将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【角換わり】右玉(その2)

藤井fan

後手番の救世主となるか?

名人戦第五局で先手番の永瀬九段の角換わりに対し、後手番の藤井名人は右玉を選択して千日手に持ち込んだ。

千日手指し直し局でも後手番の永瀬九段が選択したのが右玉。

どうやら角換わり後手番で最有力の陣形は右玉らしい。


△4四銀型の右玉については、(その1)を参照のこと。


水匠定跡の右玉

初手からの指し手

▲2六歩      △8四歩      ▲2五歩      △8五歩      ▲7六歩      △3二金

▲7七角      △3四歩      ▲8八銀      △7七角成    ▲同 銀      △2二銀

▲4八銀      △3三銀      ▲3六歩      △6二銀      ▲4六歩      △4二玉

▲7八金      △7四歩      ▲4七銀      △6四歩      ▲6八玉      △6三銀

▲3七桂      △7三桂      ▲4八金      △9四歩      ▲9六歩      △1四歩

▲1六歩      △6二金      ▲5六銀      △5四銀      ▲6六歩      △8一飛

▲2九飛      △5二玉      ▲6九玉      △4四歩      ▲7九玉      △6三金

▲8八玉      △6二玉

ここで▲2七飛が定跡。今、後手は最善形なので、それを崩そうという意図。

△4一飛の手待ちには▲2八飛△8一飛▲5八金となって、△4三銀は▲4五歩と一歩持たれる。類型が高田vs服部戦。

後に詳述するが、伊藤匠vs藤井聡太(叡王戦第四局)では▲5八金とできるところを▲4九金とした。△3一飛にさらに▲5九金。


伊藤匠二冠の右玉~第67期王位戦第一局

穴熊は怖くない

2026.7.4から浜松市で対局された第67期王位戦第一局。

藤井王位は公式戦14連勝中。

「好調」と表現したいが、この人の場合はこれが通常運転。

先手を得た藤井王位は、得意とする角換わりに誘導。

後手の伊藤二冠は、右玉で対抗した。

先手の藤井王位は4八の金を5八に寄せる。

右玉に対しては旧型(▲5八金型)が良いというのがプロ一般の常識。

そして▲9八香と穴熊を目指す。

待機戦術の△3一金引き、そして△4二金。

伊藤二冠は先手が穴熊に組まれるのを恐れてないようだ。

永瀬対藤井戦では▲6七銀に△4四銀と出て戦いになったが、4二金の形なので△4四銀と出ると2筋が薄い。


伊藤二冠の研究手

4二金の形から△6五歩と仕掛けるのが伊藤二冠の構想だった。

4二の金は3二にあるより玉の守りに働いている。

反面、2筋が薄いので3三の銀を動かせない。


図から▲同歩△同桂に▲6八銀と桂取りを主張するのは、△3五歩と桂頭を攻められるが、△4二金型なのでこれもあったか?

△4二金型は、2筋が薄いので、▲4五桂と跳ねられる手段が厳しい。

藤井王位は、▲6六銀△6四歩としてから▲4五桂を決断した。

誤算があった▲4五桂跳ね

△4四銀と逃げてくれるなら先手としても調子がいいのだが、△3七角と打ちこまれる。

先手の狙いのひとつは7筋に飛車を転回しての▲7五歩。

単に引くより、△3七角を打たせてから▲2九飛と引く方が働いているとみたのか?


銀桂交換の駒得で2九飛型を実現したが、4六の馬も5七を狙って好位置。▲2四歩からの飛車先交換も防いでいる。

できれば▲4七歩とこの馬を追いたいが、△6五馬が△8六歩▲同歩△8七歩を狙ってさらに好位置。

しかしそこで▲7八銀打と固めておけば、実戦のように8筋の守りが金一枚しかない状態にはならなかったか?

馬を追って後手を引くのでは選びにくい手順だ。


馬の威力が思ったより大きかったのが誤算で、▲4五桂では単に▲2九飛として7筋転回を狙った方が良かったが、藤井王位は△4四歩とされて後の展望が見えなかったようだ。

また感想戦では▲7七桂!という手を伊藤二冠は指摘。△同桂成▲同銀△4四歩に▲6六歩と固めるか、▲7八銀と引いて△6五歩を誘うか?

そこで▲9五歩と端攻め。

端は穴熊の急所であると同時に右玉の急所だ。

藤井「▲9五歩から行くのでは、つくりが悪かったですか」

歩を渡したので8筋の継ぎ歩が厳しいが、藤井王位は68手目に△8五歩ではなく△9六歩を本線に考えていたようだ。

継ぎ歩には▲8五同歩の予定。

以下△8六歩▲7六銀△4五馬▲7四歩△8七桂▲同銀△同歩成▲同金△7八銀▲8六金△8七歩▲6八金△7四銀は後手よし。

「△4五馬が痛い説に気づいて▲8五同歩とできなかった」

▲8五同歩△8六歩▲7七桂の変化には「△9六桂が厳しい」と藤井猛九段が指摘。

伊藤は「継ぎ歩に▲7七桂の変化もちょっとわからない」


藤井王位は▲7七桂△8六歩▲9二銀△8四飛▲8三角△8二玉の変化に自信持てず、予定変更で▲9二銀と打ち込んだ。

△8二飛にどうするか?

▲8三角と打つのが自然だが、清算され、入手した飛車を王手に打っても逃げられるので▲9一飛か▲7一飛か?

藤井王位は図から▲4九飛と紛れを求めた。

仮に△3六馬と逃げられ、それから▲8三角と打っても4九の飛車が効いているかどうか判らない。しかも後手は他の手を選ぶことができる。


この▲4九飛で封じ手となった。

△3六馬と馬を逃げるか、△8六歩と馬を犠牲にして攻めるか?

封じ手

封じ手は△8六歩。

伊藤二冠は積極的だ。

これには▲8三角と打って▲4六飛とするのが勝負手。

△8七桂が見えているが・・・

と金を作らせた後、▲8五飛の王手でと金を外すのが藤井王位の読み筋。

この王手に△8四歩か△8四銀かだが、実戦の△8四銀が正着で、△8四歩なら▲8七飛△9六歩の時に、藤井王位の狙いの▲7一角が炸裂するところだった。

△7二金に▲9三角成△同玉▲8九香などがうるさい。

実戦は△8四銀なので▲7一角に△7二玉で受かる。

次に▲7五桂が見えているので△7四同銀と取るのが自然だが、伊藤二冠は△9七歩成▲同桂△7七角と踏み込んだ。

桂を渡すと詰むので狙いの▲7五桂は打つことができない。

藤井王位は▲7三角(図)と、凄い場所に角を打ちこんできた。

棋界最高峰の終盤

谷川浩司「先手が藤井王位以外の人間なら一方的にやられていただろう。後手が伊藤二冠以外の人間なら逆転されていただろう。」

藤井王位の仕掛けたトリックは二段構え。

このまま△7三金▲同歩成△同玉と清算するなら、▲7七銀△同桂成▲5一角△6二合駒に▲8五桂という王手の筋。取れば▲8三金△同玉▲8五飛と気持ちの悪い局面になる。

それを嫌って実戦のように△9七香成とすれば、入手した香で田楽刺しを狙う。

▲7九香の田楽刺しは自然だが、▲7八香と一路上に打つ手があった。

実戦のように△9八歩なら今度は▲8九玉と逃げて7九に退路が開けている。

▲7九にに香を打った藤井王位が用意していたのがこの角。

△7六歩に▲同飛△同角に▲7七香と目障りな成桂を払って先手陣の寄せがにわかに見えなくなった。

そこで△7九飛。

王手しないのが好手。


図から▲8九桂。

ここでタダの角を取らないのが藤井王位の矜持。

▲7六香△6二玉となると相手を安心させてしまう。

あくまでも▲5一角と下から焙るようにしたいのだ。


しかし相手は伊藤二冠。

△8六桂▲9九玉△7七飛成と急所の香を取ったのが決め手。

図から△5八竜が冷静な一手。

詰めろをかけながら、上部を広くして負けのない形になった。


伊藤匠二冠の右玉~第36期竜王戦第四局

△4二金の手待ち

2023年度熱局第9位に選ばれた、この期の竜王戦随一の名局。

ちなみに第1位は、藤井八冠誕生の王座戦第四局である。

詳細は『将世2024.7号』に。

△4二金と手待ちする手に▲4五歩と仕掛けると藤井vs伊藤戦のような展開が考えられる。

さらに▲2九飛と手待ちした佐藤紳vs小山戦や澤田vs木村戦がある。

後手は4五の桂をタダで取りたいので△1三桂と逃げたが、▲1五歩が継続の攻め。

歩がないので狙いがわかりにくいが、△同歩なら▲1四角が厳しい。

この端攻めが間に合うという感覚を身に着けたい。

ここで手抜いて▲1三歩成に驚いたが、対局者二人にとっては既定路線。

並みの人間なら▲8六同歩(▲8六同銀は△8四桂)△8五歩▲同歩(▲1三歩成△8六歩▲8七歩は本譜と合流)

永瀬vs増田(abemaトーナメント2025予選Bリーグ二位決定戦)では▲8六同歩と取ってしまい、△8五歩▲1三歩成△8六歩▲8七歩に△6七銀を食らった。

図からの指し手

▲8六歩      △7八銀成    ▲同 玉      △5五桂      ▲7九桂      △4七歩

▲5八金      △4六銀      ▲4五角      △4八歩成    ▲同 金      △5七銀成

▲2四飛      △6七金      ▲同 桂      △同成銀      ▲同 角      △同桂成

▲同 玉      △5五桂      ▲6八玉      △2四歩      ▲5六銀      △3九飛

▲5九歩      △4七歩      ▲5八金      △3七角      ▲5七銀      △4九飛成

▲1五角      △同角成      ▲同 香      △3七角      ▲2七角      △1九龍

▲3五歩      △5四歩      ▲4六桂      △5三金上    ▲4九歩      △2六角成

▲3八銀      △2七馬      ▲同 銀      △2八龍      ▲3六銀      △7五歩

▲4五銀右    △2七角      ▲5四銀      △同金直      ▲7五歩      △7六歩

▲同 銀      △8六飛      ▲8七金      △8一飛      ▲8三歩      △4五金

▲7七玉      △8三飛      ▲8六歩      △8五歩      ▲同 歩      △同 桂

▲同 銀      △同 飛      ▲8六歩      △8一飛      ▲5五銀      △同 金

▲4四角      △7二玉      ▲5五角      △4五角成    ▲6七桂      △6九銀

▲5六桂      △7八銀打    ▲8八金打    △6七銀成 まで後手勝ち



▲8六同歩△8五歩▲同歩△8五桂▲8六銀として8筋の反撃を見るのは、△3三角(参考図)がぴったり。


参考図

手抜いて8筋の歩を切ってもらった方が、後に下図の▲8三歩(変化図)のような反撃が可能になる。

下図は、上図から▲1三歩成△8七歩成▲同金△8六歩▲同銀△8五歩▲7七銀に△8六銀(実戦は△5四銀)▲4三歩△5二金▲7八銀△8七銀成▲同銀△8六金に▲4二歩成△同金▲8三歩とした変化。


変化図

△同飛なら▲5一銀という攻めを狙っている。

この順を避けて伊藤匠七段は△5四銀と引いて自陣を固めたが、それでも▲4三歩。取ると、▲8三歩△同飛▲2三と△1九香成▲同飛△8六香▲1一飛成となって、下段がスカスカだ。

最善の△4一金に▲8三歩(下図)が鋭い手だが、▲9五歩という手もあった。

△9五同歩なら▲9四桂△同香▲9二銀△8二飛▲8四歩で一時的に駒損だが、△9二飛▲8三歩成△9一飛▲8二とと飛車を追って▲8三角と打てば先手有利になる。

端は右玉攻めの急所だ。

したがって▲9五歩には手抜いて△8六銀▲9四歩△1三香▲8二歩△同飛▲9三歩成△同香▲同香成△9五桂に▲9六銀と頑張るが△8七桂成▲同銀△8四飛▲9六桂△8七銀成▲同玉△8六金▲同銀△同歩▲7七玉△8七歩成▲6七玉△7七と▲同桂△8八飛成▲7八金が変化の一例だが先手悪くない。

△同飛に▲1四角△3二金▲2四飛が驚きの飛車切り。

しかしこの場合は疑問で、▲4二歩成△同金▲2三角成△3三角▲4三歩△同金▲4一馬が勝った。


勝利を逃した手順前後

▲3二角成に△6七銀として▲6九金と受けられてハタと困った。

ここで△8六歩は▲同銀と取られて継続手が難しい。

△6七銀は手順前後で、先に△8六歩なら△6八飛があるので▲同銀と取れず、▲8六同金に△6七銀▲6九金なら△8五桂打が厳しかった。

▲4二歩成と手抜けば、△7七桂成▲同玉△8六飛▲同玉△7五銀(図)で寄ってしまう。

△8五桂には▲8七歩と受けるが、そこで△2九から飛車を打つのが肝要で、△3九飛だと▲4九桂(図)で攻めが遅れる。△2九飛なら△3九飛成とできるのが大きな違い。

△2九飛に▲5九桂は、△7七桂成▲同玉(▲同桂も△7八銀打)△7八銀打(図)で寄ってしまう。

ただし、▲4七角と打たれるのが△2九飛の欠点。

(△3九飛成▲3八金の交換を入れるかどうかは微妙)△1九飛成▲7五桂(図)△7七桂成▲同桂(▲同玉は△6五桂)△8六飛▲同歩△8七歩▲9八玉△7五歩が詰めろ。

▲8二飛が詰めろ逃れだが、△7二桂▲8一銀としても、やはり△9七香▲同玉△8五桂(図)と攻められて困る。

▲8五同飛成と取るしかなく、△8八銀▲8七玉△7七銀成▲同玉△7六銀と竜を剥がしてしまえば後手勝ちだ。


実戦は、単に△6七銀と打った。△8六歩でなく、後の△8六香に期待したのだ。

▲6九金以下△2九飛▲5九桂△1九飛成▲4二歩成△8六香▲9八銀に△8四桂と進行。

これも際どい変化だが、藤井聡太は間違えない。

少し手順を省略して下図は最終盤の局面。

▲5四馬の詰めろに△6五桂の王手が伊藤匠の返し技。

これにも▲同馬△同歩として難解な詰めを読み切っていた。

藤井聡太の名局のひとつ。


図からの指し手

▲6五同馬  △同 歩      ▲7二金      △同 玉    ▲6一角      △7三玉      

▲8三角成  △同 玉      ▲8四銀      △同 玉    ▲7六桂      △7三玉      

▲8五桂      △7二玉      ▲7三歩      △8一玉    ▲8三香      △8二歩      

▲6一飛


投了図

投了図からの詰め手順

△7一角      ▲7二歩成    △同 玉      ▲8四桂      △8一玉      ▲8二香成

△同 玉      ▲8三歩       △8一玉      ▲7一飛成   △同 玉      ▲8二角

△8一玉      ▲9一角成    △同 玉      ▲9三香      △8一玉      ▲9二香成

△7一玉      ▲8二歩成まで


タテに二つ並んだ桂馬の利きは強い。



藤井vs増田(2025abemaトーナメント)

対増田戦(2025abemaトーナメント)で、藤井七冠は、飛車を回らず▲6七銀と引いている。右四間に自信がなかったか?

次に▲5六歩からの位取りを狙っているが、後手も△4三銀として▲5六歩に△5四歩を用意した。5筋を突きあう形になると先手から仕掛けにくくなる。

▲4八金~▲2九飛と定型に戻した藤井七冠は、▲5六歩と突かずに再び▲5六銀と戻し、4筋の歩交換に成功して形勢をリードしたかに見えた。

その後、と金を作った後手の増田八段が、巧みに活用して押し気味に進める。

しかし、持ち時間の少ないフィッシャールールで受けを誤り、大魚を逃した。

このと金引きが遅いようで次の△4八角が厳しい。

実戦は、▲2二歩に△4八角が実現。▲6七金左とは指しにくいので▲6七金右△4六と▲4九飛だが、冷静に△3七角成として後手有利になった。

以下▲5七歩△3八馬に最初から▲7九飛なら本譜と同様に進んだだろうが、一旦▲6九飛と途中下車して△4七馬に▲7九飛としたため△6九金が生じた。

△4七馬に▲6八飛とするのは△5七金を利かされるのが嫌だ。

しかし、増田八段は飛車取りを見送って△5七馬とした。

これも筋の良い手だ。

△6六馬が見えているが、藤井七冠は▲5五桂と勝負。

痺れた。

ここで△7四金なら後手が僅かにリードしていた。

▲8五桂には△同飛▲同歩△8七桂成▲同玉△7五桂▲同飛に△8六銀から王手で飛車を取れる。▲7五同玉に△7四銀▲7六玉△8五銀▲同玉△8八飛が限定打。▲8六合駒に△8四歩▲7六玉に▲7八飛成を用意している。

▲8六桂と合駒しても△8四歩▲7六玉△7八飛成▲7七角(金合すると、△8七銀▲7五玉△7七竜から△8五金で詰む)△8五銀▲7五玉△7四歩▲同桂△同銀▲8六玉△8五銀▲9七玉△9六銀▲同玉△9五歩▲同角△同香となって、▲同玉は△7五竜▲9四玉△8三角▲9三玉△8一桂。▲8六玉が最善で△7四桂は端に逃げられるが、△8八竜があって香車を拾える。▲8七金△7四桂に▲7六玉△7五歩▲同玉△8六角▲7六玉なると打歩詰めの形だが、△6六馬捨てがある。

以下▲同金に△8七竜以下詰む。


実戦は、最後2一のと金が働いてまさかの詰み。

やはり右玉は薄い。

早指し戦としてはqualityの高い一局。



「いきなり詰んだ!」「何が起きた!?」藤井聡太七冠ー増田康宏八段、劇的な逆転決着!(ABEMAトーナメント2025)


ツノ銀右玉


「オーベルジュときと」の戦い(永瀬拓矢vs藤井聡太王将戦第三局)

王将戦第3局では藤井聡太王将の右玉が見られた。

飛車先交換に早速反発。

飛車先交換では▲6七銀や▲9八香から穴熊を目指す順もあった。

▲8六同歩は58分の長考。

継ぎ歩されるが、反撃できるとの読みだ。

▲8六同銀は△3六歩▲同飛(▲4五桂は△5五歩▲6七銀△3七角)△4九角▲6八金右△2七角成▲4五銀が想定され、本譜が優る。

ここで▲4七銀は△3六歩とされ、▲2九飛以下二枚替えになる。

実戦は▲8二歩△同飛▲4八金となって△7六角成とされても▲8七歩以下先手陣を修復して互角の形勢だ。

▲6七銀が有力だった。△3八角成に▲4五桂△4四歩に▲9五歩の逆襲がうるさい。

取れば、端に連打して▲9三歩と垂らす。

継ぎ歩を逆用した手順で気持ちいい。

これなら右玉退治のお手本となっただろう。


実戦も名局となった。

図の▲6二銀が幻の名手として記憶に残る。

詳しい解説は、『将世2025.4号』をご購入してください。


△3三銀型右玉

山下vs高田(竜王戦)

竜王戦での快進撃により特別昇段をほぼ勝ち取った山下三段。

右玉のスペシャリスト高田五段相手に、駒組勝ちから圧倒した。


右玉攻略の自陣角

このように角換わり右玉には筋違い自陣角が有効。
升田・高橋・羽生の模範演技を紹介する。


升田図

まずは、「将棋の鬼」升田幸三から。
図は、1966年4月21日22日に福岡市西高宮「萩の宮山荘」で対局された升田vs大山の名人戦でのライバル対決。
升田が「将棋の鬼」と呼ばれたのに対し、大山は「勝負の鬼」と呼ばれた。
直接の狙いは▲7五歩の桂頭攻めだが、△6一玉で簡単に受かるように見える。
ところがこの角の効きが絶品で、先手が盤上を制圧することになる。
升田の名角のひとつ。



高橋図

次は、「地道流」高橋道雄。
図は、1988年2月15日に愛媛県道後温泉「ホテル春日園」で行われた棋王戦(高橋道雄vs谷川浩司)。
中原誠16世名人が加藤一二三九段に名人を奪われた後、加藤を破って若くして名人になった天才谷川浩司。
絶対王者になるものと期待されたが、中原誠は依然として強く、そのライバル米長邦雄もタイトルを窺い、そしてこの高橋道雄も羽生世代が登場するまでは覇権を争っていた。
谷川のライバルとしては田中寅彦が有名だが、この当時、谷川が意識していたのは高橋道雄だった。


先手の高橋が自陣角を放ったところ。
相掛かりの出だしだったため、先手が歩を手持ちにしているのが大きい。
髙橋将棋は、天才谷川のような派手さはないが、確かな戦略眼があった。
この角は桂頭だけでなく、遠く9二の地点を睨んでいる。
そのため△8四飛としても▲7五歩△同歩▲9五歩と攻めが続く。
以下△7四銀と受けても▲9四歩△9五歩に▲同香△9四香▲同香△同飛▲9五歩△8四飛のの後、▲7六歩△同歩▲同銀直△7五歩▲7四角△同飛▲7五銀△同飛▲7七香や、△7四銀▲9四歩△9五歩に▲9三歩成(すぐに▲7六歩もある。△同歩▲同銀右△7五歩に▲同銀△同銀▲7六歩△3九角▲1八飛△8六歩▲同歩△同銀▲8五歩で△同飛なら▲7四角の両取りが厳しい。)△同香▲7六歩△同歩▲同銀直△7五歩▲同銀△同銀▲9二角成△9四飛▲7四歩など攻めが続く。


図から実戦の指し手
△8四飛 ▲7五歩 △同 歩 ▲7六歩 △5五銀 ▲9五歩 
△4六銀 ▲9四歩 △5七銀成 ▲9三歩成 △6五歩 ▲2七角 
△5八成銀 ▲同 飛 △6二玉 ▲8八玉 △2四角 ▲9二歩 
△同 香 ▲同 と △5七金 ▲1八飛 △9八歩 ▲同 香 
△9七歩 ▲同 香 △6四銀 ▲5九香 △6七金 ▲同 金 


羽生図

そして最後に羽生善治の自陣角が、竜王戦の△6三角。
佐藤康光著『佐藤康光の一手損角換わり』で紹介された手。
銀の手持ちが大きく、△3五歩▲同歩△2七銀となれば後手が指しやすい。
▲9七角には△8六歩▲同角△同飛で後手良し。


1筋の位を生かすために右玉にした先手の谷川だったが、羽生の穴熊の構想はそれを上回った。
しかし、ソフトは穴熊を高く評価しないので、今日の目で見ると作戦的に悪くない。
▲5五銀ぶつけに代えて▲7五銀ともたれておけば先手良し。




第64期王位戦第三局(藤井聡太王位vs佐々木大地七段)

初手からの指し手
  ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7六歩 △3二金
  ▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
  ▲4八銀 △3三銀 ▲4六歩 △6二銀 ▲7八金 △6四歩
  ▲3六歩 △4二玉 ▲1六歩 △1四歩 ▲6八玉 △6三銀
  ▲9六歩 △9四歩 ▲3七桂 △7四歩 ▲4七銀 △7三桂
  ▲4八金 △8一飛 ▲5六銀 △6二金 ▲6六歩 △5四銀
  ▲2九飛 △5二玉 ▲6九玉 (図)

先述のように▲6九玉に対して△4二玉▲7九玉△5二玉▲8八玉△4二玉となると、▲4五桂と仕掛けて先手良し。
  そこで△6三金▲7九玉△4四歩▲8八玉△6二玉と佐々木大地七段は右玉にした。


△6三金 ▲7九玉 △4四歩
  ▲8八玉 △6二玉 ▲6七銀 △4三銀 ▲5九飛 △4二金
  ▲6九飛 △4一金 ▲5六銀 △3二金




第31期銀河戦決勝

開始日時:2024/07/10 13:17:20
  先手:丸山
  後手:藤井
  ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7六歩 △3二金
  ▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
  ▲3八銀 △3三銀 ▲4六歩 △6二銀 ▲4七銀 △7四歩
  ▲7八金 △1四歩 ▲1六歩 △7三桂 ▲6八玉 △6四歩
  ▲3六歩 △6三銀 ▲9六歩 △9四歩 ▲3七桂 △4二玉
  ▲4八金 △6二金 ▲5六銀 △8一飛 ▲6六歩 △5四銀
  ▲2九飛 △5二玉 ▲6九玉 △6三金 ▲7九玉 △6二玉
  ▲8八玉 △4四歩 ▲5九飛 △4二金 ▲6七銀 △5五銀
  ▲4五歩 △同 歩 ▲2四歩 △同 銀 ▲4五桂 △8六歩
  ▲同 銀 △6五歩 ▲5六銀 △同 銀 ▲同 歩 △5四銀
  ▲4三歩 △5二金 ▲5三桂成 △同金寄 ▲5五歩 △6三銀
  ▲5四銀 △3三銀 ▲5三銀成 △同 金 ▲5四金 △5二歩
  ▲6三金 △同 金 ▲5四銀 △同 金 ▲同 歩 △6三金
  ▲3七角 △4四角 ▲5五金 △8四桂 ▲7七銀 △7五歩
  ▲4二歩成 △7六歩 ▲8六銀 △5五角 ▲同 角 △4二銀
  ▲7四歩 △同 金 ▲7五歩 △7七銀 ▲同 桂 △同歩成
  ▲同 玉 △7六銀 ▲6八玉


第71期王座戦第二局

開始日時:2024/07/10 13:15:37
  先手:永瀬
  後手:藤井
  ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7六歩 △3二金
  ▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
  ▲1六歩 △9四歩 ▲9六歩 △1四歩 ▲3八銀 △3三銀
  ▲3六歩 △6二銀 ▲3七桂 △5二金 ▲4六歩 △6四歩
  ▲7八金 △7四歩 ▲6八玉 △7三桂 ▲4七銀 △6三銀
  ▲6六歩 △8一飛 ▲5六銀 △6二玉 ▲7九玉 △5四歩
  ▲5八金 △7二玉 ▲4七銀 △6二金 ▲2九飛 △4四歩
  ▲8八玉 △4二金 ▲5六歩 △6五歩 ▲同 歩 △同 桂
  ▲6六銀 △6四歩 ▲6七歩 △7三金 ▲7七桂 △5二金
  ▲6五桂 △同 歩 ▲7七銀 △6四金 ▲7九玉 △6二金
  ▲4八角 △5五歩 ▲同 歩 △同 金 ▲9五歩 △5一飛
  ▲5九飛 △3五歩 ▲9四歩 △3六歩 ▲5六歩 △3七歩成
  ▲同 角 △5六金 ▲同 銀 △同 飛 ▲5七歩 △5一飛
  ▲4五歩 △9八歩 ▲同 香 △9七歩 ▲同 香 △5三角
  ▲8九桂 △3六歩 ▲2八角 △4五歩 ▲9三歩成 △4六桂
  ▲6八金右 △6一玉 ▲4三歩 △5二玉 ▲3四歩 △同 銀
  ▲4二金 △同 角 ▲同歩成 △同 玉 ▲1七角 △5二金
  ▲8三と △5八歩 ▲3九飛 △9六歩 ▲7三と △9七歩成
  ▲6二と △4一飛 ▲5二と △同 銀 ▲9七桂 △同香成
  ▲6四角 △3二玉 ▲6二角成 △6一銀打 ▲4二歩 △3一飛
  ▲4一金 △6二銀 ▲3一金 △4三玉 ▲4一歩成 △4四玉
  ▲9七角 △3七香 ▲6九飛 △4七桂 ▲8八玉 △9六歩
  ▲4二角成 △5三銀直 ▲9八歩 △5九歩成 ▲9九飛 △4二銀
  ▲同 と △3八香成 ▲2六銀 △2七金 ▲1七銀 △3五玉
  ▲4三と △1七金 ▲同 香 △4三銀 ▲4二飛 △5二銀打
  ▲2二飛成 △2六玉 ▲2四歩 △1七玉 ▲2三歩成 △2七歩
  ▲4四歩 △同 銀 ▲5二龍 △2八歩成 ▲6二龍 △5八桂成
  ▲6五龍 △6八成桂 ▲同 金 △9一香 ▲8四銀 △9七金
  ▲同 歩 △同歩成 ▲同 飛 △7九角 ▲同 玉 △9七香成
  ▲8八金 △9六歩 ▲7八玉 △8六桂 ▲同 銀 △同 歩
  ▲7七玉 △8七歩成 ▲6六玉 △5五銀打 ▲同 龍 △同 銀
  ▲同 玉 △8八成香 ▲6二角 △1八玉 ▲5三角成 △8六角
  ▲7五歩 △6八角成 ▲5四玉 △7五歩 ▲同 銀 △5七馬
  ▲6六歩 △1五歩 ▲2一金 △1六歩 ▲1一金 △1七歩成
  ▲4五玉 △5八飛 ▲5四銀 △5二歩 ▲6三馬 △5六馬
  ▲4四玉 △4二飛 ▲3三玉 △2三馬

棋王戦

開始日時:2024/07/10 13:16:06
  先手:伊藤
  後手:本田
  ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7六歩 △3二金
  ▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
  ▲7八金 △3三銀 ▲3八銀 △6二銀 ▲4六歩 △6四歩
  ▲3六歩 △6三銀 ▲1六歩 △1四歩 ▲9六歩 △9四歩
  ▲3七桂 △4二玉 ▲6八玉 △7四歩 ▲4七銀 △7三桂
  ▲4八金 △8一飛 ▲5六銀 △5二金 ▲6六歩 △5一玉
  ▲6九玉 △6二玉 ▲7九玉 △5四歩 ▲8八玉 △7二玉
  ▲5八金 △6二金 ▲9八香 △4四銀 ▲2四歩 △同 歩
  ▲同 飛 △3三桂 ▲9九玉 △3五歩 ▲4五歩 △5五銀
  ▲同 銀 △同 歩 ▲6八金右 △4六角 ▲2五桂 △4五桂
  ▲3三桂成 △同 金 ▲2二飛成 △3二銀 ▲4二角 △5二金
  ▲3三角成 △同 銀 ▲同 龍 △5七桂成 ▲6九金 △4七角
  ▲5三歩 △6九角成 ▲5二歩成 △同 銀 ▲4二龍 △6二金
  ▲5一銀 △同 飛 ▲同 龍 △7八馬 ▲7一銀 △6一金打
▲6二銀成 △同 金 ▲8二飛





千日手打開の右四間飛車

増田vs中村太(朝日杯)では下図のように進行。

この右四間飛車が千日手打開の切り札だ。

図からの指し手

△4二銀      ▲4五歩      △4三銀上    ▲1七角      △4五歩      ▲7五歩      △同 歩


△4二銀と△3三桂を見せて▲4五歩の仕掛けを催促したが、△同歩▲同銀△同銀▲同飛と交換してしまうと▲2四歩~▲2三角(銀)や▲8三銀などの攻めが残ってしまう。

そこで△4三銀に▲1七角としたが、▲4四歩△同銀▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲8三角は△8一角で受かっている。


△7五同歩のところ、将棋ソフト「ポン太がタヌキになりまして」は△3三桂と指して「水匠」に勝っている。

藤井七冠がアベマトーナメントでこの形を嫌ったのは、そのあたりに理由があったのかも。

水匠はここで▲2八角。いろはは▲4五歩△同歩▲同銀と攻めている。

銀損するようだが、△同飛は▲同飛△同銀▲3一飛として陣形差で先手有利。

△同銀は▲4二歩△同飛▲5四桂(下図)が炸裂する。