将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【NHK杯】豊島九段対羽生九段

角換わり腰掛け銀超急戦の課題局面

この歩交換が成立するかどうかが腰掛け銀の課題局面のひとつ。
もっと前に後手が△3三銀とすれば飛車先交換を防げるが、その場合は▲4五桂急戦を覚悟しなければならない。
つまり▲4五桂急戦対策として編み出された△3三銀保留型を真っ向から否定しようというのがこの飛車先の歩交換なのだ。


先手としても△3三角や△1三角、△5五角の反撃があるので危険だが、豊島九段は前にこの局面を経験していた。
対藤井二冠戦(叡王戦第一局)で後手番を持って敗れた。
当然、敗因を子細に検討したことだろう。
負けによって得たものを生かすために迷わず踏み込んだ。


前例では△3三角としたが、▲3四飛△6三銀▲6八玉に△8六歩▲同歩△8八歩▲3三飛成の進行は後手不満。
△1三角は▲3四飛△3三銀(△3三歩は▲2四角)▲1四飛で先手が指せる。
本譜△5五角が後手期待の一手。
これに▲6六角は△同角▲同歩△8六歩▲同歩△8八歩▲同銀△6七角▲9八角△8六飛▲8七歩△8二飛▲7七銀△8八歩で後手良し。
は▲4六角△同角▲同歩に△5五角で△8六歩▲同歩△8八歩と△4六角の両狙いが受けにくいと思えたが、▲2七飛が用意の一手。

後手勝率49%→44%


ここで後手の羽生九段が△4六角と指した途端、AIの評価値が下がった。
他の候補手といえば△8六歩▲同歩△8八歩だが、これには▲2四角が好手。
△5二玉▲5六歩で角の行き場がなく、角を消されると8八の歩がタダで取られる。


しかし、AIが△4六角に否定的であるからには、△8六歩▲同歩△8八歩以下の変化の中に何かあるはず。
どうやら▲5六歩に△7七角成と乱暴すれば、▲同桂△8六飛で後手も指せるという見解のようだ。
人間の感覚からすれば、△8八歩が空振った感があるため、角切りは読みから除外してしまう。
「いい手は指が覚えている」という名言があるが、指が拒絶しそうな手だ。


実戦の△4六角には▲3七桂が好手。
一見△5七角成があるようだが、▲4五桂が馬取りでぴったり。
△8六歩▲同飛△5七角成なら大丈夫かと思えば、やはり▲4五桂とされて5三の地点を守るのが難しい。
△6二玉には▲5四歩から▲4二角打
△5二玉にも▲5四歩から▲2二飛成△同金▲3一角の強襲が決まる。
中央が薄いのだ。
(そういえばAIは△7二銀型でなく△6二銀型を推していた。)


仕方なく△6五歩と収めたが、振り上げた拳の下ろし場所を失った感じだ。

【将棋は歩から】銀の頭が急所


図の一手前の△5二金では、△4四銀と備えるべきだった。
▲5五歩が激痛。
△同角は▲5六銀△6四角▲5五歩がある。
△6三銀と引いても▲6六歩から厚みを作られる。
実戦は△同銀だが、▲5六歩△4四銀▲6六歩とされ、角と銀の両方を狙われた後手は、△3七角成▲同飛△4五桂と窮余の策だ。


中原誠vs大内延介から


腰掛け銀への▲5五歩は盲点になりやすい。
大内九段の穴熊に対して図の局面から▲5五歩と突いたのが好手筋。
引くと▲5六銀で飛車をいじめられるので△同銀と取るしかないが、▲4五桂が決まった。
△同飛には▲5六歩で△4四銀には▲4六歩で飛車が死ぬ。
実戦は△6六銀と捨てたが、右桂と銀の交換では居飛車が大きな得だ。


当時は△3五桂はどうだろう?なんて考えていた。
ソフトは△4三桂や△3七桂など、思わぬ候補手を見つけてくれるが、実戦の△6六銀捨ては最善だったようだ。


△4四飛では△7三金と固め、▲5五歩△同銀▲4五桂△同飛▲5六歩に△6三桂という順があったようだ。


相穴熊の定跡から

図は、相穴熊の戦いだが、ここでも▲5五歩が急所。
佐藤康光九段の新手だった。
この将棋以後△1四歩は消えた。