将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【海外ドラマ】感想

12モンキーズ

新型コロナ禍に襲われた現実世界。
だから、ウィルス禍で70億の人類の死滅した過去を変えようと、主人公が時間移動して奮戦するこの物語はわれわれの胸を打つ。
映画をリメイクしたものだが、映画は、ブルース・ウィルスとブラピの共演という話題性は高かったが、結末・内容とも消化不良で駄作だった。 
今回のリメイクで映画の不満がスッキリ解消。前作では意味が乏しかった12モンキーズという題名の位置づけに「その手があったか!」と感嘆した。
それまでの伏線がすべて回収されるラストの気持ちよさは、良質のミステリの読後感!


ただし、難点も多い。
囲碁の「アタリ」をシチョウと取り違えていて、それならチェスの「チェックメイト(詰み)」とすればいいと思ったが、囲碁というゲームに何か「東洋の神秘」を投影していたようなので許そう。
また、物理学的にもオリビアの赤い花が咲く世界は無理筋だ。しかし、吉田伸夫「時間はどこから来て、なぜ流れるのか?」講談社ブルーバックスに語られるように時間の流れに意識の関与が大きいことから「閉じた時間に存在する意識があるのなら」この世界観もアリか。

時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて (ブルーバックス)
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講談社
Digital Ebook Purchas
時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体 (ブルーバックス)
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「時間論」は、私の子供時代からのテーマ。
文系だったこともあって、フッサールの「内的時間意識の現象学」の影響で時間の連続性をずっと信じていたが、所詮文系の考えは、理系には遠く及ばない。量子力学によって連続性が否定され、「12モンキーズ」のような時間観にも否定的だが寛容だ。
「時間の矢」という観念があって不可逆と思われていたが、モスクワ物理工科大学のレソビク博士は、量子コンピュータによって時間の逆転を観測している。

余談だが、幼少時代に「少年」という雑誌で、横山光輝「鉄人28号」、手塚治虫「鉄腕アトム」を読んで育ち、「バンパイヤ」「W3(ワンダースリー)」など手塚作品に嵌った。
しかし少年時代一番感動したのは、石森章太郎の「サイボーグ009」第6巻「ヨミ編」。
私が初めて買った本だ(秋田書店刊)。
石森章太郎作品が好きになって、「幻魔大戦」に登場したジョン・ダンの詩に心打たれた。

なんぴとも一島嶼(とうしょ)にてはあらず

なんぴともみずからにして全きはなし

人はみな大陸(くが)の一塊(ひとくれ) 

本土のひとひら 

そのひとひらの土くれを

波の来たりて洗いゆけば

洗われしだけ欧州の土の失せるは

さながらに岬の失せるなり

汝が友どちやなれみずからの荘園の失せるなり

なんぴとのみまかりゆくもこれに似て

みずからを殺(そ)ぐに ひとし

そはわれもまた人類の一部なれば

ゆえに問うなかれ

誰がために鐘は鳴るやと

そは汝がために鳴るなれば


美女の中の美女、イングリット・バーグマンがヒロインを演じる映画「誰がために鐘が鳴る」でおなじみの詩。原作は、文豪ヘミングウェイ。
アニメ版「サイボーグ009」では主題歌の一部に取り入れられている。
この懐かしい詩が、ドラマの大切なピースのひとつとして描かれていて震えた。 


錯綜したドラマだ。
何せタイムパラドックスをモチィフにしているので様々な登場人物の子供の姿と成年の姿が同じ時間帯に出現するのでややこしい。
そういえば、009と003の子孫も・・・・ 


印象的なこのシーンで残念ながら連載打ち切りとなった。

 フライト中の飛行機内から物語が始まり、謎の攻撃を受けるエピローグから、日本とアメリカに掛けて展開するワールドワイドな世界観、サイボーグ戦士が武器と肉弾戦で闘う戦闘シーンならば、「幻魔大戦」は超能力戦という、それまでほぼ誰も描いたことのない世界を見事に表現出来たのは、漫画家石森のイマジネーションと創造力、それを表現する画力があったからに違いありません。

 回を追うごとに、スケールが大きくなっていき、正に、幻魔対人類の決戦に相応しい展開になった頃に、悲劇を暗示させて連載が突然終わってしまったのは残念でなりません。その後も続くのであるならば、第一部完結には相応しいラストシーンですが、物語全てを完結させるには、余りにも読者に対して、投げっぱなしで終わらせてしまいました。



高い城の男

「スター・ウォーズ」では、敵と思っていたダースベーダーが実の父だったが、もし敵だと思っていた相手が自分自身だったら・・・


アマゾンのオリジナルドラマ「高い城の男」を視聴した。
第二次大戦で枢軸国が勝利し、アメリカがドイツと日本によって東西に分割された並行世界のお話。
名前からわかるようにどこにでもいるアメリカ人であるジョン・スミスは、ナチスに忠誠を誓い、そこで出世し、北米帝国(アメリカ)を我が物とする野望を抱く。
並行世界を行き来できる能力を持つヒロインは、彼に撃たれ、私たちの知る世界へ逃れる。そこで彼女を助けたのは、こちらの世界のジョン・スミスだった。
「誰に撃たれた?」とスミスに聞かれたヒロインは複雑な表情を見せる。


余談だが、並行世界で日本が占領していた西アメリカは、もともとメキシコ領。
「ロサンゼルス(天使たち)」「ラスベガス(牧草地)」「コロラド(赤い川)」などスペイン語の地名が残る。
入植したアメリカ人が人口でメキシコ人を圧倒すると「テキサス共和国」として独立し、その後28番目の州として合衆国に加盟し、横暴な行いを抗議したメキシコを破ってカリフォルニアなどを奪い、太平洋岸に達したという歴史を持つ。
近年、ロシアが真似てクリミアを併合したが、アメリカには非難する資格はない。


5デイズ

お断りするが、映画「5デイズ」とは何の関係もない。
DVDも出ている。

粗筋を勝手に引用。
↓http://www.superdramatv.com/line/5days/より


一人娘ジェシーと平穏な日々を送る物理学者ニューメイヤー。彼は10年前に亡くなった妻の墓地で謎のアタッシュケースを見つける。中から現れた警察の殺人調書や検死書類、容疑者リストには今から5日後に起こる残忍な殺人事件が記されており、その被害者はなんとニューメイヤー自身であった!冗談にしてはあまりにも手が込んでいたものの、学生のいたずらと気にとめなかったニューメイヤーだったが、その後次々と起こる出来事は、調書の記載を追いかけるかのように不気味に符合していく…。


ニューメイヤーはアタッシュケースの中身を詳細に分析、事件を回避する方法を模索し始める。証拠資料のひとつから人命を救う経験を得た彼は、シコースキー刑事や恋人のクラウディアと共に更なる追跡を行う。だがそんな二人の前に、アタッシュケースの中にあった容疑者リストに記載されていた裏社会の大物ロイ・ブレマーの影がちらつき始める。そして同じく容疑者リストに名前のあったクラウディアの口から思いもかけない事実が語られる…。アタッシュケースにつめられていたのは本当に未来の証拠品だったのか?それともやはり何者かのトリックなのか?
証拠どおりに起こる事件、秘められた過去、渦巻く陰謀-彼は一体どうなるのか?



『24』より面白かった。何より五回で終わるのがいい!
4回まで見終わった時点でエンディングについて色々空想を巡らせる。私の思いつきはシコースキー刑事が、映画『イレイサー』のシュワちゃんよろしくニューメイヤーの死を偽装し、ニューメイヤー自身は証人保護システムか何かを利用して正体を隠して生き延びるというもの。
ところが実際のストーリーはもっと物理学的で、しかも大どんでん返し!。シュレージンジンジャーの猫は重ね合わせの状態(superposisition)から「生」か「死」に収束するわけだが、エヴェレット解釈によると・・・・・これ以上はネタバレになるか。


話は変わるが最近物理学にハマった。真空論がとても面白い。
アリストテレスが「自然は真空を嫌う」としたのに対しトリチェリがマグデブルグの半球によってそれを否定する。
ニュートン力学の後継者が宇宙はエーテルに満ちているというのをアインシュタインの特殊相対性理論が否定する。
そして現在の量子論では、真空状態というのは無の状態ではなく、常に電子と陽電子の対生成や対消滅が起こっているというのだ。 
無から有がうまれるのでなく、最初から無ではなかったのだ。
これなら宇宙の創世-ビッグバン仮説-が少しは納得できる。
 宇宙創生についての説で私が知る限り最も魅力的なのは、ヴァン・ヴォークトのSF『イシャーの武器店』だった。あのラストの感動は忘れられない。