将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

新手年鑑2020年版

 この一年で変化したのは「金の配置」だと思います。「金は引く手好手あり」「金銀は密接していると強い」「金は玉にくっつくべき」などが主流の大局観だったのは過去の話。ポツンと4八金型は当たり前で、バランス重視の駒組み全盛です。さらにはトーチカ破りの井出流6四金、松尾流穴熊を流行させた松尾が角換わりで自ら囲いを崩すような8七金型を採用するなど、金がドシドシ前進していきます。

7八金・7九金・8八銀のトーチカ、升田賞受賞のエルモ囲い、里見香愛用の「離れ金無双」と、囲いの金銀の配置もずいぶん変わりました。

 私が印象に残った金の使い方は現地の陣屋で観戦した王位戦第6局の木村の▲7七金です。7五にいる敵の飛車に金が向かっていく、木村将棋を象徴するような一手ではありませんか。今回も難しい手が多いですが、じっくり堪能してください。


七段 勝又清和   

  
勝又教授と一年ぶりの再会だ。
昔は、教授の講座「突き抜ける!現代将棋」が楽しみで『将棋世界』を買っていた。
2014.8号の「第56回 あっという間に知らない世界ー横歩取り最新事情」など、何度も読み返した。
講座が終了して、購読をやめた。


さて、今回の新手年鑑、私が知らない、したがってこのブログで触れていない新手も網羅されていて感動した。
No.6の「▲9七桂」やNo.7の「△9五歩▲同歩△同香▲同香△9八歩」など。
堪能した。


王位戦第6局、木村一基王位の▲7七金にも触れたい。


初手からの指し手
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7八金 △3二金
▲3八銀 △7二銀 ▲9六歩 △5二玉 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △2三歩 ▲2八飛 △9四歩 ▲2七銀 △3四歩
▲3六銀 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △8五飛
▲7六歩 △7四歩 ▲6八玉 △7五歩 ▲同 歩 △9五歩
▲同 歩 △7五飛 ▲2二角成 △同 銀 ▲7七金

豊島王位の軽い動きを否定するような▲7七金。
△3五歩と銀を追われる展開だけは許さないという強い意思を感じる。※
△7六歩から△7七角を誘っているあたり「千駄ヶ谷の受け師」の面目躍如だ。


※実際は、△3五歩▲7六歩△6五飛▲6六歩△8五飛▲8六歩△8四飛▲3五銀△8五歩で良い勝負だった。


日本語の難しさを感じた個所もある。
p.11「奨励会の頃から右玉はやっていたので、・・・」の箇所、「右玉は、やっていた」とも「右玉、はやっていた」とも読める。
前後の文章から前者であることは分かるが、明確にするなら「右玉やっていた」とか「右玉流行っていた」と書くべきか。