将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

ソフトが示す驚きの手

第一局(中飛車対4六銀)


なぜ振り飛車はソフトの評価が低いのか?
色々要因は考えられるが、実戦でも難しい戦法だと感じることがある。
飛車角の活用が難しく、下手をすれば、世に出ることなく蟄居生活を余儀なくされることになる。

振り飛車は序盤早々に飛車を左に動かして戦う作戦だ。

駒組みが比較的易しく、相手の意図に関係なく指すことができるので、アマチュアに愛好家が多い。もちろん久保はただ飛車を振っているだけではない。「さばきのアーティスト」という異名を持つほど、美しい指し回しに定評がある。

「さばき」を言語化するのは簡単ではないのだが、盤上の自分の攻め駒を持ち駒に換えてしまうことを言う。盤上の駒は限定された場所にしか動けないが、持ち駒にすれば好きなところに打って使うことができる。よって持ち駒にするのは有利であり、この「さばき」の最高テクニックを持つのが久保というわけだ。

       大川慎太郎著『証言 羽生世代』より

図は先後逆だが▲4六銀に対するゴキゲン中飛車の定跡形。
△3二飛の銀取りに▲3八飛と受けたところだが、居飛車嵌り形だ。
この局面からの後手の候補手が3つ考えられる。

  1. △2四角
  2. △2四歩
  3. △6二角
実戦の私の指し手は1.△2四角だった。

遊びそうな角を▲2四角と活用して指がしなった。
もし相手が角を取れば、3八の飛車を取ることができる。
しかし、▲3四銀と出られ、次に▲3三歩が痛い。
取れば▲2三銀成の狙いがある。
好調なはずの2四の角が負担になっている。
手が止まった。


ここで▲3四歩でも角を逃げることになることを考えれば、1.△2四角は良い手ではなかった。
最善は、2.△2四歩。
図の一手前の▲3八飛に代えて▲3四歩△2四歩に▲3八飛とした局面と比較すれば、先手十分。
3.△6二角でも△2四角よりは良い。


△2四角しか浮かばず、それで形勢良しと即断していた自分が情けない。
この後、指し手が進むにつれ指しにくさを感じるようになったが、その原因が△2四角にあったことに気付くのに長い時間を要した。
自分の敵は自身の固定観念だ。


実戦は、▲3四銀に対して2四の角が負担なので△1五角▲3五飛△5一角とした。
△1五角では2四の角の睨みを生かして△5六歩と攻めたかったが、▲3三歩が厳しいと判断した。
しかし、△5六歩▲同歩△5七歩として①▲6七金右は△3七歩▲同飛△1五角。②▲5七同金直は△3六歩▲同飛△4五銀。
▲3三歩は、△同桂と桂が活用できるので気にする必要はなかった。
実戦は、桂を渡すと▲5三桂の両取りがあるのを気にしていた。
・・・弱すぎる。

ここでも△5六歩が第一感だったが、やはり▲3三歩が気になった。
ソフトによると△5六歩には▲5六同歩が正着で、以下△5七歩▲同金直△4八角成。
その進行になるのなら△5六歩とするのだった。
△5六歩に▲3三歩は、△同角と強く取って、▲2三銀成△3一飛▲3三成銀に△同桂がソフトの読み。
力強い△3三同角と、筋の良い△3三同桂が味わい深い。
これこそ「さばき」だ。