将棋備忘録

殴り書きの備忘録なので、読みづらい点はどうかご容赦を!

【角換わり新新対抗】後手番パス作戦

角換わり後手番の後手の手待ち戦略の中で、△7二金~△6二金など、わざと2手かけて△6二金型を作るパス作戦が、先後同型をずらす面白い作戦だ。
角換わりでお互いに同型をどこまで続けることができるかだが、下図がひとつの分岐点。


△4四歩と同型を続けるのは、▲4五歩△同歩▲同銀と攻められた時に受け切る自信がないと指せない。

△4四歩不突が争点を与えない最善の待ち方。


先手の▲6六歩は、将来▲7五歩と桂頭を攻めた時の△6五桂を消した積極策。
後手に△6五歩の攻め筋を与えるが、▲6六歩不突は、△6五歩の位取りが気になる上、▲7九玉△3一玉▲4五桂と仕掛けても豊島新手の△2二銀があり、名人戦第一局(千日手局)のように▲5三桂成△同金▲7二角から千日手では先手失敗。反対に後手は千日手歓迎なので、同様の仕掛けが成立する。


図からすぐに△6五歩と仕掛けるのは、①▲同歩△同銀は▲5八玉で、②▲同歩△同桂は▲6六銀△6四歩は▲4五歩とされて攻め切る自信がない。
△4一飛という捻った手も現れたが、桂頭が少し不安。
また、△5二玉▲7九玉△4二玉と手待ちするのは、▲4五桂の仕掛けが厄介。
それなら手番を渡して先手▲8八玉まで組ませて反撃しようというアイデアだ。
具体的には△6二金型を作るのに△7二金や△5二金と途中下車してから△6二金として手番をずらす。
先手は、千日手は損なので打開する必要がある。

先後同型から後手が△5四銀~△6三銀と手待ちを続けると△6三銀型で下図の局面を迎えるが、パスをすることにより△5四銀型の好形で受けることが可能となる。(「将世2018.10」p.138~千田講座より)


パスされて図の局面で手番を渡された先手は、▲7九玉△5二玉▲8八玉△4二玉、あるいは、▲7九玉△6三銀▲8八玉△5四銀(図)と玉を囲ってから▲4五桂と仕掛けるか▲6七銀とさらに固めるかという進行になる。


先手パスが現代のtrend

後手番一手パスに対して、先手もパスしようとするのが現代のtrend。
その背景には、▲8八玉型から▲4五桂と仕掛ける形は先手有利という認識がある。

この▲6九玉が先手一手パス。対して後手も△5二玉とせずに△4一玉とパスする手も考えられるが、▲4五桂と仕掛けられたり、さらに▲2七飛とパスしたりと、先手も手段に困らない。 

かくして▲4五桂が実現するが、この局面は先手有利と考えている棋士が多いようだ。
もちろんその裏にはAIの評価値の裏付けがある。



▲4五桂に△2二銀の変化

▲4五桂には△2二銀か△4四銀の二択。
まず△2二銀だが、これには図の▲3五歩が有力。 

△3五同歩には▲2四歩△同歩▲同飛が次の▲5三桂成を狙って厳しい。
また▲1五歩と端を絡めて攻める順もタイトル戦で藤井聡太が指して勝っている。


そこで後手は、▲3五歩には△4四歩▲3四歩△4五歩▲同歩△6五歩と反撃する。
△7六歩▲同銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七金△8一飛に▲8二歩と進む。 

途中、△9五歩▲同歩の突き捨てが入れば▲8二歩は成立しないらしい。
図では、ひとめ後手の壁銀が痛く、先手が楽な展開。


図からの指し手
△8二同飛 ▲7一角  △7二飛  ▲6二角成
△同 飛  ▲7四歩  △6六角  ▲7七金打
△同角成  ▲同 桂  △6四飛  ▲6五歩
△7四飛  ▲7五歩  △8四飛  ▲8五歩
△8一飛  ▲7二角  △7一飛  ▲8三角成
△7二金  ▲8四歩
以下難解な終盤戦となった。 

図からの指し手
△3四飛  ▲6四銀  △同 歩  ▲7六角
△7八飛成 ▲7九歩  △3五竜  ▲6三と 


▲4五桂に△4四銀の変化

△4四銀の方が壁銀にならないので良さそうに思えるが、図のように▲2二歩が利くので結局壁形になる。 
しかし、その後の展開によっては2二金型から△2三金と発展したり、△2四歩~△3二玉と広い玉形を確保できる楽しみもある。 

図からの指し手
△同 金  ▲6四歩  △8六歩  ▲同 歩
△8五歩  ▲6九飛  △8六歩  ▲8二歩
△7一飛  ▲7五歩  △3二金  ▲7四角
△6八歩  ▲同 飛  △5九角  ▲5八飛
△4八角成 ▲同 飛  △8四金  ▲6三歩成
△同 銀  ▲8一歩成 △7二飛  ▲6三角成
△同 金  ▲6八飛


△2二同金に▲6四歩は強い手。
これまでは、▲7九玉と戦火から玉を遠ざける実戦例が多かった。
下図は、藤井vs羽生(王位戦)。
▲7九玉から△5二玉 ▲8八玉 △4二玉▲4五桂 △4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩▲2九飛 △6五歩 ▲同 歩 △7五歩 ▲2二歩 △同 金▲7九玉 △3二金 ▲2二歩 △同 金 ▲3五歩 △7六歩▲同 銀 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲7五銀 △8一飛▲8二歩 △同 飛 ▲7一角 △7二飛 ▲6二角成 △同 飛▲7四歩 △6五桂 ▲7三歩成 △6一飛 ▲7二と △3一飛▲6六銀 △6四歩 ▲3四歩 △同 飛 ▲6二とと、進行した。

図の局面から△8七歩と攻め合うのも有力だが、実戦で羽生が指した△2四歩も好手。
▲2二歩の打ち捨てを指し過ぎにさせようとしている。


図からの指し手
△2四歩 ▲3三歩 △4五銀右 ▲同 歩 △3三銀 ▲4四歩
△同 歩 ▲6五銀直 △同 歩 ▲4六桂 △3六飛 ▲4七銀
△3五飛 ▲3六銀打 △5五飛 ▲5六銀 △同 飛 ▲同 歩
△3二玉 ▲6三と △2三玉 ▲5三と △6四角 ▲3五銀
△4六角 ▲同 銀 △6六桂 ▲7二飛 △7一歩 ▲3四角 まで藤井勝ち


▲6五銀直に△同歩が当然の一手のようで敗着。
△3二玉と早逃げすれば、▲4六桂には△3六飛▲4七銀△3五飛▲3六銀打に△6五飛があって難解だった。


対八代戦の▲6四歩は、そのあたりの改良手段だが、形勢は難解。

図から八代七段は△6四歩と打ったが、△6五歩なら互角だったようだ。
△6四歩に▲6一銀が好手。
△6二飛▲7一と△4五銀▲同歩△8五桂と攻めた場合に6五に歩があった方が効いていた。


八代七段にとっては惜しい将棋だった。






千田研究朝日杯を制す。

図の手番を先手にするか後手にするかは、後手に選択権がある。
後手としては、図の局面で手番を持った方がいいのか、それとも手番を渡した方が良いのか悩みどころだ。

朝日杯で千田翔太七段は、準決勝の対藤井七段戦、決勝の対永瀬二冠戦と図の局面になった。但し、手番は違う。
準決勝では図は後手番で△6五歩と後手が仕掛けた。(後手パスなし)
決勝は先手番で、▲4五桂と先手が仕掛けた。(後手パス)
そのいずれも制したのは先手の千田翔太七段。
研究の深さが窺われた。

手番が後手の場合

先手は、いつでも▲4五桂の仕掛けの権利があるが、まず▲8八まで玉を囲って△6五歩の仕掛けを誘う指し方を研究する。
相手玉は3一か4二が有効。5二玉型に対して▲4五桂は指しにくい。
▲8八玉まで囲われるのは後手にとって不満ではない。
△6五歩▲6九飛△6六歩▲同銀△6五歩▲同銀直△同桂▲同銀△同銀▲同飛に△6四銀が成立したり、△6六角が王手金取りになるケースがあったりと、▲8八玉の位置はかなりマイナス。
後手のパスがなければ▲7九玉型で△4二玉に対して▲4五桂と仕掛ける順が有力。
これらについては、「【角換わり新新対抗】▲4五桂か△6五桂か」で触れる。

図から▲6九飛の反撃が先手の狙い。
素直に▲同歩と取って△同桂▲6六銀△6四歩▲4五歩も一局で、『【角換わり新新対抗】▲4五(△6五)のクライは天王山』をご笑覧下さい。


図から▲6九飛△6六歩▲同飛△6五歩▲6九飛あるいは▲6九飛△6六歩▲同銀△6五歩▲7七銀として一歩手持ちを主張した実戦もある。


▲7五歩を避けて△6四角と打ち、▲4五銀は△6三銀▲5六銀で千日手。▲4七金と受けるのでは先手がつまらない。


△6四角のところ△3一玉も考えられ、▲6四歩△4四歩▲2九飛△4一飛などで一局の将棋。
途中の△4四歩で△8四飛という変化が橋本vs豊島戦で現れ、豊島の△6四飛の悪手に乗じ、橋本が▲5三桂成の鋭手を放って勝利している。




▲6五同銀直の変化~後手期待の△6四銀


▲6九飛△6六歩▲同銀△6五歩に対して▲同銀直が最近の流行。
▲5五銀については、「【角換わり新新対抗】▲4五桂か△6五桂」で触れる。
▲同銀直とすれば△同桂▲同銀△同銀▲同飛△6四銀▲6九飛△7五歩(図)が自然な進行。

ここから▲7九玉とした実戦が多い。
以下△5五角▲6六銀△同角▲同飛△6五銀打▲6九飛△7六歩▲5六桂と進んだ将棋が何局もある。



図からの指し手
▲5五銀 △7三銀打 ▲7四桂 △5二金 ▲6四銀 △同 銀
▲6三銀 △5五角 ▲7七角 △同角成 ▲同 桂 △6三金
▲7二角 △7三金 ▲8一角成 △7六歩 ▲9一馬 △7七歩成
▲同 金 △6五桂 ▲同 飛 △同 銀 ▲7三馬


▲5五銀が新手で△7三銀打に▲7四桂が継続手。
なお7三でなく△6三銀打なら▲4五角!がある。
▲7四桂以下△5二金▲6三銀に△5五角としたが、後手不満な分かれだったため、△4四角が藤井七段が感想戦で示した代案。
本譜と同様に▲7七角なら△6三金▲4四角△7四金▲3三角成△同玉▲6三角△8四飛で後手も指せる。
△4四角に▲6六歩なら△7六歩▲5二銀成△同玉▲7二角△8四飛▲6三金といった変化が考えられる。
△4四角の他には、△6三同金と取って▲7二角の両取りに△5五角▲6六歩△8四飛▲6三角成△5二銀という変化もあった。

図の▲7三馬が詰めろなので藤井七段は△3一玉と逃げたが、ここで△7二銀という妙手もあるが、▲5一飛△4一銀▲6二馬で負けなので断念したようだ。
△7二銀は、場合の手筋として知っておいて損がない手だ。


図からの指し手
△3一玉
▲6一飛 △2二玉 ▲6五飛成 △5九角 ▲7八金打 △4八角成
▲4五桂 △7六歩 ▲同 金 △5七馬 ▲3三桂成 △同 桂
▲4一銀 △3一金 ▲3二銀打 △4一金 ▲同銀不成 △2八飛
▲6八歩 △6九銀 ▲7九金打 △7八銀成 ▲同 金 △3一金
▲6二龍 △4二金打 ▲5五馬 △4四銀 ▲同 馬 △同 歩
▲4三桂 △4一金寄 ▲3一銀 △同 金 ▲同桂成 △同 玉
▲4三香
まで115手で先手の勝ち





手番が先手の場合

渡辺二冠は、棋王戦第二局(対広瀬)では▲4五桂と攻め、後の棋聖戦(対稲葉)では▲6七銀と固めている。さらに最近の棋聖戦第二局(対豊島)では、図の後手を持って豊島三冠の▲6七銀引きに△5五銀の新手を出している。
恐ろしいことに渡辺二冠はそれらすべてに勝利している。
今、渡辺二冠が将棋界を引っ張っているといっても過言ではない。
まずは▲4五桂の変化をご紹介したい。

▲4五桂の変化

▲4五銀は△5五銀や△6三銀で続かないし、▲4五歩と突くなら▲2五歩を保留したい。
したがって▲4五桂は攻めるならこの一手。
屋敷九段対羽生九段九段(竜王戦)をサンプルに研究する。
▲4五桂の銀取りに羽生九段は△4四銀と受けたが、△2二銀と後の△4四歩を見られるのも気になる変化だ。
△2二銀には、▲7五歩△同歩▲5三桂成△7四歩も有力だが、▲3五歩とし、△4四歩に▲3四歩△4五歩▲同銀△6三銀▲6九飛と仕掛けを封じてから5筋の歩をついていくのが定跡だ。

▲3五歩では、▲5五角(下図)という手もあるが、本筋ではない感じなので実戦では指しにくい。

△6三金と受けてくれれば▲2二角成△同銀▲5五銀で攻めが繋がる。△5五同銀▲同銀△3三桂▲6四銀の変化は、駒損ながら先手玉が安定しているので指せそう。ただし、△6三銀と引かれて△5四歩を見せられたり、後手に選択肢が多いのが不安材料だ。


飛車先交換に△2三歩~△6五歩の反撃

▲4五桂には△4四銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛△6五歩▲同歩△7五歩に▲6九飛と受ける変化が、当初良く指された。
これには△7六歩▲同銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七金△8一飛▲8六歩に△6七歩(下図)が悩ましい。
△6七歩は、次に△6八歩成~△5九角~△8六角成と攻める狙いで、単に△6八歩では▲2九飛と取ってくれない。以下△6九角と打っても、どこかで▲5八角△同角成▲同金と遊び金を守りに活用される順があって損。
△6九角に▲6四歩△9五歩▲同歩△9六歩▲7四歩△6五桂▲9六香△4五銀直▲同歩△8四桂となった実戦がある。
▲8五銀なら△9六桂▲同銀△7五香で攻めが続くし、▲7八銀なら△7六桂▲同金△9五香 ▲6六桂打 △8七歩打 ▲同王 △9八銀打 ▲8八王 △4五銀 ▲6五銀 △7五歩打 ▲7七金 △9六香 ▲6三と △8九銀成▲同銀 △6三金 ▲7二銀打 △7六桂打 ▲7九王
が変化の一例。実戦は▲6五銀右と強気に受けたが、△同銀▲同銀に△6七銀で先手危険だった。




この歩を飛車で取るのは、△5九角がある。また、右銀で取るのは△5五角~△4六角があるし、左銀で取るのは△2八角▲4七金△4五銀直▲同歩△7五桂がある。
▲2二歩と攻めるのは△6八歩成が早いので、図の局面では▲5八金と受けるくらいだが、△7四歩とキズを消されて難解だ。





▲6九飛以外では、▲2二歩△同金▲6四歩△8六歩▲同銀△7六歩▲7七歩という変化もあるが、後手を持った藤井聡太が、△9五歩▲同歩△7七歩成という端攻めの工夫を見せて勝利した。
そのため、この変化は後手持ちの形勢と思われていた。



ところが、▲2二歩△同金としてから▲7九玉という手法が発見され、先手の視界が開けてきた。指したのは藤井七段。
△3二金に再度▲2二歩が厳しく△同金に▲6四歩や▲3五歩と攻め、先手の勝率が良い。
『【角換わり新新対抗】▲4五桂か△6五歩か』をご笑覧下さい。


▲7九玉からの飛車先交換に△1三角の反撃

▲4五桂には△4四銀▲7九玉△5二玉と不思議な交換をしてから▲2四歩△同歩▲同飛△1三角▲2七飛△4六角▲2三角という激しい順がプロ間で試されている。
棋王戦第二局で先手の渡辺棋王が快勝した印象が強く、先手有利と認識していたが、最近渡辺二冠がその後この将棋を指していないところを見ると、難しい形勢のようだ。
この変化が嫌なら▲2四歩△同歩▲1五歩△同歩▲2四飛も考えられる。




▲6七銀の変化

上図から▲6七銀と引くのは、渡辺二冠らしい玉を固める手順。玉を銀矢倉に固めてから仕掛けると渡辺二冠が培った矢倉感覚が生きる展開になる。
対する後手は、△4四歩と▲4五桂を受ける実戦例が多い。
なお先の千田講座では、△6五歩▲同歩△同銀と一歩を持って△3五歩を狙う順を推奨している。
この実戦例を見たいと思っていたら、もっと過激な順が現れた。



一敗した後の棋聖戦第二局で渡辺二冠が△5五銀と(下図)積極的に指した。
これに▲4七金と4六の歩を守るのことができないのが▲4八金+2九飛型の弱点(△3八角の両取りがある)。
通常、こういう単騎の銀は成功することが少なく、例えば桂跳ねの後▲5六歩△4六銀▲6八角といった順で取られることがある。しかしこれも△4七銀成~△3八角という筋があって大丈夫。

△5五銀はcomputer soft同士による実戦例が数局あり、▲3五歩△4四銀左▲1八角(▲3四歩△4六銀①▲2四歩△同歩▲同飛△3六歩▲2五桂△3五銀引▲3三歩成△同桂▲同桂成△同玉▲2九飛△2八歩▲同飛△4六角、②▲7五歩△3六歩▲4五角)△5四角▲同角△同歩と進み、後手が少し面白くない感じだった。
豊島三冠の指し手も▲3五歩だった。これを渡辺二冠が△同歩と取って前例を離れた。
一見すると同歩は利かされのようで、豊島三冠も少考で▲4五桂と跳ねて十分という感じだったが、すでに相手の術中に入っていた。
▲4五桂では▲5六歩△4六銀▲2六飛が正解だった。
この▲4五桂は、△4四銀とされると次に△4六銀で桂馬が浮く。
それを防いで▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2六飛と4六の歩に紐をつけたが、今度は△5九角が激痛だった。
そこで▲2八飛と受けるのなら△5九角の一手が先手で入った理屈だ。
▲2六飛は疑問手。▲2九飛として△4六銀なら▲3四角や▲5六銀とすべきだった。
渡辺二冠が大局観の明るさ&研究の深さを見せた。





この将棋で評価を高めたのが澤田六段。

図の局面で△8六歩と突き出すのが好手。

(1)▲8六同歩は8七に空間ができるので、△7六銀▲6八玉△5六桂▲5八金寄(▲同金は△6七銀打▲8八玉△2一飛)△8七銀打▲6九玉△3七角成(△2八馬と△2一飛の詰めろ馬取りの両狙い)で後手勝ち。

(2)▲8六同銀も△7六銀▲7八玉△5六桂▲5八金寄△6八桂成▲同金△6七銀打▲同金寄△同歩成▲同金△8七銀不成(8筋の歩を突き捨てておいた効果でこの手がある)▲6九玉△3七角成▲2四飛△2一飛▲同馬に△7八銀打▲6八玉△6七銀成▲同玉△6六歩▲同玉△7六金▲6五玉△6四歩▲7四玉△4七馬以下で先手玉が詰むという。いずれも長手順ではあるが、一直線でほぼ変化の余地がない、と澤田六段。

澤田六段指摘の簡単な寄せを逃した渡辺二冠は、手順中の△5六桂が盲点になっていたようで、「これが詰めろか、普通の手じゃないか」と局後盛んにボヤいていた。

しかし、渡辺二冠も冴えをみせる。
解説者は△4八角成として後手玉に詰みがあるかを検討していたが、図から△7八銀成▲6七玉 (▲7六玉は△7五金~手順に△4八角成と手順に金を取られてしまう。)△6八角成▲6六玉△6五歩▲同玉△6四歩▲同玉△4六馬▲6五玉△8五飛(投了図)と鮮やかに詰ませて豊島三冠の読みを上回った。
棋界トップの戦いとして注目された棋聖戦第二局だったが、前日の対村田顕との順位戦で魅せた藤井七段の踏み込みの鋭い寄せと比較すると、ちょっと色褪せて見えた。
とはいえ面白い将棋だったことは間違いない。