将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

令和に生きる大山将棋

守りの駒は美しい

―残留を決めた三浦九段戦における、美濃囲いの延命策も印象的でしたよね。

菅井「振り飛車の醍醐味でしたよね。自玉を絶対巣に詰まない形にして相手玉に必至をかける。これが理想の勝ち方です。あの将棋では出ませんでしたが、最後に▲1八玉と寄って一手しのぐような手筋を覚えれば、さらに振り飛車のレベルが上がります。」

―まさに振り飛車の奥義ですね。

         『令和3年版 振り飛車年鑑 2021』

           「振り飛車で戦うA級順位戦」(池田将之)より

下図は、菅井竜也vs三浦弘行(A級順位戦)の終盤戦。
と金で攻められている先手が苦戦と思わせたが、次の一手で持ち直す。 

図からの指し手

▲3九金打


△5九とでは▲2五桂が厳しいと判断した三浦九段は△2二玉と早逃げしたが、▲2五桂△3一銀に▲5八銀と、と金を払って先手が良くなった。

△5九と▲2五桂△4一銀と受けたならば、熱戦が続いていた。


遡って、図の△5八歩成で△4三金と銀を取っておけば後手の勝ちだった。


▲5五角△3三金寄▲6六角と飛車を取られるが、△4二金と銀を払いながら詰めろをかけて鉄壁だ。 







駒の損得を重視しない現代将棋

AIの影響で、駒の損得を重視しない現代将棋だが、昭和の時代は、大山康晴15世名人などに象徴されるように「駒得は裏切らない」(森下卓)という価値観が支配していいた。
大山康晴は、相手が駒損の攻めをしようものなら「米長さんは気前がいい」などとつぶやきながら、受け切って勝つのが常だった。
大山名人が現代にいたらもっと人間らしい将棋が見られることだろう。

里見vs脇

令和の時代に中飛車対棒銀というレトロな将棋が現れた。
里見vs脇(棋王戦)だ。
さらに▲3八飛と袖飛車にしたのは大山名人が得意とした作戦だ。
最近、里見女流が絶好調なのは大山将棋を学んでいるからに違いない。

図の局面の少し前、△7六銀に▲5八銀のところでは、大山名人なら▲7七桂とするような気もする。
AIは▲5八銀を推奨。
こうなると△8七銀成▲同金△7八飛成と攻め込むのは必然。
そこで▲4五歩を利かせて▲9八銀!
この働きそうもない銀を打てるのは、他には久保九段くらいか?
強い。

ただし、▲4五歩△5三銀の交換は余分だったかも知れない。
以下△8六歩▲同角△8八歩▲7七桂△8九歩成▲6五桂となった時に△6四銀と形よく受けることができたからだ。
▲4五歩△5三銀を入れずに▲6五桂と跳ねて、次に▲4五歩を狙った方が攻めとしては厳しかった。


図からの指し手
△8七銀成 ▲同 金 △7八飛成 ▲4五歩 △5三銀 ▲9八銀
△8六歩 ▲同 角 △8八歩 ▲7七桂 △8九歩成 ▲6五桂
△6四銀 ▲7七金 △7九龍 ▲6七金 △9九と ▲6八角
△8八龍 ▲3五角 △9八と ▲5七金(下図)


手順中▲7七金に△7九竜と逃げたのは小ミス。
△8八竜と逃げておけば▲6七金と活用できなかった。
さらに▲5七金と活用したのは、遊び駒を作らない大山流。

ここで後手は△3三歩 ▲同歩成 △同 角 ▲3四歩 △2四角と反発。
しかし、△3一玉(△4一玉)と受けた方が良かったかもしれない。


図からの指し手
△3三歩 ▲同歩成 △同 角 ▲3四歩 △2四角 ▲4六金
△8九龍 ▲4四歩 △同 歩 ▲2四角 △同 歩 ▲3五金
△6八角 ▲4六歩 △4五歩 ▲4四金 (下図)

図の局面から△4三銀としたが、▲3三角を食らって投了となった。
代えて△2二銀なら先手の難局だった。


現代将棋は、受けの技術が落ちたのか?
他人事ではないが。