▲4八銀 △3三銀
▲4六歩 △6二銀 ▲4七銀 △6四歩 ▲3六歩 △1四歩
▲7七銀 △7四歩 ▲3七桂 △6三銀 ▲1六歩 △7三桂
▲5八金 △9四歩 ▲9六歩 △5二金 ▲6八玉 △8一飛
▲6六歩 △6二玉 ▲6七金左 △8五歩 ▲7八玉 △5四歩
▲8八銀 △4四歩 ▲5六歩 △4二銀 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △3三桂 ▲7七桂 △4三銀 ▲2九飛 △2三歩
▲9八香 

昭和の時代に右玉対策の決定版とされていたのが、図のような地下鉄飛車。
▲9九飛から端を逆襲する狙いで、△7二玉~△8三玉などと受けると、▲8五桂△同桂▲8六歩という筋があり、次に▲8七銀と整形してから桂を取り返すことができる。


図から△7二銀と組み替えるのが令和の定跡で、▲9九飛に△8三銀を用意。
以下△6三金とする右玉が上部に厚く、こいなぎ流と呼ばれている。


地下鉄飛車に△5四角

初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩 ▲2五歩 △3二金
▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
▲7八金 △3三銀 ▲4八銀 △6二銀 ▲4六歩 △6四歩
▲4七銀 △6三銀 ▲6八玉 △7四歩 ▲3六歩 △5二金
▲3七桂 △7三桂 ▲5八金 △8一飛 ▲9六歩 △9四歩
▲1六歩 △1四歩 ▲6六歩 △6二玉 ▲6七金左 △7二玉
▲7八玉 △5四歩 ▲2九飛 △4四銀 ▲8八銀 △5五歩
▲7七桂 △3三桂 ▲9八香 △5四角(図) 

後手の角の狙いは、△7五歩▲同歩△8六歩。
そこで図の局面からは香車を守って▲9九飛だが、今度は△3五歩とこちらの桂頭を攻める。
一歩持てば△7五歩▲同歩△7六歩とこちらの桂頭を攻めることができる。
右玉に5筋のクライを取らせてはいけない。


地下鉄飛車に左銀速攻

先手が▲5六歩と後手の位取りを拒否した場合は、左銀で速攻を仕掛けるのが定跡だ。


初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩 ▲2五歩 △3二金
▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
▲7八金 △3三銀 ▲4八銀 △6二銀 ▲4六歩 △6四歩
▲4七銀 △6三銀 ▲6八玉 △7四歩 ▲3六歩 △5二金
▲3七桂 △7三桂 ▲5八金 △8一飛 ▲9六歩 △9四歩
▲1六歩 △1四歩 ▲6六歩 △6二玉 ▲6七金左 △7二玉
▲7八玉 △5四歩 ▲2九飛 △4四銀 ▲5六歩 △3五歩
▲同 歩 △同 銀 ▲3六歩 △4四銀 ▲8八銀 △5五歩(図) 

後手の狙いは▲5五同歩に△6五歩▲同歩△5五銀▲5六歩△6六歩▲6八金引に△4六銀という強攻だが、この仕掛けは図から▲4五歩と銀を追えば防ぐことができる。
△5三銀▲5五歩に△6五歩▲同歩△6四歩が後手の継続手だが、足が遅い。
▲4八角△6五歩▲9五歩や▲6四同歩△同銀▲6六歩などが想定され、先手も指せる。


図の△5五歩で△3三桂と一手溜めるのは、▲7七桂と備えられ、△5五歩▲同歩△6五歩▲同桂△同桂▲同歩△5五銀に▲7七銀で受かる。


そこで3筋交換を省いて△3三桂とし、▲8八銀に△5五歩と仕掛けてみるが▲5五同歩△6五歩に▲7七桂が好手。△5五銀には▲6五桂△同桂▲5六歩で受かる。


右玉としては、△6二玉型で仕掛けるのが良い。 

先述の▲7七桂に△7五歩▲6五桂△同桂▲5六銀△7六歩▲6五銀△7五桂となった時、7二玉型だったら▲6四桂が厳しい。
6二玉型にも▲6四桂と攻めるか、▲7四歩と垂らすくらいだが、△6七桂成▲同金△4七角となってこれからの将棋だ。


しかし、△6二玉型は図に至るまでに急所がある。


初手からの指し手
▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △8五歩 ▲2五歩 △3二金
▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
▲7八金 △3三銀 ▲4八銀 △6二銀 ▲4六歩 △6四歩
▲4七銀 △6三銀 ▲6八玉 △7四歩 ▲3六歩 △5二金
▲3七桂 △7三桂 ▲5八金 △8一飛 ▲9六歩 △9四歩
▲1六歩 △1四歩 ▲6六歩 △6二玉 ▲6七金左 △5四歩
▲7八玉 △4四銀 ▲5六歩 △3五歩 ▲同 歩 △同 銀 

図の局面が右玉にとって剣が峰。
素直に▲3六歩と受けてくれるなら一歩手持ちにできるが、▲1七角や▲4五桂など危険がいっぱい。
▲1七角は△4四銀で大丈夫そうだが、▲4五桂が難敵。△4四銀は▲3八飛として歩交換をとがめる。△7二玉と頑張るが▲5五歩が急所。△5五同歩に▲5四歩△同銀▲5三角の攻めを狙っている。
▲5五歩には△3三桂と捌く。▲5四歩なら△4五桂▲同歩△5五桂で勝負。
問題は▲3八飛で△3六歩に▲1七角でも△4五桂▲同歩△2六桂が間に合う。▲3八飛△3六歩に▲5四歩も△4五桂▲同歩に▲5三角を防いで△4二金左とするか、△5五桂と攻め合って▲5三角に△4四歩で耐える。
右玉側は丁寧な受けを心掛けなければならない。


シン・地下鉄飛車

最近のトレンドは、上図の▲6七金左に代えて▲5六歩~▲7九玉~▲6八銀~▲6七銀とする雁木、土居矢倉と同じバランス型だ。 

▲7九玉を▲6八玉と戻すなど手数はかかるが上図のような地下鉄飛車を目指している。
次に▲9九飛からの端攻めが右玉の急所を衝いている。
玉が7八に居るより戦場から遠い。


その後、羽生善治著『現代調の将棋の研究』が発刊され、この作戦について「右玉という繊細な戦法について」という章で詳説されている。
それによると△7二玉がこの作戦の発動要件。
早すぎると△5三玉~△4二玉と待たれて不発。

結論として、地下鉄飛車の含みを見せながら打開できるかどうかは微妙で、条件が少し変わると成立の可否も変わってしまう、繊細な作戦だと考えている。

「繊細な戦法(右玉)」に「繊細な作戦(新地下鉄飛車)」。
少しの違いに敏感に対応しなければならない。
なお、上図では5六の歩をついているが、羽生本では省いている。
何か深い理由があるのか。


狙いが分かりやすい地下鉄飛車は、アマチュアに愛好者が多い。
先述した雁木中住まいもアマチュア強豪に支持されている。
地下鉄飛車については、ここで終わる。



「自分用右玉研究1」最新のPC&ソフトで56歩型中住まいを徹底検討‼20210829



「自分用右玉研究2」最新のPC&ソフトでダイレクト58玉型中住まいを徹底検討‼20210829


端のクライを取れば右玉

後述の糸谷八段vs渡辺棋王(第46期棋王戦第二局)のように、1筋のクライを取った先手が生かすために右玉にするのは一つのセオリーだ。


永瀬拓矢 王座 vs. 日浦市郎 八段(2021年07月18日 第71回NHK杯)では、お互いに端のクライを取り合った形から先手が右玉に。


図のように進展すると、先手の端のクライの方が大きく見える。 

▲3八玉と寄せたから次は▲4八金かと思っていたら、▲6六銀と飛車先交換を許した。
△2二玉に対しては、▲4五歩△同歩▲同桂とするのも△4二銀に▲4四角があるので有力な手段だが、▲4五歩に△5四銀と逆用する手段があって面白くない。


図の局面では、▲5五銀とか▲7五歩とか、何か動きたい。

  1. ▲5五銀は、△8一飛と引かれ、次に△8八歩があるので▲8七歩と受けるが、そこで△5四歩とされると▲5四同銀に△7二銀が好手で、銀が立ち往生。▲8七歩受けでは▲8四歩が最善で、今度は△7二銀に▲2四歩△同歩▲2五歩として△5三歩に▲8三歩成△同銀(△同飛は▲4一角)▲6三角がある。▲2四歩では▲5三角もある。(▲5五銀についてはyoutuberショーダンさんの研究が詳しいので下に掲げておく。)
  2. ▲7五歩は△7五同歩と取られて▲同銀には△7六飛があるので▲8七歩△8一飛▲7五銀と交換するくらい。これもあったか。

実戦は平凡に▲8七歩と収めたため、後手は一歩手持ちで△8一飛と好形を作り、満足な展開となった。
そこで▲4五歩△同歩(△5四銀も有力)▲同桂△4四銀▲4六歩とした構想がどうだった
か?
下段飛車に対して▲4五歩△同歩▲同桂とするのは、△4一飛の反撃の筋があって危険なのだ。
△5四銀とされ、歩切れのままでは△4五銀の強襲があるかもしれない。
飛車先交換して歩を手持ちにしたが、△2三金が現代風の受けで▲2九飛△2四歩とされると、次に△1四歩▲同歩△1六歩▲同香△1七歩という狙いがある。
▲1九飛と受けても桂馬の質があるので△1八歩成で潰れ。
▲5五歩△4三銀引き▲7二角に△3一飛と手順に好位置に回り、先手の玉頭を攻める態勢が整った。
後手からの3~4筋からの反撃が厳しく、金銀が左右に分裂している先手は受け切れなかった。
永瀬王座にとっては不本意な将棋だったが、日浦八段の会心譜。 


【右玉党ガチ勢限定1】角換わり右玉対5二金型の最重要局面について徹底解説!20230821