将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【minor戦法】菜々河流向かい飛車・阪田流向かい飛車・△3三金型三間飛車

菜々河流向かい飛車

バーチャルユーチューバー菜々河れいさんが編み出した『菜々河流向かい飛車』。
阪田流は相手が角交換することが必須条件だが、菜々河流は必ず向かい飛車にできる。
黒田五段は、菜々河れいさんの中の人と交流があり、この戦法を知った。
まず、対千葉戦(朝日杯)で菜々河流を披露したが敗れた。
今度は、小学生名人戦で戦ったことがある増田康宏六段相手に再び菜々河流を試みた。
 

結局、後手から△2四歩と仕掛けづらいので△3二金と引いて、角交換振り飛車のような形になった。

独創性がありそうで、そうでもない作戦。



阪田流向かい飛車

大正8年に阪田三吉が土居市太郎相手に用いたため「阪田流向かい飛車」と呼ばれるが、阪田オリジナルでなく、江戸時代からある戦法。
その後、大山・升田も用いたが、小林健二が下図のような革命的な手法で復活させる。 

アマチュアからヒントを得たというこの急戦は、一時猛威を振るった。
図から▲5六角が気持ちいい手で△3三銀▲8三角成と馬を作れるのだが、△2五金▲4六歩△2六歩▲4七馬に△5四角(図)と圧力をかけられて困る。

次の△3五金からの歩成が分かっていても受けにくい。
対策に悩んだ挙句、▲3八銀とすると飛車が狭いと、銀を上がらなくなった。
とにかく指されて嫌な戦法だった。






徳田四段がタイトルホルダーに勝つ

居飛車党の徳田四段が阪田流向かい飛車を採用した。

すぐに△3三角とせずに△1四歩としたのが細かい工夫。
関西では都成流と呼ばれているようだ。
▲2四歩は△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△2二銀とするつもりか?
以下▲2八飛には△2七歩がある。
その後△3三金~△1三銀~△2二飛と阪田流向かい飛車にする狙いだ。


先手は▲7八金としたが、▲6八玉なら△8四歩から横歩取り△3三桂を目指す予定。
△1四歩と▲6八玉の交換は、後手が得している。
▲7八金には△3三角から阪田流向かい飛車となった。

▲7七玉が先の▲7八金を生かした囲い方で、△1四歩がさほど生きる展開にならないので、先手としては不満ない。
唯一の心配は、△8八玉を狙った角のラインだが・・・

後手の△2四歩▲同歩△同金に▲7七角と玉の斜めラインを防ぎながら攻める。
△3三角▲3六歩に△2五金は▲3三角成△同桂▲7七角△4二銀▲3五歩が厳しい。
したがって△4二銀は仕方ないが、▲3七銀(下図)が間に合った。

図のようになると、阪田流向かい飛車が成功したとは言い難い。
今後、徳田四段がこの戦法を採用するかどうか注目したい。


羽生の対策


最近、糸谷哲郎八段が採用して注目されている阪田流向かい飛車。
大昔、羽生九段も対峙したことがある。
1993年2月17日対局の羽生vs森安。
森安秀光九段は、阪田流向かい飛車から中央へ金を繰り出す趣向を見せた。
しかし、金が前線へ出るのは形が悪いので、羽生は▲6六銀と咎めにいく。


図の△6四角にどうするか?
4六の歩を守る▲4七金は最悪で、△4五歩と歩で攻められ後手の駒が勢いづく・
横歩取りでもそうだが、大駒で歩を取られるのはそんなに痛くない。
痛いのは、歩で取られる場合だ。
図の局面から羽生竜王は▲7七角※と打った。
この手が決め手で、△4六角なら▲4七金△6四角▲5五銀左で優勢。
このままでも▲5五銀左がある。


この後、▲6五銀の好手が出て羽生快勝。


※実戦の展開を考えると▲8八角の方が良かったかも知れない。
cf.『羽生善治全集~名人獲得まで』p.364


豊島の対策

豊島vs糸谷(王将戦)で見せた豊島の対策が秀逸だった。 

図からの指し手

▲4四角 △同 歩 ▲7七角 △3三角 ▲4五歩 △同 歩

▲4四歩(下図)

 

角を閉じ込めて、将来の▲4五桂や▲4五銀を狙う。

こうなると△2四歩の仕掛けが早かったか?

 

図からの指し手

△2三飛 ▲4七銀 △2二角 ▲3七桂 △6二銀 ▲5八金右

△2五歩 ▲5六銀 △3五歩 ▲4五銀 △3三桂 ▲3五歩




私の実戦例

居玉から△2四歩▲同歩△同金とされた後、△2五歩から美濃囲い。
落ち着いた展開になった。

△3五歩を取るわけにはいかないので▲7九金とエルモ囲いに締まった。
△3四金に▲2七歩と受けるのでは情けない。


図からの指し手
▲7九金 △3四金 ▲3五歩 △同 金 ▲3八飛 △3四歩 
▲3六歩 △2六金 ▲2八飛 △2四飛 ▲3八金 △3三桂
▲2七歩

阪田流向かい飛車に対するトラウマが晴れた瞬間だ。


△3三金型三間飛車

図を見て、よくある一手損早石田で、▲4五角の筋を一旦守った後、△3四飛~△3二金から石田流に組む進行を予想していたら▲7八玉に△3三金を見てびっくり。
棋聖戦で里見女流五冠が都成五段を相手に男前な作戦を披露した。
しかし、軽く捌く棋風の里見女流五冠には、このような重い作戦は向かないのではないかと心配したが、実戦の進行を見て、その心配は杞憂に終わった。
△3三金型三間飛車は、里見流にmatchした作戦だったのである。

図の局面で▲5六角が気になる。
以下△4四金▲4七銀△5五金▲3四歩が想定されるが、先手がわざわざ好んで飛び込むほどの変化ではない。


図の▲6五銀は、次に▲7四歩△同歩から▲5五角のような玉のコビン攻めを狙っている。
これに里見女流五冠は△4五歩と仕掛けた。
都成五段は▲7四歩△同歩▲2四歩△同歩と2三の空間を開けてから▲4五歩と戻す。
飛車の横筋を通し、場合によっては▲7六飛の転回を目論んでる。
すぐに▲5五角と打っても△7三角で無効。しかし、後手にとっては気になる筋なので△5五角とラインに先着する。
△5五角では△4六歩と垂らすのが有力だった。また、▲3七角△同角成▲同桂の後も△4六歩の垂らしが有力で、次に△2五歩があり、先の▲2四歩の突き捨てが指し過ぎになるところだった。


里見女流五冠は▲3七同桂に再度△5五角と打った。
▲3八歩と桂馬を守った手に△6四歩▲7四銀△7三歩とキズを消した。
しかし角を手放して目標になった上、先手の▲8五銀も好位置で、後手が形勢を損ねた。
△4五桂と里見女流五冠は角の逃げ道を作り、都成五段は、▲5六飛△3三角と角を追った後、▲9五歩 △同歩▲9三歩と好調に攻めた。
桂馬が持ち駒になることは見えており、端攻めは機敏だった。

里見女流五冠はやむなく△同桂と取ったが、▲7六銀引と引かれてみると、端に大きなキズができた。
ここまでは都成五段が好調だったが、△3七桂成▲同歩△4二飛に金取りと打った▲2三角は手が滑った。


△7七角成▲同桂△3三金となって角が負担、都成五段の見落としか?
以下▲9四桂に里見女流五冠は△8一玉と逃げたが、△9二玉との比較は難しい。△7一玉は▲3一角が厳しい。
実は、△8一玉にも▲3一角が有力だった。△4九飛成▲5九金寄り△4三竜▲4四歩△同竜▲2二角成△6五歩に▲3三馬なら△9四竜で難解な形勢だが、▲9五香とされると△7一金に▲7四歩が厳しく先手有利だった。
ところが都成五段は、▲4五角打と角に紐をつけた。△7一金に▲4六飛が狙いの一手だったが、△5四桂がぴったりで後手が優勢になった。


以下、▲4八飛△2三金▲同角成△4八飛成▲同金△4六飛▲5一飛△6一銀左▲5八金寄△7六飛▲8六金△7七飛成▲同玉△8五桂打▲7六玉△8八角▲5六馬△7七角成▲7五玉△6三銀打まで96手で後手の勝ち